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2014年 09月 14日

注目新刊:カルターリ『西欧古代神話図像大鑑[続篇]』八坂書房、ほか

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西欧古代神話図像大鑑[続篇]――東洋・新世界篇/本文補註/図版一覧
ヴィンチェンツォ・カルターリ著 ロレンツォ・ピニョリア増補 大橋喜之訳
八坂書房 2014年9月 本体4,800円 菊判上製440頁 ISBN978-4-89694-176-0

帯文より:拡大する西欧の万神殿に映り込む、日本の神仏、そして安土城の幻影・・・。ルネサンス以降、変容を重ねつつ読み継がれた神話概説書の代表的古典の、後代の増補部分をまとめた[続編]。ギリシア・ローマ神話を扱う正篇への補註のほか、日本の神仏、さらには安土城の一部を奇蹟的に描きとどめたとされる東洋・新世界篇など、バロック期の増補を完全収録。新図版100点余。正続両篇の図版を網羅し、全体の通覧に便利な[図版一覧]を併録!

★発売済。16世紀イタリアの文人ヴィンチェンツォ・カルターリによる『西欧古代神話図像大鑑――全訳『古人たちの神々の姿について』』(大橋喜之訳、八坂書房、2012年9月)の続篇です。いずれもロレンツォ・ピニョリアによるもので、「読者への序」、『古人たちの神々の姿について』の第二部「東西インドの神々」、同書への本文補注と追補を収めています。前作がカルターリによる正篇の全訳、今回のが17世紀前半にピニョリアによって編まれた新版で増補された部分=続篇の全訳というわけです。訳者による解題「ロレンツォ・ピニョリア版――変身する書物」のほか、付録としてイエズス会士の枢機卿アンリ・ド・ルバック(リュバックとも)による『仏教』(Aspects du bouddhisme, 1951)の抄訳(第13章「阿弥陀進行と往昔の宣教師たち」)と、ピニョリア版の図版一覧が併載されています。日本の仏像や神像の木図版は簡潔かつ素朴な転写で、少し西欧的なテイストが入っているもののおおよそは正確です。大橋さんの解説によれば、日本の神仏像が図版でヨーロッパで紹介されたのは本書が初めてになるそうです。ヨーロッパの神々とともに紹介されるそれらの図像の来歴に胸が躍ります。


新版アリストテレス全集(15)ニコマコス倫理学
神崎繁訳
岩波書店 2014年8月 本体6,000円 A5判上製函入536頁 ISBN978-4-00-092785-7

版元紹介文より:「徳」というソクラテス・プラトン以来の概念を周到に組み立てなおし、「倫理学」という一つの分野を創設した本書は、後世に多大の影響を及ぼしたのみならず、例えば行為論や道徳心理学の発想の源泉として、現代に哲学する人々に依然として読まれ議論され続けている。「人間的な事柄をめぐる哲学」の生き生きとした豊かな達成。

★発売済。新版全集第6回配本です。アリストテレスの3つの倫理学書「ニコマコス倫理学」「エウデモス倫理学」「大道徳学」(「大道徳学」は真作ではないとされることがあります)のうち、最大にして最重要である「ニコマコス倫理学」はこれまでも幾度となく翻訳されており、現在入手可能なものの中でも、本書のほかに高田三郎訳(『ニコマコス倫理学』上下巻、岩波文庫、1971年)や、朴一功訳(『ニコマコス倫理学』(京都大学学術出版会、2002年)があります。高田訳はもともと河出書房版「アリストテレス全集」や同社の「世界の大思想」シリーズに繰り返し収められていたものです。ちなみに岩波版旧全集では加藤信朗訳(第13巻、1973年)でしたが、こちらは文庫にはスイッチされていません。今回の新訳版は本全集の共編者であり、『西洋哲学史』(全4巻、講談社選書メチエ、2011~2012年)の責任編集を熊野純彦さんや鈴木泉さんとつとめられた神崎さんです。西洋史において体系的にまとめられた初めての倫理学書である「ニコマコス~」は、もともとは講義形式のもので、3つの倫理学書はそれぞれ独立した作品というよりは、内容や構成において重複する部分があります。神崎さんによる懇切な解説や「三倫理学書の対照表」がこの古典をあらためて理解する上で非常に参考になります。アリストテレスと現代人は時間的に非常に隔たった存在同士ですが、幸福、善、徳、責任、正義、友愛といったテーマは現代においてもなお滅びることはありません。「今日でも依然として「現役」の古典」と神崎さんが評しておられる通りで、社会人こそひもとくべき名著です。月報には岩田靖夫さんによる「アリストテレスの自然観からの視覚」と、加藤節さんによる「アリストテレスの影――近代哲学者との分岐と交錯と」を読むことができます。次回配本は11月、第2巻「分析論前書 分析論後書」です。


