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2012年 08月 26日

今月の注目近刊と新刊:石川幹人『超心理学』など

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超心理学――封印された超常現象の科学
石川幹人(いしかわ・まさと)著
紀伊國屋書店 2012年8月 本体2,800円 46判上製388頁 ISBN978-4-314-01098-6

帯文より:これは科学である。テレパシー、透視、念力などの解明を目指す学問の第一人者による、渾身の書き下ろし。

版元紹介文より:超心理学という学問の現状と、科学的手法で研究されているもののアカデミズムで受け入れられない実態を、第一人者が解説する。テレパシーや透視などの現象の解明を目指す超心理学という学問は、正統的な科学の手法で研究されているものの、科学者たちからオカルト扱いされ、まともにとりあわれず「封印」されてしまう。日本における超心理学の第一人者が、その研究内容や成果などを詳細に解説するとともに、正しくても理解されない実態を明らかにし、科学のあるべき姿を問う。

版元紹介文(その2)より「超心理学=オカルト」と一蹴する前に! テレパシー、透視、念力などの解明を目指す超心理学は、正統的な科学の手法で研究されているものの、科学者たちからオカルト扱いされ、まともにとりあわれることなく「封印」されてきた。130年の歴史をもつ学問分野でありながら、日本にはアカデミックポストがないため、数少ない研究者のほとんどは、プライベートの時間に自費で研究しているのが現状だ。世界にも超心理学者は数百名存在するのみで、絶滅危惧学問ともいえる。本書は、日本における第一人者が、その研究内容や成果を詳細に解説するものであるとともに、学問として受けいれられてこなかった背景を明らかにし、科学のあるべき姿を問いなおす「科学論」でもある。著者渾身の書き下ろし。「用語集」「統計分析の基礎」「読書ガイド」など、付録も充実。(装丁 松田行正+日向麻梨子)

目次:
序章
 予知かそれとも偶然か/超心理学協会/デューク大学とJ・B・ラインの研究/ライン研究センター/本書の構成
第I部 超心理学の実態
 第1章 テレパシーの証拠をつかんだ
  ガンツフェルト模擬実験/厳密なガンツフェルト実験の成果/不遇な「現代のガリレオ」
 第2章 米軍の超能力スパイ作戦
  マクモニーグルの遠隔視実験/スターゲイト・プロジェクト/遠隔視実験を改良した透視実験/ガンツフェルト実験とのちがい/スターゲイト・プロジェクトの幕引き
 第3章 超能力の実在をめぐる懐疑論争
  トンデモ超能力対談/かたくなな否定論者/超心理学の不祥事/厳密化する超心理学
第II部 封印する社会とメディア
 第4章 奇術師たちのアリーナ
  ホットリーディング/奇術師 VS 奇術師/私の来歴/超心理現象に興味をもつ人
 第5章 能力者と称する人々
  ナターシャの人体透視/御船千鶴子の千里眼事件/能力者研究の背景/「自分には超能力があります!」/職業欄はエスパー
 第6章 マスメディアの光と影
  ドラマの科学監修/能力者へのインタビュー/大衆の受容と排除/心理学より工学だ/マスメディアは両刃の剣/演出かやらせか
第III部 封印は破られるか
 第7章 心の法則をもとめて
  東洋的な問い/ヒツジ・ヤギ効果/ESPの発揮を高める要因/超心理学の実験者効果/超心理現象は無意識のうちに起きる/内観報告による心理分析
 第8章 予知――物理学への挑戦
  未来は予感できる/予知も透視のひとつか/透視の焦点化/簡単に実施できる予感実験
 第9章 意識に共鳴する機械
  感情エージェントが笑う/乱数発生器によるミクロPK実験/地球意識プロジェクト/下降効果のとらえにくさ/超心理現象の情報システム理論
 第10章 霊魂仮説について考える
  霊魂という万能仮説/懐疑論者が一目おく超心理現象/霊魂は肉体の死後も存続するのか/霊魂仮説から超心理発揮仮説へ/詰めこみ理論から拡がり理論へ
 終章
  物理学者とのオカルト対談/オカルト論議は信念論争/封印構造の認知的側面/封印は解かれるか
あとがき
付録――「用語集」「統計分析の基礎」「読書ガイド」
索引

★28日取次搬入予定。いわゆる入門書というよりは、超心理学の歴史的挑戦と社会的地位をめぐる様々な困難をありのまま描いたごく真面目なリポートであり、奇想天外な超常現象のエピソードを期待している読者向きではありません。本書にあるのはお気楽な暇つぶしや娯楽ではなく真剣な探究なので、様々な科学実験に欠かせない真剣さや真面目さゆえに生じてくる退屈はむしろ相応しいものですらあります。これは、本書が面白くないと言っているのではありません。学問的地道さと真摯さの本当の奥ゆきは、一見すると退屈かもしれない細やかな分析や検証の積み重ねにこそあるということを本書は繰り返し教えてくれるのです。

