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2013年 11月 24日

注目新刊:高田珠樹訳『存在と時間』全一巻(作品社)、ほか

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存在と時間
マルティン・ハイデガー著 高田珠樹(たかだ・たまき:1954-)訳
作品社 2013年11月 本体6,800円 A5判上製760頁 ISBN978-4-86182-454-8

帯文より:世界=内=存在の本来的な在り方――。存在の意味を問い直し、固有の可能性としての死に先駆けることで、良心と歴史に添った本来的な生を提示する西欧哲学の金字塔。傾倒40年、熟成の訳業。附:用語・訳語解説、詳細事項索引。

★発売済。ここ最近で話題になったハイデガーの新訳と言えば、熊野純彦(1958-)さんによる『存在と時間』(全四巻、岩波文庫)で、今春第一巻が刊行され、第四巻が来月(2013年12月17日)にいよいよ発売になります。そんな最中に、かねてから新訳が準備されていた高田珠樹訳『存在と時間』全一巻が作品社よりついに発売になりました。以前も書きましたが、20世紀の哲学書を代表する『存在と時間』の新訳本が一年のうちに二点も出版されるというのは、めったに起こりえないことです。かつて90年代前半に、シュレーバーの『回想録』が筑摩書房と平凡社で、また、バハオーフェンの『母権論』がみすず書房と白水社で立て続けに刊行された時、いずれも歴史的古典でありなおかつ大著で翻訳が容易ではなかったために、読書界は大いに震撼したものでした。あれからしばらく、似たような衝撃はなかなかありませんでした(以前、ホッブズの新訳本の紹介記事でもそう書きました)が、ついにその時が来たようです。

★高田さんはこれまでスローターダイクや岩波のフロイト新訳全集の翻訳に関わられているほか、90年代の講談社の輝かしい成果である「現代思想の冒険者たち」シリーズの第8巻『ハイデガー――存在の歴史』(講談社、1996年)を書き下ろされ、青土社の「現代思想ガイドブック」シリーズでは、ティモシー・クラークの『マルティン・ハイデガー』(青土社、2006年)の翻訳を担当されました。さらに、ハイデガーの訳書をこれまでに2冊上梓されています。手塚富雄さんとの会談に発する『言葉についての対話――日本人と問う人とのあいだの』(平凡社ライブラリー、2000年)や、「ナトルプ報告」として有名な『アリストテレスの現象学的解釈――『存在と時間』への道』(平凡社、2008年)です。こうした実績を見ると、高田さんがさらにもう一冊、ハイデガーの新訳を手掛けられることはまったく不思議ではないのですが、それでも『存在と時間』は難解で知られる大著ですから、この高峰に挑むことは容易ではなかったはずです。翻訳に至るいきさつや動機は今回の新訳の「訳者あとがき」に詳しく書かれています。

★今回の新訳の底本は、1967年のニーマイヤー社第11版です。1935年の同社第4版、1977年のクロスターマン全集版第1版、1979年のニーマイヤー社第15版を随時参照し、これらの諸版との異同について、巻末の「校異と訳注」にまとめておられます。訳文の下段には、ニーマイヤー社の現行版の頁数が記載されています。熊野さんの新訳との違いですが、高田さんご本人は「訳者あとがき」でこう記しておられます。「熊野氏の翻訳は、私の訳文の作成と見直しの仕事が一段落し、翻訳の原稿を出版社に渡して、初校を待っていたときに出始めたもので、さすがにこの期に及んで読み比べるわけにもいかなかったが、ほぼ同じ時期に出るとあって、全く意識しないということはない。〔・・・〕いくつかの点で自分なりの新味と考えていたものが熊野氏の訳でも行われていて多少、先を越されたという気もしたが、同じ時期に作られ、またすでに先訳がいくつもある中で、いくらか共通したところが出てくるのはむしろ当然なのかもしれない。ただ、基本的には、私のものとはかなり違った訳文のスタイルであると感じた」(683頁)。

