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2012年 10月 21日

注目新刊:『現代思想』臨時増刊号総特集=チューリング、ほか

現代思想 2012年11月臨時増刊号 総特集=チューリング
青土社 2012年10月 本体1,238円 A5判並製222頁 ISBN978-4-7917-1252-6

★発売済。アラン・チューリング(Alan Mathison Turing, 1912-1954)の生誕百周年記念特集です。6月に発売された、日本評論社の月刊誌「数学セミナー 2012年7月号609号」でも、「チューリング生誕100年」と題した特集が組まれていました。今回の「現代思想」の特集号では、新井紀子さんと安西祐一郎さんによる討議「理性は計算可能である?――チューリング生誕100年に際して」のほか、円城塔「姿を求めて」、西垣通「思考機械へのむなしい呼びかけ」、郡司ペギオ幸夫「チューリングのバイオロジカルな拡張」、ドミニク・チェン「コミュニケーションの発生と継承」など、12篇が寄稿されています。また、チューリング自身のテクストとしては、「計算機械と知能」(高橋昌一郎訳、8-38頁;"Computing Machinery and Intelligence", 1950)、「解ける問題と解けない問題」(田中一之訳、40-57頁;Solvable and Unsolvable Problems, 1954)の二篇が掲載されています。前者には既訳があります(「コンピュータと知能」西垣通訳、『思想としてのパソコン』西垣通編著訳、NTT出版、1997年、91-126頁)。なお、本号の表紙には「シリーズ・現代思想の数学者たち」と記されていて、おそらく今回がそのシリーズ第一回になるのだろうと思います。シリーズについては編集後記にも特に説明はありません。

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★さて、続いては、今月下旬から来月にかけての近刊書の中から注目の書目を以下に挙げます。

2012年10月*単行本・叢書選書・新書・文庫
23日『重層的な非決定へ〈新装復刻版〉』吉本隆明著、大和書房、3,360円
24日『ゾンビ経済学――なぜ破綻した経済理論が幅を利かせているのか』ジョン・クイギン著、山形浩生訳、筑摩書房、2,730円
24日『ノンセンスの領域』エリザベス・シューエル著、高山宏訳、白水社、6,090円
25日『アダムとイヴ――語り継がれる「中心の神話」』岡田温司著、中公新書、840円
25日『創られたスサノオ神話』山口博著、中公叢書、2,100円
26日『神を哲学した中世――ヨーロッパ精神の源流』八木雄二著、新潮選書、1,470円
29日『社会運動の戸惑い――フェミニズムの「失われた時代」と草の根保守運動』山口智美・斉藤正美・荻上チキ著、勁草書房、2,940円
30日『最初の人間』アルベール・カミュ著、大久保敏彦訳、新潮文庫、662円
31日『批評時空間』佐々木敦著、新潮社、2,100円

2012年11月*文庫
06日『周防大島昔話集』宮本常一著、河出文庫、798円
07日『江戸奇談怪談集』須永朝彦訳、ちくま学芸文庫、1,785円
07日『レ・ミゼラブル(1)』ユゴー著、西永良成訳、ちくま文庫(全5巻予定)、998円
07日『世界幻想文学大全(1)幻想文学入門』東雅夫編、ちくま文庫、861円
07日『世界幻想文学大全(2)怪奇小説精華』東雅夫編、ちくま文庫、1,260円
07日『民主主義の革命――ヘゲモニーとポスト・マルクス主義』ラクラウ&ムフ著、千葉真・西永亮訳、ちくま学芸文庫、1,575円
07日『発展する地域 衰退する地域――国の経済から地域の経済へ』ジェーン・ジェイコブズ著、中村達也訳、ちくま学芸文庫、1,575円
08日『物質のすべては光――現代物理学が明かす、力と質量の起源』フランク・ウィルチェック著、吉田三知世訳、ハヤカワ文庫NF、924円
14日『新井白石「読史余論」現代語訳』横井清訳、講談社学術文庫、1,155円
16日『内乱――パルサリア(上)』ルーカーヌス著、大西英文訳、岩波文庫(全二巻)、882円
16日『偶然性の問題』九鬼周造著、岩波文庫、1,197円
16日『「尖閣問題」とは何か』豊下楢彦著、岩波現代文庫、1,071円
23日『心と他者』野矢茂樹著、中公文庫、900円

