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2014年 02月 23日

注目新刊:岡田温司さんのイタリア現代思想入門と黙示録をめぐる表象文化論、ほか

風邪を引きまして頭がぼんやりしています。今回は省力モードで失礼します。

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◎岡田温司さんの最新著はイタリア現代思想入門と黙示録をめぐる表象文化論

イタリアン・セオリー』岡田温司著、中公叢書、2014年2月、本体1,800円、四六判並製272頁、ISBN978-4-12-004591-2
黙示録――イメージの源泉』岡田温司著、岩波新書、2014年2月、本体840円、新書判並製282頁、ISBN978-4-00-431472-1

『イタリアン・セオリー』は、『イタリア現代思想への招待』(講談社選書メチエ、2008年)に続く、岡田さんによるイタリア現代思想入門の第2弾。全10章のうち7本が各誌等で発表済みのもので、プロローグと3本が書き下ろし。アガンベン、エスポジト、カッチャーリ、タフーリ、ネグリなどが俎上にのせられています。プロローグで岡田さんは、イタリア現代思想のアクチュアリティについて3点指摘されています。曰く「第一に、「生政治」の思考を徹底的に突きつめたこと。近代における神学の「世俗化」という重要なテーマを、新たに積極的に議論の俎上に載せたこと。最後に、「否定の思考」に実践的に取り組んでいること、である。管見では、この三つ巴こそが「イタリアン・セオリー」の最大の特徴にほかならない」(4頁)。一方、『黙示録』は全6章建てで、前半がヨハネ黙示録を聖書のテクストから読み解き、後半が黙示録を題材にした美術作品(イメージ)から分析しています。目次はこちらをご覧ください。


◎岩波書店さんの新版『アリストテレス全集』第3回配本

アリストテレス全集(7)魂について/自然学小論集』岩波書店、2014年2月、本体6,000円、A5判上製函入iii,529,24頁、ISBN978-4-00-092777-2

「魂について」中畑正志訳、「自然学小論集」坂下浩司訳、「気息について」木原志乃訳を収録。岩波版旧全集では第6巻に「霊魂論」山本光雄訳、「自然学小論集」「気息について」(ともに副島民雄訳)が収められていました。周知の通り「魂について」すなわち「デ・アニマ」は日本語でも幾度となく訳されてきた重要書です。中畑訳「魂について」は2001年に京都大学学術出版会の「西洋古典叢書」から一度出版されておりますが、今回の新全集版刊行にあたり訳文には大幅に手を入れたとのことです。月報は稲垣良典さんによる「霊魂論の復権?」と、加藤尚武さんによる「私の同時代人アリストテレス」が収められています。次回配本は4月下旬、第3巻『トポス論/ソフィスト的論駁について』を予定しているとのことです。


◎ハイエク再評価を試みるナカニシヤ出版さんの論文集

ハイエクを読む』桂木隆夫編、ナカニシヤ出版、本体3,000円、四六判並製400頁、ISBN978-4-7795-0819-6

12本の論文から多角的にハイエク思想を検証した労作です。目次詳細は書名のリンクをご覧ください。ネオリベ批判の前提に立ってあらかじめ切り詰められた貧しいハイエク像ではない、慎重な思想的理解と検討が本書の持ち味です。編者の桂木さんはあとがきで本書の意図についてこう書いておられます。「右や左に振れる時代の風潮の背後にある問題関心、「市場はどのような秩序なのか」、「民主主義はどうあるべきか」、「ルールと社会正義の関係とは」について、ハイエクとその批判者たちの哲学的探求からなにかを学ぶこと」。春秋社版『ハイエク全集』とともにひもときたいです。


◎以文社さんの2014年2月新刊1点

日本を再発明する――時間、空間、ネーション』テッサ・モーリス=スズキ著、伊藤茂訳、以文社、本体2,800円、四六判上製308頁、ISBN978-4-7531-0319-5

原書はRe-inventing Japan: Time, Space, Nation(M.E. Sharpe, 1998)です。著作としては初訳本の『日本の経済思想』(原書1989年)に次ぐ時期のもので、『辺境から眺める』や『批判的想像力のために』より以前の本です。「日本語版への序文」で著者は「この本で取り組もうとした問題は、多くの点で、当時〔原著刊行当時〕以上に現在の状況にマッチしている」と書いています。より開かれた日本に向かう道と閉ざされた日本に向かう道の分岐点にこの国が立っており、現時点で「少なくとも政府レベルで」は後者の道を辿っていると指摘するとともに、本書の目的について「日本の中に存在するネーションや文化やアイデンティティに対する多様なアプローチの仕方、すなわち、多くの可能性をはらんだ未来への種をその中に宿している豊かで多様な思考の伝統にスポットを当てることにあった」と書いておられます。

★テッサ・モーリス=スズキ(Tessa Morris-Suzuki, 1951-)単独書既刊
1991年11月『日本の経済思想――江戸期から現代まで』藤井隆至訳、岩波書店;2010年10月、再刊
2000年07月『辺境から眺める――アイヌが経験する近代』大川正彦訳、みすず書房
2002年05月『批判的想像力のために――グローバル化時代の日本』平凡社;2013年02月、平凡社ライブラリー
2004年08月『過去は死なない――メディア・記憶・歴史』田代泰子訳、岩波書店
2004年10月『自由を耐え忍ぶ』辛島理人訳、岩波書店
2007年05月『北朝鮮へのエクソダス――「帰国事業」の影をたどる』田代泰子訳、朝日新聞社;2011年09月、朝日文庫
2007年09月『愛国心を考える』伊藤茂訳、岩波ブックレット
2012年05月『北朝鮮で考えたこと』田代泰子訳、集英社新書


