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2012年 02月 19日

注目新刊:2012年2月の単行本と新書

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《非常事態》を生きる――金融危機後の社会学
ジグムント・バウマン(1925-)+チットラーリ・ロヴィローザ=マドラーゾ著 高橋良輔+高澤洋志+山田陽訳
作品社 2012年3月 本体2,500円 46判上製356頁 ISBN978-4-86182-364-0
帯文(表)より:〈危機〉は私たちをどこへ連れていくのか? 資本主義の破局、民主主義の不能、国家の破綻、貧困の拡大、科学技術の暴走、宗教とテロ、未来なき次世代……。“知の巨人”が、経済、社会、人口などの具体的なデータに基づき危機の深層と未来へのヴィジョンを語る。
帯文(裏)より:“最後の知の巨人”(ガーディアン紙)が危機後を展望する。いま、おきている危機は、人類史上、これまでほかのどんな文明も経験したことがないほど困難で重大な出来事を人々にもたらしている。未曾有の環境危機、空前のレベルに達した世界の貧困、膨れ上がる人口過剰、無謀な科学技術の発達、従来の諸制度・道徳・政治システムの衰退など、いまだ進行中のグローバル金融危機がもたらしたものの意味を読み解き、ますます液状化・不安定化・不透明化していく人類と世界の未来を語り尽くす。

原書:Living on borrowed time: Conversations with Citali Rovirosa-madrazo, Polity Press, 2010.

目次:
はじめに 崩壊に向かう社会?―― ジグムントバウマンとは何者なのか?/なぜ、いま、ジグムント・バウマンなのか?
第一部 液状化していく政治経済構造
 対談1〔テーマ:資本主義〕金融・信用危機
 対談2〔テーマ:福祉国家〕経済のグローバル化時代における福祉国家とは?
 対談3〔テーマ:民主主義と主権〕いわゆる「国家」とは何か?
第二部 人間なるものの行方
 対談4〔テーマ:ジェノサイド〕モダニティ、ポスト・モダニティ、ジェノサイド
 対談5〔テーマ:人口問題〕人口、そして廃棄された生の生産と再生産
 対談6〔テーマ:原理主義〕世俗的原理主義と宗教的原理主義の抗争
 対談7〔テーマ:科学/技術〕遺伝情報を書き込む
 対談8〔テーマ:世代/ロスジェネ〕ユートピア、愛情、もしくはロスト・ジェネレーション
原注
訳者解題 固体的近代(ソリッド・モダン)の終焉と新たな大恐慌の到来
《非常事態》を生きるためのキーワード
『《非常事態》を生きる』を読むためのブックガイド

★一昨日17日(金)取次搬入とのことですので、早いところでは昨日から書店店頭に並び始めているはずです。メキシコ在住のジャーナリストであり社会学者のロヴィローザ=マドラーゾを聞き手に、目次にある8つのテーマをめぐって縦横に語っています。対談のため、今までのバウマンの著書の中で一番読みやすくなっているだけでなく、バウマン社会学の広大な射程を鳥瞰するのに適した最新の入門編とも言えます。巻末にはキーワード解説やブックガイドがあり、書店さんがミニコーナーないしミニフェアを作りたいときにはすぐに使える情報となっています。なお、バウマンの著書は昨年末にも一冊、『コラテラル・ダメージ――グローバル時代の巻き添え被害』(伊藤茂訳、青土社、2011年12月)が発売されたばかりです。

★作品社さんの2月新刊のうち、人文書は上記1点のほか、次のものがあります。デヴィッド・ハーヴェイ『資本の〈謎〉――世界金融恐慌と21世紀資本主義』森田成也+大屋定晴+中村好孝+新井田智幸訳、発売済。仲正昌樹『現代ドイツ思想講義』近日発売予定。


大杉栄――日本で最も自由だった男
河出書房新社 2012年2月 本体1,600円 A5判並製192頁 ISBN978-4-309-74044-7

目次:
大杉栄の言葉
特別対談 鎌田慧×中森明夫「今こそ大杉の精神を想起せよ」
ロング・インタビュー
 大杉豊「大杉栄はいつも、人間本来のあり方を提起する」(聞き手=栗原康)
 加藤登紀子「誰からも支配されない自由を希求するために」
エッセイ
 瀬戸内寂聴「大杉栄と自由恋愛」
 宮崎学「大杉栄ならどうしただろうか?」
 ECD「さようなら大杉栄」
 角岡伸彦「半ば同感、半ば反感」
 佐野眞一「主役を食うバイプレイヤー」
 雨宮処凛「恋と革命に生きるのさ」
 豊田剛(土曜社)「大杉栄のずるい本屋」
 鈴木邦男「大杉が見た自由な空」
論考
 武田徹「大杉に寝取られた男の素顔」
 宇波彰「大杉栄とベルクソン」
 倉数茂「「物語」への権利」
 星野太「崇高なる共同体――大杉栄の「生の哲学」とフランス生命主義
大杉栄の記憶
 伊藤野枝「夫婦生活」
 内田魯庵「最後の大杉」
 清沢洌「甘粕と大杉の対話」
 中浜哲「杉よ! 眼の男よ!」
大杉栄アンソロジー
労働運動の精神/自我の棄脱/生の拡充/思索人/政府の道具ども/奴隷根性論/鎖工場/奴隷と町奴
大杉栄主著解題(文=栗原康)
大杉栄略年譜(編=大杉豊)

