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2012年 11月 04日

注目新刊:ラクラウ+ムフ『民主主義の革命』ちくま学芸文庫、ほか

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民主主義の革命―─ヘゲモニーとポスト・マルクス主義
エルネスト・ラクラウ(1935-)+シャンタル・ムフ(1943-)著 西永亮+千葉眞訳
ちくま学芸文庫 2012年11月 本体1,600円 文庫判並製432頁 ISBN978-4-480-09494-0

カバー紹介文より:新自由主義が台頭し、経済のグローバル化が進展するなか、政治的シニシズムが蔓延し始めている。こうした状況下で、新たな「政治的想像力」はいかにして可能か。本書はグラムシの思想のほか、ラカン、デリダといったポスト構造主義を摂取し、階級や革命的主体概念に依拠する古典的マルクス主義を脱構築、新たなヘゲモニー概念を提起したポスト・マルクス主義の記念碑的著作だ。反核運動や性的マイノリティ、フェミニズム、エコロジー運動など新しい社会運動と労働闘争との「接合」が必要と説く本書は、「ラディカルで複数的なデモクラシー」を構想するための必読書である。最新第2版の新訳。

原書:Hegemony and Socialist Strategy: Towards a Radical Democratic Politics, Verso, 2001.

目次:
第二版への序文
序論
1 ヘゲモニー――概念の系譜学
2 ヘゲモニー――新たな政治的論理の困難な出現
3 社会的なものの実体性を越えて――敵対とヘゲモニー
4 ヘゲモニーとラディカル・デモクラシー
解説
訳者あとがき

★まもなく発売(7日発売予定)。旧訳(『ポスト・マルクス主義と政治――根源的民主主義のために』山崎カヲル+石澤武訳、大村書店、1992年1月;復刻新版、2000年3月)は版元の廃業により入手しにくくなっており、古書価格が高いままだっただけに、新訳でなおかつ文庫というのは嬉しいニュースです。原著はヴァーソから1985年に刊行され、2001年に長めの新しい序文「第二版への序文」が加えられた第二版が同版元から出ています。今回の新訳はこの第二版を底本にしています。巻末には共訳者の千葉さんが書かれた簡潔な「解説」が収められ、ラクラウとムフの「ポスト・マルクス主義」の立場と、彼らの唱える「ラディカル・デモクラシー」の現在的意義を積極的に示されています。

★ラクラウ(アルゼンチン出身)とムフ(ベルギー出身)はこう書きます、「左翼にとってのオルタナティヴは、明らかに社会的分断を新たな基盤のうえに築きあげる自由-保守主義とは異なる等価性の体系を構築することにおいてのみ可能となる。〔…〕左翼にとってのオルタナティヴは、みずからを民主主義革命の領域に全面的に位置づけ、抑圧に抗するさまざまな闘争のあいだに等価性の連鎖を作り上げていくことにこそある。それゆえに左翼の課題は、自由民主主義的イデオロギーを否認することにあるのではなく、むしろ逆にラディカル(根源的)で複数主義的なデモクラシーの方向にそれらを深化させ拡充していくことにある」(382頁)。

★彼らは「第二版への序文」にこうも書いています。「一連の新しい問題や展開に照らして、マルクス主義の諸カテゴリーを再訪(再活性化)することは、必然的にマルクス主義の脱構築をもたらす。つまり、そうした試みは、それらの可能性の条件のいくつかを除去しつつ、さらに新しい可能性を育成することを意味している」(13頁)。新しい可能性とはかつてグラムシが見出したヘゲモニー論に萌すものであり、右寄りのポピュリスト的扇動家が跋扈するこんにちにおいては「左翼がヘゲモニー闘争を放棄し、中道の地歩の獲得を主張する限りにおいて、こうした状況を逆転させる希望はほとんどない」(34頁)と二人は強く警告しています。

◎ラクラウ/ムフの既訳書
1985年05月:ラクラウ『資本主義・ファシズム・ポピュリズム――マルクス主義理論における政治とイデオロギー』横越英一監訳、大阪経済法科大学法学研究所訳、柘植書房、※のち、大村書店より発売
1992年01月:ラクラウ+ムフ『ポスト・マルクス主義と政治――根源的民主主義のために』山崎カヲル+石澤武訳、大村書店、※復刻新版、2000年3月
1998年04月:ムフ『政治的なるものの再興』千葉眞+土井美徳+田中智彦+山田竜作訳、日本経済評論社
2002年04月:バトラー+ラクラウ+ジジェク『偶発性・ヘゲモニー・普遍性――新しい対抗政治への対話』竹村和子+村山敏勝訳、青土社、※ラクラウの3つの論文「アイデンティティとヘゲモニー」「構造、歴史、政治」「普遍性の構築」を収録。
2002年07月:ムフ編『脱構築とプラグマティズム――来たるべき民主主義』青木隆嘉訳、法政大学出版局、※ムフ「脱構築およびプラグマティズムと民主政治」、ラクラウ「脱構築・プラグマティズム・ヘゲモニー」を収録するほか、ローティ、クリッチリー、デリダの論考を収める。
2006年05月:ムフ編『カール・シュミットの挑戦』古賀敬太+佐野誠訳、風行社、※ムフの2篇「序 シュミットの挑戦」「カール・シュミットと「世界統一」」のほか、ジジェクなど9人の発表を収める。
2006年07月:ムフ『民主主義の逆説』葛西弘隆訳、以文社
2008年08月:ムフ『政治的なものについて――闘技的民主主義と多元主義的グローバル秩序の構築』酒井隆史監訳、篠原雅武訳、明石書店
2012年11月:ラクラウ+ムフ『民主主義の革命―─ヘゲモニーとポスト・マルクス主義』西永亮+千葉眞訳、ちくま学芸文庫

