2011年 11月 07日

弊社出版物の著者や訳者の方々の最近の御活躍

弊社出版物の著者や訳者の方々の最近のご本についてご紹介します。まずは哲学・思想系から。ネグリにせよ、アガンベンにせよ、ヴァッティモにせよ、イタリア現代思想がこのところ続いています。後日、文学・芸術系のご紹介もアップします。

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★アントニオ・ネグリさん(『芸術とマルチチュード』著者)
水声社よりまもなく『スピノザとわたしたち』が発売されます。

スピノザとわたしたち
アントニオ・ネグリ著 信友建志訳
水声社 2011年11月 本体2500円 46判上製214頁 ISBN978-4-89176-855-3

帯文より:この現代を《スピノザ的》に組成せよ! スピノザという異形の運命に立ち戻り、その批判的/転覆的意味、および彼によって先取りされた《共》の哲学を、現代思想に布置するための最もラディカルなガイダンス。訳者によるアクチュアルな解説を付す。

原著:Spinoza et nous, traduit de l'italien par Judith Revel, Galilee, 2010.

目次:
序章 スピノザとわたしたち
第一章 スピノザ――内在性と民主制の異端
第二章 力能と存在論――ハイデッガーかスピノザか
第三章 スピノザ政治思想の展開におけるマルチチュードと個別性
第四章 スピノザ――情動の社会学

「成功への希望は反乱の傾向を生じさせる」(信友建志)

『転覆的スピノザ』(未訳、イタリア語原著1992年Pellicani刊)以降に書かれたテクスト四篇を収録。巻末の訳者解説によれば、序章第一節は『野生のアノマリー』「日本語版への序文」と内容が重複し、第二章は部分的に「スピノザの反近代」(『別冊情況 68年のスピノザ』)と重複しているとのことです。現時点では本書のイタリア語版は刊行されていません。ネグリはスピノザについて長年繰り返し論じています。それはたとえ哲学論文でも、内容は私たち現代人への「呼びかけ」であり、ひとつひとつを政治的パンフレットとして読み直すこともできます。ネグリからの再三の呼び掛けの努力によって、彼のオルタナティヴな政治哲学の読者層がじわじわと広がりつつあることは喜ばしいことに思えます。

ネグリさんの訳書は今後、青土社から『政治家デカルト』、作品社から『戦略の工場――レーニンを超えるレーニン』が刊行予定と予告されています。なお、『スピノザとわたしたち』の担当編集者Sさんは先月、柿谷浩一編『日本原発小説集』というアンソロジーも担当されています。現在では「入手困難」という5篇の作品を収録(井上光晴「西海原子力発電所」、清水義範「放射能がいっぱい」、豊田有恒「隣りの風車」、野坂昭如「乱離骨灰鬼胎草」、平石貴樹「虹のカマクーラ」)。巻末には今年『福島原発人災記――安全神話を騙った人々』(現代書館、4月)と『原発と原爆――「核」の戦後精神史』(河出ブックス、8月)を上梓された 川村湊さんの解説「原発小説論序説」が収録されています。

水声社ではつい最近、『完訳版サド全集』(全11巻)の第4回配本となる第6巻『恋の罪、壮烈悲惨物語』(私市保彦・橋本到訳)を発売されました。なんと、実に13年ぶりの配本。また、先月から「レーモン・クノー・コレクション」を刊行開始されましたが、弊社でもクノーは刊行していますので、また別の機会にあらためてご紹介します。


★ジョルジョ・アガンベンさん(『アウシュヴィッツの残りのもの』『バートルビー』『涜神』『思考の潜勢力』著者)
平凡社さんから先月と今月、立て続けに新刊が出ています。先月は『開かれ――人間と動物』(岡田温司・多賀健太郎訳)が平凡社ライブラリーで刊行され、今月は単行本で『裸性』(岡田温司・栗原俊英訳)が発売予定。前者は周知の通り、同社から2004年に刊行された単行本の文庫化で、今回あらたにライブラリー版の訳者あとがきが追加されています。後者はタイトルから推察して2009年にノッテテンポから刊行されたものの翻訳。待望のシリーズ「イタリア現代思想」の第1回配本。上記2点をいずれも翻訳されている岡田温司さんの『アガンベン読解』も今月発売予定。岡田さんは今月、ナツメ社から刊行された新刊『「聖書」と「神話」の象徴図鑑――西洋美術のシンボルを読み解く』を監修されており、さらに18日発売の岩波新書で著書『デスマスク』も刊行されます。


★上村忠男さん(アガンベン『アウシュヴィッツの残りのもの』『涜神』共訳者、スピヴァク『ポストコロニアル理性批判』共訳者、パーチ『関係主義的現象学への道』編訳者)
法政大学出版局さんより先月、訳書が刊行されました。ジャンニ・ヴァッティモの初の単著訳となる『哲学者の使命と責任』です。

哲学者の使命と責任
ジャンニ・ヴァッティモ(Gianni Vattimo: 1936-)著 上村忠男訳
法政大学出版局 2011年10月 本体2800円 四六判上製200頁 ISBN978-4-588-00965-5

帯文より:哲学にはなすべきことがたくさんある。イタリアの碩学ヴァッティモによる思想エッセイ。哲学は即効性こそないにしても、長い目で見れば社会の変革に寄与しうるはずであり、それも哲学の負うべき責任のひとつだと主張。彼が「弱い思考」を提唱するに至る経緯とその意義を論じたダゴスティーニの解説付き。 

原著:Vocazione e responsabilità del filosofo, Il Nuovo Melangolo, 2000.

