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2012年 02月 27日

注目新刊:2012年2月下旬の単行本

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イメージの前で――美術史の目的への問い
ジョルジュ・ディディ=ユベルマン(1953-)著 江澤健一郎訳
法政大学出版局 本体4,600円 四六判上製496頁 ISBN978-4-588-00971-6
帯文より:「徴候」とはなにか? ルネッサンス期以降、学問としての美術史はいかなる知の言説として確立されたのか。ヴァザーリによる人文主義的美術史の発明から、パノフスキー的イコノロジーの成立にいたる美学の歴史を、表象の裂け目に現れるフロイト的「徴候」への眼差しを通じて批判的に解体する“美術史の脱構築”。バタイユやヴァールブルクを継承し、独自のイメージ人類学を実践する注目の美術史家の初期代表作。

原書:Devant l'image: Question posée aux fins d'une histoire de l'art, Minuit, 1990.

★発売済。「訳者あとがき」での解説をお借りすると「その多作な著書のなかでも、本書は明らかに初期の代表作といえる書物である。なぜならここでディディ=ユベルマンは、美術史家として美術史の基盤そのものを問い、新たな美術史の構築へと歩みを進めたからである。〔…〕本書は、同じ年に出版された『フラ・アンジェリコ』(1990年)の姉妹編であり、そちらが実践編であるとしたら、こちらは理論編である。そして本書の刊行から十年を隔てて『時間の前で』(2000年)という続編が上梓されている。ディディ=ユベルマンは、この続編においては、ヴァルター・ベンヤミン、カール・アインシュタイン、アビ・ヴァールブルクらの思想を参照しながら、イメージと時間の問題を問いつめている。この続編は、ぜひとも本書とともに読まれるべきであろう」(458頁)とのことです。

★ディディ=ユベルマンの続刊予定には、前述の『時間の前で――美術史とイメージのアナクロニズム』(小野康男+三小田祥久訳、法政大学出版局)や、原著2002年刊『ニンファ・モデルナ――落ちゆくドレープについての試論』(森元庸介訳、平凡社)などがあります。今度もどんどん訳されていくだろうと思います。御参考までに既訳書を以下に掲げます。

◎ディディ=ユベルマン既訳書(原著刊行年/訳書刊行年)
1982年/1990年『アウラ・ヒステリカ――パリ精神病院の写真図像集』谷川多佳子+和田ゆりえ訳、リブロポート
1993年/1995年『ジャコメッティ――キューブと顔』石井直志訳、PARCO出版
1990年/2001年『フラ・アンジェリコ 神秘神学と絵画表現』寺田光徳+平岡洋子訳、平凡社
1999年/2002年『ヴィーナスを開く――裸体、夢、残酷』宮下志朗+森元庸介訳、白水社
2002年/2005年『残存するイメージ――アビ・ヴァールブルクによる美術史と幽霊たちの時間』竹内孝宏+水野千依訳、人文書院
2003年/2006年『イメージ、それでもなお――アウシュヴィッツからもぎ取られた四枚の写真』橋本一径訳、平凡社
1990年/2012年『イメージの前で――美術史の目的への問い』江澤健一郎訳、法政大学出版局


Ex-formation 半熟 
原研哉(1958-)+武蔵野美術大学原研哉ゼミ著
平凡社 2012年2月 本体1,700円 B6判並製160頁 ISBN978-4-582-62052-8
帯文より:「半熟社会」の申し子となれ!「半熟」とは未完成を肯定的に見ようとすること――。テントウ虫の文様パターン、「もののあわれ」の時間、謎のUFO写真……。すべてが変動するこの「半熟」の時代のなかで、ゼロ地点から世界を見つめ直すことのできる、知性と感性を鍛えるための11のレッスン集。

★24日取次搬入済。情報デザインをめぐって毎年異なるテーマを通じ、世界を“未知化”する(Ex-formation)という原研哉ゼミの卒業制作記録集の第7弾です。原さんは巻頭のPROLOGUE「半熟社会の申し子となれ」の中でこんな風に語りかけています。「何にでもどこにでも可能性がある。これまではむしろ採算性の悪いと考えられていた事業にも、可能性が生まれることもある。〔…〕そこに誰もまねのできない価値を生み出す可能性さえあるなら、それを磨いて育てていくことで、そこに豊かさの資源を見いだすことができる。そういう時代を迎えているのである。/僕らが続けてきたものの見方のトレーニングは、まさにそういう状況の中で、ものの価値を見定めていく技術なのである。「知ってる、知ってる」と、高をくくって世間を見ることをやめ、あらゆることに対して「いかにそれを知らないか」を把握していく姿勢こそ、変動の世にあって、次の時代の趨勢を見通していく知性なのである」。3・11の影響で卒業式も謝恩パーティも取りやめになったことから、原さんはこの前書きで卒業生たちにそう語りかけます。原さんがムサビに着任されたのが2003年4月。その翌年度から始まった、卒業年次の学生さんたちとの共同研究「Ex-formation」は3・11によってひとつの節目を迎えたのかもしれないと思えました。ちなみに、2011年度の「Ex-formation」のテーマは「空気」でした。

