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2014年 04月 06日

注目新刊:ガタリ『人はなぜ記号に従属するのか』、ほか

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★注目新刊(単行本)

人はなぜ記号に従属するのか――新たな世界の可能性を求めて』フェリックス・ガタリ著、杉村昌昭訳、青土社、2014年3月 

原書は、Lignes de fiute: Pour un autre monde de possibles(l'Aube, 2011)。ドゥルーズとの共著『千のプラトー』と同時期の70年代後半に書かれた未公刊の遺作です。原題は「漏出線――もうひとつの可能な世界に向かって」。従来「逃走線」と訳されることが多かったドゥルーズ=ガタリ特有の用語を杉村さんが「漏出線」としたのは、「密閉されたシステムからの脱出と、「脱領土化」のポジティブな働きの側面を示唆するニュアンスをこめ」たものだと訳者あとがきで説明されています。目次を以下に列記しておきます。

序(リアンヌ・モゼール)
緒言
第一部 記号的従属と集合的装備
 (1)無意識は言語のように構造化されていない
 (2)集合的装備はどこから始まり、どこで終わるのか
 (3)資本主義革命
 (4)ブルジョワジーと資本主義的流れ
 (5)記号的選択素材〔記号論という選択分野〕
 (6)権力の装備と政治的外見
 (7)分子革命
 (8)集合的動的編成のリゾーム
 (9)ミクロ・ファシズム
 (10)自主管理と欲望の政治
第二部 社会的無意識の語用論的分析
第三部 語用論的構成要素の一例――顔貌性
原注
訳者あとがき

また、杉村さんは訳者あとがきの最後で、ステファヌ・ナドーが編者を務めたガタリの遺稿集『エコゾフィーとは何か』についても言及されています。リーニュから今年1月に発刊された600頁近い大著です。「本訳書〔『人はなぜ記号に従属するのか』〕でもすでに明らかになっていることであるが、ガタリはドゥルーズ/ガタリの一部だったのではなくて、ドゥルーズ/ガタリがガタリの一部だったということが、このナドーの編集した新刊書によってますます明瞭になるだろう」と杉村さんは評価しておられます。


ミシェル・フーコー講義集成(1)〈知への意志〉講義――コレージュ・ド・フランス講義1970-1971年度、付「オイディプスの知」』慎改康之・藤山真訳、筑摩書房、2014年3月

原書は、Leçons sur la volonté de savoir: Cours au Collège de France 1970-1971 suivi de Le savoir d'Oedipe(Seuil, 2011)です。死によって途絶えたフーコーのコレージュ・ド・フランス講義は全13巻中、一昨年に刊行された最終巻(第13巻)と今回の第1巻の刊行によって、最初と最後が揃いました。第1巻には、1971年4月にモントリオールのマギル大学で行われた講演「ニーチェ講義」と、1972年3月にニューヨーク州立大学バッファロー校で行われた講演「オイディプスの知」が併載されています。後者は1972年10月、コーネル大学においても発表されたものです。

◎筑摩書房版「ミシェル・フーコー講義集成」既刊書(※は未刊、◆は現在品切)

第1巻「〈知への意志〉講義 1970-1971年」慎改康之・藤山真訳、2014年3月
第2巻「刑罰の理論と制度 1971-1972年」※
第3巻「懲罰社会 1972-1973年」※
第4巻「精神医学の権力 1973-1974」慎改康之訳、2006年2月
第5巻「異常者たち 1974-1975」慎改康之訳、2002年10月
第6巻「社会は防衛しなければならない 1975-1976」石田英敬・小野正嗣訳、2007年8月◆
第7巻「安全・領土・人口 1977-1978」高桑和巳訳、2007年6月
第8巻「生政治の誕生 1978-1979」慎改康之訳、2008年8月
第9巻「生者たちの統治 1979-1980」※
第10巻「主体性と真理 1980-1981」※
第11巻「主体の解釈学 1981-1982」廣瀬浩司・原和之訳、2004年2月
第12巻「自己と他者の統治 1982-1983」阿部崇訳、2010年4月
第13巻「真理の勇気 1983-1984」慎改康之訳、2012年2月


進化という謎』松本俊吉著、春秋社、2014年3月

シリーズ「現代哲学への招待」の最新刊です。著者の松本俊吉(まつもと・しゅんきち:1963-)さんは東海大学総合教育センター教授で、ご専門は科学哲学、特に生物学の哲学、とのこと。これまでに『進化論はなぜ哲学の問題になるのか――生物学の哲学の現在』(勁草書房、2010年)という編著書を上梓されており、単独著は今回が初になります。あとがきによれば「本書は、生物学の哲学の分野でこれまで筆者が考えたり発表したり書きためてきたものに、さらに本書のための書き下ろし部分(主として第1章)を加え、一冊の書物として編んだもの」とのことです。「進化論と哲学」「適応主義をめぐる論争」「遺伝子の目から見た進化」の3章構成。巻末には参考文献のほか、事項と人名の索引を完備していますから、科学哲学の書棚を充実させたい書店員さんにはたいへん参考になると思います。


