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2012年 05月 20日

注目新刊:2012年5月:『ジーン・セバーグ vs FBI』ほか

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FBI vs ジーン・セバーグ――消されたヒロイン
ジーン・ラッセル・ラーソン+ギャリー・マッギー著 石崎一樹訳
水声社 2012年5月 本体2,500円 四六判並製288頁+別丁図版8頁 ISBN978-4-89176-901-7

版元紹介文よりより:ヌーヴェルヴァーグのトップ女優は、「政治」に謀殺されたのか? FBIの秘蔵資料や関係者の証言を駆使して、個人と国家権力の相剋を描く、迫真のドキュメント。世界が激しく揺り動いた60年代末、ブラックパンサーとFBI=J・エドガーとの激しい政治闘争の渦中を生きたジーン・セバーグの後半生に焦点を絞り、多くの資料によってその生き様を浮き彫りにする。

原書:Neutralized: The FBI vs. Jean Seberg ― A story of the '60s Civil Rights Movement, BearManor Media, 2008.

目次:
イントロダクション
第一章 ジーン・セバーグという神秘
第二章 ブラック・パンサー
第三章 フーヴァー、FBI、コインテルプロ
第四章 セバーグ、一九六八年―一九六九年
第五章 セバーグ、一九七〇年一月―八月
第六章 セバーグ、一九七〇年八月―十二月
第七章 セバーグ、一九七一年―一九八〇年
第八章 ハリウッド、メディア、そしてFBI
エピローグ
付録1 AIM報告
付録2 FBIへのインタビュー
付録3 FBI文書
参考文献
訳者あとがき

★発売済。昨年刊行され、好評を博したギャリー・マッギー『ジーン・セバーグ』(石崎一樹訳、水声社、2011年)の姉妹編です。ジーン・セバーグ(1938-1979)はアメリカ・アイオワ州出身の女優です。ジャン=リュックゴダール(1930-)監督の長篇デビュー作『勝手にしやがれ』(1959年)への出演によってヌーヴェルヴァーグの立役者の一人として知られています。彼女は1968年前後から公民権運動、中でもラディカルなブラック・パンサーをサポートしていました。第一章の冒頭に1968年当時のセバーグのこんな言葉がエピグラフとして掲げられています。「肌の色が違うという理由だけで人びとが経験しなければならない、恐ろしく理不尽な現在の状況を見てみればいいわ。黒人にも素晴らしい人間と嫌な人間がいる。でも、人は彼らをそのように見ようとはしないの」。そうしたセバーグの政治的コミットメントに対し、J・エドガー・フーヴァー長官率いるFBIは圧力を加えます。水声社さんプレスリリースによれば、本書では「FBIが盗聴、悪意の風評、いやがらせなどによって、ひとりの女優を執拗に追い詰めてゆく過程が、当時のFBI資料によって綿密に検証されて」います。また、「FBIの戦略を垂れ流すことによって、女優を〈消す〉ことに一役買ったメディアの存在についても大きくページを割いて」いるとのことです。セバーグの死因は自殺だとされてきましたが、本書の著者は「殺された可能性が極めて高い」(201頁)と述べています。「戦後アメリカ史の闇」(プレスリリース)を伝える好著として、話題を呼びそうです。

★水声社さんでは今月、以下の新刊を刊行されています。グレアム・ターナー『フィルム・スタディーズ――社会的実践としての映画』(松田憲次郎訳、水声社、2012年;A5判上製288頁、本体2,800円、ISBN978-4-89176-905-5)。グレアム・ターナーと言えば弊社代表取締役のKが作品社時代に手掛けた『カルチュラル・スタディーズ入門――理論と英国での発展』(毛利嘉孝ほか訳、作品社、1999年)の著者でもあります。また、弊社出版物の著者でもあるレーモン・クノーの著作集となる「レーモン・クノー・コレクション」は、先般ご紹介した第2回配本以後、3月までに第6回配本まで進んでいます。

◎レーモン・クノー・コレクション(水声社)

