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2014年 05月 25日

注目新刊:『完本 黒蜥蜴』藍峯舎、ほか

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◎藍峯舎さんの豪華「乱歩本」第3弾

完本 黒蜥蜴
江戸川亂步・三島由紀夫著
藍峯舎 2014年5月 税込19,000円 A5判変型函入396頁 220部限定/記番入 ISBNなし

版元紹介文より:江戸川亂步が残した唯一の「女賊物」の傑作長編『黒蜥蜴』と、三島由紀夫が亂步に捧げた美しきオマージュ『戯曲 黒蜥蜴』を初めてカップリング。多賀新のオリジナル銅板画一葉を添えて、亂步生誕120年に贈る豪華愛蔵版。

目次:
口絵 多賀新オリジナル銅版画「黒蜥蜴」(2014)署名・番号入
江戸川亂步「黒蜥蜴」(1934)5-225
「黒蜥蜴」劇化について 227-231
 原作者の期待(「黒蜥蜴」初演パンフレット、昭和37年3月)229
 チェスタトンと三島由紀夫(「黒蜥蜴」初演パンフレット、昭和37年3月)230-231
解説「推理小説ぎらひ」が愛した黒蜥蜴(新保博久)233-241
三島由紀夫「戯曲 黒蜥蜴」(1961)245-378
自作解題 379-383
 「黒蜥蜴」について(「西武生活」昭和37年2月)381-382
 関係者の言葉(「都民劇場」昭和37年3月)383
解説「乱歩と三島 女賊への恋」(中相作)385-393

★エドガー・アラン・ポー『赤き死の假面』(江戸川亂步譯、オディロン・ルドン口繪、藍峯舎、2012年12月、350部限定記番入、A5判変型122頁函入、定価税込10,000円【完売】)、江戸川亂步『屋根裏の散步者』(池田満寿夫挿畫、藍峯舎、2013年7月、350部限定記番入、A5判変型函入本文176頁(二色刷80頁、一色刷96頁)別丁四色刷挿画10点、定価税込14,000円、残部僅少)に続く、藍峯舎さんの新刊第3弾『完本 黒蜥蜴』が2014年5月15日(木)に発売になりました。本書の内容や造本仕様、書影については書名のリンク先をご覧ください。

★藍峯舎版『完本 黒蜥蜴』は、版元さんの解説をお借りすると乱歩生誕120年を記念するもので、「乱歩の原作と、三島が三十年来の想いをこめて乱歩に捧げた「戯曲 黒蜥蜴」を初めて一冊にカップリング」したもので、「乱歩のテキストは新保博久氏の校訂により、初出の「日の出」掲載分から単行本化の際に削除された部分を復元し、さらに連載の切り抜きに亂步の自筆で加えられた書き込みもすべて反映した初の「完全無削除版」で」あるとのことです。口絵は「春陽堂文庫の乱歩シリーズの表紙でお馴染みの版画家多賀新氏」によるもの。書籍本体は背が黒色染牛革に文字を本金箔押であしらい、表紙に濃紫色のなめらかなワールドクロス・バックスキンが貼られていて、多賀さんの挿絵が金箔で飾られています、頁小口は鮮やかな天金です。既刊書に増して豪華な造本なので、今までの最高額となる19,000円も妥当ではないかと思います。
     
★美麗な造本で乱歩と三島のそれぞれの「黒蜥蜴」の違いを味わえるのが楽しい『完本 黒蜥蜴』ですが、4月30日から予約受付が開始されました。発行部数はこれまでの350部よりさらに少ない220部。売切必至です。私が購入したのはつい先週、100番台の半ばでした。遅かれ早かれ完売するものと思います。藍峯舎さんの本は小部数のため古書市場にはほとんど出回りません。今回も早めの御注文が吉かと思います。消費税も送料も込みの値段で前払いです。


