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2013年 01月 20日

注目新刊と近刊:イルミナティ創始者の原典抄訳!

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秘密結社イルミナティ入会講座〈初級篇〉
アダム・ヴァイスハウプト(Adam Weishaupt, 1748-1830)著 副島隆彦解説 芳賀和敏訳
KKベストセラーズ 2013年1月 本体1,500円 四六並製218頁 ISBN978-4-584-13468-9

帯文より:理性を神と崇め、ローマ・カトリックの教権を否定し、人類社会の改良を目指した偉大なる秘密結社の創設者A・ヴァイスハウプトの語られざる原典、ついに本邦初訳!

原書:Das verbesserte System der Illuminaten mit allen seinen Graden und Einrichtungen, 1787.

目次:
副島隆彦による本書の解説
本書について
第1章 初級者のための秘密結社入会講座
第2章 なぜ秘密結社が必要なのか
第3章 初級者を受け入れる秘密結社の側の覚悟と使命
第4章 神秘主義に傾倒するすべての成員に告ぐ
 前提1 流出説(Emanationssystem)
 前提2 古典古代ギリシアのピタゴラス‐プラトン体系
付録 秘密結社の組織論
教団規約に関する一般教説
長官と長官会議
総監
総監会議と総監

抄訳箇所について
訳者あとがき

★発売済。18世紀の啓蒙思想の一幕を知る上で興味深い人物の一人、南独の教会法教授アダム・ヴァイスハウプトの著書『イルミナティの新システム――全位階と装置の詳説』(1787年)の、まさかまさかの初抄訳です。ドイツではカントやゲーテが、フランスではルソーや百科全書派が、スウェーデンではスウェーデンボリが活躍した偉大なる18世紀については、国書刊行会の「十八世紀叢書」や、法政大学出版局の「啓蒙の地下文書」(既刊2点)、あるいは岩波書店の「ユートピア旅行記叢書」など、近年様々な原典が訳されてきましたが、ここにまたひとつ、秘密結社イルミナティの創設者の著作が加わったことは大いに喜ばしいことです。

★言うまでもありませんが、ヴァイスハウプトの秘密結社と、フリーメーソンの上位組織として都市伝説化している近年のその亡霊とは別して考えるべきで、本書では正当にもそのことに注意を促しています。18世紀のイルミナティが禁じられたのは、教会と王侯が絶大な権力を掌握していた時代に神や国家の絶対性から解き放たれ、理性のもとでの人々の連帯を推進したためで、既成権力からすれば自らの転覆に繋がりかねない危険極まりない運動体だったからでした。今回の抄訳ではその運動体の思想と組織構成についてのヴァイスハウプトの考えを覗くことができます。

★イルミナティの重要人物には創始者である「スパルタクス」すなわちヴァイスハウプトのほかに、フリーメーソンの会員を流入させて組織拡大の大きな力となった「フィロ」ことアドルフ・F・フォン・クニッゲ男爵(1752-1796)がいます。彼は巧みな人心掌握術の持ち主で、大著『人間交際術』は本書『イルミナティの新システム』の翌年に公刊され、当時のベストセラーとなりました。『人間交際術』は幾度となく日本でも訳され、講談社学術文庫(1993年)になったこともありますし、昨春にも新訳がイーストプレスから刊行されています。ただし流行作家としてのクニッゲがフリーメーソンやイルミナティに関わっていたことはさほど重要視されていないかもしれません。

★クニッゲによるメーソン流儀式の導入を良しとしなかったヴァイスハウプトの徹底した理性主義の興味深さの片鱗は、本書からも窺えることろですが、より詳しくは〈初級篇〉と銘打ったこの訳書『入会講座』の続篇にも期待したいとことです。カント哲学について二冊の著書をものしたヴァイスハウプト自身の、哲学者でもなく教会人でもないペリフェリックな特異性は、思想史上のマイナーな次元に落としこめておけるほどつまらないものではありません。芳賀和敏さんをはじめとする翻訳チームによる、より読みやすい日本語のための努力に率直な敬意を表したいです。念のために言っておきますが、本書を読まずにトンデモ本に分類しようとする人がいるとしたら、それは大きな誤解です。

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ニコラ・テスラ 秘密の告白――世界システム=私の履歴書 フリーエネルギー=真空中の宇宙
ニコラ・テスラ(Nikola Tesla, 1856-1943)著 宮本寿代訳
成甲書房 2013年1月 本体1,700円 46判上製240頁 ISBN978-4-88086-297-2

