2005年 06月 12日

今週の注目新刊(第8回:05年6月12日)

他社版元さんの新刊で、要チェックだなと感じた本を、毎週末、リストアップします。このほかにもたくさん素晴らしい本はありますが、自分がぜひ購読してみたいと思った書目に絞ります。

書誌情報の見方と配列は次のようになっています。

書名――副題
著者、訳者など
版元、本体価格、判型サイズ、頁数(本文, 本文とは別立ての巻末索引や巻頭口絵など)
ISBN、発行年月
■は、図書館流通センターさんや版元さんのデータを引用&活用した内容紹介。
●は、私のコメントです。

***

アースダイバー
中沢新一(1950-)著
講談社 本体1800円 タテ21cm 252p
4-06-212851-9 / 2005.05.
■縄文地図を片手に、東京の風景が一変する散歩の革命へ! 見たこともない野生の東京が立ち上がる。ママチャリに乗った「アースダイバー式」東京散歩へ。折込アースダイビング・マップ付き。『週刊現代』連載をまとめる。
●「ダイヴ」する、という実践用語は、中沢さんにとって昔からのキーワード。標的(ターゲット)との距離感が中沢さんの場合はきわめて「官能的」。それが読み手に対し、蠱惑的に作用するのではないかと思います。

カール・シュミットと現代
臼井隆一郎編
沖積舎 本体6800円 タテ20cm 438p
4-8060-3045-7 / 2005.06.
■極めて多面的な相貌を有する現代屈指の思想家カール・シュミットについて論じた、2003年に東京大学総合文化研究科で開催されたDESK(東京大学ドイツ・ヨーロッパ研究室)主催の国際シンポジウムの成果をまとめる。 DESKの刊行案内によれば、本書の目次は以下の通り。

Ⅰ 秩序
「決定と至高性」アレクサンダー・ガルシア・デュットマン 小森謙一郎訳
「レヴィヤタン解剖—イメージ・表象・身体」田中純
「カール・シュミットと終末論」長尾龍一

Ⅱ 政治
「国際関係論の理論家としてのカール・シュミット」ハラルド・クラインシュミット 川喜田敦子訳
「構成的権力論と反ユダヤ主義—力と法をめぐるシュミットとスピノザの邂逅」柴田寿子
「シュミットの正戦論批判再考」古賀敬太

Ⅲ 例外
「内戦:政治的絶対—シュミットとホッブズ」山田広昭
「法の外」ギル・アニジャール 藤岡俊博訳
「シュミットとアーレントのあいだ—もしくは敵なき例外状況」増田一夫

Ⅳ 神話
「ノモスとネメシス—シュミットとバッハオーフェン 文献学的関心から」臼井隆一郎
「名-乗る—カール・シュミットにおける名の理論に向けて」トーマス・シェスタク 磯忍訳
「救済を詩的言語に求めて—カール・シュミットと文学」ガブリエレ・シュトウンプ 臼井隆一郎訳

特別寄稿
「シュ・ダオリンによるシュミットの批判的受容」松平徳仁
「ラクー=ラバルト/カール・シュミットあるいは反復されるドイツ」大宮勘一郎

●ついに刊行ですね。先ごろ当ブログへのお問い合わせのあったデュットマン氏の講演論文も収録。

ポンペ化学書――日本最初の化学講義録
ポンペ(1829-1908)述 芝哲夫訳
化学同人 本体5000円 タテ22cm 202,26p
4-7598-0997-X / 2005.06.
■オランダ人軍医ポンペは、日本の化学の黎明期に絶大なる影響を与えたといわれている。2000年に発見された、ポンペによる日本最初の化学の講義録「朋百舎密書」を翻訳。日本の化学史上きわめて貴重な資料。欧文タイトル:Pompe scheikunde. 著者のポンペは南オランダ(現ベルギー)生まれの軍医で、幕末の日本に高い水準の西洋医学をもたらした。
●当時のオランダは日本に色々な学術文化を与えてくれました。「蘭学事始」だけではないわけです。2000年になってから講義録が発見されたというのがすごい。

