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2005年 07月 17日

今週の注目新刊(第13回:05年7月17日)

蒸し暑いですね。女子バレー(2005ワールドグランプリ)の戦果に一喜一憂している今日この頃です。仙台での決勝トーナメントでは悔しい結果が続きます。ブラジルにもキューバにも、勝てたかもしれなかったのに。残るは対中国戦。ブラジルを完封して今更ながらに上り調子の中国。見たいようで、見たくないような試合です。でも今回のメンツでは最後の試合ですから、見届けたいと思います。いや見れないかも。

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地球のなおし方――限界を超えた環境を危機から引き戻す知恵
ドネラ・H・メドウズ+デニス・L・メドウズ著 枝広淳子著
ダイヤモンド社 本体1200円 4-478-87107-8
■版元の紹介文より:地球の温度は上がり続け、海水は上昇し、森林は傷つき、地球の砂漠化は進んでいる。崩壊を止めるには、人間の行動を変えるしかない。坂本龍一氏推薦書籍! これは、ぼくたち人間にとってだけではなく、地球にとって1、2を争うほど大事な本です――。
●ドネラ・メドウズ(1941-2001)さんと言えば、日本では例の「100人村」(『世界がもし100人の村だったら』2001年、マガジンハウス)のネタ元として近年では広く知られています。中高年の世代では『成長の限界』(1972年、ダイヤモンド社)の著者として、でしょうか。ちなみに刊行30年を経た最新版『成長の限界 人類の選択』(ISBN:4478871051)の翻訳が、この春にダイヤモンド社さんから刊行されています。

地球の歌
ベルンハルト・エドマイヤー撮影 アンジェリカ・ユング=ヒュッテル文 平石律子訳
ファイドン 本体6980円 4-902593-26-2
■中味のサンプルはこちらをご参照下さい。
●大判の迫力で、雄大で美しい大自然を写したフルカラーの写真集ですから、一目見たら忘れられません。私は某取次さんで、本書の見本回りをしているスタッフの方をお見かけした記憶があるのですが、仕入交渉ははかばかしく見えませんでした。取次さんにとっては洋書と同じという認識なんでしょうか。傍目には気の毒な気がしました。本書への私の個人的な関心は、モルフォロジー的観点からのものです。マクロな世界とミクロな世界における自然的形象の相似性、抽象絵画とミクロな世界の自然的形象の相似性などが関連してくる分野です。それはともかく、上記のメドウズさんの本と一緒に平積みされていてもいいんじゃないかと思います。

エドマイヤーさんの作品は、このほか、アルプス社さんから、『芸術としての地球』という高画像写真集CD-ROMが発売されています。税込3,990円のところ、アルプス社さんのオンラインショップでは3,570円で購入できるようですね。

ヘーゲルの未来――可塑性・時間性・弁証法
カトリーヌ・マラブー(1959-)著 西山雄二訳
未来社 本体4500円 4-624-01170-8
■版元の紹介文より:「歴史の終わり」を超えて、真新しい未来が到来する――。本書においてマラブーは、ヘーゲルの時間論を批判的に読解するハイデガー、ハイデガー哲学を批判的に継承するデリダといった複数の対話を潜在的に共鳴させることで、彼女自身の哲学の核心をなす「可塑性」の運動、すなわち、自ら形を与える-受け取るという時間的な塑造過程を見定めようとしている。
●現在来日中のマラブーさんの主著です。可塑性という概念については私自身おおいに注目しています。ドイツ観念論の系譜における、かたちFormの問題系がそこにはある。またしても私の関心の核であるモルフォロジーに触れてくるのです。

転回――或る非同一化的思考の試み
ウテ・グッツォーニ(1934-)著 小松光彦訳
慶応義塾大学出版会 本体3000円 4-7664-1184-6
■版元の紹介文より:その眼差しを転回せよ。主体性神話の桎梏を打破し、他者性へ開かれた倫理の胎動を告げる、先駆的思索の軌跡。ハイデガー、フィンクに師事し、ドイツ現代哲学を代表する女性哲学者グッツォーニによる魅力あふれる哲学エッセイ。セザンヌ最晩年の風景画、カントの遺稿、 などが論じられる。