★おそらく読者の印象というのは、初めて読んだ訳書のインパクトが往々にして一番強いものなので、もしまだ『存在と時間』を通しで読んだことがない、という方は、現在流通している訳本を一通り買い、できればドイツ語原書も入手して、読み比べてみると良いかもしれません。熊野訳『存在と時間』は第四巻刊行時にセットケース入り全四巻が発売されるようなので、まずは高田訳と熊野訳、そしてさらにお金の余裕のある方は、細谷訳(ちくま学芸文庫、全二巻)、原・渡邊訳(中公クラシックス、全三巻)、辻村訳(創文社版ハイデッガー全集、全一巻)をご購入されれば、流通している訳書は揃えたことになります。存外に重要なポイントをお伝えしておくと、老眼が始まりつつある中年層や御高齢の方には、まず高田訳をお薦めします。A5判の単行本なので、その半分の大きさである文庫本ほど文字が小さくありませんし、他の訳書と違って分冊の煩わしさがなく、この一冊で通読できます。さらに、用語解説や事項索引を完備しているため、全一巻としては申し分のないスタンダードな作りです。原書も全一巻ですから、この姿が最適とは言えます(創文社全集版も全一巻なのですが、活字が作品社版よりだいぶ小さいのでご注意)。ただしその大きさゆえ、持ち運び向きではなく、書斎での読書向きです。菊地信義さんによる美麗な装丁は、書斎でひときわ輝くだろうと思います。

★最後に、高田訳で『存在と時間』の冒頭、序論第一章第一節の最初の部分を読んでみたいと思います。「私たちの時代は「形而上学」をふたたび肯定することを進歩のひとつに数えている。それなのに、右に掲げた問いは今日では忘れられている。「存在〔ウーシア〕をめぐる巨人たちの戦い」を新たに焚きつける努力など自分たちのあずかり知らぬところと高をくくっている。だが、ここに挙げた問いは、どこにでもある類いの問いではない。プラトンとアリストテレスは、その問いをめぐる探求で息をつく暇すらなかった。もっとも、この問いは、その後、実際の考察の主題的な問いとしてはふっつり口をつくんでしまう。ふたりが得たものは、たびかさなる変移や「上塗り」を経てヘーゲルの『論理学』の中にまでついえることなく続いている。断片的で荒削りであったとはいえ、かつて研ぎ澄まされた思考の中で現象からもぎ取られたものが陳腐と化して久しい」(2頁)。


伴侶種宣言――犬と人の「重要な他者性」
ダナ・ハラウェイ(Donna Haraway, 1944-)著 永野文香訳 波戸岡景太解説
以文社 2013年11月 本体2,400円 四六判上製184頁 ISBN978-4-7531-0317-1

帯文より:関係性という物語――。セクシュアリティや種の違いのみならず、サイボーグのように生命と非生命の違いすら乗り越えて共に寄り添う〈重要な他者〉としての伴侶種。その伴侶としての犬との関係性を描いて、現代思想・科学論・フェミニズムの第一人者が、「人間主義」を超える新しい思想を凝縮したマニフェスト。

★発売済。原書は、The Companion Species Manifesto: Dogs, People, and Significant Otherness(Prickly Paradigm, 2003)です。目次詳細は、書名のリンク先をご覧ください。ハラウェイはかつて「サイボーグ宣言」(『増補版 サイボーグ・フェミニズム』水声社や『猿と女とサイボーグ』青土社に所収)を通じて、人間と非人間(異種)との共棲や共進化について考察してきました。その延長線上に本書『伴侶種宣言(コンパニオン・スピーシーズ・マニフェスト』があります。ハラウェイによれば本書は「私的文書であり、あまりに多くの未知領域への学術的侵略であり、グローバル戦争の瀬戸際に立たされた世界で希望をつなぐ政治的行為であり、原理上、永久に進行中の作品」(7頁)です。「犬嫌いのかたであっても、わたしたちが暮らしていく諸世界にとって問題=物質〔matter〕となる議論や物語をきっと見出してくれることだろう」(同)と彼女は述べています。今春訳書が出た『犬と人が出会うとき――異種協働のポリティクス』(高橋さきの訳、青土社、2013年4月;When Species Meet, University of Minnesota Press, 2008)は、本書の5年後に刊行されたもので、本書の議論を引き継ぐものです。なお、1989年の著書『霊長類的ヴィジョン Primate Visions』の日本語訳が以文社より刊行予定とのことです。


