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2014年 06月 22日

注目新刊:晶文社版吉本隆明全集第2回配本第7巻、ほか

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吉本隆明全集7 [1962‐1964]
吉本隆明著
晶文社 2014年6月 本体6,300円 A5判変型上製636頁 ISBN978-4-7949-7107-4

帯文より:長く深い時間の射程で考えつづけた思想家の全貌と軌跡。重厚な評論「丸山真男論」と「日本のナショナリズム」を中心とする、1962年1月から1964年12月の間に発表された論考と詩を収める。第2回配本。

★まもなく発売。第1回配本(2014年3月)に続く第2回配本は第7巻。目次詳細は書名のリンク先か、吉本隆明全集特設サイトをご覧ください。単行本未収録原稿は二篇(「宍戸恭一『現代史の視点』」「中村卓美『最初の機械屋』」二段組でともに590頁に収録)で、月報には加藤典洋「うつむき加減で、言葉少なの」と、ハルノ宵子「じゃあな」が収録されています。ハルノさんのエッセイは隆明さんが臨終を迎える時の家族の絆についてかかれたもので、あっさりした書き方ですが胸に迫るものがあります。第1回配本の際は大型書店で吉本隆明全集刊行記念フェア「吉本隆明のDNAをどう受け継ぐか」が開催されました。内田樹さん、中沢新一さん、茂木健一郎さん、宇野常寛さんが選書されたリストや、フェアの店頭風景を特設サイトでご覧いただくことができます。吉本さんの読者層は幅広いですから、前回開催できなかった書店さんでは今回の第二回配本にあわせてたとえば「丸山真男と吉本隆明」フェアを展開されるのも良いかもしれません。次回配本は9月、第4巻(1952-1957)とのことです。


視覚文化「超」講義
石岡良治(いしおか・よしはる:1972-)著
フィルムアート社 2014年6月 本体2,100円 四六判並製336頁 ISBN978-4-8459-1430-2

帯文より:映画、ゲーム、アニメ、PV、アート、CG、マンガ・・・ハイカルチャー/ポップカルチャーの枠組みを超えて視覚文化を語る! 動画以降の世紀を生きるための、ポピュラー文化のタイム・トラベル。

推薦文(國分功一郎、巻末特別対談より):「文化の民主化」が徹底されつつある今、まさに必読の書が現れた。
推薦文(宇野常寛):伝説の男が、「日本最強の自宅警備員」と呼ばれるあの男がついにその重い腰を上げた……! 本書をもって世界は知ることになるだろう、本物の知性と本物の情熱の存在を。そして、石岡良治氏だけが両者をあわせもつことを。

★まもなく発売。國分功一郎(1974-)、宇野常寛(1978-)、千葉雅也(1978-)といった同世代の第一線で思考する若手各氏から、その鋭い分析力が常に高く評価されてきた批評家の待望のデビュー作です。視覚文化(特にポピュラー文化)をテーマに2014年2月から4月、フィルムアート社で行われた講義を全5回にまとめたもの。巻末には國分功一郎さんとの特別対談「新しい時代のための、視覚文化をめぐる哲学」が収録されています。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。「超」講義と題されたのは、本書が視覚文化を論じる際に「時代と対象領域の広がりを重視」(4頁)し、「分野の横断性を強く意識」(同)しつつ、「複数の速度、複数の歴史を「ギアチェンジ」していくモデル」(10頁)を追求する、その姿勢ゆえではないかと思います。芸術批評の分野で2014年におそらくもっとも注目される新刊として話題を呼びそうです。書店員さんは巻末の参考文献にぜひ目を通してみてください。本書が扱っている議論の広がりに触発されることだろうと思います。


キリストの顔――イメージ人類学序説
水野千依著
筑摩叢書 2014年6月 本体2,000円 四六判並製400頁 ISBN978-4-480-01601-0

帯文より:究極の禁忌と欲望。その不可能なる肖像を彼らはいかにして描きえたのか。西洋思想の根幹に触れるイメージ生成の謎に迫る。

目次:
はじめに
第一章 失われた顔を求めて――キリストの肖像前史
第二章 マンディリオン伝説の構築――東方正教会における「真の顔」
第三章 マンディリオンの表象――東方における聖像論
第四章 複製される神聖空間
第五章 ラテラーノ宮殿の救世主の肖像――ローマのアケイロポイエトス
第六章 ヴェロニカ伝説の構築――西方世界における「普遍的教会の象徴」
第七章 ヴェロニカの表象――信仰と芸術のはざまで
第八章 キリストのプロフィール肖像――構築される「真正性」と「古代性」
おわりに――イメージ人類学に向けて

