ウラゲツ☆ブログ

urag.exblog.jp
ブログトップ
2013年 06月 16日

注目新刊と近刊:竹井隆人『デモクラシーを〈まちづくり〉から始めよう』平凡社、ほか

◎平凡社さんの新刊

a0018105_431998.jpg

デモクラシーを〈まちづくり〉から始めよう――シャッター通りから原発までを哲学する
竹井隆人著
平凡社 2013年6月 本体2,800円 四六判上製292頁 ISBN978-4-582-54447-3

帯文より:シャッター通りや原子力ムラはどうしてできたのか? 高層マンションやショッピングモールは「悪」なのか? まちづくりにおける似非「正義」を、政治的視点から暴く意欲作。「仲良し=コミュニティ」からの脱却を説く、新たなデモクラシー論の登場!

目次:
はじめに
第I部 〈まちづくり〉の正義とは何か
 第一講 原発による〈まちづくり〉は何ゆえに破綻したのか
 第二講 シャッター通りの元凶はショッピングセンターなのか
 第三講 「騒音オバサン」を〈まち〉から排除できるのか
 第四講 高層マンションを景観のために削ることは可能なのか
第II部 見当違いの処方箋〔レシピ〕
 第五講 法制度で街並みは整序されるのか
 第六講 「コミュニティ」は至高か、それとも暴力か
 第七講 住民参加が社会的合意なのか
 第八講 ゲーテッド・コミュニティは社会悪なのか
第III部 地方自治から市民社会へ
 第九講 「都市」とは何か
 第十講 「市民」とは誰か
 第十一講 「政治」の契機をどこに求めるのか
 第十一講 あらためて問う、〈まちづくり〉の正義とは何か
参考文献
あとがき

★まもなく発売。論戦的な、しかし非常に示唆的でユニークな政治哲学の本です。現代日本が抱える厳しい諸現実を前にして、物事には二面性があること、分かりやすくもっともらしい「偽物の正義」に流されることなく、社会を新しい「物の見方」で見ること、を本書は薦めています。逆説に満ちた表現が多いような気がするのは、社会の矛盾をありのままに見ようとしているからで、著者の「皮肉」はむしろ心地よいです。単なる仲良しによるまちづくりを脱するための「私的政府」と直接制デモクラシーという、自治と政治参加への道筋は本書の肝で、より良いガバナンスを考える上での色々なアイデアへと読者を啓発してくれます。

a0018105_443817.jpg

★平凡社さんでは今月、チェコアニメの巨匠トゥルンカが挿絵を描いている素敵な絵本『こぐまのミーシャ、サーカスへ行く』(イジー・トゥルンカ絵、ヨゼフ・メンツェル文、平野清美訳、本体1,700円、B4変型判上製40頁、ISBN978-4-582-83608-0)を発売されています。原著は1940年刊。温かくて豊かな色彩と愛らしい絵のタッチには、大人も魅了されることでしょう。ミーシャ・シリーズは日本初紹介とのこと。今後続刊があるかも、と期待させるエンディングでした。

★また、同社ではまもなく、田隅恒生『「アラビアのロレンス」の真実――『知恵の七柱』を読み直す』(本体3,600円 四六判上製336頁 ISBN978-4-582-44119-2)を発売されます。帯文に曰く「アラブ解放の英雄、大英帝国のエージェント、同性愛者、マゾヒスト、……さまざまなイメージが交錯し、神秘化されたロレンス像。『知恵の七柱』の成立過程とテキストの精密な読解によって、隠蔽された真実に迫る」とのこと。同社の東洋文庫で『完全版 知恵の七柱』全5巻(2008-2009年)を上梓された訳者ならではの深い読解と考察で、ロレンスと出会う旅へと読者を誘います。カバーの肖像はジェイムズ・マクビー(James McBey, 1883–1959)による1918年のダマスカス陥落後のT・E・ロレンスを描いた絵だそうです。


◎東洋書林さんの新刊

a0018105_445951.jpg

世界を変えた技術革新 大百科
アダム・ハート=デイヴィス編 荒俣宏日本語版監修 佐野恵美子・富岡由美訳
東洋書林 2013年6月 本体15,000円 B4変型判上製360頁 ISBN978-4-88721-812-3