彗星的思考――アンダーグラウンド群衆史
平井玄著
平凡社 2013年11月 本体2,400円 四六判並製269頁 ISBN978-4-582-70298-9

帯文より:もやもやを生き抜くための思想と、死なない技術。「惑星の引力圏で罠に落ちなかったものだけが、生き延びるのだ」(オーギュスト・ブランキ)。
推薦文:「本書の書き手である路上の身体は、つねに触診し、想起しつつ思考する。〈未来〉というモンスターにおのれを開き、未聞の集団性を夢見ながら」(鵜飼哲)。「敬愛する玄さん、こんな面倒くさいオヤジがぶつぶつ言っているうちはまだ間に合う。2011年の割れ目から、いいも悪いもひっくるめた蜂起(スーダラ)を呼びかける絶望と希望の書。ココロして読み飛ばしまくれ!」(大友良英)。

目次:
序 「半径一キロ」からの「惑星蜂起」
群衆科学――彗星のクロニクル
野次馬と「ええじゃないか」
竹内好と谷川雁、そして平岡正明
群衆の惑星
彗星的思考
後書 愚か者から愚か者へ

★まもなく発売。2009年から2013年にかけて各紙誌やアンソロジーに書かれたものをまとめなおして加筆した一冊です。予告では『「愚か者」の政治学』と題されていましたが、いみじくもアイソン彗星が夜明けにかすかにたなびくこの季節に『彗星的思考』という美しい書名を得て書棚を飾ることになります。かつてコスタス・アクセロス『遊星的思考へ』(高橋允昭訳、白水社、1975年;新装版、白水社、2002年)という本があって、マルクスとハイデガーの思考を交差させたユニークな成果でした。本書ではマルクスの先行者やマルクスを継ぐ者たちの思想と、311以後の現代日本の路上から見た様々な光景が交差しています。いや、実際のところマルクスの名が教条主義的に召喚されることはなく、錦の御旗でもなく、ただ相変わらず百年以上も資本主義社会の奴隷であり続ける現代人の愚かさを過去から照射する光源として、様々な思想家や活動家、作家、アーティストの言葉が路上にともされます。言葉ありきの思想ではなく、路上ありきの思索です。「愚か者から愚か者への贈りもの」――平井さんは本書をそう表現しています。

★平凡社さんでは今月も実に多彩な出版物を刊行されています。奥山明日香『生きられた家をつむぐ』は、多木浩二さんの名著『生きられた家』(田畑書店、1976年;改訂版『生きられた家――経験と象徴』、青土社、1984年;新版、青土社、1993年;新装版、青土社、2000年;岩波現代文庫、2001年;オンデマンド版、青土社、2012年)からの引用と、奥山さんがかつて住んでいたシェアハウス、通称「外人ハウス」を撮影した写真と奥山さんのコメントによって構成されています。言葉も写真もすべて味わい深く、読んでいる自分もまた、自身の住まいについて改めて観察し記録したくなる衝動に駆られます。とても素敵な本です。

★100%ORANGE『SUNAO SUNAO 3』は、平凡社さんのウェブコンテンツ「ウェブ平凡」での連載(2011年6月~2013年9月までの23回分)をまとめたもの。現実とも夢とも知れぬ世界に暮らすスナオ君の日常をシンプルに描いています。自由なイマジネーションとユーモアに溢れた筆致の中にもそこはかとなく「怖い」空気が漂い、物語は行き場を求めることなくほどけていきます。周知の通り、100%ORANGEは、及川賢治さんと竹内繭子さんによるユニット。『よしおくんがぎゅうにゅうをこぼしてしまったおはなし』(岩崎書店、2007年)で第13回日本絵本大賞を受賞されています。なお、『SUNAO SUNAO 3』の刊行を記念して、青山BC本店では11月19日から12月27日まで「SUNAO SUNAO大原画展」が開催されており、12月7日(土)には、100%ORANGEと辛酸なめ子さんによるトークイベント&サイン会が予定されています。

★このほかにも、昭和30年代から50年代にかけてのレトロフューチャーを満喫できる、大橋博之編著『少年少女昭和SF美術館――表紙でみるジュヴナイルSFの世界』や、ヴィデオアーティストのナムジュン・パイク(1932-2006)のパートナーである久保田成子さんによる希少な証言ドキュメント『私の愛、ナムジュン・パイク』などがありますが、中でも特記しておきたいのは、まもなく発売となる『インターメディアテク――東京大学学術標本コレクション』です。東京駅前のKITTEに隣接するJPタワー(旧東京中央郵便局)内に今春開館し、好評を博している「インターメディアテク」(入場無料)の図録本で、展示されている学術標本数百点をオールカラーで掲載した、たいへん魅力的な本です。一点ずつをじっくり眺めているだけで、色んなインスピレーションが湧いてきます。標本すべてを現地で鑑賞し堪能するにはそれなりの時間がかかるので、訪問した方は必ずもう一度訪れたいと思うものですが、本書を購入すれば「インターメディアテク」がいっそう恋しくなることは間違いありません。早くも版元一時品切だそうで、これだけお買い得な値段であれば、発売早々の品薄も納得できます。マストバイの図録です。

