2012年 11月 16日
★G・C・スピヴァクさん(著書:『ポストコロニアル理性批判』) 現在、「第28回京都賞受賞」のために来日中です。11日(日)に受賞記念講演会「いくつもの声」を国立京都国際会館大会議場で行い、12日(月)には同会館での受賞記念ワークショップ「翻訳という営みと言葉のあいだ――21世紀世界における人文学の可能性」において受賞者講演「翻訳という問題をめぐる断片的思索」を発表されました。また、14日に大阪大学会館講堂(大阪大学豊中キャンパス)で行われた第28回京都賞学生フォーラムでは「グローバル化の限界を超える想像力:未来共生に向けて何を「学び」、何を「教える」のか」と題し、講演されています。本日18:30より東京・六本木の国際文化会館岩崎小彌太記念ホールでは、特別講演「ボーダーレス世界における人文学の役割」を行います。すでに予約満席とのことです。 ★渡名喜庸哲さん(共訳書:サラ-モランス『ソドム』) 以下の訳書を上梓されました。 フクシマの後で――破局・技術・民主主義 ジャン=リュック・ナンシー著 渡名喜庸哲訳 以文社 2012年11月 本体2,400円 四六判上製208頁 ISBN 978-4-7531-0306-5 帯文より:人間が制御できないまでに肥大化した技術的・社会的・経済的な相互依存の複雑性を〈一般的等価性〉という原則から考察した、現代哲学界の第一人者による、画期的な文明論的布置。 原書: L'équivalence des catastrophes (après Fukushima), Galilée, 2012. "De la struction", Dans quels mondes vivons-nous?, Galilée, 2011. Vérité de la démocratie, 2008, Galilée. 目次: 序にかえて――ジャン=リュック・ナンシーとの対話 I 破局の等価性――フクシマの後で II 集積について III 民主主義の実相 1 六八年―〇八年 2 合致しない民主主義 3 さらけ出された民主主義 4 民主主義の主体について 5 存在することの潜勢力 6 無限なものと共通なもの 7 計算不能なものの分有 8 有限なものにおける無限 9 区別された政治 10 非等価性 11 無限なもののために形成された空間 12 プラクシス 13 実相 訳者解題 ※発売済。「訳者解題」によれば、冒頭の序文は訳者が2012年7月にストラスブールのナンシー宅を訪れてインタビューしたものを再構成したもの。第一章「破局の等価性」は2011年12月17日に東洋大学国際研究センターが主宰したウェブ講演会「ポスト福島の哲学」で発表された「フクシマの後に哲学をすること」が加筆されて今年公刊されたばかりのもの。第二章「集積について」は、昨年出版されたナンシーと若手物理学者オーレリアン・バローとの共著『われわれはいかなる世界に生きているのか』の一部。第三章「民主主義の実相」は2008年の著書で「68年5月」の40周年を迎えて公刊されたものです。 ※「等価性」の意味についてナンシーは次のように説明しています。「破局の「等価性」ということが言わんとしているのは、今やどのような災厄も、拡散し増殖すると、その顛末が、核の危険が凡例的にさらけ出しているものの刻印を帯びているということである。今や、諸々の技術、交換、循環は相互に関連しあい、絡みあい、さらには共生している。そのため、たとえばある洪水があった場合、それがどこで起こったとしても、一定量の技術的、社会的、経済的、政治的な錯綜と関わりをもたないということができなくなっており、このような関わりゆえに、われわれはもはや、この洪水を人が良くも悪くもその範囲を確定できるような一介の損害ないし不幸と考えることができなくなっているのである」(22頁)。 ※またこうも言っています。「マルクスは貨幣を「一般的等価物」と名づけた。われわれがここで語りたいのもこの等価性についてである。ただし、これをそれ自体として考察するためではなく、一般的等価性という体制が、いまや潜在的に、貨幣や金融の領域をはるかに越えて、しかしこの領域のおかげで、またその領域をめざして、人間たちの存在領域、さらには存在するものすべての領域の全体を吸収しているということを考察するためである」(25頁)。「破局はどれも同じ重大性をもつのではないが、しかしそのすべてが一般的等価性を構成する諸々の相互依存の全体と関わりをもつということである」(26頁)。 ※「破局の等価性」のしめくくりはこうです。「明日のために平等性を要請すること、それはまず、今日それを肯定することであり、同じ身振りでもって破局的な等価性を告発することである。それは共通の平等性、共に通訳不可能な平等性を肯定すること、非等価性のコミュニズムを肯定することである」(71頁)。再読、三読したい、多くの示唆に富んだ本です。
by urag
| 2012-11-16 17:16
| 本のコンシェルジュ
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