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2013年 11月 10日

注目新刊:バンヴェニスト「一般言語学の諸問題」第2巻、ほか

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言葉と主体――一般言語学の諸問題
エミール・バンヴェニスト著 阿部宏監訳 前島和也・川島浩一郎訳
岩波書店 2013年10月 本体7,000円 A5判上製函入318頁 ISBN978-4-00-022930-2

帯文より:『一般言語学の諸問題』第II巻、待望の邦訳。幾多の思想家を触発してきた稀代の言語学者エミール・バンヴェニスト(1902-76年)。『一般言語学の諸問題』第I巻の邦訳(みすず書房)から30年の時を経て、待望の第二論文集、完訳なる。

目次:
凡例
監訳者まえがき
まえがき
第I部 言語学の変遷
 第1章 構造主義と言語学
 第2章 歴史を作る言語
第II部 コミュニケーション
 第3章 言語の記号学
 第4章 言葉と人間の経験
 第5章 発話行為の携帯的装置
第III部 構造と分析
 第6章 言語の構造と社会の構造
 第7章 類型論的一致
 第8章 品詞転換のメカニズム
 第9章 言語範疇の変形
 第10章 ドイツ語前置詞vorの意味分析に向けて
第IV部 統語的機能
 第11章 名詞複合の統語的基盤
 第12章 名詞複合の新形式
 第13章 助動詞的関係の構造
第V部 言語の中の人間
 第14章 現代フランス語における代理名詞と代名詞
 第15章 言葉における形態と意味
第VI部 語彙と文化
 第16章 教会用語のたどった道――ラテン語orarium
 第17章 術語scientifiqueの成立過程
 第18章 暴言的発話と婉曲的発話
 第19章 フランス語における語彙的分化
 第20章 都市国家の二つの言語的モデル
解題
索引

★発売済。待望の、本当に文字通り待ち望まれた翻訳です。原書は、Problèmes de linguistique générale II(Gallimard, 1974)。1965-72年にかけて発表された論考、インタヴュー、講演など、20篇を収めています。1966年に刊行された原書第I巻は、岸本通夫監訳『一般言語学の諸問題』としてみすず書房より1983年に抄訳が刊行されています。周知の通りバンヴェニストは晩年に失語症を患い、彼の研究は途絶しました。本書では言語能力を失うその目前までの論考を収めています。巻頭の「監訳者のまえがき」はバンヴェニストの業績と翻訳の分担について紹介し、巻末の「解題」は「一般言語学関連の概説的な内容以外の章について、訳者による簡略な解説」を付したものです。索引は「事項」「語」「人名」別に立てられています。


マヌ法典 
渡瀬信之訳注
東洋文庫(平凡社) 2013年11月 本体3,300円 全書判上製函入528頁 ISBN978-4-582-80842-1

帯文より:『マヌ法典』は世界創造から社会と人生の理法を説き、インド社会の原型を規定したヒンドゥー教の古代法典であり、インド古典文学の至宝でもある。サンスクリット原典からの全訳。

★まもなく発売。「東洋文庫」第842巻。中公文庫版(1991年)の再刊です。巻末の訳者による「東洋文庫版での再刊にあたって」によれば、「再刊に際しては、訳文および訳注の一部改訂を行った」とのことです。中公文庫版は本体757円だったので、それに比べると高額になった感は否めませんが、ともあれ再刊によって品切状態が解消されたことは喜ばしいことです。苛烈さと寛容さを兼ね備えた実践的な道徳哲学の書でもあるマヌ法典は現代人にとっても今なお興味深い世界観を示しています。この古えの法典はなによりまず世界の創造を語るところから始まります。現代の法律が宇宙の起源の記述から始まることなどありえませんが、ある意味では起源の問いを欠いたまま法が語られるのですから、それはそれで奇妙なものではありますね。


世説新語1 
劉義慶撰 井波律子訳注
東洋文庫(平凡社) 2013年11月 本体2,900円 全書判函入362頁 ISBN978-4-582-80843-8

帯文より:乱世が生んだ機智縦横の中国的レトリックの精華。後漢末から東晋末(2世紀末~5世紀初)、「清談」が流行し、竹林の七賢が現れる。エピソードの集積による、魏晋の貴族・名士たちの逸話集。

