「ほっ」と。キャンペーン
2014年 02月 16日

注目新刊:アタリ『危機とサバイバル』作品社

危機とサバイバル――21世紀を生き抜くための〈7つの原則〉
ジャック・アタリ著 林昌宏訳
作品社 2014年2月 本体2,200円 46判上製292頁 ISBN978-4-86182-310-7

帯文より:予測される21世紀の混乱と危機への“サバイバル戦略”。個人/企業/国家が生き残るための原則とは? “ヨーロッパ最高の知性”がその知識と人生体験のすべてをもとに著したベストセラー。10年後、あなたは本当に生き残る気があるか?

原書:Survivre aux crises, Fayard, 2009.

目次:
[日本語版序文]日本は“21世紀の危機”をサバイバルできるか?
[序文]21世紀を襲う“危機”から“サバイバル”するために
  1 人類史の教訓から学ぶ“危機脱出”の条件
  2 サバイバルを考えるための六つの前提
  3 サバイバル戦略に必要な〈七つの原則〉
第I部 21世紀に予測される“危機”――歴史に学び、未来に備える
 第1章 時代を見通す目を養う
  1 今後10年の変化と危機を予測する
  2 人びとの精神やイデオロギーの進化
 第2章 危機の歴史から、未来を考える
  1 危機を見極めるための心構え
  2 危機の経験を忘れ去る前に
  3 今後10年に予測される危機
 第3章 サバイバル戦略
  1 “消極的な”戦略
  2 台頭しつつある“政治的戦略”
  3 人類史に学ぶ“サバイバル戦略”
第II部 21世紀を“サバイバル”するために――個人/企業/国家/人類のための〈七つの原則〉
 第4章 個人のサバイバル――あなたは本当に生き残る気があるのか?
  1 戦略的サバイバル=「超生命力」のために
  2 〈七つの原則〉の個人への応用
  3 〈七つの原則〉と自己の探求
 第5章 企業のサバイバル――危機に直面した際の企業経営とは?
  1 すべての従業員・関係会社がサバイバル手段を持つ必要がある
  2 〈七つの原則〉の企業への応用
  3 〈七つの原則〉を実践するためのアドバイザー
  4 経営者の能力と〈七つの原則〉
  5 未来の産業分野とサバイバル戦略
 第6章 国家のサバイバル――私たちの公的活動を再検討する
  1 〈七つの原則〉の国家への応用
  2 未来に生き残る国は?
  3 “中心都市”の未来
 第7章 人類のサバイバル――未来の歴史・未来の人類
  1 八回目の生命絶滅の危機
  2 〈七つの法則〉の人類への応用
訳者あとがき

★発売済。帯文が「あなたは生き残れるか」ではなく「あなたは生き残る気があるか」という問いかけになっているのが本書の特徴をよく表しています。可能性云々よりも、まず意志の有無が問われているのです。今回の新刊は、近年訳書が刊行されたアタリさんのどの本よりもプレゼンテーションが図式的にまとまっている印象があります。第I部で世界が向かう未来が大胆に予測され、第II部では21世紀の危機を乗り越えるサバイバルのための七つの原則と、その原則が適用できる四つの次元(個人・企業・国家・人類)について説明されます。この七つの原則と四つの次元との対応が本書のミソなので、概要を以下にまとめておきます。各次元の文言は、本書の目次から採ったものです。ディテールこそが重要ですから、興味を持たれた方はぜひ現物を手にとって著者のアドバイスを味わってください。

第1原則:自己の尊重
自らが自らの人生の主人公たれ。そして、生きる欲望を持ち、自己を尊重せよ。
 個人→本当に自分を愛しているか?
 企業→自社に対する尊敬の念を持っているか?
 国家→本当の「愛国心」とは?
 人類→人類の敵は人類自身である

第2原則:緊張感
20年先のビジョンを描き、常に限りある時間に対して〈緊張感〉を持て。
 個人→自己を見直すことから始まる毎日の革命
 企業→最も重要なものは「時間」である
 国家→歴史の尊重と将来世代の育成
 人類→「未来の歴史」という思考を持つこと

第3原則:共感力
味方を最大化させる「合理的利他主義」を持つために、〈共感力〉を養え。
 個人→共感する力が自己の世界観を変える
 企業→敵を知り、味方を作る
 国家→敵国/同盟国への情報調査と深い理解
 人類→地球環境に対する合理的利他精神

第4原則:レジリエンス
柔軟性に適応した者だけが、常に歴史を生き残る。〈レジリエンス〉を持て。
 個人→失敗を乗り越えてこそ新たなチャレンジができる
 企業→「想定外」を乗り越えるために
 国家→最後まで戦うための備え
 人類→世界的な共通材の保護

第5原則:独創性
“弱点”と“欠乏”こそが、自らの“力”となる。危機をチャンスに変えるための〈独創性〉を持て。
 個人→ストレスやうつ状態を突破する原動力
 企業→危機こそがチャンスである
 国家→資源の欠乏とイノベーション
 人類→危機は人類が進化するためのチャンス

第6原則:ユビキタス
あらゆる状況に適応できる〈ユビキタス〉な能力を持て。
 個人→一つだけのアイデンティティに満足しないノマド的能力
 企業→多分野への挑戦こそ存在意義と人材が問われる
 国家→多文化主義という戦略 
 人類→「未来の人類」を構想する

