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2005年 05月 15日

今週の注目新刊(第4回:05年5月15日[単行本編])

他社版元さんの新刊で、要チェックだなと感じた本を、毎週末、リストアップします。このほかにもたくさん素晴らしい本はありますが、自分がぜひ購読してみたいと思った書目に絞ります。

書誌情報の見方と配列は次のようになっています。

書名――副題
著者、訳者など
版元、本体価格、判型サイズ、頁数(本文, 本文とは別立ての巻末索引や巻頭口絵など)
ISBN、発行年月
■は、図書館流通センターさんのデータを引用&活用した内容紹介。
●は、私のコメントです。

今週は点数が多いため、文庫新書編、単行本編、番外編と三部門に分けます。文庫編につづいて単行本編。

***

フロイト=ラカン
新宮一成(1950-)+立木康介編
講談社(講談社選書メチエ330 知の教科書) 本体1600円 タテ19cm 254p
4-06-258330-5 / 2005.05.
■「無意識」は「他者の語らい」というように、フロイトの独創的な発見は、ラカンによってすべて掬い取られ、深く大きく展開された。人間の「現実」を追究した思想の系としてのフロイト=ラカンが本当にわかる一冊。
●評判がいい新刊ですね。ちなみに今月26日には、岩波書店からラカンのセミネール第5巻『無意識の形成物(上)』(ISBN:4-00-023410-2)が刊行されます。また、次の新装版も発売されました。

フロイトを読む――解釈学試論
ポール・リクール(1913-)著 久米博訳
新曜社 本体7200円 タテ22cm 628, 10p
4-7885-0948-2 / 2005.05.
■1961年秋、著者がイェール大学でテリー記念講座として行なった3回の講義をまとめる。フロイトの全著作を周到精密に読み、自らの解釈学的立場との壮絶な知的対決を通してその哲学的意義を十全に解明。1982年刊の新装版。
●この新装版は以下の新刊にあわせての刊行です。ちなみに、来月には白水社から『解釈の革新』が復刊されます。

記憶・歴史・忘却(下)
ポール・リクール(1913-)著 久米博訳
新曜社 本体4500円 タテ22cm 362p
4-7885-0947-4 / 2005.05.
■「記憶と忘却」の弁証法の中で歴史叙述の可能性をつきつめた壮大な「記憶の政治学」の試み。下巻では歴史の批判哲学、記憶の条件としての「忘却」などを論じ、赦しえないものをいかに赦すかという「困難な赦し」の問題に至る。
●『時間と物語』(全3巻、新曜社)や『意志的なものと非意志的なもの』(全3巻、紀伊國屋書店)と並ぶ、リクールの主著です。全部を買い揃え(税込36,113円也)、なおかつ通読するのはたしかに骨が折れますが、特にこの『記憶・歴史・忘却』全2巻は必読でしょう。関連する主題をめぐるデリダ派の議論とのあいだの差異に注目。

イエスとパウロ――イスラエルの子
アンドレ・シュラキ(1917-)著 長柴忠一訳
新教出版社 本体1200円 タテ19cm 123p
4-400-12135-6 / 2005.04.
■イエスとパウロの二人を、ユダヤ教の立場から一つの神信仰を共有する預言者的実存として、深い共感を込めて描き出す。また同じアブラハム的一神教として、イスラム教を併せた三つの宗教に人類的平和への連帯と共働を促す。著者はアルジェリア生まれのユダヤ思想研究家。パリ大学法学博士。戦後イスラエルに移住し、エルサレム副市長などを歴任。ユダヤ教に関する多数の著書をフランス語で著す。
●シュラキさんの本は主に白水社の文庫クセジュなどで読めます。『イスラエル』『ユダヤ思想』『ユダヤ教の歴史』など。

夜の記憶――日本人が聴いたホロコースト生還者の証言
沢田愛子(山梨大学大学院医学工学総合研究部教授)著
創元社 本体3200円 タテ20cm 470p
4-422-30039-3 / 2005.05.
■決して忘れてはならない、ホロコースト生還者12人が恐怖と不安を乗り越えて語った真実の言葉。その「証言」をよりよく理解できるよう、詳細な解説を収めるほか、ホロコーストの記憶を継承していくことの意味を考察する。
●ボリューム感といい、読み応えのあるものだろうことが期待できます。

パレスチナから報告します――占領地の住民となって
アミラ・ハス(1956-)著 くぼたのぞみ訳 土井敏邦解説
筑摩書房 本体2400円 タテ20cm 299, 3p
4-480-83713-2 / 2005.05.
■ヨルダン川西岸地区ラマラに住むイスラエル人特派員からのレポート。土地や家屋の強制収用、道路封鎖、ジェニン侵攻…。和平のために今、求められているのは何か? 不条理な暴力の日常に生きる現地の人々の声を伝える。著者はイスラエル生まれのジャーナリスト。 同国日刊紙『ハアレツ』の特派員としてパレスチナに住み、現地から記事を送り続けている。
●ハスさんの記事を読んだことがない方は、グーグルなどで検索して、翻訳記事などを読まれるといいかもしれません。彼女はイスラエル人ですが、パレスチナのアラブ人の苦悩と苦境をつぶさに把握しようとしている良識派だと思います。