★まもなく発売。「東洋文庫」第843巻。全5巻予定で、第1巻では上巻の徳行第一、言語第二、政事第三までが収録されています。巻頭に訳者による概説である「はじめに」が置かれ、巻末には「官職表」と「関連略年表」が付されています。「官職表」というのは、官僚の職名と仕事内容を簡潔に説明した一覧です。本文は、原文、訓読、注釈、口語訳、解説で構成されています。随所に氏族の家系図を補足。名士たちの様々なエピソードは卓抜な人生訓として読むことができます。簡潔な原文に込められた含蓄は時に口語訳を読んでもよく分からない箇所があるのですが、続く解説で井波先生が謎ときをしてくださいます。解説を読む前に自分でその含蓄を想像してみる楽しみも本書にはあります。

★「東洋文庫」次回配本は12月、ガザーリー『中庸の神学』中村廣治郎訳注、版元紹介文によれば「ガザーリーは11世紀にイスラームの神学・哲学・神秘主義を深めたイスラーム最大の思想家の一人。思想遍歴を代表する三編を収録」と。


わたしの好きなクリスマスの絵 
フェデリコ・ゼーリ著 柱本元彦訳
平凡社 2013年11月 本体1,500円 A5変型判上製56頁 ISBN978-4-582-65207-9

カバー紹介文より:聖夜にひらく小さな宝石箱。西ローマ帝国末期のモザイクから、ジョット、ジェンティーレ、ボッティチェッリ、コッレッジョ、ティントレット、ベラスケス、ティエポロまで、すべてを知り尽くした老美術史家が静かに語る、珠玉のキリスト降誕図12点。

★まもなく発売。原書は、Le mie natività(Interlinea, 2000)です。収録されている聖画はいずれもフルカラー印刷で美しいです。聖画の一部を利用して挟み込まれた紙の栞も素敵ですし、ですます調で訳されたゼーリの柔らかい聖画解説も印象的です。訳者あとがきによれば、著者のフェデリコ・ゼーリ(Federico Zeri, 1921-1998)は、トエスカ、ロンギ、ベレンソンの高弟であり、「イタリア美術史界のいわば異端的正統の流れを受けつぎ、超人的な博識と鑑識眼を武器にして頑固なアカデミズムに反抗し続けた」(54頁)人物でした。既訳書には2点あります。『イメージの裏側――絵画の修復・鑑定・解釈』(大橋喜之訳、八坂書房、2000年)と、『ローマの遺産――「コンスタンティヌス凱旋門」を読む』(大橋喜之訳、八坂書房、2010年)。ちなみに今回の新刊の翻訳を手掛けられた柱元さんはまもなく発売のトルナトーレ『鑑定士と顔のない依頼人』の訳者でもあります。


バタイユ――呪われた思想家
江澤健一郎(えざわ・けんいちろう:1967-)著
河出ブックス 2013年11月 本体1,500円 B6判並製256頁 ISBN978-4-309-62465-5

帯文より:人間は裂け目から生まれたのであり、われわれとは開かれた傷口なのだ。裂傷という主題から思想家の全体を透視し、不定形なるものとして人間と芸術の根源にせまりながら、バタイユ像を根底から変える決定版入門。

目次:
序 裂傷の思想家バタイユ
第一章 開かれた傷口――内的体験の視覚的対象
第二章 裂け目から生まれる芸術、そして人間――『ラスコーあるいは芸術の誕生』をめぐって
第三章 不定形の・・・
第四章 二つの身体
第五章 傷口〔トラウマ〕としての写真
第六章 低次唯物論から変質へ
第七章 無頭の絵画――アンドレ・マッソン
第八章 絵画という開かれた傷口――『マネ』をめぐって
結 芸術と共同性
あとがき