第7原則:革命的な思考力
危機的状況に対応できない自分自身に叛旗を翻す〈革命的な思考力〉を持て。
 個人→すべてのルールをひっくり返せ
 企業→「正当防衛」のためには何でもありである
 国家→自国を破壊する国際ルールの拒否
 人類→グローバル・ガバナンスと不服従者の決起

★日本に対しては「日本語版序文」の中で手厳しい警告を発しています。「膨張し続ける国家債務、止まらない人口減少と高齢化、社会やアイデンティティの崩壊、東アジア地域との不調和などが挙げられるだろう」(1頁)と冒頭で指摘し、特に人口減少と高齢化への対策としては5つの処方箋を与えています。その一つが移民受け入れで、「21世紀においては、活力のある優秀な外国人を引きつけるための受け入れ環境を整えた国家がサバイバルに成功する」(4頁)と強調しています。提案への賛否はあるにせよ、日本を外から眺めるとこう見えるのだという点は押さえておくべきかと思います。訳者あとがきには、本書に対する著者のこんな言葉が紹介されています。「この本は、私の知識と、私の人生体験のすべてをもとに現した自信作で、私の生き方の秘密を教えたものだ」。反感や猜疑心から読み始めるのも良し、本書は未来へのオープンで率直な問いかけとして、ビジネスマンのみならず広い読者層に思索のひとときを与えてくれることでしょう。

◎ジャック・アタリ(1943-)単独著既訳書

1983年06月『情報とエネルギーの人間科学――言葉と道具』平田清明/斉藤日出治訳、日本評論社
1984年05月『カニバリスムの秩序――生とは何か/死とは何か』金塚貞文訳、みすず書房;新装版、1994年11月
1985年09月『音楽/貨幣/雑音』金塚貞文訳、みすず書房;改題新装版『ノイズ――音楽/貨幣/雑音』、1995年07月;新装版、2006年12月;改版、2012年04月
1986年06月『時間の歴史』蔵持不三也訳、原書房
1994年03月『歴史の破壊 未来の略奪――キリスト教ヨーロッパの地球支配』斎藤広信訳、朝日新聞社;改題文庫版『1492――西欧文明の世界支配』ちくま学芸文庫、2009年12月
1994年07月『所有の歴史――本義にも転義にも』山内昶訳、法政大学出版局
1995年12月『ヨーロッパ未来の選択』磯村尚徳監訳、後藤淳一訳、原書房
1996年05月『ジャック・アタリの核という幻想』磯村尚徳監訳、後藤淳一 訳 原書房
1998年11月『まぼろしのインターネット』幸田礼雅訳、丸山学芸図書
1999年06月『21世紀事典』柏倉康夫/伴野文夫/萩野弘巳訳、産業図書
2001年12月『反グローバリズム――新しいユートピアとしての博愛』近藤健彦/瀬藤澄彦訳、彩流社
2008年08月『21世紀の歴史――未来の人類から見た世界』林昌宏訳、作品社
2009年09月『金融危機後の世界』林昌宏訳、作品社
2011年01月『国家債務危機――ソブリン・クライシスに、いかに対処すべきか?』林昌宏訳、作品社
2014年02月『危機とサバイバル――21世紀を生き抜くための〈7つの原則〉』林昌宏訳、作品社

a0018105_22123384.jpg

+++

◎2014年3月の注目文庫新刊

06日『右翼と左翼はどう違う?』雨宮処凛著、河出文庫、680円
06日『宇宙と人間 七つのなぞ』湯川秀樹著、河出文庫、780円
06日『私のプリニウス』澁澤龍彦著、河出文庫、740円
10日『世間の人』鬼海弘雄著、ちくま文庫、1500円
10日『不測のいまを生き抜くために――終わりなき液状化世界からの44通の手紙』ジグムント・バウマン著、酒井邦秀訳、ちくま学芸文庫、1200円
10日『宗教生活の基本形態(上)オーストラリアにおけるトーテム体系』エミール・デュルケーム著、山崎亮訳、ちくま学芸文庫、1500円
11日『バルセロナ、秘数3』中沢新一著、講談社学術文庫、800円
11日『五十音引き中国語辞典』北浦藤郎/蘇英哲/鄭正浩編著、講談社学術文庫、2,750円
11日『柄谷行人インタヴューズ2002-2013』柄谷行人著、講談社文芸文庫、1800円
12日『三酔人経綸問答』中江兆民著、鶴ヶ谷真一訳、光文社古典新訳文庫、未定
14日『芥川龍之介随筆集』石割透編、岩波文庫、940円
25日『新版 発心集 現代語訳付き』上下巻、鴨長明著、浅見和彦/伊東玉美訳、角川ソフィア文庫、1200円/1120円
25日『告白』全三巻、アウグスティヌス著、中公文庫、各1500円
25日『ミクロコスモス(II)』中沢新一著、中公文庫、700円

※『柄谷行人インタヴューズ1977-2001』講談社文芸文庫が今月発売済、中沢新一『ミクロコスモス(I)』中公文庫は今月25日発売予定です。
[PR]

by urag | 2014-02-16 22:19 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://urag.exblog.jp/tb/19473341
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。


<< 本日取次搬入:スピヴァク『いく...      大竹昭子「森山大道のOn th... >>