◎平凡社さん2014年5月新刊より

谷川雁――永久工作者の言霊』松本輝夫著、平凡社新書、2014年5月、本体880円、新書判並製264頁、ISBN978-4-582-85735-1
日本の木でつくるスケルトンドミノの家』黒川哲郎著、平凡社、2014年5月、本体2,000円、A4変型判上製40頁、ISBN978-4-582-83661-5

★『谷川雁――永久工作者の言霊』は、カバーソデの紹介文によるとは「詩人、思想家、教育運動家といった枠に収まりきらない、「永久工作者」の謎と魅力の源泉を説き明か」し、「「沈黙の15年」(ラボ時代)を含め、曲折に満ちた生涯、その実践の数々を描」いたものとのことです。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。著者の松本輝夫(まつもと・てるお:1943-)さんは、東大の学生時代に谷川雁と出会い、1969年秋に谷川が勤めていた語学関連企業である株式会社テック(のちに株式会社ラボ教育センターに改称)に入社して81年まで仕事のかたわら労働組合運動に従事されたそうです。空白期とされることが多く谷川自身も語らなかったテック=ラボ時代を全盛期と見なすユニークな本書は、谷川雁の肖像にいっそうの陰翳を与えてくれます。

★『日本の木でつくるスケルトンドミノの家』は「くうねるところにすむところ:家を伝える本シリーズ」の第34巻で、インデックス・コミュニケーションズが2004年から2007年にかけて刊行してきた「くうねるところにすむところ : 子どもたちに伝えたい家の本」シリーズが平凡社で2011年に復活してから数えると9冊目になります。木造建築を木材供給と森林再生の観点から見直した「スケルトンドミノ」の家。日本の木造建築の歴史的発展とこんにちにおける再生を分かりやすく紹介する本書の完成を著者の黒川さん御自身は見ることなく昨年亡くなられたため、奥様があとがきを書かれています。「高断熱・高気密・機械換気の家づくり」ではなく「日照、痛風が気持ち良い日本の木の家」(28頁)の魅力が伝わってくる本です。


◎水声社さんの2014年5月新刊一覧

『マラルメ セイレーンの政治学』ジャック・ランシエール著、坂巻康司+森本淳生訳、水声社、2014年5月、本体2,500円、46判上製232頁、ISBN978-4-8010-0024-7
『ジュール・ヴェルヌ伝』フォルカー・デース著、石橋正孝訳、水声社、2014年5月、本体10,000円、A5判上製704頁+図版32頁、ISBN978-4-8010-0030-8
『マチネ・ポエティク詩集』福永武彦+加藤周一+原條あき子+中西哲吉+窪田啓作+白井健三郎+枝野和夫+中村真一郎著、水声社、2014年5月、本体4,000円、A5判上製248頁、ISBN978-4-8010-0041-4
『戦後文学の旗手 中村真一郎――『死の影の下に』五部作をめぐって』鈴木貞美著、水声社、2014年5月、本体2,500円、46判上製200頁、ISBN978-4-8010-0040-7
『中村真一郎手帖(9)』中村真一郎の会編、水声社、2014年5月、本体1,000円、A5判並製128頁、ISBN978-4-8010-0039-1

★『マラルメ セイレーンの政治学』は、Mallarmé: La Politique de la sirène(Hachette, 1996)の全訳です。ランシエール(1940-)は日本では長らくアルチュセールやバリバールらの『資本論を読む』の共著者として認知されてきましたが、ここ約10年ほどで単独著が立て続けに翻訳されており、昨年には3冊も刊行されています。本書が9点目の訳書になります。ただし、彼の近代文学論は『言葉の肉――エクリチュールの政治』(芳川泰久監訳、せりか書房、2013年)に続いて本書がようやく2冊目が翻訳されたばかりという現状です。今回のマラルメ論は小著ですが、マラルメをある意味で哲学者以上の思索者として評価した好著ではないかと思います。「詩はひとつの「芸術作品」であるだけではない。フィクションはたんに想像力の仕事ではない。それはまさしく、人類をその偉大さへと昇華させるものとしての宗教を、そして、この偉大さに適合した共同体の原理としての宗教を、引き継がなければならないのである。宗教の後に続くものとしてのフィクションがもたらすべきもの、それは、宗教の天上的内実の散文的な脱神話化でもなければ、人類の責任において宗教の聖性を取り戻すことでもない。要するに、フィクションは、たとえ人間の宗教であっても、それ自体で新しい宗教を打ち立ててはならない。フィクションは、音楽的宗教よりもさらに遡上し、われわれをあらゆる宗教の起源、「人類に内在する詩篇、あるいはこれら詩篇の根源的な状態」〔マラルメ「詩の危機」より〕にふたたび導くはずである」(108-109頁)。

