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2012年 01月 21日

2012年1月の注目新刊など

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コナン・ドイル書簡集
ダニエル・スタシャワー+ジョン・レレンバーグ+チャールズ・フォーリー編 日暮雅通訳
東洋書林 2012年1月 本体6,000円 A5判上製738頁 ISBN978-4-88721-796-6
帯文より:「さてワトスン、次はわれらが創造主(クリエイター)氏の分析(プロファイル)といこうじゃないか!」 MWA賞受賞の大著、再び! 本邦初公開の膨大な手紙と当時を物語る貴重な写真・図版を駆使して、シャーロッキアン垂涎の秘話の数々がここに明かされる。創作の背後に潜む稀代の作家の深い内省を鮮やかに編纂し、彷徨える精神の軌跡をたどった、待望の続・正伝!!
カバーソデ紹介文より:サー・アーサー・コナン・ドイルの生涯は、自身の冒険小説を凌ぐほどの波乱に満ちたものだった。大英図書館をはじめとする各有力機関と、遺族からの全面的な協力を得て編まれた本書によって、読者はこれまでにない彼の様々な姿を知ることになるだろう。“母(マム)”の小さな息子、東奔西走する若き家長、二人の妻を等しく想う夫、子を失い哀しむ父――ここに初めて、ベイカー・ストリートの陰に隠れていた作家自身が、自らの生み出したどの人物よりも際立つ等身大の存在として姿を現すのである。

目次:
ドイル家の家系図
はじめに
1*少年時代(1867-1876)
2*医学生時代(1876-1882)
3*ドクターとしての奮闘(1882-1884)
4*牡蠣の殻をこじ開ける(1884-1890)
5*"シャーロック・ホームズ物語の著者"(1891-1893)
6*ホームズと決別する(1894-1896)
7*田舎暮らし(1896-1898)
8*南アフリカの戦争(1899-1900)
9*政治と名誉(1900-1902)
10*ハインドヘッド最後の日々(1903-1907)
11*ウィンドルシャム、そして戦争の勃発(1907-1914)
12*世界大戦(1914-1918)
13*最後の活動(1918-1920)
エピロローグ*コナン・ドイル、最後の十年
謝辞/訳者あとがき/索引

★1月23日取次搬入とのことですので、翌日の24日(火)より順次、書店店頭発売となるはずです。原書は"Arthur Conan Doyle: A Life in Letters"(2007)。本書の編者スタシャワーと訳者の日暮さんは、一年前に刊行された『コナン・ドイル伝』の著者と訳者で、この『ドイル伝』と『書簡集』はいずれもMWA賞(アメリカ・ミステリ作家クラブ賞=エドガー賞)を受賞しています。「訳者あとがき」に曰く、この『書簡集』は「これまで未公開だった第一級の一次資料である〔…〕。過去の資料では知られていなかった事実が数多く見られるほか、二次資料の真偽のほどを確認する手立てにもなる」。大英図書館所収の、60年以上未公開だった千通にのぼる書簡から約600通をこの『書簡集』に収録しているとのことです。


現代思想の20年
池上善彦(1956-)著  
以文社 2012年1月 本体2,500円 四六判上製357頁 ISBN978-4-7531-0297-6
帯文より:世紀をまたいだ時代の道しるべ。冷戦終焉の直後から大震災の直前まで、世紀をまたぎ『現代思想』に毎月書き続けられた編集後記。世界の哲学・思想の最先端から政治・社会・文化の現状に鋭く斬りこみ、ネオリベラリズムにいち早く警鐘を鳴らし、「他者」「マイノリティ」の声に耳を澄ませながら新しい理論、運動、文化を次々に導入した旺盛にしてスリリングな活動の軌跡。

★第三週発売済。月刊誌『現代思想』の名物編集者だった著者が1992年2月号から2010年12月号まで書いた「編集後記」をまとめたもの。巻頭に書き下ろしの「はじめに」が添えられ、巻末には岩崎稔さんによる「この本を手に取るひとのために」が置かれています。池上さんが編集長だったのは1993年1月号から2010年12月号まで。歴代最長の長さです。現在はフリー。フリーになった最初の年である2011年を振り返って池上さんが選書したブックフェア「思想史的大転換期としての2011年――池上善彦選・これからの時代を生き抜くための2011年必読人文書+α」が、紀伊國屋書店新宿本店5階A階段横壁棚にて、本日1月21日より2月29日まで開催されています。池上さんの特別寄稿「世界史に参入する」を収録した「紀伊國屋じんぶん大賞2011」特製小冊子は、2月上旬より配布開始予定とのことです。


2012年1月の注目新刊など_a0018105_23581151.jpg

身ぶりと言葉』アンドレ・ルロワ=グーラン(1911-1986)著、荒木亨訳、ちくま学芸文庫、2012年1月、本体2,000円、688頁、ISBN978-4-480-09430-8
ニーチェの手紙』茂木健一郎編・解説、塚越敏+眞田収一郎訳、ちくま学芸文庫、2012年1月、本体950円、320頁、ISBN978-4-480-09429-2
権力と支配』マックス・ウェーバー(1884-1920)著、濱嶋朗訳、講談社学術文庫、2012年1月、本体1,100円、355頁、ISBN978-4-06-292091-9
国家と革命』レーニン(1870-1924)著、角田安正訳、講談社学術文庫、2011年12月、本体960円、289頁、ISBN978-4-06-292090-2

