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2013年 07月 15日

注目新刊と既刊:パラケルスス『アルキドクセン』ホメオパシー出版、ほか

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アルキドクセン――パラケルスス錬金術による製薬術の原論
パラケルスス著 澤元亙訳 由井寅子日本語版監修
ホメオパシー出版 2013年5月 本体2,800円 A5判上製288頁 ISBN978-4-86347-074-3

版元紹介文より:「賢者の石」など伝説のアイテム群の作り方を一挙公開! 西洋錬金術の歴史において最も有名な、パラケルスス著『アルキドクセン』の邦訳です。大ヒットアニメ『鋼の錬金術師』や大ヒット映画『ハリーポッター』にも登場する「賢者の石」の名前を一度は聞いたことがある人も多いことでしょう。本書には、パラケルスス自身によって実際に使用された医薬、すなわち、秘薬(アルカナ)と呼ばれる第一物質・賢者の石・生命の水銀・チンキ剤、そして、さまざまな種類の第五精髄(クインタエッセンティア)・霊薬(エリクシール)・変成物(マグナリウム)・特効薬などのつくり方が説かれており、錬金術による製薬術を語る上で欠かすことのできない歴史的な書です。

目次:
監修者まえがき(由井寅子)
第一巻 人体の神秘
第二巻 (欠)
第三巻 元素の分離
第四巻 第五精髄の神秘
第五巻 秘薬の神秘
第六巻 変成物の神秘
第七巻 特効薬の神秘
第八巻 霊薬の神秘
第九巻 外用薬の神秘
訳注
訳者あとがき

★発売済。全国に5店舗ある直営店では5月26日発売、全国書店では6月10日以降発売となった新刊です。2010年5月刊『医師の迷宮』、2012年9月刊『目に見えない病気』に続く、ホメオパシー出版さんの「ホメオパシー古典シリーズ」の澤元亙訳パラケルスス第3弾です。前二作は函入の本でしたが、今回はカバー装になっています。個性的なデザインで、本屋さんの書棚で異彩を放っていました。澤元さんは工作舎さんから2004年11月に刊行されたパラケルススの『奇蹟の医の糧――医学の四つの基礎〈哲学・天文学・錬金術・医師倫理〉の構想』(大槻真一郎共訳)も手掛けておられるほか、ホメオパシー出版さんから数々の訳書を上梓されておられます。『プリニウス博物誌 植物薬剤編』(八坂書房、1994年;新装版2009年)の共訳者でもいらっしゃいます。

★『アルキドクセン』もしくは『アルキドクシス』、すなわち『魔術原論 Archidoxis Magica』は、日本語版監修者由井さんの「監修者まえがき」によれば、『奇蹟の医書』(工作舎)と相前後して1526年ごろ書かれ、ラテン語版が1569年、ドイツ語版が1570年に出版。本訳書の底本はヴィル=エーリヒ・ポイカート(Will-Erich Peuckert, 1895-1969. 本書での表記はポイケルト)による『テオフラストゥス・パラケルスス著作集』第二巻(1965年)とのことです。上記著作集では第一巻(『奇蹟の医書』や『奇蹟の医の糧』などを所収)と第二巻(『医師の迷宮』や『目に見えない病気』などを所収)はともに「医学文書」としてまとめられているテクスト群であり、その一つが『アルキドクセン』です。パラケルススの著書の中でも最大の錬金術文書であり、「賢者の石」の作り方も本書で明かされています。お値段も手頃で良心的です。錬金術の古典的名著なので、魔術史に関心がある方だけでなく、化学史を研究している方にも広く読まれていくのではないかと思われます。

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現代思想 2013年8月臨時増刊号 総特集:フォン・ノイマン――ゲーム理論・量子力学・コンピュータ科学
青土社 2013年7月 本体1,429円 A5判並製246頁 ISBN978-4-7917-1265-6