★著者は一般企業での人工知能研究や政府系シンクタンクなどを経て、97年より明治大学で教鞭をとっています。認知情報論や科学基礎論が専門で、日本における超心理学の第一人者です。第10章では著者が受け持った市民講座の様子とその変遷が紹介されています。最初は多様かつ多数の受講者が押し寄せたものの、真面目にやればやるほど受講者が減り、やがて定員割れで閉講になったそうです。超能力や霊魂という言葉に反応する人は多くても、その実直な分析や検証という「科学的実践」までには興味を持てない人が多いのかもしれません。本書の最後にはこう書かれています。「現役の超心理学者は現在、世界に数百名ほどしか存在せず、学問分野として風前の灯火だ」(333頁)。

★しかしながら、容易に解明できなかったり、等閑視されたりする未知の領域へ果敢に挑みつづける超心理学はけっして無駄でも無用でもなく、困難だからこそ面白いし、大事なのですね。不当なまでに無視されたり歪められたりするからこそ、光をあてつづけるべきなわけです。誰かが担わなければならない貴重な仕事だと思います。帯文に引用されたウィリアム・ジェイムズの言葉が素敵です。「我々が手さぐりしている暗闇がいかに大きいか理解すること。我々の出発点になった自然科学の前提は暫定的なものであり、改定可能なのだということを忘れてはならない」(『心理学の諸原理』1890年より)。巻末には用語解説や文献案内が付されおり、不案内な読者は、関連書が存外に多いことに驚くかもしれません。

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フリードリヒ・ハイエク
ラニー・エーベンシュタイン(Lanny〔Alan O.〕 Ebenstein)著 田総恵子訳
春秋社 2012年8月 本体3,500円 四六判上製512頁 ISBN978-4-393-62184-4

帯文より:没後20年、世界はようやくハイエクに追いついた! 戦争と社会主義の20世紀を駆け抜けた経済思想家の生涯と交遊を余すことなく描ききった傑作ノンフィクション。

版元紹介文より:ミルトン・フリードマンの伝記でも話題になったジャーナリスト、ラニー・エーベンシュタインによる、経済学者・思想家フリードリヒ・フォン・ハイエク(1899-1992)の伝記です。複数の国を移住した平凡ならぬ実人生、人文・社会・自然科学を横断しながら深められた自由主義思想、そして、社会主義と戦争に吹き荒れた20世紀の歴史、この三つを交差させながら描いた本書は、ハイエクファンのみならず、多くの方々に、歴史と現在が深くつながっていることを教えてくれる一冊です。

原書:Friedrich Hayek: A Biography, St. Martin's Press, 2001.

目次:
序文
第1部 戦争 1899-1931
 第1章 家族
 第2章 第一次世界大戦
 第3章 ウィーン大学
 第4章 ニューヨーク
 第5章 ルートヴィヒ・フォン・ミーゼス
第2部 イギリス 1931-1939
 第6章 ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス
 第7章 ライオネル・ロビンス
 第8章 ジョン・メイナード・ケインズ
 第9章 貨幣と景気変動
 第10章 資本について
 第11章 国際金本位制
 第12章 社会主義経済計算論争
 第13章 経済学、知識、情報
第3部 ケンブリッジ 1940-1949
 第14章 理性の乱用と衰退
 第15章 方法論について
 第16章 『隷属への道』
 第17章 有名人になる
 第18章 モンペルラン協会
 第19章 心理学
 第20章 カール・ポパー
第4部 アメリカ 1950-1962
 第21章 シカゴ大学
 第22章 シカゴ学派
 第23章 社会思想委員会
 第24章 ジョン・スチュアート・ミル
 第25章 『自由の条件』
 第26章 ハイエクの影響力
第5部 フライブルク 1962-1974
 第27章 『法と立法と自由』
 第28章 自由と法
 第29章 マルクス、進化、ユートピア
 第30章 政府と道徳
 第31章 思想史家として
 第32章 ザルツブルク時代
第6部 ノーベル賞 1974-1992
 第33章 栄誉
 第34章 ミルトン・フリードマン
 第35章 後期の貨幣観
 第36章 経済問題研究所
 第37章 マーガレット・サッチャー
 第38章 おじいちゃん
 第39章 『致命的な思いあがり』
 第40章 ノイシュティフト・アム・ヴァルド墓地
 第41章 「普遍的平和の秩序」
後記
謝辞
関連年表
原注
人名索引

★発売済。著者はカリフォルニア大学で教鞭も執っているジャーナリストで、既訳書には『最強の経済学者ミルトン・フリードマン』(大野一訳、日経BP社、2008年)があります。「ネオリベ」の唱導者と目されることもあるハイエクの実像は、さほど単純ではありません。ハイエク理論の研究書はこれまで数多く出版されていますが、人間ハイエクを知るためには本書から学ぶものが多そうです。おそらく日本初となる、本格的な伝記の翻訳ではないでしょうか。たとえば第38章ではヘビースモーカーだったハイエクがパイプをやめてかぎタバコを愛するようになったエピソードが紹介されています。銘柄は、ロンドンの「フリボーグ&トレイヤー」の「ドクター・ジェームズ・ロバートソン・ジャスティス・ミックス」。どうでもいいような情報などではなくて、伝記の醍醐味はこうした細部にあると思います。クレスゲ+ウェナー編『ハイエク、ハイエクを語る』(嶋津格訳、名古屋大学出版会、2000年)とともにじっくり読みたい本です。


