2013年 03月 02日

注目新刊:畑中三応子『ファッションフード、あります。』紀伊國屋書店、ほか

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ファッションフード、あります。――はやりの食べ物クロニクル1970-2010
畑中三応子(はたなか・みおこ:1958-)著
紀伊國屋書店 2013年3月 本体2,400円 46判並製380頁 ISBN978-4-314-01097-9

帯文より:「食」はだれもが参加できるポップカルチャーになった。戦後、日本人はいかに食を楽しみ、果ては消費するようになったのか? 痛快な文化史。年表付。

版元紹介文より:70年代以降、加速・拡大・自己増殖・拡散した、日本における情報消費としての食の姿をたどる。チーズケーキ、ティラミス、ペペロンチーノ……戦後、腹いっぱい食べられる経済力を手に入れると、日本人は新しい味を求めて、ファッションのように食を、その情報までもを消費しはじめた。第一線の料理編集者として時代を駆けた著者が、激しくはやりすたりを繰り返す食べ物から日本社会の一断面を切り取った痛快な文化史。年表付。

目次:
はじめに
ファッションフード前史
 江戸から戦前まで
 戦後から高度経済成長期まで
第1部 加速するファッションフード――1970年代
 1970――本格的なファッションフード成立元年
 女の子の“フィーリング”に訴えかけたアンノンの表現法
 黒船のごとくファストフード来襲
 次から次へとヒット作誕生
第2部 拡大するファッションフード――1980年代
 「グルメ」に浮かれた激動の10年
 和洋中エスニック林立――多国籍化の時代
第3部 自己増殖するファッションフード――1990年代
 まだまだバブルの90年代
 「失われた10年」に生じた方向転換と変質
 ますます短期化する流行サイクルのなかで
第4部 拡散するファッションフード――2000年代
 不安と危機のゼロ年代
 節約ムードから生まれたささやかなヒット作
あとがき
参考文献
ファッションフード年表

★発売済。紀伊國屋書店の月刊PR誌「スクリプタ」での連載に書き下ろしを加えて刊行。内容も造本もともに楽しい一冊です。1970年代から2000年代に至る40年間を中心に、日本の食文化における流行の変遷を活写しています。ワッフルのように型押ししている書籍本体に、その包装紙のようなカバー。本を開くとメニューのような体裁の三つ折の目次が現れ、本文は「部」ごとに紙や刷り色を変えています。図版はわざと粗めに刷られていてポップ感が増しています。装丁は祖父江慎さんと佐藤亜沙美さんによるもの。今年に入って一番美しいデザインに出会いました。自炊のために断裁などしようものなら絶対にもったいない本。これで2400円は安いです。

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吉本隆明
吉田純写真 吉本多子序文
河出書房新社 2013年2月 本体3,800円 A4変形判上製128頁 ISBN978-4-309-27381-5

帯文より:戦後最大の思想家を40年以上にわたって撮り続けた記念碑的写真集。「ある時、本に掲載された一枚の写真を見た。吉本さんが眼帯をした幼女を抱いて、無骨な手つきで絵本を読んであげている写真だった。その瞬間、ずっと読んできた吉本さんのことばのすべてが繋がり、腑に落ちた気がした。「この人がほんものでないなら、この世界にほんものなんか一つもない」とぼくは思った」(高橋源一郎氏「朝日新聞」)。「吉田さんの撮る父は、私の知らない貌の父だ。“竜骨”の入った人の貌だ」(吉本多子氏)。

版元紹介文より:戦後思想最大の巨人をもっとも長期にもっとも近くで撮り続けた写真家による肖像を没後一年に集成。生涯市井にあったその思考と生活の現場を刻印する記念碑的出版。

★発売済。昨年3月16日に亡くなった吉本さんを1968年から2009年にわたって間近で撮影してきたモノクロ写真が収録されています。1996年から2006年までは記録の「空白の10年」が生じています。96年夏に、吉本さんが伊豆・土肥海岸で溺れ、翌年春に今度は吉田さんが心筋梗塞を患ったためです。巻頭には長女で漫画家の多子(さわこ)さんが書かれた「吉田さんの写真集に寄せて」という一文があり、写真のあいまには吉本さんの著書からの引用が置かれています。巻末には「吉本隆明略年譜」と吉田さんの「あとがき」。すべてマニュエル・ヤンさんによる英語対訳が付いています。装幀はしばしば弊社でもお世話になっている中島浩さんによるもの。シンプルで力強く、存在感に満ちた素晴らしい写真集です。立錐の余地もない会場で多数の若い聴衆を前にした講演での壇上の吉本さん、家族とともに穏やかな表情を見せる吉本さん、海で泳ぐ姿が実に嬉しそうな吉本さん、下町の商店街で買い物をする吉本さん。本と書類に埋め尽くされた書斎の吉本さん、前かがみにひたすら自著にサインをする吉本さん、フーコーとの対談に臨み互いにお辞儀をする吉本さん。一枚一枚が実に活き活きとしていて、圧倒されます。


