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2013年 10月 28日

注目新刊:新版『アリストテレス全集』岩波書店、ほか

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新版 アリストテレス全集(1)カテゴリー論 命題論
内山勝利・神崎繁・中畑正志編
岩波書店 2013年10月 本体5,600円 A5判上製函入464頁 ISBN978-4-00-092771-0

帯文より:約半世紀振りの新版全集。ここには驚きがある、智慧がある。現代に未だ大きな知的刺激を与え続ける「万学の祖」の原像を浮かび上がらせる。

版元紹介文より:言語に表現される存在の基本的区分を論じ、古来アリストテレス入門に使用された『カテゴリー論』、言明の意味論と言明相互の論理関係を分析する『命題論』。「オルガノン」(学問の道具)の第一として後世の哲学に比類なき影響を及ぼした二著作に加え、古代の代表的な伝記、全集全体の道案内となる編者総説を収録する。

目次:
カテゴリー論(中畑正志訳)
命題論(早瀬篤訳)
アリストテレス諸伝
 ディオゲネス・ラエルティオス(近藤智彦訳)
 ヘシュキオス(近藤智彦訳)
 サン・マルコ図書館所蔵写本(近藤智彦訳)
 プトレマイオス(高橋英海訳)
解説(カテゴリー論/命題論/アリストテレス諸伝)
編者総説
 アリストテレスの生涯と著作(内山勝利)
 アリストテレス哲学案内(神崎繁)
 歴史のなかのアリストテレス――テキストと思想の冒険(中畑正志)
年表・地図
索引(カテゴリー論/命題論)

★発売済。岩波書店100周年記念出版のひとつです。全20巻+別巻の構成はこちら。第1回配本(第1巻)の12頁分の立ち読みPDFはこちら。付属の月報1は全8頁で、飯田隆「アリストテレスに出会った頃」と、坂口ふみ「横目で見たアリストテレス」を所収。出隆監修・山本光雄編の旧版全集では「カテゴリー論」と「命題論」は「分析論前書」「分析論後書」とともに第一巻(1976年)に所収。二作とも山本光雄さんの訳でした。二作の別訳には、「世界古典文学全集(16)アリストテレス」(筑摩書房、1966年)および「古典世界文学(16)アリストテレス」(筑摩書房、1976年)に収録された、松永雄二訳「カテゴリアイ(範疇論)」、水野有庸訳「命題論 (言葉によるものごとの明示について)」があります。さらに古い訳には、安藤孝行訳『範疇論・命題論』(増進堂、1949年)があります。旧訳版全集全17冊は、刊行年を気にしなければ、揃いで古書価2万円前後から買えます。旧訳版の最終重版は1993~1995年の4刷(第4次刊行)でした。この版で揃えようとすると正価が8万円強なので、半額程度にしかなりません(半額でも充分安いですが)。ともあれ、岩波書店さんには旧訳版も絶版扱いではなく、何かしらの形で入手可能なままにしてほしいです。なお、新版の第2回配本は12月5日、第5巻「天界について/生成と消滅について」とのことです。


無限の始まり――ひとはなぜ限りない可能性をもつのか
デイヴィッド・ドイッチュ著 熊谷玲美・田沢恭子・松井信彦訳
インターシフト 2013年11月 本体3,700円 46判上製616頁 ISBN978-4-7726-9537-4

帯文より:限りない知の宇宙へ出よ! 年間ベスト科学本(「ニューサイエンティスト」誌)、年間最重要作(「ニューヨーク・タイムズ」紙)。全米ベストセラー! 『世界の究極理論は存在するか』で〈知〉の衝撃をもたらしたドイッチュ、超弩級の新展開。宇宙において人間とはなにか? 人間はなぜ限りない可能性をもつのか? 多宇宙と量子物理学の核心とは? 生命が遺伝暗号DNAへ飛躍した謎とは? 文化と創造力はいかに進化するか? 望ましい政治の選択とは? 花はなぜ美しいのか? 持続可能性は良いことか? 物理学、天文学、生物学、数学、コンピューターサイエンス、政治学、心理学、哲学・倫理、美学を統合する「万物の理論」へ!

