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2014年 07月 06日

注目新刊:『HAPAX』第2号、夜光社よりついに刊行、ほか

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HAPAX VOL.2
夜光社 2014年6月 本体1,200円 46変形判184頁 ISBN978-4-906944-04-0

目次:
われわれはスラムの戦争をつくりだす/HAPAX
ゾミア外伝/〔無記名〕
逃散と共鳴り/高祖岩三郎
流動的-下層-労働者/友常勉
傷んだ肉と野菜くずの蟹漬け〔ケジャン〕――あるいは水管の咆哮/影丸13号
経験的戦前映像論/Takun!
待機経路:進行中の危機と2011-13年の階級闘争/エンドノーツ#3
内戦の倫理/ティクーン
レッツ・ビカム・デンジャラス――黒いインターナショナルの拡散のために/炎上細胞共謀団FAI/IRF収監メンバー細胞
黒い死装束――労働、肉、形式について/エヴァン・カルダー・ウイリアムス

★発売済。昨年9月に刊行された創刊号(VOL.1)では「編集:HAPAX」「発行:夜光社」と奥付に記載されていましたが、今回の第二号では「発行:HAPAX」「発売:夜光社」となっており、さらに「装幀組版:Fiasko」ともクレジットされています。前号では実名による寄稿は高祖さんのみでしたが、今回は高祖さん、友常さん、ウイリアムスさんとお三方が実名。しかしそもそも実名か匿名かの違いが『HAPAX』の価値を決めているのではありません。本誌は海外の協働的な集団知性――エンドノーツやティクーン、犯罪学発展協会、FAI/IRF収監メンバー細胞、等の言論活動を日本語でアクセス可能なものにし、有名無名に依らない(名前の権力に由来しない)批判的空間を拓こうとしています。「もう、誰にも動員されたくないあなたのための思想誌」を標榜する『HAPAX』は、踊らされるな、踊れ、と読者に教えているわけです。同時代を共有する偶然性の出会いの雨、それが『HAPAX』なのだと思います。


現代思想の時代――〈歴史の読み方〉を問う 
大澤真幸・成田龍一著
青土社 2014年6月 本体2,200円 四六判上製256頁 ISBN978-4-7917-6799-1

帯文より:雑誌『現代思想』が創刊された70年代から現在までの社会/思想の推移の検証を、その特集と営みを補助線としてながら考察し、これからの歴史の読み方を鋭く問う。歴史が終わり、思想が始まる。3・11以後、私たちの新たな展望を拓いていくために。

目次:
はじめに(成田龍一)
1 「理想」の終焉、「虚構」の胎動:1973-1995
2 回帰する不可能な〈歴史〉:1995-2011
3 3・11以後と〈世界史〉の哲学:2011-
おわりに(大澤真幸)
特集総覧

★発売済。『現代思想』誌創刊40周年を記念して行われた公開対談2本に加筆再構成を施し、さらにもう1本未発表の対談を加えたのが本書です。第一章は、2012年8月1日に池袋コミュニティ・カレッジで行われたリブロ池袋本店主催のトークイベント「現代思想40年の軌跡と展望」が元になっており、『現代思想』2013年1月号に掲載されました。第二章は、2013年1月29日にジュンク堂書店池袋本店で行われた同名のトークイベントが元になっており、「普遍とリアル」と改題されて同誌2014年1月号に掲載されています。ジュンク堂のイベントはYouTubeのチャンネル「junkuTV」でご覧になれます。第三章は、2013年10月2日に青土社で収録された対談が元になっています。巻末は「『現代思想』特集総覧」で、1973年1月号の創刊から2014年7月号の最新号に至るまでの特集名が列記されています。特集名を列記するだけで11頁にもなりますから、すべての号の目次詳細を記すことは無理だったようです。

★『現代思想』の軌跡を辿ることはそのまま70年代以降の日本史を振り返ることにも繋がっており、本書は研究者のみならず、人文書担当者が「今はなき書棚の記憶(現在の書棚生成へと繋がる文脈の歴史)」を学ぶ上で絶好の読本ともなっています。1992年から2010年までの最も長い期間、編集長を務められた池上善彦(いけがみ・よしひこ:1956-)さんの編集後記をまとめた『現代思想の20年』(以文社、2012年)との併読をお薦めします。また大澤さんの『虚構の時代の果て――オウムと世界最終戦争』(ちくま新書、1996年;増補版、ちくま学芸文庫、2009年)や『不可能性の時代』(岩波新書、2008年)をお読みになると、池上編集長時代とほぼ重なる日本社会の構図が見えてくると思われます。『現代思想』一誌だけでも話者によっては異なる切り口が出てくるはずですから、語りつくせぬ歴史への肉迫が今後も続いてほしいと願わずにはいられません。