第6回配本2012年03月:
第9巻『人生の日曜日』芳川泰久訳;4/6判上製288頁、本体2,500円、ISBN978-4-89176-869-0
第5回配本2012年02月:
第4巻『きびしい冬』鈴木雅生訳;4/6判上製168頁、本体1,800円、ISBN978-4-89176-864-5
第4回配本2012年01月:
第6巻『ルイユから遠くはなれて』三ツ堀広一郎訳;4/6判上製232頁、本体2,200円、ISBN978-4-89176-866-9
第3回配本2011年11月:
第2巻『最後の日々』宮川明子訳、4/6判上製288頁、本体2,500円、ISBN978-4-89176-862-1
第2回配本2011年10月:
第8巻『聖グラングラン祭』渡邊一民訳、4/6判上製312頁、本体2,800円、ISBN978-4-89176-868-3 
第1回配本2011年10月(2点同時刊行):
第10巻『地下鉄のザジ』久保昭博訳、4/6判上製240頁、本体2,200円、ISBN978-4-89176-870-6
第11巻『サリー・マーラ全集』中島万紀子訳、4/6判上製464頁、本体3,500円 ISBN978-4-89176-871-3

続刊:
第1巻『はまむぎ』久保昭博訳
第3巻『リモンの子どもたち』塩塚秀一郎訳
第5巻『わが友ピエロ』菅野昭正訳
第7巻『文体練習』松島征ほか訳
第12巻『青い花』新島進訳
第13巻『イカロスの飛行』石川清子訳

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光と影の芸術――写真の表現と技法
東京都写真美術館編
平凡社 2012年 本体2,500円 B5変型判上製176頁 ISBN978-4-582-20669-2

帯文より:写真の表現と技法、その可能性の追求。写真が登場して170年、そこから現代に至るまで、数多くの写真家が新たな表現を求めて多種多様な技法を用い、名作を生み出してきた。第I部:コラージュ、フォトモンタージュ、ディストーション(歪曲)など、写真(イメージ)に手を加えて新たな表現を生み出した作品、第II部:ネガフィルムと印画紙の変遷と、それに関わる表現と技法のバリエーション、第III部:カメラとレンズという撮影機材を駆使したさまざまな表現、という三つのテーマを軸に、写真という表現手段の歴史と現在を、東京都写真美術館所蔵の名作によって辿る。

目次:
ごあいさつ
第I部 光の造形――操作された写真(藤村里美) ※展示期間:2012年5月12日~7月8日
 彩色写真/フォトモンタージュ/コラージュ/多重露光/リフレクション/デフォルマシオン/雑巾がけ/トリミング
第II部 自然の鉛筆――技法と表現(鈴木佳子) ※2012年7月14日~9月17日
 紙の印画〔フォトジェニック・ドローイング;カロタイプ;単塩紙;鶏卵紙;プラチナ印画;ゼラチン・シルバー・プリント;カーボン印画;ゴム印画;ブロムオイル印画;エリオクロミィ;色素転写方式印画;拡散転写方式印画;発色現像方式印画;銀色素漂白方式印画〕/写真製版〔ウッドバリー・タイプ;フォトグラビア印刷〕/金属・ガラス印画〔ダゲレオタイプ;アンブロタイプ;ティンタイプ;オートクローム〕/ネガティブ〔紙のネガ;ガラスのネガ;プラスチックのフィルム(ネガ/ポジ)〕/暗室技法〔フォトグラム;ソラリゼーション;ネガフォト;粗粒子;焼き込み〕
第III部 機械の眼――カメラとレンズ(金子隆一) ※2012年9月22日~11月18日
 シャープ・フォーカスとソフト・フォーカス/パン・フォーカスとディファレンシャル・フォーカス/レンズの視覚――広角レンズと望遠レンズ/カメラ・アングルの解放――俯瞰撮影と仰角撮影/時間――長時間露光/時間――ブレ/時間――瞬間/人工光/未知の世界へ/特殊効果
掲載作品リスト

★発売済。東京都写真美術館の平成24年度コレクション展の公式図録です。掲載作品130点(第I部47点、第II部36点、第III部47点)。図録とは言え、本書は立派な写真技法史の概説書となっていて、勉強になります。目次に付記した通り、写美では現在は第I部「光の造形」を展示中。