★まもなく発売。原書は、The Beginning of Infinity: Explanations that Transform the World(Allen Lane / Viking Press, 2011)です。目次詳細は書名のリンク先をご参照ください。著者のデイヴィッド・ドイッチュ(David Deutsch、1953-)はイスラエル・ハイファ生まれ、イギリス在住の物理学者で、オックスフォード大学量子計算研究センターに所属しています。本書の著者略歴では「量子計算理論のパイオニアにして、並行宇宙論の権威、多世界解釈の主唱者として知られる」と紹介されています。既訳書に『世界の究極理論は存在するか――多宇宙理論から見た生命、進化、時間』(林一訳、朝日新聞社、1999年)があります。この既訳書に続く、ドイッチュによる一般読者向けの読みもの第2弾が本書『無限の始まり』です。

★帯文にある通り、本書が展望する知の領域は広大ですが、つい最近、ポパー『歴史主義の貧困』の新訳(日経BPクラシックス、2013年9月)を読んだ方は、本書の次のような主張に目を留めるかもしれません。「本書で私が主張するのは、あらゆる進歩は、理論上と実際上のどちらの進歩であっても、それはある一つの人間活動、つまり私が「良い説明」と呼ぶものの探求によって生じたということである。良い説明の探求というのは、他に類を見ないほど人間的な行為だが、そこからは、最も非個人的な、宇宙レベルでの実在に関する基本的事実が得られる、それは、実在は、真に良い説明である普遍的な自然法則に従うという事実だ。宇宙レベルと人間レベルのあいだに存在する、このシンプルな関係性は、物事の宇宙レベルの構造において人々が果たす中心的な役割を暗示している」(10-11頁)。実際に本書の参考文献でもっとも多い著書が上がっているのはポパーなのです。

★著者はこう続けます。「進歩は、破局のなかで、あるいはある種の完了という形で、かならず終わりを迎えるものなのだろうか? それとも終わりのないものなのだろうか? 答えは後者だ。それがまさに、この本のタイトルで言う「無限」である。〔・・・〕進歩には必然的な終わりはないが、必然的な始まり、つまり「原因」や「進歩の始まりと同時に起こる一つの事象」、「進歩が始まり、広がっていくための必要条件」はある〔・・・〕。こうした始まりの一つずつが、その分野にとっての「無限の始まり」ということになる」(11頁)。主要な各章の末尾には、その章が扱う分野やトピックにおける「無限の始まり」が何であるかが箇条書きで列記され、さらに「まとめ」が付されています。

★「未来の知識の内容を予測できないことが、未来の知識が限りなく成長することの必要条件である」(270頁)と著者は書きます。著者は科学的探究の姿勢においても政治的選択の姿勢においてもポペリアンであり、ウィトゲンシュタインや言語哲学、ポストモダン思想を拒むものです。また、マルクスやジャレド・ダイアモンドにも痛烈な批判を向けています。中でもはっとさせられたのは、第17章「持続不可能性」で著者が示した次の要点です。「願望としての、あるいは計画に対する制約としての、持続可能性(の見せかけ)を拒否すること」(587頁)。ドイッチュの問題提起といかに向き合うかが現代の知に問われている気がします。


国境 完全版
黒川創(くろかわ・そう:1961-)著
河出書房新社 2013年10月 本体3,600円 46変形判432頁 ISBN978-4-309-02217-8

帯文より:名著新生。文学の歴史の「失われた環(ミッシングリンク)」が、そこに残っている。漱石が、植民地「満州」で果たしていた、知られざる使命。鴎外が、「うた」に隠した戦場での真実と良心の疼き。異国語としての「日本語」を生き、抗った、数多くの作家たち。あくなき資料検証と、深い思索がひらいた、未踏の日本語文学史。

あとがきより:「1998年初めに旧版『国境』を上梓したとき、自分にとって、このテーマはきりのない仕事になるのだろうな、と実感した。日本の旧植民地を背景として書かれた、たくさんの(そして、いまは大半が忘れられている)「日本語文学」と、そこに流れた精神史のかかわりを明らかにしたいと考え、手探りでこの作業に取り組みはじめたのは、まだ、1990年代の前半だった。(中略)『国境』の仕事を今度こそ本当に完結させるためには、さらに自分はここから何を書くべきか。足かけ20年ごしで、やっと、それが見えてきた。これを実行したのが本書『国境[完全版]』である」。