◎「Ex-formation」既刊書
2010年度『Ex-formation 半熟』2012年3月、B6判160頁、本体1,700円
2009年度『Ex-formation 女』2011年02月、平凡社、B6変型判160頁、本体1,500円
2008年度『Ex-formation はだか』2010年01月、平凡社、B6変型判160頁、本体1,500円
2007年度『Ex-formation 植物』2008年11月、平凡社、四六変型判176頁、品切
2006年度『Ex-formation 皺』2007年10月、中央公論新社、B5判192頁、本体3,200円
2005年度『Ex-formation RESORT』2006年08月、中央公論新社、B5判256頁、本体3,600円
2004年度『Ex-formation 四万十川』2005年11月、中央公論新社、B5判248頁、本体2,900円

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現代ドイツ思想講義
仲正昌樹(1963-)著
作品社 2012年2月 本体1,800円 46判並製352頁 ISBN978-4-86182-382-4
帯文より:ハイデガー、フランクフルト学派から、ポストモダン以降まで。資本主義を根底から批判し、近代の本質を暴露した思考の最前線を、《危機の時代》の中で再び召還する。

目次:
[講義]第1回 ハイデガーからフランクフルト学派まで
[講義]第2回 実際に『啓蒙の弁証法』を読んでみる。1
[講義]第3回 実際に『啓蒙の弁証法』を読んでみる。2
[講義]第4回 実際に『啓蒙の弁証法』を読んでみる。3
[講義]第5回 フランクフルト第二世代──公共性をめぐる思想
[講義]第6回 ポストモダン以降
後書きに代えて──現代ドイツ思想史の“魅力”
ドイツ現代思想をもう少しだけ真面目に勉強したいというやや奇特な人のためのブックガイド
もっと奇特な人のためのブックガイド
年表
現代ドイツ思想相関図

★ブックファースト新宿店で2010年5月から11月にかけて行われたトークイベント「仲正昌樹の書店出張講座〈第一期〉入門現代ドイツ思想」(全6回)に加筆したもの。仲正さんはこれまでに『集中講義!日本の現代思想――ポストモダンとは何だったのか』(NHKブックス、2006年)や、『集中講義!アメリカ現代思想――リベラリズムの冒険』(NHKブックス、2008年)といった現代思想入門を書き、三省堂書店神保町本店やブックファースト新宿店など、本を売る現場で一般読者を相手に講義をしてこられました。その精力的なお仕事には驚くばかりです。本書の「後書きに代えて」によれば、仲正さんは昨年より、カール・シュミットを読む連続講座を某所で行っておられるとのことです。


100の思考実験――あなたはどこまで考えられるか
ジュリアン・バジーニ著 向井和美訳
紀伊國屋書店 2012年3月 本体1,800円 46判並製408頁 ISBN978-4-314-01091-7
帯文より:これは「読む」本ではありません。「考える」本です。身体と脳、生命倫理、言語、宗教、芸術、格差……「ハーバード白熱教室」で取り上げられたトロッコ問題(「列車の暴走で40人が死にそうなとき、5人だけ死ぬほうにレバーを切り替えられるとしたらどうするか?」)をはじめ、哲学・倫理学の100の難問があなたを揺さぶります。
帯文(裏)より:19カ国で翻訳された、イギリス発ロングセラー!「読んでいて思わず引きこまれる。知的で愉快で、型破り。巧みでセンスのよい構成。誰かと議論したいのに、相手が見当たらないとき、繰り返し手に取りたくなる本だ」(Sunday Herald)。「楽しんでできる頭の体操」(London Review of Books)。「何度も考えることこそ、明敏で切れ味のよい本書の意図するところだ」(Sunday Times)。「この本はさながら、道徳哲学の“数独”である。身動きできない地下鉄の中でも、“思考実験”のどれかに取り組めば、たちまち通勤地獄から抜け出せる」(New Statesman)。

原書:The Pig That Wants to Be Eaten (And 99 Other Thought Experiments), Granta Books, 2005.