目次:
はじめに
セザンヌ・ジュールダンの小屋──或るものと無との共演について
闇の中の光
オデュッセウスの理性とセイレーンの感性──意味と感覚
二人で在ることのこのはかりしれない幸せ(Cette immense fortune d’être deux)
〈間-時間〉試論──〈互いに共に在ること〉の時間性と各時性について
他者として存在すること
付録:セザンヌ・ジュールダンの小屋(図版)
訳者あとがき
原語索引

●版元さんがウェブで公開している目次にある「或るものと無」はあるいは「有るものと無」でしょうか。また「各時性」というのは「隔時性」とは違うのでしょうか。グッツォーニ(Guzzoni, Ute)さんは「ハイデガー最後の弟子」と紹介されていますね。フライブルク大学名誉教授でいらっしゃいます。これまでの日本語訳書には以下があります。

変革する思考 [原書名:Veränderndes Denken]
ウテ・グッツォーニ著 小松光彦訳
慶応義塾大学出版会 2000年7月刊 本体価格2,800円 46判209p ISBN:4766408152

住まうこととさすらうこと [原書名:Wohnen und Wandern]
ウーテ・グッツォーニ著 米田美智子訳
晃洋書房 2002年5月刊 本体価格1,900円 46判161p ISBN:4771013691

カブールの本屋――アフガニスタンのある家族の物語
アスネ・セイエルスタッド(1970-)著 江川紹子訳
イースト・プレス 本体1800円 4-87257-578-4
■版元の紹介文より:欧米に衝撃を与えたイスラム社会の現実! 女には、埃を食べ続ける人生しかないのか! タリバン政権崩壊後、カブールの書店主一家と出会い、その家族と生活を共にした白人ジャーナリスト。そこで彼女が目にしたものは――。世界で200万部を超えるベストセラー!
●著者のセイエルスタッドさんはノルウェーのオスロ在住の戦争特派員。2004年にEMMA(民族多文化メディア賞)受賞し、今秋来日予定だそうですが、洋販ウェブサイトに掲載された秦隆司さん(「アメリカン・ブックジャム」編集長)のレビューによれば取材先の一家から訴えられてもいたそうで。かの江川紹子さんが訳者だというのがポイント。

分裂共生論――グローバル社会を越えて
杉村昌昭(1945-)著
人文書院 本体2200円 4-409-04074-X
■帯文より:世界運動の新地平。ポストモダンからオルター・グローバリゼーションへ。21世紀の思想と運動の新たな結合。新自由主義的グローバリゼーションに抗する、ガタリ、ネグリ、ブルデュー、スーザン・ジョージを結び、現代思想のポテンシャルを社会の最前線へ着地させるスリリングな試み。“分裂”と“共生”のラディカルな接続。資本への統合を強制し加速するグローバル化のなかで、「生」の風景を変えることはいかにして可能か?
●人文書院さんのウェブサイトの更新が最近鈍いような気がするのは、きっと営業部さんが忙しいから。

僕の人生全て売ります
ジョン・フレイヤー(1972-)著 古谷直子訳
ブルース・インターアクションズ 本体1600円 4-86020-139-6
A5変型判(148mmX152mm)/ボール厚紙並製カバー装/224Pオールカラー
■版元の紹介文より:人生をリセットしたい、と思ったことはありませんか? 身の回りのモノを全てネット・オークションで売り、さらにその後の消息を訪ねて旅にでる、という奇想天外なプロジェクトの記録。自伝でもあり、旅行記でもあり、文化論でもあるこの記録は、私たちに問いかけています。私たちを取り巻いている物は、私たちにとって本当はどんな意味があるのだろうか、そして手放してしまったらどんなことが起きるのだろうか、と。オークションにかけられた商品一点一点に、カラー写真と、思い入れたっぷりの紹介文、さらに「その後の消息」も掲載(愛車ホンダで遠距離に住む落札者をトツゲキ訪問!)。オークションが進むほどにモノとモノ、人と人が(コミュニティのように)繋がってゆく展開には胸が熱くなります。
●内容の一部がこちらで見れます、小さくて見難いですが。楽しい奴だなあ。カバーには「全米映画化(検討中)!?」と「謳って」あります。大まかに言って「電車男」と同じジャンルのマーケティング戦略が成り立っている様子です。