目次:
漱石・満州・安重根――序論にかえて
漱石が見た東京
居心地の悪い旅のなかから
漱石の幸福感
それでも、人生の船は行く
国境
月に近い街にて――植民地朝鮮と日本の文学についての覚え書き
輪郭譚
洪水の記憶
風の影
漂流する国境――しぐさと歌のために
98年版『国境』のための「あとがき」
視野と方法――[完全版]のためのやや長いあとがき
初出一覧

★発売済。親本は1998年、メタローグ刊。当時の帯文はこうでした。「国境にとどまって、ことばを生きなおす。旧植民地という領域を越えて、日本語文学の想像力のゆくえをたどる思考の軌跡。作家と作品に秘められたミステリーに迫る最新評論集」。今回の完全版は、奥付前の特記によれば「大幅改訂の上、増補したもの」とのことです。巻末の完全版用あとがきにはこう書いてあります。「本書『国境[完全版]』は、今年(2013年に入って新しく書いたものと、旧版『国境』に収めた主要論考で構成することにした。巻頭の「漱石・満州・安重根」から「それでも、人生の船は行く」までが、今年の新しい論考。それより後ろのものが、旧版『国境』に収めていたものである。これらにも、執筆当時の時制を前提としながら、必要と思える加筆・改稿を行なった」(424頁)。「初出一覧」によれば巻頭の50頁を超える「漱石・満州・安重根」が書き下ろしで、それに続く4篇は今年、雑誌等に発表されたものです。なお、旧版では「風の影」と「漂流する国境」の間に「この赤ん坊のような宇宙――ヤドランカ・ストヤコヴィッチ」というテクストがありましたが、完全版では収録から外れたようです。


白川静を読むときの辞典 
立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所=編
平凡社 2013年10月 本体1,800円 四六判並製256頁 ISBN978-4-582-40336-7

帯文より:白川静に親しむために、知りたい言葉がある。亦声・擬制・興的発想・ことだま・祭事詩・載書・自己詛盟・呪禁・説文解字・大盂鼎・巫祝・文身・卜辞・文字系列などを平易に解説した白川説への手引きの書。

★発売済。執筆者65名、「安騎野の冬猟歌」から「和名類聚抄」まで50音順に約600項目。巻末には白川さんの主要著作紹介と索引。辞典好きや雑学好きにはたまらない一冊で、どこを開いて読んでもためになります。古代世界がそこかしこに口をあけて待っていて、ときどき禍々しい語句の説明をごく淡々と読者に与えてくれるのも、刺激があっていいです。こういう本こそ通勤通学の短時間読書に向いているのかも。

★岩波書店さんは今年が創業100周年、平凡社さんは来年創業100周年ということで、平凡社さんでは100周年記念出版として『竹田津実写真集 アフリカ――いのちの旅の物語』(本体10,000円、B5横判上製304頁、ISBN978-4-582-52973-9)を出版されました。竹田津実(たけたづ・みのる:1937-)さんは北海道在住の獣医さんで、数々の動物写真集を出しておられます。今回の新刊は、アフリカのサバンナを35年にわたって撮り続けてきた写真の中から精選して構成。写真とともに竹田津さんのコメントも添えられています。序文は河合雅雄さん。色彩豊かな大自然とそこに生きる動物たちが活写されています。本書の刊行記念に以下の通り写真展が行われています。

◎キヤノンギャラリー「アフリカ いのちの旅の物語」展(銀座:10月24日~30日、梅田:11月7日~13日、福岡:11月21日~12月3日、札幌:12月19日~2014年1月14日 ※いずれも日曜・祝日は休館)
◎栃木県のツインリンクもてぎ・森の自然体験ミュージアム〈ハローウッズ〉野外展示「アフリカ 竹田津実 写真展『いのちの旅の物語』」(10月20日~12月1日)
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by urag | 2013-10-28 02:42 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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