★発売済。シリーズ「現代思想の数学者たち」の第2弾です。第1弾はチューリング生誕100年を記念して2012年10月に刊行された『現代思想 2012年11月臨時増刊号 総特集:チューリング』でした。今回はフォン・ノイマンの生誕110年になるということで企画されたものかと思います。フォン・ノイマンの未邦訳テクストが二篇収録されています。1946年のシカゴ大学講演「数学者」(高橋昌一郎訳・解題)と、1930年から1956年のあいだにフォン・ノイマンとクルト・ゲーデルとのあいだで交わされた「往復書簡」(田中一之訳・解題)21篇です。国内の研究者による13篇の論考に加え、巻末には「JvN/PostJvN」と題して、フォン・ノイマンの個人史、フォン・ノイマン以外の科学者たちの業績史、世界の情勢史の三層からなる年表が掲載されています。目次詳細は書名のリンク先をご参照下さい。下記のデデキントの新訳を上梓された渕野昌さんも「フォン・ノイマンと公理的集合論」という論考を寄稿されています。


数とは何かそして何であるべきか
リヒャルト・デデキント著 渕野昌訳・解説
ちくま学芸文庫 2013年7月 本体1,400円 文庫判336頁 ISBN978-4-480-09547-3

帯文より:待望の新訳。訳者による充実の解説付き!
カバー裏紹介文より:「切断」の概念により実数の厳密な基礎付けを試みた『連続性と無理数』、そして数学的論理のみから自然数論を展開した『数とは何かそして何であるべきか?』の、デデキントの業績を代表する2篇のモノグラフを収録。付録としてエミー・ネーターとエルンスト・ツェルメロの論考に加え、デデキントの議論を補いつつ不完全性定理や連続体仮説までをも射程に入れた、訳者による「現代の視点からの数学の基礎付け」を収録。長く読み継がれてきた数学論の古典、待望の新訳!

★発売済。「連続性と無理数 Stetigkeit und irrationale Zahlen」(1872年)と「数とは何かそして何であるべきか? Was sind und was sollen die Zahlen?」(1888年)の二論文の新訳に加え、付録として、デデキント著作集に付されたエミー・ネーターによる注記「前掲のモノグラフ〔数とは何かそして何であるべきか?〕に対する説明」、エルンスト・ツェルメロによる論考「集合論の基礎に関する研究I」(1908年)、訳者による論考「現代の視点からの数学の基礎付け」を収録。巻末には「訳者による解説とあとがき」「参考文献」「事項索引」「人名索引」を配しています。デデキントの上記2論文のこれまで良く知られた訳書には、河野伊三郎訳『数について――連続性と数の本質』(岩波文庫、1961年)があり、昨春(2012年3月)までに33刷を数えています。岩波文庫版では著者名は「デーデキント」と表記され、書名の「数」は「すう」と読みます。今回の新訳では「数」は「かず」です。岩波文庫版に比べて3倍近い値段にはなっていますが、実に半世紀ぶりの新訳であり、付録も充実していますから、ぜひとも購入しておきたいですね。

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荘子 内篇
荘子著 福永光司・興膳宏訳
ちくま学芸文庫 2013年7月 本体1,300円 文庫判352頁 ISBN978-4-480-09540-4

帯文より:あらゆる束縛から自由になる。古代中国が生んだ解脱の哲学。
カバー裏紹介文より:現代人の疲れた心に沁みわたる、古代中国が生んだ最高の解脱の哲学。人間の醜さ、愚かさ、社会の息苦しさから自由になりたいと願った荘子は、彼一流の人を喰った諧謔を武器に、世俗的な価値観一切をちゃかし、切り捨てていく。しかし、常識の世界と決別しただけでは絶対的な精神の自由を手にすることはできない。すべての苦悩は己の物差しでものごとを捉えることからはじまると考えた荘子は、自我を放棄し、大自然と合一する道を究めていく。「内篇」「外篇」「雑篇」全三篇のうち、荘子の思想をもっともよく伝えるとされるのが本巻の「内篇」。碩学二人の手による『荘子』訳注の決定版!