帯文より:日本語訳初公刊! 天才か?狂気か? 悲運の発明家、その頭の中のすべて。
帯文(裏)より:いまこそ耳を傾けるべき超天才発明家の未来予測!「人類は恐るべき問題に直面している。その問題は、物質的にいくら豊かになっても解決しない。原子のエネルギーを解放したとしても恩恵などない。人類にとってはむしろ不幸になりかねない。不和や混乱が必ずやもたらされ、その結果として最後に行きつくのは、権力による憎むべき支配体制なのだ」。

カバーソデ紹介文より:フリーエネルギー、スカラー電磁波、人工地震、歴史の闇に葬られた異才、回顧録に隠された、超天才の頭の中。

原書(第I部):My Inventions: The Autobiography of Nikola Tesla, Experimenter Publishing Company, 1919.
原書(第II部):The Problem of Inscreasing Human Energy, Century Magazine, 1900.

目次:
ニコラ・テスラについて
第I部 世界システム=私の履歴書
 第1章 天才発明家はこんな少年だった
 第2章 私が体験した奇妙な現象
 第3章 回転磁界という大発見
 第4章 テスラコイル=ラジオやテレビの基本原理
 第5章 史上初の世界システム
 第6章 この世界を地獄にしないための発明
第II部 フリーエネルギー=真空中の宇宙
 第1章 人類が絶対的エネルギーを手に入れるための三つの方法
 第2章 いかにして人類エネルギーを増大させるか
 第3章 いかにして人類エネルギーの増加を阻害する力を弱体化させるか
 第4章 いかにして人類エネルギーの増加を促進する力を増大させるか
解説

★発売済。テスラの『わが発明』と『人類エネルギー増加の問題』の二冊の翻訳を日本で初めて一冊にまとめたものです。前者『わが発明』は日本におけるテスラ研究の第一人者である新戸雅章(しんど・まさあき:1948-)さんによって2003年に『テスラ自伝――わが発明と生涯』として出版され、その後2009年に新装改訳版(限定300部、テスラ研究所)が出版されています。後者『人類エネルギー増加の問題』についても新戸さんは『人類とエネルギー問題』(テスラ研究所、近刊)として予告を出されています。

★今回初訳となる『人類エネルギー増加の問題』――訳書では「フリーエネルギー=真空中の宇宙」は、ネット各所で無料で閲覧できる英語原文と比べる限りでは、数式やダイアグラムが出てくる箇所を簡略化しているようですが、息の長い文章を細かく分けるなど、基本的に読みやすさに配慮したものになっています。2013年はテスラの没後70年になります。昨今ますますエネルギー問題は難局を迎えていますが、すでに百年以上前にこの問題をとことん考えようとしていたテスラの先見の明に驚かされます。

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シャマニズム――アルタイ系諸民族の世界像(1)
ウノ・ハルヴァ=著 田中克彦=訳
東洋文庫(平凡社) 2013年1月 本体3,100円 全書判上製函入364頁 ISBN978-4-582-80830-8

帯文より:北方ユーラシアの諸民族の世界(宇宙)像を巡り、19世紀から1930年代までのシャマニズムに関する調査研究の蓄積をもれなく集約した、シベリアの『金枝篇』。図版110点収載。(全2巻)

目次:
序説
第一章 世界像
第二章 大地の起源
第三章 人間の創造
第四章 世界の終末
第五章 天神
第六章 天神の《息子》と《助手》
第七章 出産と出産霊
第八章 星々
第九章 雷
第十章 風
第十一章 火
第十二章 神格としての大地
第十三章 霊魂崇拝
第十四章 死と物忌みと服喪
第十五章 死者の身支度
雑誌類略称
原注

★まもなく発売。1971年と1989年(第二版)に三省堂より刊行された全一巻を二分冊で復刊するものです。第1巻を見る限りでは今回の復刊で改訳されているかどうかは確認できませんが、詳細は第2巻に掲載される「東洋文庫版あとがき」で明らかになると思われます。フィンランドの宗教民俗学者ウノ・ハルヴァ(Uno Nils Oskar Harva, 1882-1949)が1938年にヘルシンキで出版したDie religiösen Vorstellungen der altaischen Völkerが原書です。アルタイ系というと、日本語の起源とも言われることがありますが、原初の人間たちの堕落の物語はまるで聖書のアダムとイヴの原罪のようですし、世界の終末はあたかも北欧神話のラグナロクのようです。アジアだけでなく東ヨーロッパにもかかる広大な地域に拡散したアルタイ系の興味深い民俗文化を学べます。東洋文庫の次回配本は『共同研究 転向』第5巻と第6巻同時刊行で全6巻完結です。


