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2012年 05月 27日

ホッブズ『哲学原論』三部作とユクスキュルの主著、待望の完訳

★今月は思わず「あっ」と驚きの声をあげてしまうような古典の大冊が立て続けに翻訳出版されました。ホッブズ『哲学原論』とユクスキュル『動物の環境と内的世界』です。たったの2冊ですが税込27,300円の出費。半年近く購入を後回しにしてしまっているユング『ヴィジョン・セミナー』の特価期間が来月いっぱいに迫る中(税込特価26,250円、7月1日以降は税込28,400円)、先月はヴァールブルク『ムネモシュネ・アトラス』(税込25,200円)、そして今月はこの2点で、ユングの資金が消えていきます。しかしこればかりは仕方がありません。せめて来月はどうぞ大物が発売されませんように……。

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哲学原論/自然法および国家法の原理
トマス・ホッブズ=著 伊藤宏之+渡部秀和=訳
柏書房 2012年5月 本体20,000円 A5判上製1708頁 ISBN978-4-7601-4070-1

帯文より:近代政治思想を基礎づけた哲学者ホッブズの主著。トマス・ホッブズの三部作、第1巻「物体論」、第2巻「人間論」、第3巻「市民論」を『哲学原論(Elements of Philosophy)』としてまとめた本邦初訳本(市民論のみを除く)。社会契約論の重要性が見直される中、その現代的意義を再確認する。

本書の原典:
(1)物体論 Elements of Philosophy, the First Section, Concerning Body, with Six Lessons to the Professors of Mathematics (London,1656).
(2)人間論 Elementorum Philosophiae Sectio Secunda De Homine (London,1658).
(3)市民論 Elementorum Philosophiae Sectio Terita De Cive (Amsterdam,1647).
(4)自然法および国家法の原理 Humane Nature: Or, The Fundamental Elements of Policie (Oxford and London,1650); De Corpore Politico, Or, The Elements of Law (London,1650).

目次:
訳者序文
凡例

哲学原論第一巻 物体論
 第一部 計算もしくは論理
 第二部 哲学の第一基礎
 第三部 運動と大きさの比について
 第四部 自然学、もしくは自然の現象
哲学原論第二巻 人間論
 第一章 人間の起源の生成
 第二章 視覚線と運動の知覚について
 第三章 対象の見かけ上の位置について
 第四章 遠近法において対象を表すことについて
 第五章 平面鏡と凸面鏡からの反射による対象の見かけ上の位置について
 第六章 凹面鏡からの反射を通した対象の見かけ上の位置について
 第七章 単一の屈折を通した対象についての視覚の見かけ上の位置について
 第八章 二重屈折後の視覚について
 第九章 二重屈折光学、もしくは望遠鏡と顕微鏡について
 第一〇章 話すことと化学について
 第一一章 欲望と嫌悪、快と不快、そしてそれらの諸原因について
 第一二章 感情もしくは心の混乱について
 第一三章 気質と態度について
 第一四章 宗教について
 第一五章 擬制的な人間について
哲学原論第三巻 市民論
 自由
 統治
 宗教
自然法および国家法の原理
 第一巻 人間本性論
 第二巻 政治体論
資料Ⅰ 書簡
資料Ⅱ 諸著作比較表
資料Ⅲ トマス・ホッブズ略年譜

訳者注解
訳者解説
哲学原論/自然法および国家法の原理 全目次
参考文献
人名索引
事項索引

★なんとホッブズの『哲学原論』3部作(第1巻「物体論」、第2巻「人間論」、第3巻「市民論」)の訳書が、「法の原理」をも併録して、1冊にまとまった大冊として今月出版されました。訳者は福島大学人間発達文化学類特任教授・伊藤宏之(いとう・ひろゆき:1945-)さんと、福島県公立学校教諭の渡部秀和(わたなべ・ひでかず:1963-)さん。伊藤さんはかつて柏書房から1997年に、ロック『全訳 統治論』を上梓されています。『市民論』の既訳には、京都大学学術出版会が「近代社会思想コレクション」の1冊として2008年に刊行した本田裕志訳があります。『物体論』や『人間論』の翻訳もそのうち出版されるだろうけどまだまだ先だろうなあとぼんやり想像していたら、3部作がまとめて1冊で出版されるとは。2万円というのは確かに高いかもしれませんが、4分冊ないし5分冊になってもおかしくない内容ですから、その意味では全部まとめて2万円というのは妥当だと思います。全1冊で刊行された柏書房さんの英断に頭が下がります。柏書房さんの分厚い本というと97年の、ラウル・ヒルバーグ『ヨーロッパ・ユダヤ人の絶滅』を思い出しますけれども、これは2分冊がひとつの函に入っていたわけでした。今回のホッブズの訳書は『広辞苑』なみに分厚いなあと思って測ると実に84ミリ。頁数こそ『広辞苑』には敵いませんが、並べてみたら『広辞苑』より分厚いのでした。すごいの一言に尽きます。なお、奥付では組版担当としてインスクリプトさんのお名前がありました。

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動物の環境と内的世界
ヤーコプ・フォン・ユクスキュル=著 前野佳彦=訳
みすず書房 2012年5月 本体6,000円 A5判上製491+15頁 ISBN978-4-622-07688-9

帯文より:動物の〈環境〉は動物の身体という〈内的世界〉によってひとつの全体へと統合されている。自然淘汰による生物進化から、自然と生物を結ぶ機能の複雑化へ。生物学に認識論的基礎を与えた主著。
カバー裏紹介文より:20世紀前半の生物学に〈環境世界〉という画期的なパラダイムを導入したユクスキュルの主著。専門生物学の枠を超えた思想書、哲学書としての性格をもち、その革新性は遠くサイバネティクス、動物行動学、カオス‐複雑系から自己増殖オートマトン、人工生命理論、さらに情報理論、記号論までを射程に収める。「すべての生物を包括するような、唯一の普遍的かつ絶対的な空間、唯一の普遍的かつ絶対的な時間というものは存在しない」。系統樹モデルによる生物進化の一元論を退け、個体から類におよぶ生物の多元性と、環境への多様な適合機能を、詳細に記述する。生命=機械論の根底にある物理化学的還元主義をくつがえし、「環境」「対世界」「機能環」という三つの概念によって生物学に認識論的基礎を与えた、現代の古典。

原書:Umwelt und Innenwelt der Tiere, Berlin, 1921.

★『生物から見た世界』(新思索社、1995年;岩波文庫、2005年)や『生命の劇場』(博品社、1995年;講談社学術文庫、2012年)などの訳書がある生物学者ユクスキュルの主要著書のひとつが、原著刊行より百年後というまさかのタイミングで完訳されました。『生物から見た世界』(1934年)に先行する主著のひとつである『動物の環境と内的世界』の原書は初版が1909年に刊行され、21年に増補改訂版が刊行されています。今回の訳書の底本は増補改訂版です。訳者の前野佳彦(まえの・よしひこ:1953-)さんはブルケルト『ホモ・ネカーンス――古代ギリシアの犠牲儀礼と神話』(法政大学出版局、2008年)や、イエイツ『ジョルダーノ・ブルーノとヘルメス教の伝統』(工作舎、2010年)などの歴史的名著をこれまでに翻訳されています。今回の訳書に付された解説「「カント二世」の生物環境論」によれば、本書にならぶ主著『理論生物学』(1920年;改訂再版1928年)もいずれ翻訳出版されるようです。本書の目次詳細やユクスキュルの略歴などは上記書名のリンク先でご覧になれます。
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by urag | 2012-05-27 22:41 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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