2015年 05月 03日

アダチプレスさんの出版第一弾はアラーキー写真集

a0018105_17462688.jpg

楽園は、モノクローム。
荒木経惟写真
アダチプレス 2015年5月 本体3,200円 B4変型判並製96頁 ISBN978-4-908251-00-9

シュリンクシールより:花と人形、ときどき人。エロティックで残酷で、いとをかし。誰も見たことがなかった、写狂老人アラーキーの秘密の花園。

★昨夏(2014年7月)創業されたアダチプレスさんの出版第一弾です。5月9日発売予定。扱いはトランスビューさんです。収録写真のサンプルは書名のリンク先をご覧ください。サンプルにはありませんが、何年か前に話題になったレディ・ガガさんの緊縛写真は実にかっこいいです。また、荒木さんの撮る花たちはどこまでも妖しく美しく色っぽく、空はどこまでも神々しくて、個人的にとても好きです。紀伊國屋書店グランフロント大阪店ではトランスビューさん扱いの17社のうち14社にアルテスパブリッシング、弦書房、サンライズ出版、スタイルノート、ななみ書房、羽鳥書店、ぷねうま舎、ポット出版、まむかいブックスギャラリーを合わせた23社の商品を集めた「注文出荷制23社フェア」を5月11日から開催されますが、このフェアにアダチプレスさんも参加されています。トランスビューの工藤さん、ころからの木瀬さん、グランフロント大阪店の星店長によるトークイベント「《注文出荷制》は何を目指すのか ~新しい出版流通の現状と未来~」が5月17日(日)に行われるとのことで、業界人必聴かと思われます。参加無料要予約。

★写真集繋がりでご紹介しておきますと、ほかならぬアダチプレスの足立さんの古巣である平凡社さんでも、ユニークな写真集がまもなく発売されます。林明輝[ドローン]写真集『空飛ぶ写真機――大地から見てきた風景を上空から再発見』(平凡社、2015年5月、本体3,800円、A4変型判上製112頁、ISBN978-4-582-27819-4)です。ドローンというとさいきん某所に落下したのが確認されて大きな話題となっていますけれども、この写真集は空撮ならではの〈鳥になった気分〉を味わうことができる、開放感と爽快感のある美しい作品集となっています。


ドゥルーズ・コレクション I 哲学
ジル・ドゥルーズ著 宇野邦一監修
河出文庫 2015年5月 本体1,300円 344頁 ISBN978-4-309-46409-1

カバー裏紹介文より:ドゥルーズの未収録論考などを集成した『無人島』『狂人の二つの体制』から重要テクストをテーマ別に編んだドゥルーズ没後二十年記念オリジナル・アンソロジー。Ⅰにはドゥルーズの思考の軌跡と哲学者たちをめぐるテクスト群を収録。ますます輝きをますその哲学の魅力を開示する。

目次:
【発想の軌跡】
無人島の原因と理由 (前田英樹訳)8-18
セリー・ノワールの哲学 (鈴木創士訳)19-28
ドラマ化の方法 (財津理訳)29-53
何を構造主義として認めるか (小泉義之訳)54-101
ドゥルーズ/ガタリが自著を語る (杉村昌昭訳)102-135
狂人の二つの体制 (小沢秋広訳)136-144
『意味の論理学』イタリア語版への覚え書き (宇野邦一訳)145-149
宇野への手紙――いかに複数で書いたか (宇野邦一訳)150-154
フェリックスのために (杉村昌昭訳)155-157
内在――ひとつの生…… (小沢秋広訳)158-165
【哲学者たち】
ベルクソン、1859-1941 (前田英樹訳)168-192
ベルクソンにおける差異の概念 (前田英樹訳)193-239
カフカ、セリーヌ、ポンジュの先駆者、ジャン=ジャック・ルソー (宇野邦一訳)240-248
「彼は私の師だった」 (松葉祥一訳)249-256
ジルベール・シモンドン 個体とその物理-生物的な発生 (三脇康生訳)257-264
断層と局所の火 (小泉義之訳)265-278
ヒューム (小泉義之訳)279-295
ニーチェと思考のイマージュについて (鈴木創士訳)296-312
ノマド的思考 (立川健二訳)313-337
監修者あとがき (宇野邦一訳)338-342

