2013年 01月 16日
★アントニオ・ネグリさん(著書:『芸術とマルチチュード』) マイケル・ハートさんとの共著が以下の通り発売されました。ついに三部作完結です。 コモンウェルス――〈帝国〉を超える革命論(上下) アントニオ・ネグリ+マイケル・ハート著 水嶋一憲監訳 幾島幸子+古賀祥子訳 NHK出版 2012年12月 本体各1,400円 B6判並製352頁/344頁 ISBN978-4-14-091199-0/978-4-14-091200-3 上巻帯文より:〈帝国〉論三部作、ついに完結。資本が〈共〉〔コモン〕を私有化するとき、マルチチュードが蜂起する! 下巻帯文より:「コモン」が世界をくつがえす! 資本主義の行き詰まりを乗り越える、新たな富の形とは? 上巻カバーソデ紹介文より:資本の専横に反逆する! 「コモンウェルス」とは何か?――ますます進行するグローバリゼーションのなかで、国境を越えて私たちに働きかけてくる〈帝国〉という権力と、それに対抗する多数多様な人びとの集合体=マルチチュード。〈帝国〉が方にのっとって収奪を試みるのも、マルチチュードが精算し、かつ〈帝国〉と闘うための武器とするのも、〈共〉という富=コモンウェルスである。それはいかにしてつくられ、どのような可能性を秘めるのか。絶対的民主主義を追究する、〈帝国〉論の完結篇。 下巻カバーソデ紹介文より:革命への道筋をひらく! 中心のないネットワーク状の権力=〈帝国〉の興隆に対抗し、秩序形成をめざして単独行動に走ったアメリカの試みは、イラク戦争の失敗と金融危機という挫折に終わった。残されたのはEUの超国家主義でも中国の覇権主義でもなく、〈共〉という富〔コモンウェルス〕にもとづいた、マルチチュードによる民主主義のプロジェクトだった。私的所有という制度とそれを支える法体制を根本から批判し、万人にアクセス可能な資源=〈共〉〔コモン〕の豊かな可能性を予見する。〈共〉をめぐる生産はいかにして資本を蝕み、崩壊させるのか? ポスト工業化にこそ読まれるべき「革命」の書。 版元紹介文より:『〈帝国〉』『マルチチュード』に続く、待望の第3弾! グローバル企業やIMFなどの〈帝国〉が世界秩序をつくりあげ、その権力のもとで私たちは搾取され続けている。この状況を打開する可能性を秘めた「共有の富」とは何か? それはいかにして資本主義の行き詰まりを乗り越え、ついには革命の実現へと至るのか? ゼロ年代を席巻した三部作の完結篇、いよいよ登場! 上巻目次: 序 マルチチュードが君主になる 第一部 共和制(と貧者のマルチチュード) 1-1 所有財産の共和制 1-2 生産的な身体 1-3 貧者のマルチチュード 物体論1――生政治的な出来事とは何か 第二部 近代性(と別の近代性の風景) 2-1 抵抗する反近代性 2-2 近代性のアンビバレンス 2-3 別の近代性 人間論1――生政治的理性 第三部 資本(と〈共〉的な富をめぐる闘い) 3-1 資本構成の変貌 3-2 階級闘争 3-3 マルチチュードの好機 特異性論1――愛にとり憑かれて 間奏曲――悪と闘う力 訳註 原註 下巻目次: 第四部 〈帝国〉の帰還 4-1 失敗したクーデタの短い歴史 4-2 アメリカのヘゲモニー以後 4-3 反逆の系譜学 物体論2――大都市 第五部 資本を超えて? 5-1 経済的移行の管理運営 5-2 資本主義に残されたもの 5-3 断層線沿いの予震――破滅に向かう資本 人間論2――閾を超えろ! 第六部 革命 6-1 革命的並行論とは何か 6-2 蜂起の拡大と交差 6-3 革命を統治する 特異性論2――幸福を制度化する 謝辞 解説(水嶋一憲) 訳註 原註 索引 ★発売済。三部作すなわち『〈帝国〉――グローバル化の世界秩序とマルチチュードの可能性』(以文社、水嶋一憲・酒井隆史・浜邦彦・吉田俊実訳、2003年)、『マルチチュード――〈帝国〉時代の戦争と民主主義』(上下巻、幾島幸子訳、NHK出版、2005年)、『コモンウェルス――〈帝国〉を超える革命論』(上下巻、幾島幸子+古賀祥子訳、NHK出版、2012年)、ついに完結です。