★3月1日発売とのこと。著者のジュリアン・バジーニもしくはバッジーニ(Julian Baggini)は、イギリスの哲学誌「The Philosophers’Magazine」の編集長。雑誌や新聞記事の執筆、テレビへの出演など、哲学をわかりやすく解説する仕事にとりくんでいるそうです。共著書に『哲学の道具箱』(共立出版、2007年)や『倫理学の道具箱』(共立出版、2012年)、共編著書に『哲学者は何を考えているのか』(春秋社、2006年)があります。

★本書の原題「食べられることを望む豚」は、第5問に出てきます。元ネタはSF作家ダグラス・アダムス『宇宙の果てのレストラン』(河出文庫、2005年)だそうです。本書では元ネタに使われるのは哲学書ばかりではなく、たまに小説だったり映画だったりします。特にSF作品が好んで使用されています。

★帯にも引かれているトロッコ問題は、イギリスの哲学者フィリッパ・フット(Philippa Ruth Foot〔旧姓Bosanquet〕:1920-2010)によるもの。本書『100の思考実験』では17番目に出てくる思考実験です。もちろん本書は邦訳副題にある通り、読者に「あなたはどこまで考えられるか」と問いかけている本なので、トロッコ問題への最終回答は載っていません。思考実験においては答えがあるのではなく、どのような選択肢が発生するかをこっちから見たりあっちから見たりして、考える力をつけるというのが目的なわけです。ですから、本書は出勤するのが苦痛でたまらない時には、答えのない状態のせいで余計に人生が嫌になるかもしれないので電車内で読まない方がいいかもしれませんが、自己啓発本や教訓本など、答えが溢れている本にはもう飽きあきしたという方にはちょうどいいサプリメントになるだろうと思います。

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共同研究 転向1 戦前篇 上 
思想の科学研究会編
東洋文庫(平凡社) 2012年2月 本体3,000円 全書判上製394頁 ISBN978-4-582-80817-9
帯文より:戦争を思想の敗北とし、「転向」という負の経験を基軸に戦後思想の新生を志した、鶴見俊輔を中心とした若き俊英たちの共同研究(全6巻の1)。

共同研究 転向2 戦前篇 下 
思想の科学研究会編
東洋文庫(平凡社) 2012年2月 本体3,000円 全書判上製368頁 ISBN978-4-582-80818-6
帯文より:「転向」を倫理でなく歴史的な思想の課題とし、独自の方法で思想史研究そのものを新たな思想探究とした実践の記録(全6巻の2、成田龍一「解説」を付す)。

★24日取次搬入。親本は同社より1978年に刊行された改訂増補版全3巻(初版は1959-1962年刊全3巻)。東洋文庫に編入されるにあたり、各巻を2分冊にし、合計全6巻となります。版元ウェブサイトでの紹介文にはこうあります、「1954年から8年間にわたって共同研究という新たな方法で行われた「転向」を軸とした日本近代思想研究の金字塔。「転向」を裁くのではなく、日本近代思想の自己批判として行われた共同研究の成果。第1巻は、佐野・鍋山を中心とし戦前期前半を扱う。第2巻は、亀井勝一郎、埴谷雄高、三木清ら文学・哲学者を中心とした戦前期後半」。第2巻の巻末には解説1「『共同研究 転向』発刊まで――転向研究の時代」が収録されています。成田龍一さんによるもので、今後2分冊ごとに、もしくは各篇ごとに解説2、解説3と続いていくものと思います。

★続刊は第3巻と第4巻が「戦中篇」上下、第5巻が「戦後」篇、第6巻が「討論・資料」篇です。世界大戦での敗戦を受けて自ら「変化」せざるをえなかった知識人の群像をもう一度本書によって学ぶことは、今後この国で起こるかもしれない何かしらの転機による「風向きの変化」に備える上で大きな教訓となるかもしれません。

★東洋文庫の次回配本は3月、『完訳 日本奥地紀行(1)』です。完訳と謳っているということは、1880年刊初版2巻本の新訳ということかと推測できます。平凡社ではこれまで、1885年版の高梨健吉さんによる訳書を東洋文庫(1973年)と平凡社ライブラリー(2000年)で刊行しています。1880年版の既訳には『イザベラ・バードの日本紀行』(上下巻、時岡敬子訳、講談社学術文庫、2008年)があります。
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by urag | 2012-02-27 02:13 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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