随想集
ベーコン著 
中公クラシックス 2014年9月 本体1,850円 新書判並製388頁 ISBN978-4-12-160150-6

帯文より:スコラ哲学流の演繹法を現実に即して帰納法に大転換した近代イギリス知の成果。経験論の源流。

★発売済。凡例によれば中公バックス版『世界の名著25 ベーコン』(1979年)所収の『随想集』をもとに編集したもの。「誤字脱字を補い、読みやすさをはかるために適宜に句読点、あるいは改行を施した」とのことです。『世界の名著』でのフランシス・ベーコン(1561-1626)の巻(函入上製版では第20巻で1970年刊)には「随筆集」「学問の発達」「ニュー・アトランティス」が収められていました。親本巻頭には責任編集を担当された福原麟太郎さんによる「ベーコンの生涯と思想」が併載されていましたが、今回のクラシックス版では一之瀬正樹さんによる解説「経験論の源流――ベーコン哲学から広がりいづる眺望」が巻頭に置かれています。1597年に初版が刊行された『随筆集』の日本語訳は本書のほかに、神吉三郎訳『ベーコン随筆集』(岩波文庫、1935年)や、渡辺義雄訳『ベーコン随想集』(岩波文庫、1983年)などがあります。成田訳『随筆集』は『世界の名著』シリーズに収録される前には、角川文庫(1968年)で刊行されたことがあります。「真理について」から「噂について(未完)まで59篇のエッセイが収められており、人間と社会をめぐる明快な論説が展開されています。人生経験と生活に根ざした知のありようは、数百年を経た今なお読み継がれて私たちを啓発してくれます。


◎日本教文社さんのデジタル・オンデマンド版新刊より

ユング著作集1 人間のタイプ』カール・グスターフ・ユング著、高橋義孝訳、日本教文社、2014年8月、本体2,500円、A5判並製326頁、ISBN978-4-531-02651-7 
ユング著作集4 人間心理と宗教』カール・グスターフ・ユング著、浜川祥枝訳、日本教文社、2014年8月、本体2,500円、A5判並製328頁、ISBN978-4-531-02654-8
W・ジェイムズ著作集1 心理学について――教師と学生に語る』ウィリアム・ジェイムズ著、大坪重明訳、日本教文社、2014年8月、本体2,700円、A5判並製358頁、ISBN978-4-531-02621-0
W・ジェイムズ著作集6 多元的宇宙』ウィリアム・ジェイムズ著、吉田夏彦訳、日本教文社、2014年8月、本体2,400円、A5判並製306頁、ISBN978-4-531-02626-5

★発売済。「世界屈指の心の思想家たち(エマソン、カーライル、ウイリアム・ジェイムズ、フロイド、ユング)の著作をオンデマンドで順次復刊」するという日本教文社さんのデジタル・オンデマンド・シリーズが始まっています。初回は上記4点のほか、『フロイド選集3 続精神分析入門』古沢平作訳、『フロイド選集17 自らを語る』懸田克躬訳、『エマソン選集5 美について』斎藤光訳、『エマソン選集6 代表的人間像』酒本雅之訳、『カーライル選集2 英雄と英雄崇拝』入江勇起男訳を加え、合計9点を復刊。巻末には月報も印刷されており、旧版の復刊ではありますが、古書の劣化を考えると買い直しておきたいシリーズとなっています。紙のカバーは付されておらず、その変わり透明なビニールカバーが掛けられています。このオンデマンド企画のラインナップは全42巻とも47冊とも記載されていますが(47点の候補があってそのうち42点を復刊するという意味なのでしょうか)、版元さんでは現在読者からの「早期復刊希望」のリクエストをウェブサイトで募集されています。順番はともかく、エマソン、カーライル、ジェイムズ、フロイド、ユングのそれぞれの選集を全冊復刊していただいても構わない気がします。

★電子書籍が少しずつ普及するに伴ってのことでしょうか、紙媒体でも徐々に名著の復刊があちこちで行われているのを見かけます。ここ最近では、清水書院さんの「Century Books 人と思想」シリーズの多数の新装版、ミネルヴァ書房さんの「ミネルヴァ・アーカイブズ」シリーズの新刊でピーター・ゲイの『自由の科学――ヨーロッパ啓蒙思想の社会史』(全2巻、中川久定ほか訳)、みすず書房さんの「始まりの本」シリーズの新刊ではホッファー『波止場日記』(森達也さんによる新しい解説付き)、金剛出版さんのPOD版新刊で安永浩『ファントム空間論』などが立て続けに発売されています。今後ますます復刊が充実すると良いなと思います。
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by urag | 2014-09-14 17:06 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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