チェコのマッチラベル
南陀楼綾繁(1967-)編著
ピエ・ブックス 本体2200円 4-89444-447-X
■版元の紹介文より:チェコで見つけた、あたたかなともしび、チェコのマッチラベルコレクション。 プラハで見つけた大切な1つの箱。中にはどこかなつかしい気持ちにさせるマッチラベルが…。その数々のデザインを当時のコレクター交流雑誌などの資料とともに一挙公開! 知られざるマッチラベルの世界で、あたたかなともしびを見つけて下さい。
●何と言っても南陀楼さんのコレクションですから。魅力があること間違いなし。ちなみに、小社から刊行している大竹伸朗さんの『UK77』にもマッチラベル・コレクションが載っているのは皆様ご承知の通り。大竹さんのスクラップ・ブックが欲しいと思ったのは私だけではないはず。

***

★今週の注目新書、文庫

憲法力――いかに政治のことばを取り戻すか
大塚英志(1958-)著
角川oneテーマ(角川書店) 本体743円 4-04-710005-6
■帯文より:「国民」である前に「有権者」たれ。「憲法力」とは「ことば」への信頼である。「憲法」を裏切り続けることで、「ことば」を裏切り続けた政治に私たちから終止符を打つ方法とは。
■版元紹介文より:誰にでもわかる日本国憲法の入門解説書。改憲論がはびこる中、あえて護憲の立場から憲法を解説。よく改憲論者が口にする「押し付け憲法論」や「憲法悪文節」の根拠を徹底的に解きほぐし、日本国憲法の意味を問いただす。
●「~力」というのは「~整理術」「~のしかた」等に続く、昨今の新刊の題名のトレンドで、本書の場合、大塚さんご本人がそういう流行にあえて「乗った」のか、編集者との対話からそうなったのかはよく分かりませんが、ともかく、「いかに政治のことばを取り戻すか」という問題設定は非常に重要です。諸権力による言葉の簒奪に現代人は意識的に抵抗しなければなりません。

余談ですが、今回の選書過程で題名にびっくらこいたのは、香山リカ(1960-)さんの新刊『〈雅子さま〉はあなたと一緒に泣いている』(筑摩書房 本体1300円 ISBN:4-480-81644-5)です。雇用機会均等法第一世代、いわゆる「雅子さま世代」の女性たちというくくり方があるそうです。

ヘミングウェイの言葉
今村楯夫(1943-)著
新潮新書(新潮社) 本体680円 4-10-610126-2
■帯文より:男の人生はかくも甘美で苦い――今も輝きを放つ77の言葉。
■版元による紹介文より:「もしふたりが愛し合っていれば、そこにはハッピーエンドなどはない」「小説を書くときに作家は血の通った人間を創り出すのだ。人物ではなく人間を」など、ヘミングウェイが遺した言葉は今も魅力に富む。その数々を「人生」「異国・祖国」「自然」「楽しみ」「執筆」の五章に分けて収め、背景を鮮やかに読み解く。二十世紀を颯爽と駆け抜けた文学者の濃密な生涯がよみがえる一冊。著者は日本ヘミングウェイ協会会長。
●ヘミングウェイの男臭さは私は嫌いではありません。自分がオヤジ世代になるにつれ、彼の良さがだんだん沁みてくるような気がします。

イソクラテスの修辞学校――西欧的教養の源泉
広川洋一著
講談社学術文庫(講談社) 本体1100円 4-06-159718-3
■版元による紹介文より:イソクラテスの思想の真髄。「善き言論」は「善き思慮」のしるし。古代ギリシアの教養理念に一大潮流を形成したイソクラテス。プラトンらが教養の原理に数理諸学や哲学を置いたのに対し、彼は弁論・修辞学を対置し、教育を実践した。やがてイソクラテスを源泉とする修辞学的教養はローマ、ルネサンスと受け継がれ、遠く近世にまで多大な影響を及ぼすことになる。イソクラテスの理想と教育を生き生きと描いた好著。

