2012年 08月 18日
アイデア No.354(2012.9) 《特集》:日本オルタナ出版史 1923-1945——―ほんとうに美しい本 誠文堂新光社 2012年8月 本体2,829円 A4変型判並製200頁 ISSN0019-1299 版元紹介文より:関東大震災(1923年9月1日)と敗戦(1945年8月15日)。日本人の精神史に強い影響を与えた二つの出来事に挟まれた時代は、日本における近代出版の青春期でもあった。時代を駆け抜けたインディペンデントでオルタナティヴな出版人たちの可能性を出版の未来へとつなぐ総力特集。 内容: 自由民権運動家の最後……宮武外骨 アナーキスティック・ポーノグラファーズ……伊藤竹酔、坂本篤、梅原北明、竹内道之助 出版者としてのサンボリスト/モダニスト詩人の肖像……北原鉄雄、長谷川巳之吉、春山行夫、平井功、岩佐東一郎 コスモポリタニズム‒ジャポニズム往還……田丸卓郎、福原信三、岡村祐之、上村益郎 空想的社会主義あるいは民衆的工芸運動……柳宗悦、寿岳文章、西川満、山崎斌 フレンチ‒ジャーマン純粋病患者たち……江川正之、草野貞之、野田誠三、山本武夫 趣味人・好事家・蒐集狂コミュニティ……神代種亮、斎藤昌三、岩本和三郎、廣瀬千香 限定本のハード・コア……五十沢二郎、秋朱之介、平井博、志茂太郎、森谷均 ★発売済。構成と文は、元「ユリイカ」編集長の郡淳一郎さん。郡さんらしい、非常に密度の濃い特集号で、異彩を放った才気溢れる出版人たちの足跡と彼らがつくった貴重な美しい出版物を惜しげもなくカラー写真で満載する、めくるめきビブリオマニアの世界となっています。なぜこうも先人のつくった書物は素晴らしいのか。ただただその魅力に打たれます。内容サンプルは誌名のリンク先でご覧になれます。 文学におけるマニエリスム――言語錬金術ならびに秘教的組み合わせ術 グスタフ・ルネ・ホッケ著 種村季弘訳 平凡社ライブラリー 2012年8月 本体2,200円 HL判並製704頁 ISBN978-4-582-76769-8 帯文より:異形にかがやく精神史の〈常数〉。美術史の局所から解放された概念〈マニエリスム〉の文学における展開の諸相と本体とを膨大な事例を引証してとらえる圧倒的な書物!『迷宮としての世界』姉妹編。解説=高山宏 カバー裏紹介文より:文学におけるマニエリスムの展開の諸相とその本体を、ヨーロッパ世界の膨大な作品のうちに追い求め、レトリックや文体論、神秘主義や錬金術、その他多種多様な領域を精神史的洞窟学が探査するとき、解体し断片化する世界と時代の別の光学が立ち現れる。美術史的〈常数〉にまで鍛造した鬼才ホッケの、種村季弘翻訳になるこの圧倒的書物、待望の再刊!『迷宮としての世界』姉妹篇。 原書:Manierismus in der Litetratur: Sprach-Alchimie und esoterische Kombinationskunst, Hamburg, 1959. 目次: 序《ヨーロッパ文学におけるマニエリスム》 ドイツ語版刊行者(エルネスト・グラッシ)の註 第一部 魔術的文字 緒言 変則的なものの伝統のために 1 ヨーロッパの隠れた緊張の場 2 言語的二重生活 3 変則詩 4 組み合わせ術(アルス・コンビナトリア) 5 魔術的詭弁 第二部 形象のなかの世界 6 隠喩至上主義(メタフォリスムス) 7 魔神の呪縛(ソフィスム・マジック) 8 ゴンゴリスモ、マニリズモ、プレシオジテ 9 シェイクスピアの変形(デフォルマチオン) 10 形象の機知 11 ドイツの理性芸術 第三部 異-修辞学と綺想主義 12 錬金術と言葉の魔術 13 意識的なまやかし 14 効果のメカニズム 15 美の公式 16 マニエリスムの綱領起草者たち 17 謎術としての寓意画法 第四部 芸術的虚構としての人間 18 音楽主義 19 ジェスアルド・ダ・ヴェノーサからストラヴィンスキーまで 20 音楽のカバラ学 21 ダイダロスとディオニュソス 22 マニエリスム的演劇 23 迷路小説 24 叙事詩的怪物 結論部 マニエリスム的テーマとしての人間 25 神性の夜の側 26 白い神秘主義と黒い神秘主義 27 決疑論と放縦主義 28 神の発明家 29 十字の徴(シグヌーム・クルシス) 付録 ヨーロッパの綺想体――ミニチュア・アンソロジー I スペイン/II イタリア/III フランス/IV 英国/V アメリカ合衆国/VI ロシア/VII ドイツ 註 著者紹介 文献解題 訳者あとがき 解説 風流(みやび)たる花と我思(あれも)ふ――『文学におけるマニエリスム』に(高山宏) 人名索引・事項索引 ★発売済。親本は1971年に現代思潮社(現:現代思潮新社)から刊行された二巻本。ライブラリー化にあたって全一巻となったのが嬉しいですね。しかも親本同様に、索引がついています。本書と対をなす『迷宮としての世界――マニエリスム美術』(種村季弘・矢川澄子訳、美術出版社、1966年)が、岩波文庫二巻本になったのが昨年(上巻)と一昨年(下巻)。