〈喜劇映画〉を発明した男――帝王マック・セネット、自らを語る』マック・セネット著、石野たき子訳、新野敏也監訳、作品社、2014年3月

原書は、King of Comedy(Doubleday, 1954)です。二段組で本文が350頁以上ある大著で、巻末には「本書に登場する「笑い」の伝道師たち」と謳った「銀幕喜劇人小辞典」(371-403頁)と、索引二種(作品名と人名)が付されています。本書の内容は帯文に端的に示されています。「D・W・グリフィスに映画作法を学び、チャーリー・チャップリン、ビング・クロズビーを見出して、フランク・キャプラらをそのスタジオから輩出した男。コメディ映画にカスタードパイ投げ、水着アイドル、道化役としての警官隊を初めて登場させたアイディアマン。初期ハリウッドを代表する超大物プロデューサーが、自らの映画人としての足跡、波乱に満ちた生涯、たった一度の人生を賭した名女優との悲恋を余さず語り尽くす、アメリカ映画史の名著!」 驚くべきことに、セネット(Mack Sennett, 1880-1960)の著書が訳されるのは今回が初めてのようです。


版と画の間――駒井哲郎・加藤清美・坂東壮一・日和崎尊夫・柄澤齊・菊池伶司』柿沼裕朋編、平凡社、2014年4月

まもなく発売。書名は「はんとえのあわい」と読みます。前半が副題にある6人の版画家の作品集で、後半が編者の柿沼裕朋(かきぬま・ひろとも:1970-)さんによる論考「言葉としての版画」を収めています。それぞれの作家の作品群の冒頭には作家自身の言葉が掲げられています。個性的で魅惑的な版画世界の奥行きを堪能できます。編者あとがきによれば、本書は『菊池伶司 版と言葉』(堀江敏幸・加藤清美・柄澤齊著、平凡社、2007年)の姉妹篇とのことです。


★注目新刊(文庫など)

遺伝子の川』リチャード・ドーキンス著、垂水雄二訳、草思社文庫、2014年4月
『新版 発心集 現代語訳付き』上下巻、鴨長明著、浅見和彦・伊東玉美訳注、角川ソフィア文庫、2014年3月
痴愚神礼讃 ラテン語原典訳』エラスムス著、中公文庫、2014年1月
告白』全3巻、アウグスティヌス著、山田晶訳、中公文庫、2014年3月
柄谷行人インタヴューズ1977-2001』柄谷行人著、講談社文芸文庫、2014年2月
柄谷行人インタヴューズ2002-2013』柄谷行人著、講談社文芸文庫、2014年3月
ミクロコスモスI――夜の智恵』中沢新一著、中公文庫、2014年2月
ミクロコスモスII――耳のための、小さな革命』中沢新一著、中公文庫、2014年3月
バルセロナ、秘数3』中沢新一著、講談社学術文庫、2014年3月
インヴェンション』高山宏×中沢新一著、明治大学出版会、2014年3月
惑星の風景――中沢新一対談集』中沢新一著、青土社、2014年4月

『遺伝子の川』の親本は草思社の「サイエンス・マスターズ」シリーズより1995年に刊行。ドーキンスの著書の文庫化はこれが初めてです。草思社文庫では周知の通り、ジャレド・ダイアモンドの既刊書『銃・病原菌・鉄』上下巻、『文明崩壊』上下巻、『人間の性はなぜ奇妙に進化したのか』などが売行好調と聞いています。『人間の性はなぜ奇妙に進化したのか』も「サイエンス・マスターズ」シリーズの一冊でした(旧題は『セックスはなぜ楽しいか』)。「サイエンス・マスターズ」ではダイアモンドやドーキンスのほか、ダニエル・デネットやリン・マーギュリス、イアン・スチュアートなど注目書が目白押しでした。ダイアモンドほどは売れないにせよ、なんとか文庫化していただけたらと妄想します。

『新版 発心集 現代語訳付き』『痴愚神礼讃 ラテン語原典訳』『告白』など、このところ古典的名作の現代語訳本が各社で続いています。『発心集』は周知の通り鴨長明の仏教説話集。上下二巻とも、前半に原文と訳注、後半に現代語訳をそれぞれまとめ、原文が途切れ途切れにならないのが良いです。現代語訳を読んで内容を覚えた後に原文を味わうという使い方ができます。本書の冒頭にある「心の師とはなるとも、心を師とすることなかれ」とは多くの先師が説いてきた至言です。抹香臭いと敬遠したところで、この言葉は人間が存在する限りいつまでもずっと有効な警句であり続けるでしょう。