★5月11日発売予定とのことですので、早いお店では今週末あたりから店頭に並び始めるのではないかと思われます。このコレクションは全2巻で、『無人島』『狂人の二つの体制』からテーマ別に再編集したもの。訳語の統一のために各テクストを調整した、と監訳者あとがきで宇野さんが特記されています。第Ⅰ巻の哲学者論編の中で題名に人名がないテクストにおいて誰が論じられているか特記しておくと、「「彼は私の師だった」」ではサルトルが、「断層と局所の火」ではコスタス・アクセロスが、「ノマド的思考」ではニーチェが取り上げられています。さらに監訳者あとがきによれば、続刊予定の第Ⅱ巻「権力/芸術」では、『ペリクレスとヴェルディ――フランソワ・シャトレの哲学』(『ドゥルーズ横断』所収、河出書房新社、1994年)をはじめ、「権力論、情況論といってよい同時代の政治的主題にかかわる一連の文章を、最後のパートには、ドゥルーズ独自の〈美学〉にとって、いわば試金石となった数々の作品(文学、美術、音楽、映画)についての印象深いエセー、講演」をまとめるとのことです。


現代思想 2015年5月号 特集:精神病理の時代――自閉症・うつ・普通精神病…
青土社 2015年4月 本体1,300円 A5判並製246頁 ISBN978-4-7917-1300-4

★発売済。2本の討議「自閉症スペクトラムの時代――現代思想と精神病理」(内海健+千葉雅也+松本卓也)、「精神病理と精神分析の閾」(藤山直樹+十川幸司)をはじめ、論文が充実しており、大注目です。大澤真幸「近代社会における芸術の精神的位置――動物行動学と精神病理学からの示唆」、小泉義之「自閉症のリトルネロへ向けて」、檜垣立哉「他者はどこにいるのか――ドゥルーズにおける強度と精神と自然」、千葉雅也「バロック的前提から過少の言葉へ」、斎藤環「反-強度的治療としてのオープンダイアローグ」、十川幸司「強度と個体化――その臨床的導入を巡って」など。同誌では大学特集が鉄板だと聞いていますが、今回のようないわば「imago」誌系の内容も手堅いのではないかと思われます。なお、次号(6月号)の特集は「新しい唯物論」で、千葉雅也さんが2号連続の寄稿となるほか、メイヤスーやデランダ、エリザベス・グロスらの翻訳、磯崎新さんのインタヴュー等を収録する予定だそうです。


宗教学
大田俊寛著
人文書院 2015年4月 本体1,900円 4-6判並製236頁 ISBN978-4-409-00111-0

帯文より:オウム真理教事件の蹉跌を越えて、宗教について体系的に思考するための30冊。

★発売済。「ブックガイドシリーズ 基本の30冊」の第11弾です。目次や巻頭論考「はじめに──宗教の四段階構造論」は書名のリンク先でご覧になれます。本書を含めたシリーズの既刊書を以下に列記しておきます。初学者の皆さんにだけでなく、人文社会書を扱われる書店員さんにとっても古典的基礎文献について勉強できる有益なガイドとなっています。担当編集者のMさんによればこのシリーズはまだ続刊予定があるとのことで、非常に楽しみです。

◎ブックガイドシリーズ 基本の30冊

2010年10月『東アジア論』丸川哲史著
2010年10月『倫理学』小泉義之著
2010年10月『科学哲学』中山康雄著
2011年06月『グローバル政治理論』土佐弘之編
2011年08月『メディア論』難波功士著
2011年08月『日本思想史』子安宣邦編
2011年10月『文化人類学』松村圭一郎著
2012年01月『政治哲学』伊藤恭彦著
2012年12月『環境と社会』西城戸誠・舩戸修一編
2014年07月『経済学』根井雅弘編
2015年04月『宗教学』大田俊寛著