目次は長くなるので、上記の書名にリンクを張ってある版元サイトの単品ページをご参照ください。それにしてもヴァッティモほどの有名な哲学者の訳書がこれまでなかったというのは意外ではあります。その昔、未來社のポイエーシス叢書の刊行予定でデリダとヴァッティモの共編著『宗教について』がエントリーされていた時期もありました。今回の新刊の帯文にもある「弱い思考」というのは哲学だけでなく建築論などにも影響を与えている重要な思潮です。法政大学出版局ではその原典となるヴァッティモ+ロヴァッティ編『弱い思考』(原著は83年フェルトゥリネッリ刊)を刊行予定で、『哲学者の使命と責任』に予告が載っています。

弱い思考
G・ヴァッティモ+P・A・ロヴァッティ編
上村忠男+山田忠彰+金山準+土肥秀行訳

目次:
弁証法、差異、弱い思考 (ヴァッティモ)
経験の過程でのさまざまな変容 (ロヴァッティ)
反ポルフュリオス (U・エーコ)
現象を称えて (G・カルキア)
弱さの倫理 (A・ダル・ラーゴ)
「懐疑派」の衰退 (M・フェッラーリス)
ハイデッガーにおけるlucus a (non) lucendoとしての開かれ=空き地 (L・アモローゾ)
ウィトゲンシュタインと空回りする車輪 (D・マルコーニ)
雪国に「城」が静かにあらわれるとき (G・コモッリ)
フランツ・カフカのアイデンティティなき人間 (F・コスタ)
社会の基盤および計画の欠如 (F・クレスピ)

ご覧の通り、興味深い論考がズラリと並んでいます。この中の何人かは、平凡社さんの「イタリア現代思想」にも登場するのではないかと予想できそうです。なお、弊社では、上村さんの編訳による『ヘーゲル弁証法とイタリア哲学――スパヴェンタ・クローチェ・ジェンティーレ』を刊行予定であり、さらに未來社の「西谷社長日録」(2011年10月28日付)によれば、上村忠男監訳・イタリア思想史の会訳『イタリア版《マルクス主義の危機》論争――ラブリオーラ、クローチェ、ジェンティーレ、ソレル』という企画が進行しているようです。

それにしてもここしばらくの法政大学出版局の新刊のラインナップはすごいですね。9月にバーナード・クリック、ルーマン、リオタール、エメ・セゼールときて、10月には上記の『哲学者の使命と責任』のほかに、ハンス・ブルーメンベルク『コペルニクス的宇宙の生成(III)』(座小田豊+後藤嘉也+小熊正久訳)や、シモーヌ・ヴェイユ『前キリスト教的直観――甦るギリシア』(今村純子訳)が出ましたし、11月はエティエンヌ・ボノ・ド・コンディヤック『動物論――デカルトとビュフォン氏の見解に関する批判的考察を踏まえた、動物の基本的諸能力を解明する試み』(古茂田宏訳)が出て、ムーア『倫理学』などが新装復刊され、12月にはついにヒュームの『人間本性論(2)情念について』(石川徹+中釜浩一+伊勢俊彦訳)や、イヴォン・ベラヴァル『ライプニッツのデカルト批判(上)』(岡部英男+伊豆藏好美訳)が発売予定だそうです。

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★中山元さん(ブランショ『書物の不在』訳者)
全7巻の新訳、カント『純粋理性批判』の第6巻が9月に光文社古典新訳文庫で刊行され、いよいよ完結が近づいてきました。これまでの刊行ペースを踏襲するとすれば、最終巻となる第7巻は来年1月に刊行されるはずです。『純理』の新訳としては今月、作品社より熊野純彦訳全1巻がついに刊行されます。また、e-honや7ネットの予告では、中山さんの次なる新訳本として「日経BPクラシック」シリーズより『資本論――経済学批判 第一巻』が全4分冊が今月刊行開始となっています。まず第1巻が28日に発売。底本はマルクス生前の1867年4月に唯一刊行された第1巻とのこと。

なお、光文社古典新訳文庫の11月新刊にはプラトン『メノン――徳について』(渡辺邦夫訳)が予告されています。昨年12月に刊行された中澤務訳『プロタゴラス――あるソフィストとの対話』に続く、プラトン新訳第二弾ですね。今後も新訳が続いてほしいと念願しています。
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by urag | 2011-11-07 15:52 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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