◎平凡社さんの2014年2月新刊より3点

フクシマ以後の思想をもとめて――日韓の原発・基地・歴史を歩く』徐京植/高橋哲哉/韓洪九著、李昤京/金英丸/趙真慧訳、平凡社、2014年2月、2,800円、4-6上製328頁、ISBN978-4-582-70299-6
歴史と民俗 30』神奈川大学日本常民文化研究所編、平凡社、2014年02月、A5判並製300頁、ISBN978-4-582-45833-6
最後の恋人』残雪著、近藤直子訳、平凡社、2014年2月、本体2,900円、4-6判上製436頁、ISBN978-4-582-83646-2

『フクシマ以後の思想をもとめて』は、在日の思想家・日本の哲学者・韓国の歴史家の三氏が、2011年から2012年にかけて福島・陜川・ソウル・東京・済州島・沖縄で重ねてきた対話の記録です。徐さんは3・11以後の日本に台頭しつつあるファシズム勢力の台頭に警鐘を鳴らし、三氏は日韓問題について広範に論じ合っており、読み応えがあります。『歴史と民俗 30』は「渋沢敬三没後50年」特集と、「第16回常民文化研究講座」の記録「大津波と集落――三陸の集落に受け継がれるもの」の二本柱でたいへん充実しています。『最後の恋人』は残雪が2005年に発表した長篇小説「最后的情人」の日本語訳で、平凡社さんとしては、評論集『魂の城 カフカ解読』(近藤直子訳、2005年12月)、短篇集『かつて描かれたことのない境地』(近藤直子ほか訳、2013年07月)に続く、中国人作家残雪さんの訳書第3弾になります。


◎水声社さん2014年2月の新刊

『ジョルジュ・ペレック伝――言葉に明け暮れた生涯』デイヴィッド・ベロス著、酒詰治男訳、本体12,000円、A5判上製784頁、ISBN978-4-8010-0026-1
『対岸』フリオ・コルタサル著、寺尾隆吉訳、本体2,000円、46判上製184頁、ISBN978-4-89176-954-3
『友だちの本』ヘンリー・ミラー著、中村亨/本田康典/鈴木章能訳、本体4,000円、46判上製392頁、ISBN978-4-8010-0003-2
『シュタイナー教育基本指針I――誕生から三歳まで』ライナー・バツラフ/クライディア・マッキーン/イーナ・フォン・マッケンゼン/クライディア・グラー=ヴィティッヒ著、入間カイ訳、本体2,500円、46判上製240頁、ISBN978-4-8010-0022-3
『ベケットのアイルランド』川島健著、本体4,000円、A5判上製272頁、ISBN978-4-8010-0014-8

まずベロスのペレック伝は93年に刊行され95年に改訂版が出たものの翻訳。本文がA5判2段組で670頁もあり、あとの100頁強は註や索引などでぎっしり埋まっています。こういう大作をきっちり手掛ける水声社さんはやはりスゴい出版社です。『対岸』は「フィクションのエル・ドラード」シリーズの最新刊。コルタサルの30~40年代の短篇13篇を収録し、巻末には1963年のハバナでの講演「短編小説の諸相」が併録されています。コルタサルは今年2014年、生誕百年と没後30年を迎えます。『友だちの本』は、「ヘンリー・ミラー・コレクション」第2期の第2回配本(第14巻)で、ミラーの回想録です。「友だちの本」1976年、「ぼくの自転車、そのほかの友だち」1978年、「ジョーイ」「わが人生におけるほかの女性たち」ともに1979年、という回想録三部作です。『シュタイナー教育基本指針I』は、2010年にドイツ語で刊行された「子どもの時代-教育-健康/誕生から三歳までの子ども時代のためのヴァルドルフ教育基本方針」の訳書です。巻末には青山学院大学教授の今井重孝さんによる解説「本書の理解を深めるために」が添えられています。『ベケットのアイルランド』は著者が2007年に東大に提出した博士論文を大幅に書き換えたものです。本書の目的は序章で「ベケットのテクストを、アイルランドをめぐる様々な言説のなかに位置づけ分析することである」と記されています。ベケットが描くアイルランド像の変化を追って「現実のアイルランドの変化に重ね合わせること」が本書の方法だと紹介しておられます。

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by urag | 2014-02-23 18:27 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(2)
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Commented by 久野宏 at 2014-02-24 22:48 x
水声社は、すごいですね。特に、編集者SN氏のご活躍には瞠目です。個人的には、ビダンのブランショ伝が、いつ刊行になるか気になるところです。。
もちろん、月曜社もすごい出版社だと思っています。カッチャーリのアーキペラゴ、期待しています。
Commented by urag at 2014-02-28 17:48
久野宏さんこんにちは。仰っておられるのがもしチーフディレクターのSさんのことでしたら、彼は先日退社されました。ブランショ伝はいまなお進行中と聞きます。アーキペラゴ、がんばります。ありがとうございます。


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