★ガイドと言えば、東京外国語大学出版会および同大付属図書館が刊行しているPR誌「ピエリア」2015年春号では「愛の書物、書物への愛」と題した特集が組まれており、各先生方が新入生にそれぞれ個性的な名著を推薦されています。楽しいガイドブック(しかも無料)ですが、学外ではなかなか見かけないかもしれませんので、気になる読者や書店員さんは出版会さんにお問い合わせになってください。
a0018105_1747311.jpg

+++

a0018105_17471968.jpg

このほかにもここ数週間で様々な新刊との出会いがありました。

マイ・フレンド――高田渡青春日記 1966-1969』高田渡著、高田漣編、河出書房新社、2015年4月、本体2,500円、46変形判並製368頁、ISBN:978-4-309-27590-1
紋切型社会――言葉で固まる現代を解きほぐす』武田砂鉄著、朝日出版社、2015年4月、本体1,700円、四六判並製288頁、ISBN978-4-255-00834-9
世界偉人変人博物館 ~77のよりすぐりの人生~』神山修一著、ほりのぶゆき挿画、エンターブレイン、2015年4月、本体1,300円、四六判並製272頁、ISBN978-4-04-730524-3
2023年の中国――習近平政権後、中国と世界はどうなっているか?』徐静波著、作品社、2015年4月、本体2,400円、46判並製332頁、ISBN978-4-86182-466-1
川村湊自撰集 2 近代文学編』川村湊著、作品社、2015年4月、本体2,800円、46判上製420頁、ISBN978-4-86182-515-6
甲骨文の誕生 原論』高島敏夫著、人文書院、2015年4月、本体2,500円、4-6判上製178頁、ISBN978-4-409-51070-4
あなたの自己回復力を育てる――認知行動療法とレジリエンス』マイケル・ニーナン著、石垣琢麿監訳、柳沢圭子訳、金剛出版、2015年4月、本体3,400円、A5判並製272頁、ISBN978-4-7724-1418-0
アディクション臨床入門――家族支援は終わらない』信田さよ子著、金剛出版、2015年4月、本体2,800円、四六判上製240頁、ISBN978-4-7724-1409-8
宗教の社会貢献を問い直す――ホームレス支援の現場から』白波瀬達也著、ナカニシヤ出版、2015年4月、本体3,500円、4-6判上製272頁、ISBN978-4-7795-0960-5
フランスの生命倫理法――生殖医療の用いられ方』小門穂著、ナカニシヤ出版、2015年4月、本体3,800円、4-6判上製228頁、ISBN978-4-7795-0961-2
偶然と運命――九鬼周造の倫理学』古川雄嗣著、ナカニシヤ出版、2015年4月、本体5,200円、A5判上製356頁、ISBN978-4-7795-0962-9

★特記したいのは武田砂鉄さんのデビュー作『紋切型社会』です。武田さんは河出書房新社さんの元編集者で、昨年ライターとして独立されました。言葉を吟味する職業に就いておられただけに、世間に流通している様々な言葉を鋭い批評眼で分析されています。・・・という紹介ではそれこそ本書で批判されている紋切型であるように思えるので、もう少し感じたままを言いますと、内容的にかなり辛辣で毒舌な一冊で、読者を敵に回したくないですとか味方を増やしたいですとか、そうした媚びを感じさせません。「カルチャーの現場は、常に整わない環境を常態化しなければいけない。出る杭があれば育てなければいけない。出てこないで横目で既存の杭を見てそこに背丈を合わせてくるような杭にばかり餌を与えてはいけない。そんな杭は絶対にオリジナルな言葉を持たない。そんなコピペが続くと、文化はのっぺりと揃って、多くの可能性を無自覚にぶっ壊してしまうはずだ」(207-208頁)。これは出版社にも編集者にもずばり言えることですね。紋切型社会に生きる調整型の心臓をドキドキさせる言葉です。
[PR]

by urag | 2015-05-03 17:47 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://urag.exblog.jp/tb/21188132
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。


<< 注目新刊:バトラーなど6人の論...      注目新刊:コーエン=ソラル『サ... >>