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2014年 11月 02日

注目新刊:40年ぶりの新訳、バタイユ『ドキュマン』河出文庫、など

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ジョルジュ・バタイユ『ドキュマン』(江澤健一郎訳、河出文庫、2014年11月)はまもなく発売。河出文庫でのバタイユの訳書は『[初稿]眼球譚』(生田耕作訳、2003年)、『空の青み』(伊東守男訳、2004年)に続く3冊目です。1929年から1930年にかけて雑誌『ドキュマン』に掲載されたバタイユのエッセイ36篇と、未発表の『ドキュマン』関連原稿7篇を収録。『ジョルジュ・バタイユ著作集(11)ドキュマン』(片山正樹訳、二見書房、1974年)に掲載された27篇から数えて40年ぶりの、待ち望まれていた新訳の登場です。『ドキュマン』誌に掲載されていたテクストで今回の新訳版が収録し、二見版既訳書にはなかったのは以下のものです。「ブラック・バーズ」「八十日間世界一周」「巡礼地ハリウッド」「変身」「空間」「エマニュエル・ベルル「フロイト的順応主義」」「ルリスタンの発掘品」「パスカル・ピア『アンドレ・マッソン』」「『Xは現場をしるす』」。底本はガリマール版全集第1巻で、関連原稿は第2巻より訳出されています。巻末には訳者の江澤さんが解題「バタイユと『ドキュマン』という多様体」を寄せておられます。


ハンス・ベルティンク『イメージ人類学』(仲間裕子訳、平凡社、2014年10月)はまもなく発売。原書は、Bild-Anthropologie: Entwürfe für eine Bildwissenschaft (Wilhelm Fink Verlag, 2001; 2. Auflage, 2002)です。巻頭には、2011年の英語版に寄せられた序文を一部短縮し変更したものを訳した「日本語版への序文」が置かれています。ベルティンク(Hans Belting, 1935-;ベルティングとも)の訳書は、『美術史の終焉?』(元木幸一訳、勁草書房、1991年;The End of the History of Art?, University of Chicago Press, 1987)、『ドイツ人とドイツ美術――やっかいな遺産』(仲間裕子訳、晃洋書房、1998年;Die Deutschen und ihre Kunst: Ein chwieriges Erbe, C.H.Beck, 1992)に続く3冊目です。版元紹介文に曰く「美術史学を広くイメージの学として構想し直した理論的主著。美術作品、考古学、映画や広告、イメージの全てを対象とする学の誕生」と。人文学、芸術学、メディア理論を越境する刺激的な試みは、日本でもそれぞれの分野の研究者に影響を及ぼすことでしょう。


西川長夫・大野光明・番匠健一編著『戦後史再考――「歴史の裂け目」をとらえる』(平凡社、2014年10月)は発売済。昨年10月に逝去された西川長夫さんによる戦後史の批判的回想録と若手研究者との討議を1冊にまとめるのが当初の予定だったそうですが、ご病状悪化により計画が変更され、西川さんが残した原稿(第1章「戦後史再考」)のほか、13名の書き手が西川さんの問題提起に答えるかたちで寄稿する論文集となっています。共編者の大野さんと番匠さんは「おわりに」で戦後史を再考するという実践の内実について次のように説明しておられます。「矛盾と暴力を生みだしながら、同時にそれらを忘却する制度としての〈国民の歴史〉から可能な限り距離を取り、戦後史を生きた人々の動態的なありようを内在的に描く」(294頁)。「国民国家の再生産が立ちゆかなくなるような」破れや裂け目が戦後史にはあり、その記述の実践が「通史という制度」を揺さぶり変容を迫っている、ともお書きになっており、興味深いです。


クリスティン・ロス『68年5月とその後――反乱の記憶・表象・現在』(箱田徹訳、航思社、2014年11月)はまもなく発売。シリーズ「革命のアルケオロジー」の第3弾です。原書は、May '68 and Its Afterlives (University of Chicago Press, 2002)で、2008年に発表された雑誌論考「Managing the Present」が補遺として収録されています。ロスはニューヨーク大学比較文学部教授で、専門は近代フランスの文化と思想。これまで論文単位での翻訳はありましたが、単著の翻訳は今回が初めてです。本書は書名が示す通りフランス五月革命の研究に留まらず、それが歴史化されていく過程でもたらした様々な遺産を追った大著です。テレビメディアに台頭する新哲学派(ヌーヴォー・フィロゾフ)や、ここ20年間のオルタ・グローバリゼーション運動への影響関係も論じられています。著者は今月来日し、11月8日に早大で、11月14日に京大で講演を行います。詳しくはこちらをご覧ください。


アラン・コルバン『知識欲の誕生――ある小さな村の講演会1895-96』(築山和也訳、藤原書店、2014年10月)は発売済。原書は、Les conférences de Morterolles, hiver 1895-1896. A l'écoute d'un monde perdu (Flammarion, 2011)で、原題の直訳は「モルトロールの講演会――1895-1896年冬、ある失われた世界に耳を傾けて」。19世紀末にフランスの一小村で小学校教師のボモールが大人向けに語った全10回の講演の再現を通じて当時の村民たちの知識欲や知的環境について考察した意欲作です。ボモールは歴史、植民地建設、農業の進歩、祖国崇拝、労働の尊さについて講演したといいます。本書を出版後、コルバンはボモールが教壇に立っていたまさにその場所で講演することになり、聴衆の一人からボモールの生徒がつけていたノートを見せてもらう機会があったと「日本の読者へ」で初めて明かしています。コルバンの再現がどこまで史実に迫りえていたか、ぜひ現物を手にとってご確認ください。


現代思想 2014年11月号 特集=戦争の正体――虐殺のポリティカルエコノミー』(青土社、2014年10月)は発売済。西谷修・岡真理・土佐弘之の三氏による討議「「非戦争化」する戦争」をはじめ、イスラム国(ISIS)についての海外の論考二篇、さらには纐纈厚さんによる「集団的自衛権行使容認で自衛隊はどう変わるのか」や、岡真理さん編訳「ガザからの証言――爆撃下の生と表現」、マヌエル・デランダの「経済、コンピューター、戦争機械」(篠原雅武訳)など、注目の論考が満載です。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。今月末発売予定の次号は特集が「社会学の行方」。見田宗介、大澤真幸、市野川容孝、北田暁大、郡司ペギオ幸夫、ルーマン、エスポジトといった執筆者の名前が並んでおり壮観です。
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by urag | 2014-11-02 22:27 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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