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2014年 06月 01日

土曜社よりマヤコフスキー叢書が創刊!

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ズボンをはいた雲(マヤコフスキー叢書1)
マヤコフスキー著 小笠原豊樹訳 入沢康夫序文
土曜社 2015年5月 本体952円 ペーパーバック判(172×112mm)並製96頁 ISBN978-4-907511-01-2

版元紹介文より:ぼくの精神には一筋の白髪もない! 戦争と革命に揺れる世紀転換期のロシアに空前絶後の青年詩人が現れる。名は、V・マヤコフスキー。「ナイフをふりかざして神をアラスカまで追い詰めてやる!」と言い放ち、恋に身体を燃やしにゆく道すがら、皇帝ナポレオンを鎖につないでお供させる。1915年9月に友人オシップ・ブリークの私家版として1050部が世に出た青年マヤコフスキー22歳の啖呵が、世紀を越えて、みずみずしい新訳で甦る。

目次:
一 マヤコフスキー『ズボンをはいた雲』讃(入沢康夫)
二 ズボンをはいた雲 四畳み聖像
三 訳者のメモ(小笠原豊樹)

マヤコフスキー叢書(全15巻予定)
ズボンをはいた雲
悲劇ヴラジーミル・マヤコフスキー
背骨のフルート
戦争と世界
人間
ミステリヤ・ブッフ
一五〇 〇〇〇 〇〇〇
ぼくは愛する
第五インターナショナル
これについて
ヴラジーミル・イリイチ・レーニン
とてもいい!
南京虫
風呂
声を限りに

★発売済。マヤコフスキー叢書(全15巻予定)の創刊です。訳者はロシア文学研究家で、翻訳家、詩人(岩田宏名義)の小笠原豊樹(おがさわら・とよき:1932-)さんです。小笠原さんは1951年、東京外国語大学ロシア語学科在学中にロシア未来派の詩人ヴラジーミル・マヤコフスキー(1893-1930)の作品と出会い、翌52年に彰考書院より『マヤコフスキー詩集』を上梓されました。2013年11月に河出書房新社より刊行された『マヤコフスキー事件』は読売文学賞を受賞しています。小笠原さんが現在取り組んでおられるのが、マヤコフスキーの長篇詩や戯曲の新訳で、その成果が今後同叢書から続々と出版されていくものと思います。

★『ズボンをはいた雲』は今から約百年前の1915年9月に私家版が刊行されました。マヤコフスキーは当時22歳。あふれる情熱が言葉の奔流となり、美しさも醜さも混沌となって読者へと押し寄せる極めて挑戦的な詩篇です。「そしてぼくは感じる、/「ぼく」は、ぼくには狭苦しいと。/何者かがぼくの中からしつっこく出て行こうとする」(31頁)。この感覚は少年少女なら誰しも一度ならず経験する感覚ではないでしょうか。「ママ!/息子さんはすてきな病人です!/ママ!/息子さんの心臓が火事なんだ」(同)。脳髄から漏れ出た「思考」ではなく、心臓から、肉体から放出される確信的な「情念」。これがマヤコフスキーの永遠の若さ(恐らくは老いや死と隣り合わせの!)の源泉であるに違いありません。


ラインズ 線の文化史
ティム・インゴルド著 工藤晋訳 管啓次郎解説
左右社 2014年5月 本体2,750円 四六判上製280頁 ISBN978-4-86528-101-9

帯文より:歩くこと、物語ること、謳うこと、書くこと、生きることは線を生むことだ。世界的な注目を集める人類学者インゴルドの主著待望の邦訳。

版元紹介文より:人類学とは、人間がこの世界で生きてゆくことの条件や可能性を問う学問である! マリノフスキーからレヴィ=ストロースへと連なる、未開の地を探索する旧来の人類学のイメージを塗り替え、世界的な注目を集める人類学者インゴルドの代表作、待望の邦訳! 文字の記述、音楽の記譜、道路の往来、織物、樹形図、人生・・・人間世界に遍在する〈線〉という意外な着眼から、まったく新鮮な世界が開ける。知的興奮に満ちた驚きの人類学!