★発売済。福永訳の中国古典本は今年1月刊の『老子』に続くものです。本書では荘子は人名の場合「そうし」、書名の場合は「そうじ」とルビが振ってあります。内篇は「ないへん」です。「外篇」も来月刊行される予定です。『荘子』の完訳、抄訳、解説本は各種ありますが、文庫など入手しやすい形態で比べ読みするならば、金谷治訳注岩波文庫版全4巻や、 森三樹三郎訳中公クラシックス版全2巻などと一緒にこのちくま学芸文庫版をお買い求めになるのが良いと思います。

★福永光司さんの「荘子」本には講談社学術文庫から2011年7月に発売された本書と同名の『荘子 内篇』があり、混同しそうになりますが、基本的に別のものです。そもそもの経緯を追ってみると、福永版「内篇」の原本は、1956年に朝日新聞社の「中国古典選」の一冊として刊行されたものです。基本的に原文、読み下し文(訓読文)、訳解、から成っています。その後、「新訂中国古典選」で「内篇」補訂版が1966年に刊行(「外篇」および「雑篇」も66~67年に全二巻で刊行)。約十年後の1978年にこれら内外雑の三篇が朝日文庫版「中国古典選」シリーズでさらに細かく6分冊に分かれて再刊。講談社学術文庫版は78年の朝日文庫版と同じく、66年の補訂版を親本としています。

★さらにその後、筑摩書房「世界古典文学全集」第17巻『老子・荘子』(2004年5月刊)に収められるにあたって、原文、読み下し文、現代語訳、訳注という構成に改まりました。この時に、福永版の解釈をもとにしつつ、読み下し、現代語訳、訳注を新たに書き下ろしたのが興膳さんです。このいわば全面改訂版が今回のちくま学芸文庫版の親本になります。そんなわけで、思い切りかぶっているようでいて、実は別物なのです。ですから、両方を購入しても損はしません。福永版(66年補訂版)に基づくとはいえ、興膳版(2004年改訂版)は読み下しの段階から異なりますから、どちらも新鮮に読めると思います。

★読み下し文や訳解について、福永版では福永さんご自身がこう説明されています。「原文に並べて掲げた訳文は、一おう伝統的な訓読法に従ったが、理解を容易にするためと、語釈の煩わしさをはぶくために、必ずしもこれに拘泥せず、自由に訓み改めた」(「解説」附記、396頁)。「私は訳解の学問的(語学的)な厳密さよりも私の身を以て理解した『荘子』を私なりの興味で自由に解釈することを志した。訓み下し文を思い切って自由な訓み方にしたのも、訓み下し文だけで大意のとれる部分の忠実な訳解を省略したのも、このためである」(「新訂本はしがき」、6頁)。つまり、読み下し文はいわば文語訳であり、続く訳解は現代語部分訳、自由訳、注釈、訳注を織り交ぜたものです。一方、興膳版はこの構成を、忠実な読み下し文、現代語訳、訳注(用語解説)へと判然と立て分けるために新たに書き下ろされたものなので、当然ながら印象が異なります。どちらの版も推薦したい理由はそこにあります。

★講談社学術文庫版(福永版)とちくま学芸文庫版(興膳版)で内容が重複しているのは、福永さんによる巻末の「解説」だけです。前者ではさらにその解説に凡例的な「附記」が付き、さらにそのあとに「あとがき」が、そして冒頭には「新訂本はしがき」がついています。後者は「附記」のない「解説」のほかは、興膳さんの「文庫版あとがき」があるのみです。同じ書名のこの二つの文庫本の違いは、二冊とも参照しないと分からない、といううらみが残るものの、それは別々の本なので仕方ないかもしれません。なお、二冊とも巻末に索引がありますが、ちくま版では「語句索引」「人名索引」「地名索引」と分かれている一方、講談社版では一本にまとめられています。

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柄谷行人蓮實重彦全対話
柄谷行人(1941-)+蓮實重彦(1936-)著
講談社文芸文庫 2013年7月 本体2,200円 A6判並製542頁 ISBN978-4-06-290200-7