2012年11月*単行本・選書
05日『ビザンティン四福音書写本挿絵の研究』瀧口美香著、創元社、8,400円
09日『希望の原理(1)』エルンスト・ブロッホ著、山下肇ほか訳、白水iクラシックス(全六巻)、3,990円
12日『子供の哲学――産まれるものとしての身体』檜垣立哉著、講談社選書メチエ、1,575円
16日『哲学の起源』柄谷行人著、岩波書店、2,205円
22日『灰野敬二の世界』河出書房新社、2,940円
25日『月の向こう側――日本について』レヴィ=ストロース著、川田順造訳、中央公論新社、1,890円
下旬『「鎖国」と資本主義』川勝平太著、藤原書店、3,780円

2012年12月*文庫
04日『男おひとりさま道』上野千鶴子著、文春文庫、590円

★カミュ『最初の人間』は死後30年以上経った94年に刊行された未刊の遺作で自伝的長編小説。96年に新潮社から大久保敏彦さんによる訳書が出て、今回ようやく文庫化。単行本が文庫化されるスピードが非常に早くなったここ20年の中では非常に遅い例です。佐々木敦さんの『批評時空間』は月刊誌『新潮』での連載をまとめたもの。ちくま文庫のユゴー『レ・ミゼラブル』は西永良成さんによる新訳で全五巻予定。西永先生はフランス文学の古典作品では4年前にデュマ・フィス『椿姫』(光文社古典新訳文庫、2008年)をお訳しになっています。

★ラクラウ&ムフ『民主主義の革命――ヘゲモニーとポスト・マルクス主義』は以前『ラディカルな政治は可能か?――ヘゲモニーと政治』という書名で予告されていたもの。二人の共著書はこれまで1985年のHegemony and Socialist Strategyが『ポスト・マルクス主義と政治――根源的民主主義のために』(山崎カヲル・石沢武訳、大村書店、1992/2000年)として翻訳されていましたが、今回の文庫新刊の原書が何なのかは訳題からはよく分かりません。ただ、二人の共著はあまりなく、近年ではドイツ語版オリジナル論集と思しき1998年のHegemonie und radikale Demokratie: Zur Dekonstruktion des Marxismusくらいしか思い浮かびませんから、ひょっとすると今回の訳書は日本語版オリジナル論文集なのかもしれません。【2012年10月31日追記:筑摩書房編集部さんより本書はHegemony and Socialist Strategyの第二版の新訳であることを教えていただきました。】

★ジェイコブズ『発展する地域 衰退する地域』は書名と訳者名から推測するに、『都市の経済学――発展と衰退のダイナミクス』(TBSブリタニカ、1986年)の文庫化ではないかと思われます。ジェイコブズの著書の文庫化は本書が初めてではなく『市場の倫理 統治の倫理』(香西泰訳、日経ビジネス人文庫、2003年)という先例がありますが、長らく品切で、親本である単行本より高額になることがままあるのが残念です。

★ルーカーヌス『内乱』は京都大学学術出版会の「西洋古典叢書」でも刊行予告がありましたが、岩波版が先行するということなのでしょう。全二巻予定。ルーカーヌス(ルカーヌス、あるいはルカヌスとも表記されます)は古代ローマの哲学者セネカ(小セネカ)同様、暴君ネロの命令で25歳にして自決を余儀なくされた人物で、セネカの甥にあたり(大セネカにとっては孫)、叔父の薫陶を受けた若き才人でした。『内乱(パルサリア)』は彼の主著になります。

★ブロッホ『希望の原理』は廉価版全6巻を毎月1冊ずつ刊行していくもののようです。分厚い全3巻本を持っている読者もとりあえずは押さえておかざるをえないでしょうね。個人的には白水社さんには『ニーチェ全集』第一期および第二期全巻をuブックスあたりで再刊してくださらないかなあと念願しています。もっと言えば、白水社さんには小学館さんや平凡社さんのような「ライブラリー」を創設していただいた方が販売戦略としては書店さんに喜ばれる気がします。

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★最後に注目のブックフェアです。今年年末で活動休止されることとなった自然科学書の版元「どうぶつ社」さんのフェアが、ジュンク堂書店池袋本店7Fカウンター(エレベーター)前で12月10日まで開催されています。「どうぶつ社」さんの刊行物をショーケースに入れて陳列するととともに、在庫がある書籍をカウンター前の大きな平台いっぱいに展開しています。「どうぶつ社の36年」と題した小冊子が無料配布されていて、1976年から2011年までの刊行物が、新聞記事などとともに年表風に紹介されています。ぜひたくさんの方々に見ていただきたいフェアです。
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by urag | 2012-10-21 22:49 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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