★発売済。原書は、Lines: A Brief History(Routledge, 2007)。イギリス・アバディーン大学で教える社会人類学者インゴルド(Tim Ingold, 1948-)の著書の本邦初訳です。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。巻末に「さわやかな人類学へ――解説に代えて」を寄せておられる管啓次郎さんは本書をこう評しておられます。「とどまるところを知らない連想の展開にしたがって、およそこれまで並んだことのない観念のストレンジな並列が、本というきわめて圧縮されたパッケージに収められている」(264頁)。インゴルド自身は「日本語版への序文」への序文で、本書を書くことを可能にした人類学での薫陶を列記しつつこう述べています。「人類学の門をたたいた人がおしなべて気づくその学問のすばらしさとは、新鮮な知的空気を吸い込む感覚です。それは独房のなかで鉄格子のはまったドアとよろい戸の下りた窓を通して自分がみることもない世界から差し出されるデータを永遠にかみ砕く刑を宣告された研究者が、監獄から脱出する感覚とでもいえましょう。学問研究とはおおかた監獄のようなものです。しかし人類学はそうではないのです!」(8頁)。

★専門領域という立入禁止マークをものともせず、どんなジャンルでもずんずん探究していく自由な知の爽快さが本書には息づいています。この本をきっかけに人類学者を目指す読者も出てくるかもしれない、という予感を抱きつつ、時限爆弾を仕掛けるように本書を店頭に置く書店員さんもいらっしゃることでしょう。なお、インゴルドの翻訳続刊として、Being Alive: Essays on Movement, Knowledge and Description(Routledge, 2011)が『生きていること』と題され、左右社さんより今秋翻訳刊行予定とのことです。


風景の無意識――C・D・フリードリッヒ論
小林敏明著
作品社 2014年5月 本体5,400円 A5判上製336頁 ISBN978-4-86182-482-1

帯文より:フロイトとハイデッガーに共通する核心。不安、死への志向、隠された本来性、命名し難いエス。時代を超えて継承されるドイツ・ロマン主義の精神。フリードリッヒの絵画を介して鮮やかに解き明かすドイツ近代思想の展開。

目次:
序章 フロイトとハイデッガーをめぐる疑問
第一章 風景の発見
第二章 産出する自然
第三章 光と色彩のアレゴリー
第四章 崇高の美学
第五章 無意識を紡ぎ出す自我
第六章 発掘される民族と彷徨する郷愁
終章 再びフロイトとハイデッガーへ
あとがき
参考文献
図版索引
人名索引

★発売済。「ここでの目的は一言で言えば、思想史「生け捕り」の試みである」と著者は述べます。「著者はこれを今までにもドイツ語で書かれた別の著作〔『Melancholie und Zeit』『Denken des Fremden』〕で試みたことがあったが、本書はその三度目の試みである。〔・・・〕著者によってはこれが最後の挑戦になろう」(8頁)。著者の出発点はドイツ思想史をめぐる次の疑問です。「20世紀を代表する二人の思想家フロイトとハイデッガーの考えがなぜあれほどにも似ているか」(同)。「そこに見出される類似性、共通性は〔・・・〕、偶然と呼んですますにはあまりにも強い印象をわれわれにもたらすからである。〔・・・〕そこにはドイツ思想史、より正確に言えば、ドイツ語圏における思想史という大きなうねりのようなものが働いているのではないか」(8-9頁)。