縄文美術館 
小川忠博写真 小野正文・堤隆監修
平凡社 2013年3月 本体2,500円 B5変型判並製208頁 ISBN978-4-582-83598-4

帯文より:550余点の写真で豊かな縄文文化を旅する。「縄文文化をこれほど鮮明に映しだした写真によるイメージの集まりを、わたくしは見たことがない」(青柳正規・国立西洋美術館館長)。

版元紹介文より:縄文時代の各時期を代表する土器・土偶の優品600点を美しいオールカラー写真で紹介する最新の縄文図鑑。専門家による簡潔な解説と、出土遺跡・収蔵先リスト付き。

目次:
1 縄文人
2 採り、狩り、漁る日々
3 飾り、装う
4 装飾された土器群
5 文様に込められたもの
6 ひとがた
7 祭り・祈りの広場
日本列島に最初にやってきた人びと――縄文の幕があけるまで(堤隆)
縄文時代のくらし――日本列島の森、川、海などの大自然の恵みを最大限活用した人びと(小野正文)
埋もれた歴史を掘る(堤隆)
所蔵先一覧
あとがき

★発売済。史書成立にはるかに先立つ時代の日本の原像に迫るたいへん魅力的な写真集です。巻頭に青柳正規さん(国立西洋美術館館長)による無題の緒言が置かれており、「おそらく、縄文文化を専門とする考古学者も驚かざるをえない縄文像の提示である」と推薦されています。小川さんによる「あとがき」によれば、この貴重な写真資料は30年に及ぶ地道な撮影作業によるものだそうで、感動します。出土品はいずれもユニークかつダイナミックで自然の魔力をそのまま写しとったかのような躍動感に溢れています。遙か昔の自分たちのご先祖がかくも豊かな想像力と造形力を持っていたことに、驚きを禁じえません。1万年以上続いたとされる縄文時代に比べると、現代人の生きる世界などほんのわずかな時間にすぎず、何とも言えない気持ちにさせられます。

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新訳 初期マルクス――ユダヤ人問題に寄せて/ヘーゲル法哲学批判−序説
カール・マルクス著 的場昭弘訳著
作品社 2013年2月 本体3,800円 46判上製496頁 ISBN978-4-86182-407-4

帯文より:なぜ“ユダヤ人”マルクスは、『資本論』を書かなければならなかったのか? この世に宗教と金儲け主義がはびこる不思議。そして、私たちの社会にとっての本当の「公共性」、真の意味での「解放」「自由」とは何か? この難問に立ち向かったのが青年マルクスであった。現代社会の根本問題――“レ・ミゼラブル”は救えず、貧富の格差がますます拡大する強欲資本主義の謎――を解く“鍵”と“答え”、それこそが、この《プロレタリアート》発見の1844年に出版された、この二論文にある。貴重な原文を掲載の上、マルクス研究の第一人者が、長年あたため、半生をかけての世界レベルでの研究を反映した新訳、さらにマルクスのユダヤ人性に注目した解説・資料・研究編で“鍵”と“答え”にせまる。

目次:
はじめに――なぜ、マルクスは『資本論』を書かねばならなかったのか?
資料 『独仏年誌』に掲載された「ユダヤ人問題に寄せて」「ヘーゲル法哲学批判-序説」一八四四年オリジナル版
第一編 「ユダヤ人問題に寄せて」「ヘーゲル法哲学批判-序説」のオリジナル版からの訳
第二編 解説編
第三編 資料編
 『独仏年誌』の表紙と裏表紙
 アーノルト・ルーゲ「『独仏年誌』の計画」
 ブルーノ・バウアー「今日のユダヤ人とキリスト教徒が自由になる可能性」
 モーゼス・ヘス「パリからの手紙」
 パスカル・デュプラ「パリのヘーゲル学派アーノルト・ルーゲとカール・マルクスの編集による『独仏年誌』」
 マルクス、ルーゲ、フォイエルバッハ、バクーニン「一八四三年の往復書簡」
 カール・マルクスの父ハインリヒ・マルクスの書簡
 ハインリヒ・マルクス「我が国とプロイセン王国との幸いなる併合の際の一八〇八年三月一七日のナポレオン令に関するいくつかの注意書き」
第四編 研究編
 第一章 マルクスとユダヤ
 第二章 マルクス家とユダヤ教
 第三章 『独仏年誌』と独仏関係――ラインラントをめぐって
 第四章 ルーゲとフランス――ヘーゲル左派と独仏関係
あとがき
重要用語解説
人名索引
マルクス略伝