『痴愚神礼讃 ラテン語原典訳』は年頭に刊行、売れ行き好調のようで3月に再版が発行されています。大出訳への痛烈な疑義がきっかけだったという新訳誕生の経緯は訳者あとがきに記されています。フランス語訳が底本の中公クラシックス版(渡辺一夫・二宮敬訳)と並び、ラテン語原典訳の決定版として長く愛読されるのではないかと思われます。『告白』は中公版「世界の名著」シリーズからの文庫化。解説「『告白』山田晶訳をもつということ」(第I巻所収)をお書きになっている松崎一平さんが今回の文庫版を監修されており、解説末尾の「文庫化にあたって」という付記には「誤植を正し、訳者の訳し落とした箇所を補ったほか、中にある参照箇所の点検をおこない、誤りや不十分な記載を補正した。重要な補正については補注を付した」と書かれています。

『柄谷行人インタヴューズ』は、これまで『柄谷行人蓮實重彦全対話』(2013年7月)、『柄谷行人中上健次全対話』(2011年4月)をまとめてきた講談社文芸文庫の最新刊です。特に業界人必読と思われるのは、『2002-2013』に収録されている「可能なる人文学――逆転を待ちながら」(2007年、初出:『論座』2003年3月号)です。「人文書の危機」について問いかけられた柄谷さんの答えは実に明快です。7年前のインタヴューとはいえ、その後も「危機」は続いていますし、これからも続くでしょう。立ち返るべき原点、出発点を確認できる名篇です。

『ミクロコスモスI――夜の智恵』『ミクロコスモスII――耳のための、小さな革命』『バルセロナ、秘数3』『インヴェンション』『惑星の風景――中沢新一対談集』と、ここ最近、中沢さんの既刊書の文庫化や、対談本の刊行が相次いでいます。文庫版まえがきを読む限りでは短文集『ミクロコスモス』は、親本では実現しなかった第三弾以降が実現しそうな空気です。中公文庫での中沢本はこれまで『雪片曲線論』や『野ウサギの走り』、『バルセロナ、秘数3』などがありますが、品切だった『バルセロナ、秘数3』は講談社学術文庫でこのたび再刊されました。もうひとつ長期品切となっている『改稿 虹の階梯――チベット密教の瞑想修行』(1993年)はしかし、第III部の表題でもある「ポワ」という言葉が別の文脈であまりにも有名になってしまった影響があるのか、半ば世間によって封印されてしまったかのような観があります。

ジャンルがなくてエクリチュールだけがある(61頁参照)、極めて誘惑的な書き手である中沢さんはまた、数々の対談においても聞き手の耳をくすぐる脱線の名手であり、対談相手に真摯に寄り添う越境の人でした。『インヴェンション』は中沢さんと同様に脱線=越境の名手である高山宏さんとのスピード感溢れる5つのセッションを収めています。3番目と5番目が未発表のもの。本書は明治大学「野生の科学研究所」が贈る「新しい〈知〉への招待状」と銘打たれた叢書「ポッシュ」の第一弾です。『惑星の風景』は、1999年から2013年まで各媒体で発表されてきた対談の中から精選して編まれたもの。クロード・レヴィ=ストロース、ミシェル・セール、ブルーノ・ラトゥール、吉本隆明(二篇)、河合隼雄、河合俊雄、養老孟司、中村桂子、管啓次郎、細野晴臣、杉浦日向子、藤森照信、といった各氏との対談を収録し、巻頭には石倉敏明さんによる中沢さんへのインタヴューが配されています。この二冊の対話集の刊行を記念して今月、以下の通りトークセッションが行われます。

高山宏×中沢新一「〈知〉の狩猟術」

日時:2014年4月25日(金)19時~(開場18:30)
場所:東京堂書店神田神保町店 6F 東京堂ホール
参加方法:参加費800円(要予約・ドリンク付)
※店頭または電話・メール(shoten@tokyodo-web.co.jp)にて、「中沢さん×高山さんイベント参加希望」とお申し出いただき、お名前・電話番号・参加人数をお知らせ下さい。イベント当日と前日は、電話にてお問い合わせ下さい。電話 03-3291-5181
※当日17:00より1階総合カウンターにて受付を行います。

内容:縦横無尽に知の原野を駆け巡り、あまたの収獲を世に問うてきた二人の思想家・批評家による二冊の対話本が、奇しくも今春同時に刊行されます。桁外れの博識と直観で異なるものをつなぎあわせる言葉のパスがこじあけるのは、自然と文化と人間の知られざる通底路か、はたまたこの惑星の未来のヴィジョンか? 秘中の“知の狩猟術”が明かされる待望のトークライブ。
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by urag | 2014-04-06 20:27 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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