ピア――ネットワークの縁から未来をデザインする方法
スティーブン・ジョンソン著 田沢恭子訳
インターシフト発行 合同出版発売 2014年7月 本体1,800円 46判並製240頁 ISBN978-4-7726-9541-1

帯文より:次の社会はピアに変わる! 動かす主役はあなただ。いま、ここから、始まるイノベーション。ピアつながりで、未来を変える! ピア(PEER)は、対等な仲間のような関係。そのネットワークが劇的に社会を変えていく。この大変動は、従来の社会の中心ではなく、縁(エッジ)から生まれ、あなたも主役になる。

★発売済。目次詳細は書名のリンク先でPDFが公開されています。原書は、Future Perfect: The Case for Progress in a Networked Age(Riverhead, 2012)です。スティーヴン・ジョンソンはアメリカの著名なコラムスニト、科学ジャーナリストで、これまでの訳書に以下のものがあります。

2013年08月『イノベーションのアイデアを生み出す七つの法則』松浦俊輔訳、日経BP社
2007年12月『感染地図――歴史を変えた未知の病原体』矢野真千子訳、河出書房新社
2006年10月『ダメなものは、タメになる――テレビやゲームは頭を良くしている』乙部一郎監修、山形浩生・守岡桜訳、翔泳社
2004年09月『マインド・ワイド・オープン――自らの脳を覗く』上浦倫人訳、ソフトバンククリエイティブ
2004年03月『創発――蟻・脳・都市・ソフトウェアの自己組織化ネットワーク』山形浩生訳、ソフトバンククリエイティブ

★特に『イノベーションのアイデアを生み出す七つの法則〔Where Good Ideas Come from: The Natural History of Innovation〕』は、TED Talk 2010でのプレゼン「良いアイデアはどこで生まれる?」をご覧になって手に取られた方もおられることと思います。とかくこうした話題やキーワードは類書を多数生みだしてビジネス書売場に玉石混交の洪水をもたらすため、警戒心を持っている読者もいらっしゃることでしょう。しかし好き嫌いは脇に置いてまずはTEDのプレゼンをご覧になってください。少しでも興味を感じた方なら著者の最新作である『ピア』も面白く読めるはずです。知的財産や情報を囲い込んで保護するのではなく、開放して他と繋がることの方がはるかに有益に社会を発展させるのだという「ピア進歩主義」の考え方を学べるのではないかと思います。ジョンソンはリキッド・デモクラシーという言葉を使うのですが、ここで言うリキッドはジグムント・バウマンが言うような否定的な意味での「液状化」ではなく、肯定的な意味での「流動性」です。ピア・ネットワークに未来社会の可能性を託す本書の主張はともすると過剰接続の弊害をも知っている現代人からすれば楽観的に見えるかもしれませんけれども、これまで多くの読者に、自分自身も参加できる新しい社会像を垣間見せてきたことも確かです。なお『ピア』について著者自身がハーヴァード・ブックストアやグーグル・ニューヨークで語った様子を動画でご覧になることができますので、ご参考になれば幸いです。




経済学(ブックガイドシリーズ 基本の30冊)
根井雅弘編
人文書院 2014年7月 本体1,800円 4-6判並製216頁 ISBN978-4-409-00110-3

帯文より:数式だけが経済学ではない! ベテランから若手まで多彩な執筆陣による、経済学の多様な思想と可能性を示す、バランスのとれた30冊。

★まもなく発売(7月4日取次搬入済)。「ブックガイドシリーズ 基本の30冊」の記念すべき第10弾になります。「現代経済学の夜明け」「マクロ経済学の展開」「ミクロ経済学の展開」「異端の経済学」「市場経済の思想」の5部構成で、編者によるまえがきによれば「マクロ、ミクロの分野を問わず、現代経済学の形成に大きな影響を及ぼした」古典を「現代経済学の夜明け」で扱い、続いてマクロとミクロの二科目の基本を主要な名著から学びます。「異端の経済学」ではミクロやマクロのいわば「主流派の思考法ばかりを学んでいると、いつの間にかその「死角」や「限界」が見えなくなる恐れがあるため、〔・・・〕主流派経済学に批判的な視点を打ち出した名著を取り上げて」います。具体的に言えば、ヴェブレン『有閑階級の理論』(ちくま学芸文庫、岩波文庫など)、ガルブレイス『ゆたかな社会』(岩波現代文庫)、ロビンソン『資本蓄積論』(みすず書房)、スラッファ『商品による商品の生産』(有斐閣)、コモンズ『集団行動の経済学』(文雅堂銀行研究社)、ミュルダール『アジアのドラマ』(東洋経済新報社)です。最後の「市場経済の思想」では、経済学と思想・哲学の関係が「比較的明確にわかる名著」を取り上げています。スミス、マルクス、ケインズ、ポランニー、ハイエク、フリードマンです。