★「道の手帖」最新刊です。22日(水)発売と版元サイトでは告知されていましたから、実際は明日以降店頭に並び始めるだろうと思います。対談、インタビュー、エッセイのどれをとっても面白いですし、随所にちりばめられた大杉の言葉は輝いています。なぜいま大杉が愛されるのか、なぜこの現代にアナキズムが注目を浴びるのか、本書は時代の空気を如実に示してくれていると思います。土曜社さんの『日本脱出記』『自叙伝』を読んだ方には特にお薦めします。


レジスタンス女性の手記
アニエス・アンベール著 石橋正孝訳
東洋書林 2012年2月 本体3,800円 46判上製330頁 ISBN978-4-88721-797-3
帯文より:「パリ市民は早くも抵抗を始めている……ここで心は決まった!!」 1946年の初版以来、数多の歴史家に参照されて今や古典的資料となった、抵抗運動の草創期を語る貴重な証言! 地下新聞の発行、逮捕、仏国内の刑務所における拘禁を経て、ヒトラーの徒刑場での抑留、ナチス崩壊後の残党摘発活動に至るまでの反ファシズム闘争の日々を活写する。

原書:Notre guerre: souvenirs de Résistance, Editions Emile Paul Frères, 1946.

★今週発売予定の新刊です。著者のアニエス・アンベール(Agnès Humbert: 1896-1963)は、フランスの美術史家であり民族誌学者。第二次世界大戦のさなか、「人類博物館ネットワーク」の一員としてナチスへの抵抗運動を行い、地下新聞「レジスタンス」の発行に関わったかどで政治犯として逮捕されて抑留されます。本書はその生々しい記録と言うべき日記で、1940年6月から1945年6月までの彼女の戦いを濃密に伝えています。巻末に収録されたジュリアン・ブランによる「解説」を借りてより詳しく説明すると、本書を構成する全10章のうち、レジスタンス活動中だった1940年6月から41年4月13日までが当時の日記の再録で、これらが最初の2章になります。その後41年4月15日に逮捕されてから45年4月にアメリカ軍によって解放されるまでの抑留期間の記録となる7章分は後日の回想で、最後の第10章が再開された日記の再録です。抑留中は記憶だけが頼りでしたが、途中、1942年2月の裁判の折には、デカルトの本の余白に覚書を書きつけることができたそうです。本書は射殺され、拷問され、空襲で死んだ仲間たちに捧げられています。


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市田良彦『革命論――マルチチュードの政治哲学序説』平凡社新書、2012年2月、ISBN978-4-582-85627-9
辻隆太郎『世界の陰謀論を読み解く――ユダヤ・フリーメーソン・イルミナティ』講談社現代新書、2012年2月、ISBN978-4-06-288146-3
中田力『日本古代史を科学する』PHP新書、2012年2月、ISBN978-4-569-80235-0

★今月刊行された新書のなかで特に印象的な3点です。市田さんの『革命論』は昨今の政治哲学の「流行」への違和感の表明から出発し、アガンベン、アルチュセール、ネグリ、デリダ派、アルチュセール、バディウ、スピノザ、ドゥルーズ、マトゥロン、フーコーなどをひもときつつ、倫理と革命を根本的に再審する政治哲学へと踏み出されています。辻さんの『世界の陰謀論を読み解く』は、副題にある通り、ユダヤ、フリーメーソン、イルミナティをめぐる陰謀論の歴史的発展と日本への輸入情況について解明し、本場アメリカでの陰謀論の最前線や、東日本大震災後の日本におけるデマにも分析のメスをふるっています。巷間に溢れかえっている流言や噂の数々をどう理解したらいいか、本書を読めば大筋で整理できるだろうと思います。中田さんの『日本古代史を科学する』はあの名著『脳の中の水分子』の著者による異色の古代史考で、『魏志倭人伝』や『古事記』『日本書紀』を読み解き、邪馬台国の「所在地」や神武王朝以来の「万世一系」、Y染色体が示す日本人の「ルーツ」などについて論じておられます。いかに受け止めるにせよ、中田さんの印象が変わる本のようです。
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by urag | 2012-02-19 23:30 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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