インターメディアテク――東京大学学術標本コレクション
西野嘉章編
平凡社 2013年11月 本体1,800円 A5変型判並製400頁 ISBN978-4-582-28446-1

帯文より:驚異の部屋(ヴンダーカンマー)へようこそ――明治10年の創学以来、東京大学が蒐集してきた膨大な学術標本。時空を超え、東京丸の内に蘇った美しくも奇怪なモノたち。

★なお、インターメディアテクの企画展示スペース「モデュール」では、来春にかけて「驚異の部屋――京都大学ヴァージョン」東京展が開催されています。これは京都大学総合博物館の所蔵する学術標本コレクションのなかから、旧制第三高等学校の遺産を中心とする歴史的な標本約50点を選び出して公開するもの。見逃せません。


武士道の名著――日本人の精神史
山本博文著
中公新書 2013年11月 本体760円 新書判並製216頁 ISBN978-4-12-102243-1

帯文より:現代のサムライたちへ。宮本武蔵、山本常朝から吉田松陰、新渡戸稲造まで。12冊の名著でたどるサムライの精神史。

カバーソデ紹介文より:武士道とは何か。武士はいかに生き、死すべきなのか――。戦乱の世が生み出した軍学書『甲陽軍鑑』『五輪書』から、泰平の時代の倫理書『山鹿語類』『葉隠』へ。そして、幕末維新期の吉田松陰、西郷隆盛へと連なるサムライの思想水脈を経て、武士道を世界に知らしめた新渡戸稲造まで。日本人必読の名著12冊で知る、高潔にして強靭な武士の倫理と美学。章末には、各書から選りすぐった人生指南の「名言」を付す。

目次:
総論 武士道、その精神と系譜
著作解説
(1)小幡景憲『甲陽軍鑑』江戸時代初期――軍学第一の書
(2)柳生宗矩『兵法家伝書』寛永九年(1632)――柳生新陰流の奥義
(3)宮本武蔵『五輪書』寛永二十年(1643)――必勝の思想
(4)山鹿素行『山鹿語録』寛文五年(1665)――武士の職分とは何か
(5)堀部武庸『堀部武庸筆記』元禄十五年(1702)――武士の一分を貫く
(6)山本常朝『葉隠』宝永七年~享保元年(1710-16)――「死狂い」の美学
(7)新井白石『折りたく柴の記』享保元年(1716)――古武士の風格
(8)恩田木工『日暮硯』宝暦十一年(1761)――為政者の理想の姿
(9)佐藤一斎『言志四録』文政七年~嘉永六年(1824-53)――朱子学と陽明学の合体
(10)吉田松陰『留魂録』安政六年(1859)――至誠にして動かざる者なし
(11)西郷隆盛『西郷南洲遺訓』明治二十三年(1890)――義に生きる
(12)新渡戸稲造『武士道』明治三十三年(1900)――理想の日本人像
参考文献

★発売済。中公新書では今春、野中郁次郎編著『戦略論の名著――孫子、マキアヴェリから現代まで』が発売されて話題になりましたが、先の見通し難い現代において、やみくもに突進するのではなくどういうスタンスを取るのか、ということが仕事においても生活においてもますます重要になっています。世間にはそうしたハウツー系自己啓発本が溢れかえっているわけで、そうした中から本物の智慧と呼ぶにふさわしい本を見つけるのは至難の業です。そういう時こそ、歴史の荒波にたえてきた古典に立ち戻ることが重要なわけで、その意味で『戦略論の名著』が有益なガイドブックの役割を果たしたのでした。今回刊行された『武士道の名著』は日本人のメンタリティに即した歴史的名著を取り上げており、『戦略論~』よりいっそう親しみやすいかもしれません。本書が紹介する12冊すべてを現代語訳や注釈書などですでに読み込んでいる、という読者は実際そう多くないでしょうから、この一冊でビジネスマン必読の名著のとっかかりを得ることができるというのは実に有益です。生きざま、死にざまを学ぶことができます。