地球の歴史を読みとく――ライエル「地質学原理」抄訳
ライエル著 大久保雅弘訳著
古今書院 本体4700円 タテ23cm 256p
4-7722-5100-6 / 2005.06.
■地質学の古典であるライエル著「地質学原理」を抄訳。3巻にわかれた合計1200ページの大著を約4分の1に縮約し、コメントを付して紹介する。巻末に原著の目次を収録。版元さんの紹介ページによれば、目次は以下の通り。

序 章: 三枚の巻頭図は語る -斉一主義の着想と証拠
第1章: 地球には長い歴史があった -地質時代を発見するまで
第2章: 時代とともに気候は変わる -いまよりも暖かかったころ
第3章: 地表の姿を変える水の流れ -河川の侵食と堆積作用
第4章: 陸地をけずる海水のはたらき -海の侵食と堆積作用
第5章: 大地を動かした根源は火成作用である -地球発展の原動力
第6章: 地震の痕跡あれこれ -知られていた液状化現象
第7章: 変異する生きものたち -生物界におこった変化
第8章: 生物の拡散と死後の埋没 -地理上の広がりと環境の変化
第9章: 珊瑚礁の土台は海底火山か -画期的な成因論の草分け
第10章: 第三紀をたずねる旅 -標準層序の確立
第11章: 年代区分の尺度は貝化石である -標準化石は経験の産物
第12章: 後期鮮新世の代表はエトナ火山だ -火山の構造
第13章: 前期鮮新世の地層と火山岩 -鮮新世を二分する
第14章: ヨーロッパの中新世の地層 -拡大した海域を追って
第15章: 始新世は盆地形成からはじまる -パリー盆地の層序
第16章: 第二紀およびそれ以前の地層 -未調査地域が多すぎる
第17章: 第一紀の内成岩とその役割 -深成作用と地殻変動
付 録: 原著の目次

●ダーウィン進化論に大きな影響を与えたという、イギリスのチャールズ・ライエル卿(1797-1875)による『地質学原理Principles of Geology』全3巻(1830-1832)の抄訳。ライエル卿自身は、進化論を認めなかったらしい。

司書――宝番か餌番か
ゴットフリート・ロスト(1931-)著 石丸昭二訳
白水社 本体2800円 タテ20cm 230,15p
4-560-00791-8 / 2005.06.
■書物の収集はいかに権勢や富と深く関わっていたか――純然たる図書館史に終らず、著者の豊富な逸話と図版、機知と諧謔を交えて「一筋縄でいかぬ職業」司書の過去と現在を語る。1994年刊の新装復刊。著者は1931年ライプツィヒ生まれ。19歳で旧東独国立図書館の臨時職員となり、後に学術司書の資格、哲学博士の学位を取得。東西ドイツ統合に伴い「ドイツ図書館」の館長となる。
●図書館と国家政策、典籍蒐集と「スノビズム資本主義」。書棚の闇は深いのですね。


★注目の新書・文庫

方法叙説
ルネ・デカルト(1596-1650)著 三宅徳嘉+小池健男訳 養老孟司解説
白水社(白水Uブックス1082) 本体680円 タテ18cm 148p
4-560-72082-7 / 2005.06.
■すべての先入観を排し既成の知識を徹底して疑ったとき、「そう考えている私は何かでなければならない」という確固たる原理の発見。全近代思想の原点となった名著。1991年刊「方法叙説/省察」から「方法叙説」を抜き出す。
●養老さん解説というのがミソ。養老さんとデカルトの「相性」は抜群でしょう。これまでたびたび言及されています。簡潔でわかりやすく、スピード感もあって知的に高密度な養老さんの文体が多くの読者を惹きつけているのは、納得できることです。

人間不平等起原論 社会契約論
ルソー著 小林善彦+井上幸治訳
中央公論新社(中公クラシックスW43) 本体1600円 タテ18cm 428p
4-12-160079-7 / 2005.06.
■ルソーには近代の全てがあるといわれる。大革命の先駆をなした詩人思想家の2つの代表的民主主義理論。
●中公クラシックスは大好きです。でもクラシックスで改訂するからといって、「世界の名著」や「日本の名著」のバックス版は切らさないでほしかった。これ切実な願い。

