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2011年 11月 20日

2011年11月中旬~下旬刊行の注目新刊

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ガイドツアー 複雑系の世界――サンタフェ研究所講義ノートから
メラニー・ミッチェル著 高橋洋訳 
紀伊國屋書店 2011年12月 本体3,200円 46判上製576頁 ISBN978-4-314-01089-4 

原書: Complexity: A Guided Tour, Oxford University Press, 2009.

帯文より:ヒトの脳に存在する何兆ものニューロンという「物質」は、いかに「意識」のような複雑な現象を生みだすのか? 免疫系、インターネット、国際経済、ヒトのゲノム――これらが自己組織化する構造を導いているものは何か? 一匹では単純に振る舞うアリが、グループを形成すると、ある目的のために統率された集団行動がとれるのはなぜか? 第一線の研究者を案内人として、その広大で魅力的な世界を訪ね巡る、本格的入門書。

推薦:「複雑系理論の基礎を学ぶのによい本はないかという質問を、ここ何年か受け続けてきたが、ついに答えが手に入った。「このメラニー・ミッチェルの本を読みなさい」それが答えだ! 本書は明瞭で分かりやすい。また複雑系科学を支持する者に対してばかりでなく、それに疑いを持つ者にも公正である。優れた解説者でもある第一線の科学者によって書かれたこの本は、このエキサイティングな分野について学ぶ最良のものだ」(スティーヴン・ストロガッツ、コーネル大学教授〔応用数学〕、著書『SYNC――なぜ自然はシンクロしたがるのか』早川書房、2005年)。

目次:
第1部 背景と歴史
 第1章 複雑性とは何か?
 第2章 力学、カオス、そして予測
 第3章 情報
 第4章 計算
 第5章 進化
 第6章 初歩の遺伝学
 第7章 複雑性の定義と測定基準
第2部 コンピューター上の生命とその進化
 第8章 自己複製するコンピュータープログラム
 第9章 遺伝的アルゴリズム
第3部 拡張される計算
 第10章 セル・オートマトン、生命、そして万能計算
 第11章 粒子による計算
 第12章 生物系における情報処理
 第13章 コンピューター上で類推を実現する
 第14章 コンピューターモデリングの展望
第4部 ネットワーク思考
 第15章 ネットワークの科学
 第16章 現実世界へのネットワークサイエンスの適用
 第17章 スケーリングの謎
 第18章 複雑化する進化の理論
第5部 結論
 第19章 複雑性の科学の過去と未来

訳者あとがき
図版クレジット
参考文献
原注 
索引

★今週24日(木)取次搬入と聞いています。最速の場合、25日から書店店頭に並び始めるはずです。著者メラニー・ミッチェルは、ポートランド州立大学教授で、サンタフェ研究所客員教授でもあり、専門はコンピュータサイエンスです。既訳書に『遺伝的アルゴリズムの方法』(伊庭斉志監訳、東京電機大学出版局、1997年)があります。師匠はかのダグラス・ホフスタッター。人工知能研究の古典的名著『ゲーデル、エッシャー、バッハ』(白揚社、1985年/2005年)をはじめ、『マインズ・アイ』(上下巻、TBSブリタニカ、1984年/1992年)、『メタマジック・ゲーム』(白揚社、1990年/2005年)などの著書があるあの偉大な、知の越境者です。ほかならぬそのホフスタッター(と、ジョン・ホランド)に捧げられたミッチェル女史の最新著『ガイドツアー 複雑系の世界』は、複雑系研究の発祥地であるサンタフェ研究所での、一般聴衆を対象にした講義が元となっています。刊行された2009年にはアマゾン・コム科学書ベスト10のうちに数えられ、翌2010年は英国王立協会推薦科学図書に選ばれ、さらに同年、ファイ・ベータ・カッパ・クラブ(全米優等学生友愛会)科学図書賞を受賞しています。ミッチェル女史の単独著はこれまで3冊しかありませんが、そのうちの2冊が訳されているわけで(未訳なのはホフスタッターの指導のもとで開発したソフト「コピーキャット」について書かれた1993年の著書Analogy-Making as Perception)、著作数の多寡によってではなく、内容によって評価されている優秀な研究者なわけです。

★「訳者あとがき」では、文系の読者にもぜひ読んでもらいたい本である、と推薦されています。複雑系の研究は文系を含む多岐にわたる分野で用いられていますから、確かに文理を問わない必読書ですね。本書では、物理学、生物学、疫学、社会学、政治学、コンピュータサイエンスでの例を読むことができますが、ほかにも、神経科学、経済学、生態学、気象学、医学にも適用されつつあるとのことです。複雑系を扱う本が日本で一般読者にも読まれるようになったのは、1996年に新潮社から刊行された、サイエンス・ジャーナリストのM・ミッチェル・ワールドロップによるベストセラー『複雑系――生命現象から政治、経済までを統合する知の革命』(2000年に刊行され現在は品切の新潮文庫版〔写真右〕では副題は「科学革命の震源地・サンタフェ研究所の天才たち」)が最初ではないかと思います。複雑系というキーワードが書名に入っている本はそれなりにあるのですが、先端科学の難解さゆえか、入門書は多くはありませんでした。それだけに、ミッチェル女史の「ガイドツアー」は、まさに待望の新刊です。彼女は本書の末尾でこう書いています、「主流科学から定義のはっきりしない未踏の領域に分け入ることによって、被るかもしれない失敗や非難をいとわずに挑戦する意欲と、冒険的な知的精神が必要」(497頁)だと。複雑系科学のわくわくするような面白さが、こうした姿勢に端的に表れているように感じます。もともと専門家向けに書かれている本ではありませんし、文系の読者であってもヴァレラやカウフマン、プリゴジンなどに挑戦してきた方などは特に、本書は苦にならないだろうと思います。広くお薦めしたい新刊です。