★発売済。『新訳 共産党宣言』(作品社、2010年)に続く、的場さんによる新訳マルクスの第二弾です。今回も、解説・資料・研究と、新訳の基礎となる三本の柱が充実しています。圧倒的なヴォリュームはまさに的場さんの情熱の賜物で、ここまで文書を揃えていただいたことに読者としてはただただ有り難く押し戴くばかりです。「あとがき」の末尾にはこうあります。「このマルクスの翻訳の仕事はいまや私にとって日々の生活の一部であり、ライフワークそのものとなっている。どこまで続くかは年齢との勝負であるが、目処がつくまでは続けたい」(473頁)。ということは、今後も新訳本が続くということで、いずれ私たちは『経済学批判要綱』や『資本論』をも新訳で手にする日が来るのかもしれません。


カール・シュミット入門講義
仲正昌樹著
作品社 2013年3月 本体2,000円 46判並製496頁 ISBN978-4-86182-426-5

帯文より:21世紀最も重要、かつ《危ない》思想家の主要著作と原文を徹底解読し、《危うく》理解され続けるキーターム「決断主義」「敵/味方」「例外状態」などを、その思想の背景にある彼が生きた時代と独特な世界観を探りながら、丁寧に解説。現代思想の第一人者による、本邦初の“本格的”入門書。

帯文(裏)より:「“暗黒面〔ダークサイド〕”の思想家」「ナチスの御用学者」「独裁の擁護者」……、カール・シュミット。いま時代は、彼を求めているのか?――ビジネスの現場、日常の生活……、すべてにおいて常に“決断”を迫られる私たち。統治/政治の不能、法と民主主義の限界、終わりなき世界内戦時代の到来、そして対テロ戦争のための非常事態体制が常態化する社会で、「決断主義」の思想家を徹底解剖する。

目次:
[前書き]はたして、ダークサイドで、危ない!? カールシュミットは「決められない政治」を何とかしてくれるのか?
[講義]第1回『政治的ロマン主義』1――秩序思考
[講義]第2回『政治的ロマン主義』2――政治の本質とは何か?
[講義]第3回『政治神学』1――主権者、法-秩序と例外状態
[講義]第4回『政治神学』2――誰が法を創り出すのか? あるいは「最後の審判」
[講義]第5回『政治的なものの概念』1――「友 Freund/敵 Feind」、そして他者
[講義]第6回『政治的なものの概念』2――政治を決めるのは、誰か?
[講義]補講『陸と海と――世界史的一考察』――空間革命と『人間存在 menschliche Existenz』
[後書き]「決断」についてきちんと考えろ!
カール・シュミットについて更に学ぶためのブックガイド
 本書では触れていない重要なカール・シュミットの著作
 カール・シュミットを知るために読んでおいたほうがいい研究書
カール・シュミット関連年表

★発売済。2011年10月から2012年8月にかけて行われた連続講義をもとに書籍化されたものです。「前書き」で仲正さんはこう書いています。「「決められない政治」を批判するジャーナリストやコメンテーターたちは、「決断できる政治家」への待望を口にする。〔…〕そうした「指導者」待望論は、「民主主義の限界」論としばしば結び付く。異なった利害関係や価値観を持つ人たちが、「議会」に集まって延々とおしゃべりし続けたところで、本当の意味で誰もが納得のいく「合意」を形成することなど不可能なのだから、“民主主義”という建前に拘らないで、「決断力」のある「指導者」に任せて、「危機」を乗り越えればいい、という議論である。こういう考え方を「決断主義」という。ただし、「決められる指導者」への期待を漠然と語っている“論客”たちは、「決断主義」が、政治哲学・政治思想史的にどういう意味を持っているか、本気で考えたことがあるようには見えない。〔…〕ワイマール期のドイツに、「決断主義」を理論的に根拠付け、その代名詞になった思想家がいた。憲法学者・法哲学者のカール・シュミットである」(1-2頁)。

★シュミットを読み直すことはいまいっそうアクチュアルな作業になりつつあります。そうした状況の中でシュミットの主著を読み解く懇切な入門書が出たことは喜ばしい限りです。それぞれの講義の末尾には質疑応答も採録されていて、非常に興味深いです。まもなくちくま学芸文庫でシュミットの『政治思想論集』(社会思想社、1974年)が再刊されますし、大人の教養としてのカール・シュミット、を書店店頭で起動させるべき時が来ているのかもしれません。本書と、先の新訳マルクスの編集担当者は、Fさんです。仲正さんの精力的な講義及び執筆活動もさることながら、それを本というかたちにしていく編集者の作業もまた、重要なものです。Fさんはそう言えば、現在紀伊國屋書店で開催されている「じんぶん大賞」フェアの小冊子に収録されている仲正さんと與那覇潤さんの対談のコーディネーターもつとめておられますね。

★なお、作品社さんはウェブサイトを本日3月2日正式にリニューアルされました。ブログも開設されています。おめでとうございます!
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by urag | 2013-03-02 22:43 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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