目次:
1.序の章
2.イソクラテスの生涯
3.イソクラテスの学校
4.イソクラテスの教育
5.イソクラテスの教養理念
6.間奏の章――イソクラテスとプラトン――
7.イソクラテス学校とアカデメイア
8.イソクラテスの伝統――キケロから近代まで――

●岩波書店から1984年6月に刊行された単行本の文庫化。「善きもの」とは何か。それが問題です。 

レヴィ=ストロース講義――現代世界と人類学
C・レヴィ=ストロース(1908-)著 川田順造+渡辺公三訳
平凡社ライブラリー(平凡社) 本体1200円 4-582-76543-2
■版元による紹介文より:20世紀最良の思潮「構造主義」を拓いた碩学が、性・開発・神話的思考をキーワードに、21世紀世界が直面する諸問題を論じ、文化人類学の可能性をさし示した東京講演の全記録。解説=佐藤仁
●『現代世界と人類学』(サイマル出版会、1988年)の「抜粋」だそうで。なぜ抜粋なのかは未確認です。1986年の東京講演の全記録と質疑応答を収録。

現代建築のパースペクティブ――日本のポスト・ポストモダンを見て歩く
五十嵐太郎(1967-)著
光文社新書(光文社) 本体850円 4-334-03315-6
■帯文より:巨大インテリジェントビルから個人宅まで、「現代」を代表する建築の見方・愉しみ方を提案する。
■版元による紹介文より:現代建築とは何か。「現代」というのは移り変わるものだから、この言葉が発せられる時代によってその意味は変わるだろう。二一世紀初頭の段階でいうと、ポストモダン以降の建築といえるだろうか。ポスト・ポストモダン。つまり、にぎやかで派手なデザインからシンプルでミニマルなデザインへ。(中略)モダニズムとポストモダンをたたみこんだ、それを「オルタナティブ・モダン」といえないだろうか。(「プロローグ」より抜粋)

目次:
序 「現代」建築とは
第1章 東京建築を見る
 パビリオンとしてのブランド建築/六本木ヒルズ/大型開発/リノベーション
第2章 地方建築を見る
 エンタテインメント/横浜/名古屋/仙台/文化の場/慰霊の空間
第3章 住宅を訪問する
 住宅を見るということ/うさぎ小屋とうなぎの寝床/理系の家/文系の家/有名人の家/構成と形式/家族と住宅/みんなの家/集合住宅の行方
第4章 クルマから観察する
 ロードサイドシティの誕生/クルマをめぐる現代建築の視点/ジェットコースターとしての首都高/首都高と丹下健三/メディアのなかの首都高
第5章 日本の建築家たち
 いかにして日本の建築家は世界に羽ばたくのか/平坦な戦場に生きる遅れてきたものたち/東京のイギリス人・イタリア人/安藤忠雄の東京改造計画/木の建築に向かう安藤忠雄/この先の安藤と建築/見えない廃墟 丹下健三を悼む
中国建築の熱い風~あとがきにかえて
本書に登場するおもな建築物の索引

●建築は現代文化を読み解く上での格好の記号です。五十嵐太郎さんや森川嘉一郎さんといった新世代の建築評論家の方々の批評活動はいつも気になります。

星と伝説
野尻抱影(1885-1977)著 西村保史郎=絵
偕成社文庫(偕成社) 本体700円 4-03-550940-X
■版元の紹介文より:様々な民族の人々が大昔から生み出してきた星の伝説を、美しい挿絵と共にやさしく紹介。1961年初版のロングセラーを文庫化。
●小学生の頃読みふけった思い出の本です。本書は、中公文庫や中公文庫ワイド版(オンデマンド)で正・続篇がともに入手可能。

***

以上です。(H)
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by urag | 2005-07-17 23:04 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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