帯文より:ピラミッドから宇宙旅行まで、人類5500年の発明・開発をたどる「ハイテク」全史。

推薦文1:本書は夢を歴史的な技師約100組の発明行動を、象徴的な写真・図版・文章でコラージュ風に巧みに仕立ててあり読みやすい。エジプト最古のピラミッド建設のイムホテプ、中世イスラーム機械装置のアル=ジャザリー、産業革命期のワット、現代の自動車のベンツ等々多彩で、人間の技術革新の知恵に驚くと共に、安全性確保に苦しんでいる今日の技術革新課題の解決にも有用な好著である。(道家達将:東京工業大学名誉教授)

推薦文2:図版だけでなく文章にも注目してほしい。個々の項目は簡潔だが、通して読めばひとりひとりの技術者の人生が、大きな歴史のうねりをつなぐ鮮やかな物語として起ち上がる。世界の景観と意味を変えた巨大建造物、人の動きを変えた交通技術――イスラームやアジアの技師がしっかり登場するのも嬉しい。気がつけばきっと惹き込まれ、読み耽っていることだろう。(瀬名秀明:作家)

原書:Engineers: From the great pyramids to the pioneers of space travel, Dorling Kindersley, 2012.

目次:
序文
第I章 初期の技師たち
 I-1 古代世界の建築
 I-2 古えの革新者たち
第II章 ルネサンスと啓蒙時代
 II-1 イスラームの技師たち
 II-2 ルネサンスの博学者たち
 II-3 新たなる科学技術
 II-4 水路と港
 II-5 初期の蒸気機関
第III章 産業革命の世紀
 III-1 蒸気機関の発達
 III-2 電気力の征服
 III-3 工場の時代
 III-4 橋の建設
 III-5 気球と飛行船
第IV章 機械の時代
 IV-1 輸送革命
 IV-2 飛躍する産業
 IV-3 大建造物
 IV-4 公衆衛生
 IV-5 無線通信と音響
第V章 新世界へ(モダン・タイムズ)
 V-1 自動車
 V-2 映画
 V-3 そびえ立つ建造物
 V-4 飛行機械
 V-5 宇宙工学
あとがき
索引
図版出典

★発売済。ユニークなテーマを扱うオールカラーの大判図鑑づくりで定評のある東洋書林さんの最新刊です。歴史に名を残した古今のエンジニアたちを時代別に紹介しています。エジソン(本書ではエディスン)をはじめ、有名人がそれなりに出てきますが、全体としては技術史、建築史、産業工業史等々の専門家でないと知らないような人々も多く掲載されています。実にわくわくさせる、人類の夢とロマンが詰まった本です。計算機やコンピュータはそれだけで一冊になってしまうであろうために本書の紹介対象から外れていますが、ロボット工学への言及はあります。


◎注目文庫新刊

a0018105_1154242.jpg

道徳感情論
アダム・スミス著 高哲男訳
講談社学術文庫 2013年6月 本体1,800円 A6判並製698頁 ISBN978-4-06-292176-3
帯文より:『国富論』より重要なスミスの名著が、読みやすい訳文で登場! 調和ある社会の原動力とは何か? 鋭い観察眼・深い洞察力と圧倒的な例証により、個人の心理と社会の関係を解明した傑作!

カバー裏紹介文より:調和ある社会構成の根幹に、個人の自己愛・自己利益の追求に加えて、「共感」を据えた。そして社会では、適合的な行為が是認され、非適合的な行為が否認されることにより、規則が誕生する。人間が社会的に是認された行為規範を遵守する努力によって、徳のある社会が実現するのだ。最高の啓蒙思想家が、生涯をかけて著した不朽の社会論は今なお光を放つ。

★発売済。既訳には水田洋訳『道徳感情論』(上下巻、岩波文庫、2003年;原著第六版1790年が底本)がありますが、全一巻というのが嬉しいです。底本は水田訳と同じく第六版。一昔前に比べれば一般的にずいぶん文庫は全体的に値上がりしている印象ですけれども、岩波文庫版全二巻は本体合計2,060円ですから、今回の一巻本の方が若干安いですね。原書は初版が1759年の刊行で、グラスゴー大学での講義録です。『国富論』(1776年)に先立つアダム・スミスの主著であり、刊行後幾度となく増補改訂し続けた著者も自認する代表作。内容は驚くほど古さを感じさせません。その人間観察と社会分析には今なお学ぶところがたくさんあります。なお、同書は今秋、もうひとつの新訳(村井章子・北川知子訳、日経BPクラシックス)が刊行される模様です。