象は世界最大の昆虫である――ガレッティ先生失言録
ガレッティ(1750-1828)述 池内紀編訳
白水社(白水Uブックス1079) 本体900円 タテ18cm 218p
4-560-07379-1 / 2005.06.
■「水は沸騰すると気体になる。凍ると立体になる」「カエサルはいまわのきわの直後に死んだ」 18世紀末から19世紀初頭のドイツの高校で教壇に立っていた名物教授が残した、想像を絶する「名」失言の数々。1992年刊の再刊。著者のガレッティはドイツ・アルテンブルク生まれ。ゲッティンゲン大学で法律・地理・歴史を学ぶ。ゴータ・ギムナージウム教授。引退後は著作執筆に励んだ。
●同じ訳者による『リヒテンベルク先生の控え帖』(平凡社ライブラリー)と一緒に愉しんでみましょう。一方は天才の警句、他方は凡才の駄弁?

命に値段がつく日――所得格差医療
色平哲郎(1960-)+山岡淳一郎著
中央公論新社(中公新書ラクレ181) 本体760円 タテ18cm 216p 
4-12-150181-0 / 2005.06.
■患者の満足を忘れていないか? 「医療の市場化」が日本に導入されようとしている。過疎の村で奮闘する異色の医師が、それがもたらす「所得格差医療」に警鐘を鳴らすとともに、公平な医療とは何かを鋭く問いかける。著者の色平哲郎氏は1960年神奈川県生まれ。長野県南佐久郡南相木村診療所長、内科医。
●「医療機構そのものが健康に対する主要な脅威になりつつある」とイリイチは『脱病院化社会』(1976年、日本語訳は1979年、晶文社)に書いて、医療万能幻想を糾し、一方でアリエスは『死を前にした人間』(1977年、日本語訳は1990年、みすず書房)において「もはや社会全体の中に死の場所は一カ所しかない。病院がそれである」と書いて、死を我が物にできなくなってきている現代人の倒錯を指摘しました。そして今や私たちは……。

声と現象
ジャック・デリダ著 林好雄訳
筑摩書房(ちくま学芸文庫) 本体1300円 タテ15cm 334p
4-480-08922-5 / 2005.06.
●本書については先般も取り上げました。原著1998年第2版の翻訳です。

不屈のために――階層・監視社会をめぐるキーワード
斎藤貴男著
筑摩書房(ちくま文庫) 本体740円 タテ15cm 302p
4-480-42093-2 / 2005.06.
■「日本人を騙す39の言葉」(青春出版社、2003年刊)の改題。
●岩波新書の「安心のファシズム」刊行以来、ますます読者層が拡大されてきた観のある斉藤さんの旧著の文庫化です。

絵本徒然草(上・下)
吉田兼好=原著 橋本治(1948-)=文 田中靖夫=絵
河出書房新社(河出文庫) 本体各720円 タテ15cm 上:271p 下:285p
上:4-309-40747-1 下:4-309-40748-X / 2005.06. 
■「桃尻語訳枕草子」で古典の現代語訳の全く新しい地平を切り拓いた著者が、中世古典の定番「徒然草」に挑む。名づけて「退屈ノート」。訳文に加えて傑作な註を付し、鬼才田中靖夫の絵を添えた新古典絵巻。
●日本の学校教育ではだいたい中学生の時分から「徒然草」を学ぶわけですが、そもそも「徒然草」の魅力は少なくとも35歳を過ぎたオジサンやオバサンになってからじゃないとわからないと思いますよ、私の実感としては。同じく河出文庫の佐藤春夫による現代語訳「徒然草」もとてもいい本です。

***
以上、今回は1122点の新刊のなかから、単行本5冊、新書・文庫7冊を選びました。(H)
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by urag | 2005-06-12 23:19 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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