★なお、春恒例の「平凡社ライブラリー復刊」では今月、以下の6点が復刊されました。特に、早めになくなりそうな『ウィトゲンシュタインのウィーン』は押さえておきたいですね。
W・ウェストン『日本アルプス――登山と探検』定価1,470円(税込)
アイザック・ウォルトン『完訳 釣魚大全 1』 定価1,470円(税込)
R・カーソン『海辺――生命のふるさと』 定価1,680円(税込)
安丸良夫『日本の近代化と民衆思想』定価1,785円(税込)
J・ハーバマス『イデオロギーとしての技術と科学』定価1,260円(税込)
S・トゥールミン+A・ジャニク『ウィトゲンシュタインのウィーン』 定価1,785円(税込)


全系図付 エジプト歴代王朝史
エイダン・ドドソン+ディアン・ヒルトン著 池田裕訳
東洋書林 2012年5月 本体12,000円 A4変形判上製320頁 ISBN978-4-88721-798-0

帯文より:王族約1200人の略歴、27の詳細な家系図、写真約300点を収録!! 数多の遺跡によって明らかにされた全人物像を、最新の解釈をふまえ集成。従来の古代史観に息吹をもたらす、専門研究にも必携の画期的資料!

原書:The Complete Royal Families of Ancient Egypt, 2004/2010, Thames and Hudson.

目次:
はじめに
序論
ファラオ国家
王室
王朝系図について
第I章 初期王朝時代 古王国時代
 1 創設者たち〔第1王朝~第3王朝〕
 2 大ピラミッドの建設者たち〔第4王朝〕
 3 太陽神の子ら〔第5王朝〕
 4 テティとペピの家〔第6王朝~第8王朝〕
第II章 第1中間期 中王国時代 第2中間期
 5 アクトイ家〔第9王朝~第10王朝〕
 6 南部の首長〔第11王朝〕
 7 二つの国土の征服者たち〔第12王朝〕
 8 王たちと平民〔第13王朝〕
 9 外国の支配者たち〔第14王朝~第15王朝〕
10 南王国〔第16王朝~第17王朝その1〕
第III章 新王国時代
11 タア王朝〔第17王朝その2~第18王朝その1〕
12 権力と栄光〔第18王朝その2〕
13 エピソードとしてのアマルナ時代〔第18王朝その3〕
14 ラメセス王家〔第19王朝その1〕
15 ラメセス朝の不和〔第19王朝その2〕
16 ラメセス朝の凋落〔第20王朝〕
第IV章 第3中間期
17 王たちと祭司たちと〔第21王朝〕
18 ショシェンク王家の盛衰〔第22王朝〕
19 テーベの独立〔第23王朝〕
20 西の君主たち〔第24王朝〕
21 「清い山」の主たち〔第25王朝〕
第V章 末期王朝時代 プトレマイオス朝時代
22 最後のルネッサンス〔第26王朝〕
23 ペルシア人ファラオ〔第27王朝〕
24 最後のエジプト人ファラオたち〔第28王朝~第30王朝〕
25 マケドニア王家支配時代〔アルゲアス王朝〕
26 プトレマイオス家〔プトレマイオス朝〕
地図
訳者あとがき
原注/年表/参考文献/索引

★まもなく発売。聞くところによると、全系図を収録した本というのはこれまでなかったそうです。昨今の円高の影響もあって、原書ペーパーバックより1万円ほど高い値段になっていますが、これは商圏(英語圏と日本語圏)の広さの違いによる発行部数の差なので、日本語版がべらぼうに高いと不平を言っても詮無いことです。むしろ東洋書林さんは平均的に、大判でカラー図版を多用している図説書をかなり割安の値段に設定されています。何もかも英語で問題ないという方はともかく、この手の固有名詞の同定が面倒くさい本は日本語版に頼るにしくはないと思われます。なお、東洋書林さんでは類書に、リチャード・H・ウィルキンソン『古代エジプト神殿大百科』(内田杉彦訳、東洋書林、2002年)や同著者による『古代エジプト神々大百科』(内田杉彦訳、東洋書林、2004年)があります。
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by urag | 2012-05-20 23:08 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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