感應の霊峰 七面山 
鹿野貴司(しかの・たかし:1974-)著
http://www.tokyo-03.jp/
平凡社 2013年1月 本体2,800円 B5変型判並製74頁 ISBN978-4-582-27796-8

帯文より:深山の霊気あふれる七面山〔しちめんざん〕。富士の頂から昇る御来光に額ずくとき、神秘的な彩の変化が空を覆いつくし、霊験あらたかな気が身を包みこむ。霊気と光明に満ちた祈りの道の写真集。

帯文(裏)より:房総一宮・玉前神社から富士山を抜け、出雲大社を結ぶ東西の直線。その線上に古来、修験の山として切り拓かれた七面山がある。鎌倉時代には鎮守神として七面大明神が祀られ、法華経信仰の聖地に。そして今、悩み迷える人々の心に光明がさすパワースポットとして、多くの信者たちが険しい山道を駆け登り、祈りを捧げる。その姿を3年間にわたって撮り込んだ貴重な写真集。

版元紹介文より:富士山の真西に位置し、古来、修験の山として知られる霊峰・七面山。今も多くの信者たちが険しい山道を登り、祈りを捧げる。その美しい四季を写し込んだ、類まれな写真集。

★まもなく発売。ページから清らかな冷気=霊気(俗っぽく言えばマイナスイオン)が噴き出してくるような美しい写真集です。じっくり眺めていると、実にすがすがしい気分になります。どの景色も人物像も素晴らしいですが、やはり朝夕の薄闇に映える富士山は格別ですね。写真家の鹿野さんは平凡社さんから『甦る五重塔――身延山久遠寺』を2010年に上梓されています。鹿野さんのおじい様も身延山や七面山へ写真撮影にしばしば出かけられたそうです。鹿野さんにとって身延山や七面山の撮影はライフワークだとのこと。「七面山に登るたびに、私は人智を超えた神秘に畏敬の念を深める」とあとがきにはあります。


5000人の白熱教室[DVDブック]
マイケル・サンデル著 NHK「ハーバード白熱教室」制作チーム訳
早川書房 2012年12月 本体3,333円 A5変形判上製110頁 ISBN978-4-15-209340-0

カバーソデ紹介文より:2012年5月、日本屈指の大ホール・東京国際フォーラムは熱気に包まれた。ハーバード大学のマイケル・サンデル教授が来日、5000人もの聴衆が参加する「白熱教室」が行われたのだ。すべてをお金に換算する「市場主義」の是非を論じる前篇。原発の再稼働、電気料金の値上げなど、震災後の日本が進むべき道を議論する後篇。簡単には答えの出ない難問を議論する史上最大規模の特別講義の模様を、日英対訳テキストと2カ国語音声DVDで完全収録。

目次:
前篇 すべてをお金で買えるのか
後篇 これからの日本の話をしよう

★発売済。クレジット記載頁にある特記を借りると「本書は、2012年5月28日に東京国際フォーラム(東京・有楽町)で行われた第16回ハヤカワ国際フォーラム「ここから、はじまる。民主主義の逆襲」をもとにNHKが制作・放送した番組「マイケル・サンデル 5千人の白熱教室」(前篇「すべてをお金で買えるのか」、後篇「これからの日本の話をしよう」)を再編集・DVDブック化したもの」とのこと。日本オリジナル版の書籍ですが、英語題はDemocracy Strikes Backと付けられていて、これはフォーラムのタイトルを活かしたのでしょう。

★サンデル教授は今回もすばり現代社会の難問に切り込み、対話を促すとともに議論を見事に整理していきます。それにしても、この国で5000人もの聴衆を集めえた哲学者というのは戦前戦後を通じても稀有ではないでしょうか。ハーヴァード大学が東京校をつくって名物講師の講義が有料無料織り交ぜて聴講できるようになったら、けっこう人が集まるような気がします。サンデル教授の授業が共感を呼んでいるのは、彼のコミュニタリアン的思考(共同体主義)が日本人にとってリバタリアニズム(自由至上主義)よりは性に合っているから、と見ることもできますが、教授は安易に議論をたったひとつの答えへ統合しようとしたりはしないわけで、対話の持続と忍耐と共生の美徳への強い意志が、閉塞感と困難の中に生きる現代人の心を打つのでしょう。その意味で、サンデル・ブームは一過性のものと見なせば済むような次元にあるのでは「まったくない」ことは確かです。
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by urag | 2013-01-20 23:03 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)


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