★まもなく発売。『ジョルジュ・バタイユの《不定形》の美学』(水声社、2005年)に続く、著者の第二作です。第一作は博士論文を元にしたものですから、今回の『バタイユ』が、改めてのデビュー作だと見ることもできると思います。本書は、雑誌や紀要、論文集などに発表された論考を大幅改稿し、さらに書き下ろし(序、第一章、第二章、結)を加えたものです。本書のキーワードは「傷口」です。第一章では早々に例の「中国の百刻みの刑」の写真が出てきますから、心臓の弱い方はご注意ください。これは読者を驚かそうという意図なのではなく、バタイユが自ら「取り憑かれた」と『エロスの涙』で告白したことを受けていて、さらにバタイユがコジェーヴ宛の書簡で書いた「私の生は――あるいはその破綻、さらには私の生という開かれた傷口は――」(『有罪者』)という言葉との響き合いから必然的に参照されたものです。開かれた傷口としてのバタイユの〈非-知〉の体験を辿りつつ、江澤さんはこう問います、「そもそも人間は、芸術という傷口から生まれたのではなかったか」(33頁)。

★江澤さんはさらに、バタイユの『ラスコーあるいは芸術の誕生』、雑誌「ドキュマン」に寄稿した芸術論」、『マネ』を参照しつつ、「バタイユと共に芸術の可能性と不可能性について考察」(13頁)していきます。本書はすぐれたバタイユ論であると同時に、バタイユの「傷口」に寄り添いつつ、知の円環に生じる亀裂としての芸術作品を論じた芸術論でもあります。暗い裂け目の中での「全面的な交流〔コミュニケーション〕」(62頁)の充溢を見つめようとした本書は、人文書売場だけでなくぜひ芸術書売場でも置かれてほしい本です。


風景の死滅 増補新版
松田政男(まつだ・まさお:1933-)著 平沢剛解説 
航思社 2013年11月 本体3,200円 四六判上製344頁 ISBN978-4-906738-05-2

帯文より:風景=国家を撃て! 永山則夫、フランツ・ファノン、チェ・ゲバラ、国際義勇軍、赤軍派、『東京战争戦後秘話』、若松孝二、大杉栄……何処にでもある場所としての〈風景〉、あらゆる細部に遍在する権力装置としての〈風景〉にいかに抗い、それを超えうるか。21世紀における革命/蜂起論を予見した「風景論」が、40年の時を超えて今甦る――死滅せざる国家と資本との終わりなき闘いのために。

★発売済。シリーズ「革命のアルケオロジー」の第2弾です。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。奥付の対向頁に印刷された編集部の注記によれば、本書は『風景の死滅』(田畑書店、1971年)に以下の3篇が追加されたものです。「密室・風景・権力」(『薔薇と無名者』芳賀書店、1970年)、「風景論の起点」(『デザイン』1971年1月号)、「風景」(『映画批評』1971年1~6月号)。「密室~」は「若松映画と性の「解放」――序に代えて」という副題を付されて巻頭に配され、あとの2篇は本書の末尾に置かれています。「あとがき」には、2013年10月22日付の「追記」が付されています。また、巻末に平沢剛さんによる長文解説「風景論の現在」が併録されており、本書の現在的意義が熱く論じられています。その中で、航思社さんの近刊書『私闘する革命――戦後思想の10人』も予告されています。この本は航思社さんのウェブサイトでも近刊予告が出ていて、平沢さんは「松田自身が60~70年代を主軸に自らの半生を広範に語った」本だと紹介しておられます。『風景の死滅』1971年版(初版)の付録であるリーフレットに収められていた、作家の五木寛之さんによる推薦文「《風景の死滅》のために」は、その抜粋が今回の増補新版の帯(表4・裏表紙側)に長めに引用されています。

★本書の発売を記念して、以下のトークイベントがJR御茶ノ水駅徒歩7分の「book cafe ESPACE BIBLIO(エスパス・ビブリオ)」で開催されます。エスパス・ビブリオは千駄ヶ谷のブックカフェ「ビブリオテック」が運営主体の(株)スーパースタジオの移転により、先月リニューアル・オープンしたものです。

風景=国家を撃て! 風景論の新たな地平に向けて――松田政男(評論家)×足立正生(映画監督)×平沢剛(映画研究者)トークショー+『略称連続射殺魔』上映(ブルーレイ上映)