エボニクスの英語――アフリカン・アメリカンのスラング表現
泉山真奈美著
研究社 本体1800円 タテ19cm 247p
4-327-45188-6 / 2005.05.
■R&Bやラップ、ヒップ・ホップの曲を長年聞き取って訳してきた著者によるEBONICS攻略法! EBONICS(ebony+phonicsから成る造語/アフリカン・アメリカンのスラング)の英語表現を楽しく解説。
●まあ上記のような、攻略ですとか楽しくですとか商売っ気のある宣伝文句には目を瞑るとしまして。私はこの著者の政治的スタンスを知りませんし。エボニクスの文化的政治的歴史的背景を知るためのアプローチとしては、たとえば荒このみさんの二つの著書『アフリカン・アメリカンの文学――「私には夢がある」考』平凡社や『アフリカン・アメリカン文学論――「ニグロのイディオム」と想像力』東京大学出版会も参照しておきたいですね。シドニー・W・ミンツの『〈聞書〉アフリカン・アメリカン文化の誕生――カリブ海域黒人の生きるための闘い』(藤本和子訳、岩波書店)なども。

初稿チャタレー卿夫人の恋人
D・H・ロレンス(1885-1930)著 増口充訳
彩流社 本体2800円 タテ20cm 452p
4-88202-979-0 / 2005.05.
■現在巷に流布する「ワイセツ論争」を呼んだ第3稿を含め、「チャタレー」には3つの作品があった! 「森番」を共産主義者で階級的憎悪が激しい人物として設定し、3つの中で最もリアルで生き生きとした「初稿」を完訳。
●裁判沙汰と言えば、サドの『ジュスチーヌ』も三種類あるわけで。原作の時系列順に並べると、1787年版:澁澤龍彦訳『美徳の不幸』河出文庫、1791年版:植田祐次訳『ジュスチーヌまたは美徳の不幸』岩波文庫、1797(1799)年版:澁澤龍彦訳『新ジュスティーヌ』河出文庫もしくは佐藤晴夫訳『ジュスチーヌ物語又は美徳の不幸』未知谷。

情熱としての愛――親密さのコード化
ニクラス・ルーマン著 佐藤勉+村中知子訳
木鐸社 本体3500円 タテ22cm 299p
4-8332-2363-5 / 2005.04.
■シンボルによって一般化されたコミュニケーション・メディアとしての「愛」を手がかりに、親密な関係を生きる人間を見つめる。ゼマンティクとメディアの概念を軸に近代社会における「親密な関係」の深化の可能性を追究。

演劇のエクリチュール 1955-1957――ロラン・バルト著作集(2)
ロラン・バルト著 大野多加志訳
みすず書房 本体4200円 タテ21cm 279p
4-622-08112-1 / 2005.05.
■「民衆演劇の希望」「なぜブレヒトか?」をはじめとする重要な演劇批評、さらに論争の発端となるカミュ「ペスト論」など、緊張と期待にみちた時代の批評集。

衣裳のフォークロア
ピョートル・ボガトゥイリョフ(1893-1971)著 桑野隆+朝妻恵里子編訳
せりか書房 本体2300円 タテ19cm 218p
4-7967-0263-6 / 2005.05.
■バルトやエーコに影響を及ぼした、ロシアにおける「記号論的アプローチの先駆者」ボガトゥイリョフの、衣装の記号論の古典として定評のある表題作のほか、広告の記号や伝統と即興の関係を論じた論文5編を収録。81年刊の増補・新訳版。
●初訳は松枝到と中沢新一の両氏による英訳本からの共訳でした。このたびはスロヴァキア語原典を参照しつつロシア語訳版から翻訳したそうです。それにしても造本装丁が素っ気ないことよ。ボガトゥイリョフの日本語訳は、このほか、桑野隆訳『民衆演劇の機能と構造』未来社や、千野栄一+松田州二訳『呪術・儀礼・俗信――ロシア・カルパチア地方のフォークロア』岩波書店があり、両方とも入手可能ですから、ぜひこの機会に購入してみてはいかがでしょうか。お奨めです。

フィレンツェ文化とフランドル文化の交流――ヴァールブルク著作集(3)
アビ・ヴァールブルク著 伊藤博明+岡田温司+加藤哲弘訳
ありな書房 本体5000円 タテ22cm 318p 付:図(1枚)
4-7566-0586-9 / 2005.05.
■フィレンツェ人の美的心性とフランドルの彩り豊かな美術表現との、文化の相互交流が生む精緻な美の世界。世界の隠された徴を露にする、イコノロジーというテクネ-イデアの精華。
●全7巻のうち、これで5点まで刊行されたことになります。いずれも薄い本の割には高価ですが、ネームバリューによるものか、私はさほど違和感は感じていません。既刊書の進藤英樹訳『異教的ルネサンス』ちくま学芸文庫(ISBN:4-480-08814-8)もぜひどうぞ。

***

以上です。すべてを購入した場合、12点合計で税込41,685円也。(H)
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by urag | 2005-05-15 21:12 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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