第一作では国境を越えて世界を席巻しつつある〈帝国〉的権力を詳細に分析し、第二作では〈帝国〉時代における地球規模の新しい民衆運動の主体であるマルチチュードの可能性を解き明かし、今回刊行された第三作では〈帝国〉の席巻を打ち砕き新世界を創造するためにマルチチュードが依拠すべき共有の富すなわちコモンウェルスとは何かを解説しています。 ★この第三作こそ、「資本主義でも社会主義でもないものに向けて、新たな政治的空間を切り拓く」、「〈共〉の制度化のための政治的プロジェクト」(16-17頁)を雄弁に語る、三部作最大の希望の書です。「本書の前半では、〈共〉の発展を妨害し、腐敗させる三つの枠組み――共和制、近代性、資本――に順次焦点をあて、哲学的・歴史的に検証していく。その一方で私たちはこの三つの領域のそれぞれについて、貧者のマルチチュードと別の近代性の領域から立ち現れるオルタナティブを見出しもする。本書の後半では、現代世界における〈共〉の領域について政治的・経済的な分析を行う。マルチチュードの置かれた現状とその潜勢力を見きわめるために、〈帝国〉のグローバル・ガバナン構造や資本主義的な指令装置について探っていく。そして最後に現代における革命の可能性とそれに必要な制度的プロセスについて考察する」(22-23頁)。 ★ネグリ+ハートの共作には三部作に先だって『ディオニュソスの労働――国家形態批判』(長原豊+崎山政毅+酒井隆史訳、人文書院、2008年)という本があり、さらに共著最新作としては昨年5月に発売された『Declaration』(Argo-Navis, 2012)があります(Kindle版はなんと87円という安さ!)。この本は『宣言』というタイトルでNHK出版から刊行予定であることが『コモンウェルス』の解説「〈共〉の革命論」で明かされています。この『宣言』では、「本書〔『コモンウェルス』〕で展開された〈共〉の革命論をベースに、生きること・自由・平等・幸福の追求・〈共〉への自由なアクセスといった不可侵の権利が自明の真理として提示されるとともに、それらの権利を侵害する統治形態は廃絶され、新たな政府が創設されるべきであるといった原理が宣言されている」(305頁)とのことです。 ★NHKブックスには『マルチチュード』『コモンウェルス』のほか、ネグリさんのインタビュー本『未来派左翼――グローバル民主主義の可能性をさぐる』(上下巻、廣瀬純訳、NHK出版、2008年)という既刊書もあります。イタリアでは昨年10月、ネグリさんの70年代の主著『国家形態――政体の政治経済批判のために La forma Stato: Per la critica dell'economia politica della Costituzione』(1977年)が再刊されました。写真は右がBaldini Castoldi Dalai editoreの再刊版で、左がFeltrinelliの初版本です。再刊にあたって特に新しい序文などは加わっていません。なにぶん大著なので、日本語訳が出版される可能性があるかどうか、なかなかたいへんかもしれません。 ★このほか、イタリアでは同じ時期に『宣言』のイタリア語版『Queto non è un manifesto』(Feltrinelli, 2012)や、『スピノザと私たち』のイタリア語版『Spinoza e noi』(Mimesis Edizioni, 2012)が出ていますが、前者は英語版からのStefano Valentiによるイタリア語訳で、後者はフランス語版『Spinoza et nous』(Galilée, 2010)からのVittorio Morfinoによるイタリア語訳です。少し奇妙なのはそもそもフランス語版は、イタリア語からのJudith Revelさんによるフランス語訳だったので、わざわざフランス語訳から再度イタリア語訳する必要はないはずなのです。この辺の事情については追って調べておこうと思います。なお、フランス語版からの日本語訳が『スピノザとわたしたち』(信友建志訳、水声社、2011年)です。
by urag
| 2013-01-16 22:36
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