内容:70年代に大議論を巻き起こした「風景論」。それが今、生-政治や平滑空間、装置論などを先取りし、国家/資本主義への新たな対抗軸を示したものとして読み直されようとしている。風景論の画期をなした映画の上映とともに、主要論者2人とその後継による鼎談で、21世紀の「新たな革命的地平」を探る。

日時:2013年11月23日(土)17:00より上映開始(16:30開場、18:45よりトーク開始)
会場:ESPACE BIBLIO(エスパス・ビブリオ:千代田区神田駿河台1-7-10)
料金:1,500円(当日精算)
定員:50名予約制 ※メール(biblio@superedition.co.jp)または電話(Tel.03-6821-5703)にて受付。メールの場合、件名「松田×足立×平沢トーク希望」にてお名前・電話番号・参加人数をお知らせ下さい。おって返信メールで予約完了をお知らせいたします。

『略称連続射殺魔』(1969年製作、86分)について:永山則夫が流浪した足跡を忠実に追い、日本列島を縦断、香港にもおもむき、永山の見たであろう風景を丹念にカメラに収め、永山が生まれてから逮捕されるに至るまでの道程を写し出す。監督:足立正生、製作:足立正生・松田政男・佐々木守・岩淵進・野々村政行・山崎裕、撮影:野々村政行、音楽:相倉久人・富樫雅彦・高木元輝、ナレーション:足立正生。


海賊旗を掲げて――黄金期海賊の歴史と遺産
ガブリエル・クーン著 菰田真介訳
夜光社 2013年11月 本体2,000円 四六判並製384頁 ISBN978-4-906944-02-6

帯文より:われわれはなぜ、海賊に魅せられるのか。海賊旗〔ジョリー・ロジャー〕を掲げて生きるとは、いかなることか。現代において海賊から学ぶことはあるのか。

版元新刊案内より:本書によって試みられているのは、海賊の価値をめぐって、その是非を性急に結論づけることではなく、黄金期海賊の歴史を、その前史であるバカニーアの時代から辿り、海賊たちの生活や文化、政治、経済などさまざまな角度から考察するとともに、フーコーやドゥルーズ=ガタリ、クラストル、ゲバラ、そしてニーチェらの思想、理論との比較を通して、決して過去の時代のものだけではない、現代にも脈々と受け継がれている海賊の本質的なラディカルさを明らかにすることである。また、M・レディカー、P・アール、D・コーディングリーらの見解や引用がふんだんに示されており、世界的な海賊研究の最新の見取り図を知るための一助としても、本書は活用しうる。

★発売済。『アナキストサッカーマニュアル――スタジアムに歓声を、革命にサッカーを』(甘糟智子訳、現代企画室、2013年)に続く、ガブリエル・クーン(Gabriel Kuhn, 1972-)の訳書第2弾です。原著の順番で言えば、『アナキストサッカーマニュアル』が2011年刊で、その前年に刊行されたのが今回翻訳された『海賊旗を掲げて』です。原書は、Life Under the Jolly Roger:Reflections on Golden Age Piracy(PM Press, 2010)です。目次詳細は版元ブログをご覧ください。クーンはオーストリア生まれで現在はスウェーデン在住の作家。本書では海賊史をひもときながら、その政治的意義や組織構造、経済や倫理を分析し、こんにちのラディカルな海賊熱に政治的意義を与え、「ジョリー・ロジャー(海賊旗)を、単なる象徴儀式に堕することなくバルコニーや集会ではためかせる方法を提示」(18頁)しています。

★訳者の菰田真介(こもだ・しんすけ:1985-)さんは今春すでに一冊、ハキム・ベイことピーター・ランボーン・ウィルソンの海賊論を翻訳されたばかりです(『海賊ユートピア――背教者と難民の17世紀マグリブ海洋世界』以文社、2013年)。また、夜光社さんは9月に思想誌「HAPAX」を創刊されていて、それ続く新刊が今回の『海賊旗を掲げて』になります。しっかりした文脈が感じられるこうした書物の連鎖はきっと読者に届くことだろうと信じます。
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by urag | 2013-11-10 23:49 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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