あとがき
参考文献
掲載図版一覧
人名索引

★発売済。第一作『イメージの地層――ルネサンスの図像文化における奇跡・分身・予言』(名古屋大学出版会、2011年)で第34回(2012年度)サントリー学芸賞を受賞した著者による待望の第二作です。まえがきによれば本書は「西洋キリスト教という文化圏にフィールドを限定し、歴史的にもっとも覆われ隠されつつも特権化され格別の崇敬を受けてきたイメージ、すなわり「キリストの顔」を対象に、「見るなの禁」のメカニズムを一考するとともに、キリスト教における表象の論理を堀り下げ」るもので(15頁)、「到達不可能なキリストの顔に接近する長い歴史を追うことで、キリスト教文化におけるイメージの論理を歴史人類学的視座から捉え直すことを試み」ています(18頁)。マンディリオンというのはイエスが自身の顔を拭いた布がそのままイエスの肖像となった聖顔布のことで、「人の手によらざる(アケイロポイエトス)」イメージ、キリスト自身の奇蹟の力によって生みだされた真正なる肖像という権威が備わっていました。「キリスト自らが想像したのならば偶像ではない」(52頁)というわけです。ローマのラテラーノ宮殿の救世主像や、聖ヴェロニカがイエスの血と汗を拭った聖顔布も、アケイロポイエトスの例です。見てはならないものを見えるものにするという聖なるイメージのパラドクスの歴史に迫り、イメージ人類学への道のりを示す力作です。


思想史の名脇役たち――知られざる知識人群像
合田正人著
河出ブックス 2014年6月 本体1,700円 B6判並製288頁 ISBN978-4-309-62472-3

帯文より:カミュに「作家になること」を決意させた人とは? アランが敬愛した先生とは? ベルクソン、ヴェイユ、ドゥルーズ、ガタリ、ラカン、デリダ、コント、バシュラール・・・彼らが愛した人物たちに光を当て、新たな思考の場へ――。

目次:
ランナバウト
ジャン・グルニエ
シャルル・ルヌヴィエ
ジュール・ラニョー
ジャン・ポーラン
ユージェーヌ・ミンコウスキー
ガブリエル・マルセル
ジャン・ヴァール
レオン・ブランシュヴィック

★発売済。フランス19-20世紀哲学史のある意味での「陰の部分」を扱う非常に啓発的な入門書です。「これから取り上げる思想家たちは決してマイナーな思想家ではない。けれども、ベルクソンという巨星の陰に彼らが多少なりとも隠されてきたことは間違いない。隠されつつも、彼ら自身、不連続性、言語、非人間的なもの、オリエント、媒介、空間、知性などの諸点についてベルクソンと対決した。ベルクソンはベルクソンで、シャルル・ルヌヴィエと対決した。しかし、その対決の意義が探られることはほとんどなかった。のみならず、例えばジャン・グルニエは、グルニエであるよりもむしろ「カミュの先生」である。ジュール・ラニョーも「アランの先生」である。いや、「アランの先生」としてさえ認知されていないかもしれない。ガブリエル・マルセルはサルトルによって乗り越えられた宗教哲学者にとどまっている。レオン・ブランシュヴィックはソルボンヌの「番犬たち」のひとりにすぎず、ジャン・ヴァールも実存主義の紹介者でしかない。精神医学の分野でこの数十年ユージェーヌ・ミンコウスキーのことが語られたことはほとんどない。大物編集者ジャン・ポーランの言語論を支えるマダガスカル経験を本質的なものとみなす論者もほとんどいない。ドゥルーズやリオタールやアラン・バデュの訳堂には、フランソワ・シャトレという存在が不可欠だったのではないか」(7頁)。「錆びた金属が旋盤にかけるとぴかぴか輝きだすように、彼らの著作は、私たちが未だ答えを見出していない最先端の、そして最も日常的な数々の問いの探求へと私たちを巻き込む力をいささかも失っていない。「来るべき書物」であり、「明日の哲学」への序曲なのだ」(7-8頁)。哲学史の細部への目配りを絶えず怠らなかった合田さんならではのたいへん魅力的な「星座の書」です。