カバー紹介文より:今なお世界へ向けて発信しつづける批評家・思想家が、1977年から約20年にわたって繰りひろげ、時に物議を醸したすべての対話を収録した、一時代の記録。文学、批評、映画、現代思想から言語、物語、歴史まで、ふたりの知性が縦横無尽に語り合う。匿名性に守られたネット社会とは対極をなす、“諸刃の剣”の言論空間がここにある。

目次:
文学・言語・制度
マルクスと漱石
現代日本の言説空間
闘争のエチカ
 はじめに
 1 ポスト・モダンという神話
 2 情報・コミュニケーション空間の政治学
 3 終焉とエクソダス
 おわりに
文学と思想

★発売済。版元紹介文に曰く「1977年から約20年にわたって行われた日本を代表する知性による全対話であり、今なお世界に発信し続ける二人の原点。完全保存版」。『ダイアローグ』(冬樹社、1979年)より「文学・言語・制度」(初出は『現代思想』1977年5月号)と「マルクスと漱石」(初出は『現代思想』1979年3月号)、『ダイアローグIII』(第三文明社、1987年)より「現代日本の言説空間」(初出は『現代詩手帖』1986年6月)、『闘争のエチカ』(河出書房新社、1988年;河出文庫、1994年)より全編、『群像』1995年1月号より「文学と思想」(書籍初収録)が収められています。

★互いの方法論や認識論がぶつかり合う、刺激的な対談です。お二人とも現在70代ですから、特に今の20代のような若い世代にとってはもはや同時代とは呼べないほどの年長でしょうけれども、お二人が時代とどう格闘してきたか、その苦悩の告白を眺めてみるのは無駄ではないと思います。共感や反撥を越えて、なおも学びうる興味深い航跡が本書には生々しく記されています。ちなみに講談社文芸文庫では、2011年4月に『柄谷行人中上健次全対話』が刊行されています。このほか、対談ものでは、2005年2月『吉本隆明対談選』、同年9月『小林秀雄対話集』。なお講談社学術文庫の方ですが、来月(2013年8月)、テツオ・ナジタ『明治維新の遺産』坂野潤治訳、立川武蔵『ヨーガの哲学』が発売予定とのことです。


「職場うつ」からの再生
春日武彦・埜崎健治編
金剛出版 2013年7月 本体2,600円 四六判並製272頁 ISBN978-4-7724-1323-7

帯文より:「うつ」をきっかけとして新しい自分に生まれ変わること目指す逆転の発想。「職場うつ」を生きのびるための戦略をまなぶ。過去を求めず新しい自分の発見からはじめよう!
版元紹介文より:経済状況と労働環境の変動によって生まれた難治化・長期化する「うつ」、いわゆる「現代型うつ」が席巻する時代。この時代に求められる医学的アプローチ、社会資源、家族サポート、そして当事者リハビリテーションはどのようなものだろう。実践的に解説されるのは、数々のワークを通じてステップを踏みながら、復職・再就職を達成するためのスキルとヒントを紹介する。「職場うつ」のリハビリテーションは過去の自分に戻ることを求めない。ただ、新しい自分を発見して豊かな人生を送るための「再生」を目指す――「職場うつ」を生きのびる逆転の戦略をまなぶ実践ガイド。

★発売済。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。働く当事者にとっても中間管理職にとっても経営者にとっても「職場うつ」の問題はもはや避けて通ることのできない「社会問題」かもしれません。そういう時代になりつつある現在、「うつ」についてもっと良く知ろうというニーズはますます高まってきていると言えそうです。本書は当事者やその家族の証言をもとにした、現代型うつの実態とリハビリのリポートになっています。投薬やカウンセリングの「副作用」について書いているコラムなどもあり、職場や家族、知人友人に当事者が「いない」読者にとっても参考になると思います。当事者やその家族にとっては実に深刻な問題で、落ち込んでいるときは本を開くことすらしんどいはずです。私個人は、悲しく淡々とした記述の中にも温かな思いがふと感じられるくだりがあったことに好感を覚えました。
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by urag | 2013-07-15 22:47 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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