★ここ最近の文庫新刊では、「この一冊がぼくを変えた」という松岡正剛さんの推薦文がびしっと決まっているルロワ=グーランの『身ぶりと言葉』をまず買い逃すわけにはいかないと思います。文庫の割に2000円と高価ですが、親本(新潮社、1973年)も長らく古書価が高かったですし、ちくま学芸文庫で今まで刊行された文化人類学系の本の平均的寿命を考えると、早めに購入しておくに越したことはありません。先月は、レヴィ=ストロースの『アスディワル武勲詩』も文庫化されました。意外なことにレヴィ=ストロースは『悲しき南回帰線』(上下巻、講談社文庫、1979年;講談社学術文庫、1985年)以来ずっと文庫化がありませんでした。

★『ニーチェの手紙』は、ちくま学芸文庫版『ニーチェ全集』の別巻1と2に収録された『ニーチェ書簡集』と、E・プファイファー編『ニーチェ・レー・ルー』(未知谷、1999年)から新たに編み直されたものです。文庫版全集の別巻全4巻(書簡集、詩集、『生成の無垢』)は以前から既刊書広告欄に特記されなくなっていましたが、『ニーチェの手紙』が出たということは、再刊される可能性がいっそう小さくなってしまうのでしょうか。茂木さんは「あとがき」の冒頭でこう書かれています、「ニーチェの肉声が聞こえてくる手紙を読んでいると、生きる勇気をもらえるように思う」と。また、こうも書かれています、「『ツァラトゥストラ』の中に、印象的な場面がある。喉の奥を蛇に噛まれた男が、横たわっている。ところが、男は、その蛇を紙きって立ち上がる。すると、男の目が、まるで太陽のように、らんらんと輝き始めるのだ。/その男こそが、「超人」である。喉の奥に噛みついていた蛇は、私たちを取り囲む現実の象徴である。現実がどんなものであれ、それを受け入れた時に、「永劫回帰」の中で、「今、ここ」が輝き始めるのだ。/だとしたら、私たちは、みな、ささやかなる「超人」となり得るのではないか。それぞれの孤独の中で、ちっぽけな自分の人生の「今、ここ」を笑って引き受けて」(308頁)。茂木さんは「超人」を「たとえ自分の能力が乏しくても、環境に恵まれていなくても、それを従容として受け入れ、その中で「今、ここ」を生きる、そんな人を指す」ととらえておられます。

★来月刊行予定のちくま学芸文庫やちくま新書では以下の書目が目に留まりました。

『フンボルト 自然の諸相―─熱帯自然の絵画的記述』アレクサンダー・フォン・フンボルト著、木村直司訳、ちくま学芸文庫、2012年2月8日、本体1,300円、352頁、ISBN978-4-480-09436-0
『ゴダール 映画史(全)』ジャン=リュック・ゴダール著、奥村昭夫訳、ちくま学芸文庫、2012年2月8日、本体2,300円、720頁、ISBN978-4-480-09431-5
『ニーチェ』ミシェル・オンフレイ著、マクシミリアン・ル・ロイ画、國分功一郎訳、ちくま学芸文庫、本体1,300円、176頁、ISBN978-4-480-09438-4
『日本思想史新論―─プラグマティズムからナショナリズムへ』中野剛志著、ちくま新書、2012年2月6日、本体780円、240頁、ISBN978-4-480-06654-1

ゲーテの『色彩論』や『形態学論集』『地質学論集』などを地道に翻訳され続けてきた木村先生が今度はフンボルトを手掛けられるようで感動ものです。また、親本では全二巻だった『ゴダール/映画史』(1982年)が文庫では全一冊で読めるというのも素晴らしいですね。

★ウェーバー『権力と支配』は親本が1967年に有斐閣より刊行され、その際に付録として収録されていた講演録「社会主義」は1980年に講談社学術文庫から改訳版が刊行されています。有斐閣版は1954年にみすず書房から刊行された『権力と支配』の改訳改訂版です。今回の文庫化にあたっては巻末に訳者による「あとがき」と、橋本努さんによる「解説」が付されています。カリスマと官僚のはざまに揺れる政治の混迷期を生きる現代人にとってもっとも有効な古典の再刊ではないかと思います。本書を含むウェーバーの遺稿『経済と社会』の内容構成については橋本さんのウェブサイトのこちらをご参照ください。

★レーニン『国家と革命』の親本は2001年にちくま学芸文庫で刊行されたオリジナル新訳版。「学術文庫版訳者あとがき」によれば、再度原文と照合し、手直しをしたとのことです。学術文庫版ではさらに巻末に白井聡さんによる解説「われわれにとっての『国家と革命』」が収録されています。先月刊行されたこのレーニン本と、今月のウェーバー本を手掛けた編集者は同じ方で、精力的なお仕事振りが伺えます。ちくま学芸文庫から他社文庫に移る前例にはたとえばオクタビオ・パス『弓と竪琴』(現在は岩波文庫)などがありましたね。逆に講談社学術文庫からちくま学芸文庫へのスイッチの前例にはレヴィナス『実存から実存者へ』などがありました。どこの文庫で出されるにせよ、絶版本が再度日の目を見るというのは嬉しいことです。

★来月刊行予定の講談社学術文庫や講談社文庫、選書メチエ、現代新書では以下の書目が目に留まりました。

『生命の劇場』ユクスキュル著、入江重吉+寺井俊正訳、講談社学術文庫、2012年2月10日、本体1,000円
『ルネサンスの神秘思想』伊藤博明著、講談社学術文庫、2012年2月10日、本体1,300円
『エクソシストとの対話』島村奈津著、講談社文庫、2012年2月10日、本体760円
『ギリシア正教 東方の智』久松英二著、講談社選書メチエ、2012年2月10日、本体1,600円
『世界の陰謀論を読み解く――ユダヤ・フリーメーソン・イルミナティ』辻隆太朗著、講談社現代新書、2012年2月17日、価格未定

ユクスキュルの名著は今はなき博品社が1995年に出版したものでしたが、今まで文庫化されなかったのが不思議なくらいでした。

by urag | 2012-01-21 23:55 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)


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