黄泉の河にて
ピーター・マシーセン著 東江一紀訳
作品社 2014年6月 本体2,600円 46判上製272頁 ISBN978-4-86182-491-3

帯文より:「マシーセンの十の面が光る、十の周密な短編」――青山南氏推薦! 「われらが最高の書き手による名人芸の逸品」――ドン・デリーロ氏激賞! 半世紀余にわたりアメリカ文学を牽引した作家/ナチュラリストによる、唯一の自選ベスト作品集。

★発売済。今年4月に逝去したアメリカの作家の自選短篇集です。収録作品と執筆年は以下の通りです。「黄泉の河にて」1985年、「流れ人」1957年、「五日目」1951年、「セイディー」1950年、「センターピース」1951年、「季節はずれ」1953年、「アギラの狼」1958年、「馬捨ての緯度」1959年、「薄墨色の夜明け」1963年、「ルムンバは生きている」1988年。1998年に書かれた著者あとがきによれば、「作家として駆け出しの1950年代に、30篇近く書いて以来、わたしはめったに短篇を書かなくなっていた」とのことで、60年代以後は20年にわたって短篇が書かれていなかったものの、「最近、〔・・・〕初期のものよりかなり長く、かつ野心的な短篇を二篇仕上げた」と述べています。本書にはデリーロだけでなく、ウィリアム・スタイロンやジム・ハリソンも熱烈な賛辞を捧げていますマシーセンの新刊は『インディアン・カントリー』(上下巻、中央アート出版社、2003年)以来約10年ぶり、小説に限って言えば、早川書房より1992年に刊行された『ワトソン氏を殺す』『神の庭に遊びて』から約20年ぶりの新刊になります。


論語集注2
朱熹著 土田健次郎訳注
東洋文庫 2014年6月 本体2,900円 全書判上製函入396頁 ISBN978-4-582-80841-4

帯文より:宋学の『論語』解釈の精髄を集約した朱熹『集注』に、反朱子学の仁斎、さたに仁斎も批判する徂徠が果敢に挑む。『論語』解釈をめぐる中国と日本の儒学思想史上の白熱した議論を再現。

★まもなく発売。全4巻のうちの第2回配本第2巻。巻三の「公冶長第五」「雍也第六」、巻四の「述而第七」「泰伯題八」が収録されています。仁斎や徂徠の議論は集注への補説として随所で紹介されています。会員制の東洋文庫読者倶楽部では今般会報「東洋文庫通信」第2号を発行されました。『論語集注』の訳者、土田先生による「経学の世界」というエッセイが2頁にわたって掲載されているほか、森まゆみさんによる「私のオススメの一冊」として、モース『日本その日その日』が紹介されています。また会員が投票に参加できる東洋文庫のリクエスト復刊の案内も会報に同封されていました。『論語集注2』で通算850巻を数える東洋文庫の約半数が品切とのことで、書店さんでの復刊フェアも予定されているそうです。出来上がったばかりの解説目録2014年版と会員に配布された「品切書目一覧」を交互に見ながら、あらためて東洋文庫の半世紀にわたる長い道のりに思いを馳せたいと思います。

★平凡社さんの6月の新刊ではこのほか、森美術館をはじめ来年半ばまで名古屋、沖縄、高知を巡回する美術展のカタログ『ゴー・ビトゥイーンズ展――こどもを通して見る世界』(森美術館編、本体2,500円、A4変型判並製192頁、ISBN978-4-582-20674-6)や、フランスの絵本作家による『不思議の国のシロウサギかあさん』(ジル・バシュレ著、いせひでこ訳、本体A4変型判上製32頁、ISBN978-4-582-83653-0)がまもなく一般発売開始となります。

by urag | 2014-06-22 23:15 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)


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