時間・労働・支配―─マルクス理論の新地平
モイシェ・ポストン(Moishe Postone, 1942-)著 白井聡+野尻英一監訳
筑摩書房 2012年8月 本体6,000円 A5判上製688頁 ISBN978-4-480-86722-3

帯文より:近代=資本主義への〈社会理論〉の応答。マルクス理論の、新たなる古典の誕生。グローバルな経済危機を招来し、絶えざる世界変容を駆動する資本主義=近代。その深層構造を明らかにし、従来のマルクス理論を刷新する〈社会理論〉の金字塔!

本書より:二〇世紀の大規模な歴史的変容が示唆するのは、マルクスの資本主義=近代に対する批判といま一度、出会い直すことの重要性である。本書において展開されるマルクスの批判理論に対するアプローチは、資本主義の深層構造を、伝統的なマルクス主義の資本主義批判とは根本的に異なる仕方で再概念化するものである。

推薦文:こんなに「豊かな社会」に、どうして、忙し過ぎて余裕のない人と、仕事がなくて貧しい人しか、いないのか? そのからくりを知りたい人は、本書を繙こう。鍵は……抽象的時間と抽象的労働。――大澤真幸

原書:Time, Labor, and Social Domination, Cambridge University Press, 1993.

目次:
日本の読者へ
謝辞
凡例
第一部 伝統的マルクス主義への批判
 第一章 マルクスの資本主義批判を再考する
  1 イントロダクション
  2 『経済学批判要綱』――マルクスにおける資本主義とその超克の概念を再考する
 第二章 伝統的マルクス主義の諸前提
  1 価値と労働
  2 リカードとマルクス
  3 「労働」・富・社会的構成
  4 労働に立脚した社会批判
  5 労働と全体性――ヘーゲルとマルクス
 第三章 伝統的マルクス主義の限界と《批判理論》の悲観論への転回
  1 批判と矛盾
  2 フリードリッヒ・ポロックと「政治的なものの優越」
  3 ポロックのテーゼの前提とジレンマ
  4 マックス・ホルクハイマーの悲観論への転回
第二部 商品――マルクスによる批判の再構築へ向けて
 第四章 抽象的労働
  1 カテゴリーの再解釈への諸条件
  2 マルクスによる批判の歴史的に規定された性格
  3 抽象的労働
  4 抽象的労働と社会的媒介
  5 抽象的労働と疎外
  6 抽象的労働と物神性
  7 社会的諸関係・労働・自然
  8 労働と道具的行為
  9 抽象的かつ実質的な全体性
 第五章 抽象的時間
  1 価値量
  2 抽象的時間と社会的必要性/必然性
  3 価値と物質的富
  4 抽象的時間
  5 社会的媒介の諸形態と意識の諸形態
第六章 ハーバーマスのマルクス批判
  1 初期ハーバーマスのマルクス批判
  2 『コミュニケーション的行為の理論』とマルクス
第三部 資本――マルクスの批判の再構築へ向けて
 第七章 資本の理論に向かって
  1 貨幣
  2 資本
  3 ブルジョワ市民社会批判
  4 生産の領域
 第八章 労働と時間の弁証法
  1 内在的動態性
  2 抽象的時間と歴史的時間
  3 変容と再構成の弁証法
 第九章 生涯の軌道
  1 剰余価値と「経済成長」
  2 資本主義の動態性と階級
  3 生産と価値増殖
  4 実質的な全体性
 第十章 結論的考察

訳者解説
主要参考文献
索引(事項/人名)

★発売済。著者はシカゴ大学教授でマルクス研究者として著名ですが、実に著書が翻訳されるのは今回が初めて。2008年夏に来日講演したことが、本訳書の誕生の機縁となっているようです。資本主義批判の大部な理論書で、マルクスの『要綱』や『資本論』をまったく読んだことがない読者にはハードルが高いかもしれませんが、予備知識の有無を抜きにして、まずは本書の懇切な「訳者解説」を読んでからただちに本論に挑んでもまったく構わないのだと思います。あるいはすでにネグリやハーヴェイなどをひもといてみたことのある読者は、彼らと異なるポストンのマルクス理解に興味がわくでしょう。担当編集者のIさんは本書を次のように紹介してくださいました。「マルクス理論を再解釈することによって、資本主義=近代の深層構造を解析し、その原理的な超克の可能性をする一書です」と。ポストン流の「甦るマルクス」のインパクトは、じわじわと読書人に浸透していくことでしょう。装幀はさいきんルディネスコ『ラカン、すべてに抗って』(河出書房新社、2012年7月)を手掛けられている佐々木暁さんによるもの。今回のデザインも繊細かつ力強く、美しいですね。
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by urag | 2012-08-26 23:01 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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