★講談社学術文庫の今月の新刊には、以下の書目もあります。中山茂『パラダイムと科学革命の歴史』(本体1,100円、366頁、ISBN978-4-06-292175-6)、岡谷繁実『名将言行録 現代語訳』(北小路健・中澤惠子訳、本体1,850円、726頁、ISBN978-4-06-292177-0)。前者は『歴史としての学問』(中央公論社、1974年)の加筆改題版です。著者の中山さんは先月、『一科学史家の自伝』を作品社より上梓されています。後者は幕末の上野館林藩士岡谷繁実(おかのや・しげざね:1835-1919年)の名著の現代語抄訳で、巻末の注記によれば親本は1980年の教育社版三巻本新書(90年代には社名変更によりニュートンプレスとして新装復刊)です。周知の通りこの名著は、16年の歳月をかけ1200巻以上の文献を渉猟して編纂された作品であり、戦国時代の武将から江戸時代中期の大名まで、192人の言行をまとめています。全員分の原文は岩波文庫全8巻(1943-1944年)で読めますが、現在は品切。講談社学術文庫版では、戦国期の武将22人の言行録を現代語で読むことができます。なお、講談社文芸文庫の今月の新刊では、安藤礼二編『折口信夫対話集』(本体1,600円、392頁、ISBN:978-4-06-290197-0)が出ており、来月は『柄谷行人蓮實重彦全対話』が発売予定だそうです。


鯰絵――民俗的想像力の世界
C・アウエハント著 小松和彦・中沢新一・飯島吉晴・古家信平訳
岩波文庫 本体1,440円 文庫判並製644頁 ISBN978-4-00-342271-7

版元紹介文より:安政二年の江戸大地震直後に、ユーモアと風刺に富んだ多色摺りの鯰絵が大量に出回った。基本モチーフは、「地震鯰」「鹿島大明神」「要石」。鯰絵とそこに書かれた詞書には世直しなど民衆の願望も表象されていた。日本文化の深層を構造主義的手法で鮮やかに読み解く日本民俗学の古典。カラー図版多数。解説=宮田登・中沢新一

★発売済。親本はせりか書房より1979年に刊行(普及版1986年;原著は1964年)。宮田登さんの解説に加え、今回の文庫版では中沢新一さんの解説「プレート上の神話的思考」も加わっています。巻末の注記によれば、図版がリニューアルされているようです。名著の待望の再刊で、嬉しい限りです。コルネリウス・アウエハント (Cornelius Ouwehand, 1920-1996)はオランダ生まれの人類学者で、スイスのチューリヒ大学で長く教鞭を執りました。本書のほか、著書に『HATERUMA――波照間:南琉球の島嶼文化における社会=宗教的諸相』(中鉢良護訳、静子・アウエハント解説、比嘉政夫監修、榕樹書林、2004年)や、写真集『波照間島――祭祀の空間』(静子・アウエハント編、中鉢良護解説、榕樹書林、2004年)があります。

★岩波文庫の今月の新刊では、熊野純彦さんによる新訳『存在と時間』の第二巻(本体1,260円、542頁、ISBN978-4-00-336515-1)が出ています。帯ではなにやらオリジナルのマスコットキャラKuma-noが誕生しています。第一巻は4月刊。たいへん好評だとの声を聞いています。 来月7月の新刊の中では、アープレーイユス『黄金の驢馬』(呉茂一・国原吉之助訳、本体1,080円、ISBN978-4-00-357001‐2)が気になります。訳者が同じなので、旧版のアプレイウス『黄金のろば』(上下巻、1956‐1957年)の改版合本だろうかと思います。
[PR]

by urag | 2013-06-16 04:05 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://urag.exblog.jp/tb/17957482
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。


<< トークイベント:リピット水田堯...      新規開店情報:月曜社の本を置い... >>