ビジュアル版 自然の楽園――美しい世界の国立公園大図鑑
アンジェラ・S・イルドス/ジョルジオ・G・バルデッリ編 藤原多伽夫訳
東洋書林 2013年11月 本体12,000円 A4判上製320頁 ISBN978-4-88721-815-4

版元紹介文より:世界6地域、52の国立公園をフルカラー写真650点で巡る。息を呑む地球の魅惑を余すことなく伝える一冊。公園の来歴や生態系等、基礎情報も充実。

★発売済。原書は、The Great National Parks of the World(2001/2009, White Star)です。ヨーロッパ、アフリカ、アジア・中東、オセアニア、北アメリカ、中央・南アメリカといった六つのエリアに分けて代表的な国立公園をカラー写真で紹介する図鑑です。雄大な自然とともに公園内の動植物も数多く紹介されています。詳細目次はこちらをご覧ください。日本からは、上信越国立公園がエントリー。主に雪山に遊ぶニホンザルが大きくフィーチャーされています。イルドスもバルデッリもともに日経の「ナショナルジオグラフィック・キューブブック」で『動物の親子』や『野生動物』をこれまでに手掛けていますから、動物好きの方は著者たちの名前に見覚えがあるかもしれません。

★作家と学者のおふた方が推薦文を寄せられています。池澤夏樹さん曰く「大富豪になってこの本にある52個所の国立公園をすべて訪れることを夢想する。1個所に1か月ずつ滞在するとして、ぜんぶで4年以上。目のくらむような贅沢だ。贅沢の手始めにまずはこの本を1ページ1ページ精読する。それだけでもすばらしい贅沢。世界は驚異に満ちているし、今それは我々の手の届くところにある」。奥本大三郎さん曰く「われわれ人間さえいなければ、この世界はまさにエデンの園である。アダムとイヴのいないエデンの園――そこで昆虫採集をしたらどんなに楽しいだろう、と考えるのは矛盾しているけれど、私は眠りにつく前にしばしばそんな空想をする。本書は楽園の断片の大集成である」。


抵抗と亡命のスペイン語作家たち
寺尾隆吉編著
洛北出版 2013年11月 本体3,200円 四六判上製294頁 ISBN978-4-903127-20-0

帯文より:スペインのフランコ体制、ラテンアメリカの軍事独裁政権、キューバのカストロ体制など、スペイン語圏では繰り返し、権威主義的政治体制が台頭している。この体制の専横に苦しんだ彼らは、その経験をどのように表現し、権力への抵抗につなげていったのか。苦境のただ中で創作をつづける作家たちの活動を紹介する。

★発売済。執筆陣は、寺尾隆吉(てらお・りゅうきち:1971-:フェリス女学院大学国際交流学部准教授)、大西亮(おおにし・まこと:1969-:法政大学国際文化学部准教授)、山辺弦(やまべ・げん:1980-:日本学術振興会特別研究員)、浜田和範(はまだ・かずのり:1980-:東京大学大学院総合文化研究科博士課程在籍)の四氏。目次詳細と内容の一部は、書名のリンク先でご覧になれます。水声社で目下刊行中の新シリーズ「フィクションのエル・ドラード」で中心的な役割を果たしておられる寺田さんが編者をおつとめになっています。寺田さんの言葉を借りれば、「スペイン・ラテンアメリカ文学の現状を照射する」意図(286頁)のもとに執筆編纂されており、「抵抗」と「亡命」という二つのキーワードのもと、スペイン語圏から様々な作家を取り上げ、具体的に作品を分析しながらその特質を検証」(15頁)しているとのことです。「権威主義的政治体制の成立と作家たち」と「自由を求める作家たち」の二部構成で、7つの論文が収録されています。巻末には主要人名索引があります。

★なお洛北出版さんの今後の刊行予定には、フィリップ・テイラー『応用演劇――コミュニティを変える出会いの創造(仮)』や、エドゥアルド・ヴィヴェイロス・デ・カストロ『食人の形而上学(仮)』などの書目が挙がっています。
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by urag | 2013-11-24 23:42 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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