★『ジュール・ヴェルヌ伝』はまもなく発売。帯文に曰く「一次資料、未刊行資料を博捜しながら〈驚異の旅〉の新しい読み直しを提唱するヴェルヌ研究の世界的権威による、本邦初のジュール・ヴェルヌ評伝」。ヴェルヌ論はあれど、伝記が今までなかったとは驚きです。訳者の石橋正孝さんは日本ジュール・ヴェルヌ研究会の会長をお務めで、数年前にヴェルヌの研究書を翻訳されています(ド・ラ・コタルディエール+ドキス『ジュール・ヴェルヌの世紀――科学・冒険・《驚異の旅》』東洋書林、2009年)。今回の伝記は、ヴェルヌ研究の第一人者フォルカー・デース(Volker Dehs, 1964-)が2005年にドイツ語で上梓した浩瀚な伝記Jules Verne. Eine kritische Biographieを著者自身が仏語訳した未刊行版Jurles Verne, une biographie critiqueに基づいて日本語に翻訳されたもの。石橋さんはインスクリプトさんから来月末に刊行開始される予定のシリーズ『ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション』(全5巻)の第1回配本第1巻「地球から月へ 月をまわって 上を下への(完訳ガンクラブ三部作)」(石橋正孝訳・解説、本体予価3,900円、四六判上製650頁予定、ISBN978-4-900997-44-8)を手掛けられる予定です。

★『マチネ・ポエティク詩集』『戦後文学の旗手 中村真一郎』『中村真一郎手帖(9)』はいずれも中村真一郎さん関連の発売済新刊です。水声社版『マチネ・ポエティク詩集』は、真善美社より1948年に刊行されたものの再刊で(ただし正字は新字に変更)、安藤元雄さんの「『マチネ・ポエティク詩集』について」(『マチネ・ポエティク詩集』思潮社1981年に寄せた解題)と、大岡信さんの「押韻定型詩をめぐって」(初出は『現代詩手帖』1972年1月号、その後『中村真一郎詩集』思潮社1972/1989年に収録)を追加したものです。「現代の絶望的に安易な日本語の無政府状態を、矯め鍛へて、新しい詩人の宇宙の表現手段とするためには、厳密な定型詩の確立より以外に道はない」(序、15頁)と宣言し、詩の革命を目指した先人の挑戦に触れることができる本です。

★『戦後文学の旗手 中村真一郎』は、中村真一郎さんの初期長篇小説五部作(『死の影の下に』1947年、『シオンの娘等』1948年、『愛神と死神と』1950年、『魂の夜の中を』1951年、『長い旅の終わり』1952年)を論じた、年刊誌『中村真一郎手帖』での連載をまとめたものです。巻末には五部作と外篇『檻』『雪』の登場人物一覧および年表が収録されています。『中村真一郎手帖(9)』は巻頭に、「中村真一郎の会」会長をおつとめの加賀乙彦さんによる第8回総会(2013年4月)の折の挨拶が「中村真一郎さんの思い出」と題されて置かれています。加賀さんのユーモア溢れるスピーチが楽しいです。続いて、同じく第8回総会での池澤夏樹さんの講演「『夏』を読む」が置かれ、さらに研究論文が7本、連載が2本収録されています。
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by urag | 2014-05-25 23:48 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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