脱原発「異論」
市田良彦・王寺賢太・小泉義之・すが秀実・長原豊著
作品社 2011年11月 本体1,800円 A5判並製216頁 ISBN978-4-86182-355-8

帯文より:「3・11」以降の思想的・運動的状況を総括して、議論なきまま「脱原発」に流れ行く風潮に異論を呈し、射程はるかな資本主義批判の視座を提示する、5人の論客による、過激にしてまっとうな討論!

すが秀実「あとがき」より:本書で出されている諸「異論」は、決して、現在の多様な反原発運動や、それを準備・組織してきた、あるいは、直接的には無関係な、これまでのさまざまな運動の存在を単純に斥けるものではない。また、今後の運動を、一意的に方向づけようとしているわけでもない。われわれは、運動し組織してきた者を基本的に尊敬しているし、今後もそうであろう。また、われわれ自身、何らかの「現場」に向かうことが、三・一一以前からもあったし、これからもあるだろう。ただ、繰り返せば、小泉も討議で言っているように、議論の「厚み」と「蓄積」が、運動と組織には必要だと考えているということである。そのために、われわれのあいだの討議も、相互の「異論」の交差となっているはずである。

目次:
吶喊〔とっかん〕と屈託――「座談会」を呼びかけるために(長原豊)
第I部 座談会
 基調報告(市田良彦)
 座談会(市田良彦×王寺賢太×小泉義之×すが秀実×長原豊)
  反原発の現在と過去
   反原発・脱原発の内実
   反原発という「大きな物語」
   マルチチュードは出現するのか/したのか
   左翼文化は継承されるか
   脱原発はコンセンサスか
   反原発か脱原発か
   反原発はラディカル・デモクラシー?
   原発労働者の組織化
   自己権力による現闘本部の設置
  反原発と社会運動
   吉本『「反核」異論』を読む(1)社会主義の理想化
   吉本『「反核」異論』を読む(2)第三世界論の欠如
   脱原発とエコロジー
   エコロジーとニューエイジ
   吉本『「反核」異論』を読む(3)反核と反原発
  反原発と復興の展望
   非常事態と戦争機械
   例外状態とガンに対する戦争
   超管理・相互監視・優生思想のスウェーデン・モデル
   災害ユートピアは出現したか
   セキュリティを敵に回した戦い
   リスク社会論・保険概念の失効
   セキュリティvs自由
   人質にとられた命と健康
   絶対的自由と共産主義
  反原発から反資本主義へ
第II部 論考
 震災、原発、右往左往(王寺賢太)
 「どれだけ」に縛られる人生(小泉義之)
 「太陽の塔」を廃炉せよ(すが秀実)
 ノマドでいるために――原則的な、あまりに原則的な(長原豊)
あとがき(すが秀実)

★先週後半に発売になったばかりの新刊です。そのイカツイ書名にたじろがずに読んでみれば、実に興味深い本です。露悪的に言えば「サヨクのオッサンたちがなにやら長時間アツく放談してる」ということなのかもしれませんが、オッサンたちの言うこともたまにはじっくり聞いてみるもんだぜ、と強く言わねばなりません。議論の底に一貫して流れている主張は「反資本主義」です。そのために今まで体を張り、筆を執ってきたポスト団塊の世代4人から溢れる気迫。そしてなぜかお一人だけ団塊ジュニアの王寺さんが参加していることで、後続世代からの補足が担保できているかもしれません。

★編集担当は文芸書を幅広く手掛けるAさん。そして航思社のOさんのお名前が見えます。Oさんと言えばかつてA出版社やA書店にいらっしゃった方ですね(イニシャルじゃ全然分からないか)。航思社という会社の名前は初めて知りましたが、創業が今夏(2011年7月)で、書籍の企画・出版・販売、組版・校閲などを請負っておられるようです。所在地やその他から推察するに5年前に廃業されたアテネ書房さんと同じ住所で運営されていらっしゃるご様子※。アテネ書房の元従業員のN(Y)さんや、先述のOさんなど、複数の方でお仕事をされているようです。N(Y)さんもまた、Oさんと同じくA書店(アテネ書房ではありません)にお勤めでした。A書店で何が起きたのか、ご存知の方はご存知でしょう。航思社さんは10年代の出版社として今後ますます活躍の場を広げられるに違いありません。

※【追記:2011年11月23日】航思社さんが「アテネ書房さんと同じ住所」というのは私の勘違いだったようです。航思社さんのご指摘によれば、「アテネ書房の住所は本郷1-1-1で、航思社(本郷1-25-28)とは異なっているけれど、ウェブではとりあえずの連絡先として航思社のものを記した」とのことでした。訂正させていただきます。
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by urag | 2011-11-20 23:27 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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