全一巻だったらいいのに、という思いはともかくとして、『迷宮としての世界』の親本は函入本で、そこにかの三島由紀夫による「未聞の世界ひらく」という讃辞が印刷されていて、造本も美しく、60年代から70年代にかけての美術出版社や現代思潮社の素晴らしい知的冒険ぶりを思うと、やはり「昔はよかった」と慨嘆せざるをえません(時代が違うのですから今がダメだというつもりはまったくありません)がそれもまた措くとして、ともあれホッケが文庫で読めるんですから、それはそれで実に喜ばしく、あとは「ほかにもホッケの品切本があるんだし、どんどん文庫化されないかな」と期待するのでした。『文学におけるマニエリスム』はこの分野の基本中の基本図書であり、後進たちに多大な影響を与え続けてきた偉大なるタネ本です。ゴチャゴチャ考えずに即、買う。これが正解。 デモクラシーの世界史 ベンジャミン・イサカーン+スティーヴン・ストックウェル編 猪口孝日本版監修 田口未和訳 東洋書林 2012年8月 本体3,800円 A5判上製332頁 ISBN978-4-88721-803-1 カバーソデ紹介文より:先史時代のギリシア都市国家に伝播した異文化からの共同体統治モデル、中世のイスラーム社会や北欧における驚異的な合議制・選挙制、植民地主義勢力とインディアンやアボリジニによる土着民主主義との相互関係、家父長制や偏見の下に封じ込められていた現代中東の挿話、そして代議制に取って代わる権力監視メカニズムの新しい流れ――悉知のものと思われてきた民主主義へのさらなる補完を試み、来たるべき〈デモクラティア〉像を詳察する!! 版元紹介文より:比較的日の浅い考えと思われがちな民主主義が、実は古代ギリシア以前の中東やインド、中国、イスラムが栄えた中世ヨーロッパにとっての暗黒時代、アイスランド、ベニス、アフリカの部族社会、オーストラリアなどでも確立されていたこと、また、現代においては市民の草の根運動の結果から発展してゆく過程などを確認する。民主主義の歴史や今後の行方を考える上で極めて重要な示唆に富むばかりでなく、調査・研究においても有益な情報となる一冊。 原書:The Secret History of Democracy, Palgrave Macmillan. 2011. 目次: 序――民主主義と歴史 第1部 アテナイ以前の民主主義 第1章 「原始民主制」の何がそれほど「原始的」なのか?――古代オリエントとアテナイの比較(ベンジャミン・イサカーン) 第2章 フェニキアの初期民衆政治とギリシアの都市国家(スティーヴン・ストックウェル) 第3章 古代インドの共和国と議事民主制度(スティーヴン・ムールバーガー) 第4章 中国の民主主義を掘り起こす(ポーリン・キーティング) 第2部 <暗黒時代>の民主主義 第5章 ヴェールに隠れたイスラーム民主制度史(モハマド・アブダッラ+ハリム・ラネ) 第6章 理想と願望――中世アイスランドの民主主義と法制度(パトリシア・ピレス・ボーローザ) 第7章 初期ヴェネツィア共和国の民主文化(スティーヴン・ストックウェル) 第3部 土着民主主義と植民地主義 第8章 アフリカの土着民主主義――ウガンダのバガンダ族(イマキュレート・キッツァ) 第9章 自主独立のハンターたち――カナダのメティ社会に関する考察(フィリップ・ペイン) 第10章 アボリジニのオーストラリアと民主主義――古い伝統、新しい課題(ラリッサ・ベーレント) 第11章 ポスト・アパルトヘイト先史――南アフリカのケープ植民地における非人種差別的民主主義(1853-1936)(ホッピー・フライ) 第4部 現代民主主義の新たな潮流 第12章 民主主義の誕生――中東の民主的対話における女性の役割(K・ルイザ・ガンドルフォ) 第13章 イラクのストリート――ポスト・フセインの抗議運動と民主主義(ベンジャミン・イサカーン) 第14章 監視民主主義?(ジョン・キーン) 結――民主主義の歴史を民主化する 監修者あとがき――新しい〈民主主義の物語〉のために 参考文献 索引 ★23日取次搬入予定。帯文にある、本書に寄せられた賛辞は以下の通り。「山積する21世紀の諸問題を前にして、いかなる政治制度が有効なのか……本書はその疑問に応え、人類のもつ創造性への希望を与えてくれる」(ジョン・マーコフ、ピッツバーグ大学名誉教授)。「古今の知られざる〈民主主義のルーツ〉と〈疑似民主制〉について語り、政治史へのより深い理解と再考を促す、魅力的で信頼に足る啓蒙的論集」(クルト・ラーフラウプ、ブラウン大学名誉教授)。大量の政治家と官僚を生み出して国民を翻弄している、わが国の不健全な議会制民主主義を思う時、世界史をひともくことは大きな意義があると言えるでしょう。真の「民主化」への道のりが遠くとも、「真の」民主化が矛盾に満ちた幻想でしかなくても、「共に生きること」の可能性はそこに賭けられているのですから。
by urag
| 2012-08-18 23:05
| 本のコンシェルジュ
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