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アメリカを占拠せよ!
ノーム・チョムスキー(1928-)著 松本剛史訳
ちくま新書 2012年10月 本体820円 新書判並製208頁 ISBN978-4-480-06685-5

カバーソデ紹介文より:たった一%の富裕層が権益を独占し、政治にも隠然たる力を及ぼすアメリカ社会。迫りくる貧困に脅える残り九九%の国民がついに蜂起した。声なき人々が怒りの輪を広げ、ウォール街を占拠したことに端を発する「オキュパイ運動」。その歴史的意義とは何か。いま、アメリカはどこに向かおうとしているのか。そして、日本に与える影響は? 稀代の思想家チョムスキーが、超大国を根底から覆しつつある直接民主主義革命を熱く語る。

原書:Occupy, Penguin/Zuccotti Park Press, 2012.

★発売済。オキュパイ運動のさなかでの発言や発表をまとめた小著です。原書は今春に刊行されたものですが、訳書は秋。もっと早く発売されたら良かったですが、やむをえません。表題作「占拠せよ」は、2011年10月22日のハワード・ジン追悼記念講演。巻末には全米法律家ギルドによる「オキュパイ運動のサポートのために」が収録されていて、警察との向き合い方が簡潔にまとめられています。かのベストセラー『9.11』以降、チョムスキーの時事的発言は単行本以外にも新書で読めるようになっており、これからもぜひ新書で出続けて欲しいです。単行本より持ち運びが断然便利ですし、移動する先々で読まれることが妥当なのですから。

◎新書で読むチョムスキー
2003年04月『メディア・コントロール――正義なき民主主義と国際社会』鈴木主税訳、集英社新書
2004年09月『覇権か、生存か――アメリカの世界戦略と人類の未来』鈴木主税訳、集英社新書
2005年11月『チョムスキー、民意と人権を語る』岡崎玲子聞き手、鈴木主税訳、集英社新書
2007年09月『お節介なアメリカ』大塚まい訳、ちくま新書
2012年10月『アメリカを占拠せよ!』松本剛史訳、ちくま新書

◎文庫で読むチョムスキー
2002年09月『9・11――アメリカに報復する資格はない!』山崎淳訳、文春文庫
2011年08月『生成文法の企て』福井直樹+辻子美保子訳、岩波現代文庫

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相互扶助再論――支え合う生命・助け合う社会
ピョートル・クロポトキン(1842-1921)著 大窪一志訳
同時代社 2012年10月 本体3,000円 四六並製300頁 ISBN978-4-88683-732-5

帯文より:「君の知を、君の愛を、君の行動エネルギーを、広く、他者へ向かって拡張せよ!」(クロポトキン)。名著『相互扶助論』を、人間と社会のために、深化・発展させた関連論文「いま求められている倫理」「自然の道徳」を初訳、「進化論と相互扶助」「アナキズムの道義」を新訳し収録。

★発売済。今年6月に刊行されたクロポトキン『増補修訂版 相互扶助論』(大杉栄訳、大窪一志解説、同時代社)の続篇です。増補修訂版は「表現を現代語に置き換え、ルビを付し、格段に読みやすくなった〔…〕。「3.11」後の世界を視野に「解説」を充実」と謳われていました。もともと同時代社版『相互扶助論』は、同社が大杉栄の旧訳を現代風に読みやすくして1996年に出版したもので、その後2009年に、大窪一志さんの解説「甦れ、相互扶助」を加えた新版が刊行されます。そして今夏の増補修訂版では大窪さんの解説は「甦れ、相互扶助(増補)」となっていて、6頁にわたる新項目「大震災と相互扶助」が書き加えられています。

★今回刊行された『再論』は大杉訳ではなく大窪さんによる新訳で、凡例には「クロポトキンが『相互扶助論(Mutual Aid)』刊行(1902年)後に、その内容を補い発展させるために執筆した関連論文のうち四編を翻訳したもの」とあります。初出一覧によれば四編とも英語版が底本となっています。巻末には長篇の訳者解説「生命の秩序としての相互扶助――クロポトキンの生命観と社会観」が収められています。百年を超える時を経てもなお褪せることのないクロポトキンの情熱と人間愛は今後も長く読み継がれていくことでしょう。
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by urag | 2012-11-04 23:41 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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