★フロイトとハイデッガーの類似性のうちもっとも際立っていると著者が指摘するのは、「根本気分としての不安と不気味」「死への志向」「隠された本来性とSubjektへの懐疑」「エスとメタファー」の四項です。そしてこれらに。ハイデッガー自身の無意識を形成する原風景を重ね合わせる時、著者にとって水先案内になったのはドイツ・ロマン主義であり、本書の副題に掲げられている画家フリードリッヒ(1774-1840)なのでした。本書の冒頭に戻ると、著者はこの試論を「既成の「研究」に対するオールターナティヴを探ろうとする一つの試み」であり、「哲学、美術、文学、医学、物理学、歴史学、政治学等々といった「ディシプリン=縄張り」を容認しない」姿勢を明記していました。あとがきで明かされているように本書は著者初のゲルマニスティクの仕事であり、十年の歳月をかけて執筆された力作です。哲学、精神分析、ドイツ文学、絵画の各分野での反響が気になります。

★本書の担当編集者の高木有さんは今月、中田哲三『失郷民』も手掛けられました。文芸評論家の川村湊さんはこの本をこう推薦していらっしゃいます。「失郷民(シリャンミン)、旅人(ナグネ)、他郷暮らし(タヒャンサリ)――激動の済州島から密航者として日本へ渡った学生服姿の少年がいた。趙南富(チョウ・ナンプ)。彼の一族の歴史は、まさに朝鮮半島の近現代史そのものであり、彼の生涯は日韓の関係史そのものといえる。一在日コリアンの「生」をあますところなく描いた記録文学(ドキュメンタリー)は、南・北、在日、在外のコリアンたちの現実と希望の物語である」。


画像史料論──世界史の読み方
吉田ゆり子・八尾師誠・千葉敏之編
東京外国語大学出版会 2014年4月 本体2,800円 A5判並製326頁 ISBN978-4-904575-32-1

帯文より:史料が切りひらく豊潤な視覚文化の世界へ。古今東西の画像を、歴史研究・地域研究の史料として扱うための方法と意義を論じる、本邦初の画期的な史料論。

版元紹介文より:〈画像を読み解く〉〈画像を造る/破壊する〉〈画像が語る〉の3部構成のもと、多彩な史料とそれらを読み解く論点を示した9つの論考と、鋭い着眼点と魅力的な発想法による10の〈イメージの芽〉を通して、世界と歴史の実相に迫る。東京外国語大学の教員19名による世界史入門! カラー図版多数収載。

★発売済。論文の題名を眺めてみると、「ベアトゥス写本挿絵にみる中世イベリア世界」「エンリケ航海王子の3つの肖像画」「プランバナン寺院シヴァ堂のラーマーヤナ浮彫」「ネクロポリスの空間構成と近代化――バルセローナの墓地を例として」「王座を担う群像を見よ!――ダレイオス大王の浮彫」「上座仏教社会における白象」「聖画像の造像と破壊――イコノダリズムとイコノクラスム」「文化大革命における偶像創造」「記念碑に見るホロコーストの歴史と記憶――ポーランドとドイツの強制収容所跡記念碑・記念施設を中心に」「メアリー・フェイガンの墓――墓碑に刻まれた嘘とその意味するもの」「写真によるホメイニー師表象の変化とイラン・イスラーム革命」「バリケード上のアマゾネス――1848年革命の女性像」「かわるラオス紙幣の図柄」「ソ連の政治ポスター――総力戦の時代のプロパガンダとカリカチュア」「ロックウェルが描いたアメリカ」「地図の描き方と統治の手法――モンゴルの古地図をめぐって」「山縣大尉の外モンゴル調査と軍用地図」「幻の木々を求めて――城絵図を読み解く」「商人たちの旅――中国明清時代」と、テーマが多岐にわたり、大いに興味をそそられます。画像資料への接し方や評価というのは、元画像の改ざんや偽物の作成などの技術が巧妙化しているこんにちにおいて、ますます重要視されています。偽りの物語が正史に成り上がる危険が常につきまとうのが歴史という名の戦いだとすれば、画像資料の取り扱いと検証は一般読者にとってすら必要なことだと言えると思います。
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by urag | 2014-06-01 20:00 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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