★本書を手掛けた編集者のMさんは同じく近刊の家近良樹『老いと病でみる幕末維新』も担当されています。こちらは7月10日取次搬入。家近先生は大阪経済大学教授で幕末史がご専門。本書の帯文はこうです。「日本史上もっとも波瀾に満ちた幕末維新の日々を、人びとはどう生き、何を考え行動し、老い、病み、死んでいったのか。徳川慶喜、孝明天皇などの権力者をはじめ、九州小倉の無名の庄屋・中村平左衛門まで、その人生を、老いと病の視点から捉え直し、存在の奥底にまで迫る歴史学の新たな試み。大病を患った著者自身の経験があったからこそなしえた、ベテラン研究者による円熟の成果」。「その歴史は人びとの体調のせいで変わったかもしれない」という謳い文句が大いに興味をそそります。


月の裏側――日本文化への視角
クロード・レヴィ=ストロース著 川田順造訳
中央公論新社 2014年7月 本体2,000円 四六判上製168頁 ISBN978-4-12-004424-3

帯文より:20世紀後半の思想界をリードした知の巨人は、かくも深く日本を理解し、そして愛した。人類学者の眼差しが捉えた日本、日本人、日本文化。

目次:
序文(川田順造)
世界における日本文化の位置
月の隠れた面
因幡の白兎
シナ海のヘロドトス
仙厓 世界を感受する芸術
異様を手なずける
アメノウズメの淫らな踊り
知られざる東京
川田順造との対話
出典
著者紹介

★まもなく発売。原書は、L'autre face de la lune: Éctrits sur le Japon(Seuil, 2011)です。原書にも掲載されている川田先生の「序文」によれば「本書は、未刊の文章、学問的な刊行物、いくつかは日本だけで印刷されたものも含めて、1979年から2001年のあいだに書かれた多様な文章を、初めて集めたもの」です。収録された文章のうち、「世界のおける日本文化の位置」「因幡の白兎」「アメノウズメの淫らな踊り」「知られざる東京」は雑誌や論集、年報等で日本語訳が掲載されたことがあります。「アメノウズメ~」は「サルタヒコ神についての若干の考察」と題されていました。「知られざる東京」は、中公クラシックス版『悲しき熱帯』(川田順造訳、2001年、全2巻)に寄せられた序文です。ちなみに同書には別訳『悲しき南回帰線』(上下巻、室淳介訳、講談社学術文庫、1985年)がありますが、「知られざる東京」は中公クラシックス版と本書『月の裏側』でしか読めません。最後の「川田順造との対話」はもともとNHK「ETV特集」のために1993年にパリで収録され、4月に第1回「自然・人間・構造」、第2回「日本への眼差し」の2部構成で放映されたもので、本書では第2回の方が収録されています。レヴィ=ストロースの日本びいきはつとに知られていますが、本書で遺憾なく発揮されている日本文化への造詣の深さには誰もが驚くのではないかと思います。

★中央公論新社さんの注目新刊にはほかにも次のものがあります。つい先日発売されたカトリーヌ・ブルガン/ピエール・ダルリュ『遺伝子の帝国――DNAが人の未来を左右する日』(林昌宏・坪子理美訳)や、まもなく発売となる後藤絵美『神のためにまとうヴェール――現代エジプトの女性とイスラーム』です。前者の帯文にはこうあります。「遺伝子が示すのは確率でしかなく、宿命ではない。DNAの科学的、経済的、政治的、社会的側面の検証」。原著『ADN superstar ou superflic ?』はフランスのSeuilから昨年刊行されています。後者の版元紹介文はこうです。「イスラーム社会の後進性の象徴とされてきたヴェール。ところが、21世紀のエジプトで女性たちが自らそれを着用し始めた。彼女たちに何があったのか。豊富な資料をもとに心理と論理に迫る」。同書は2011年に東京大学に提出された博士論文に加筆修正を行ったものです。二著ともそれぞれの分野で必要とされる研究書として迎えられるに違いありません。
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by urag | 2014-07-06 20:50 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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