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2011年 10月 30日

2011年10月~11月の注目新刊

◆「未知谷」さんから今月、ヨハン・ゲオルク・ピンゼルの彫刻作品写真集『ピンゼル』が発売されました。ピンゼル(Jan Jerzy Pinzel, Johann Georg Pinsel:1707?-1761?)は18世紀半ばにウクライナ(旧ポーランド・リトアニア共和国)で活躍した彫刻家で、本書では図版97点が収録されています。その個性的で美しい作品群は1960年代に、本書の編者である美術史家のボリス・ヴォズニツキ(1926-)により蒐集され修復されました。あれほどの名作でありながら、驚くべきことに、日本では本書が初めての作品集になるのですね。それどころか、世界的にもほとんど前例がなく、2008年にウクライナの出版社Hrani-Tが刊行した『Іоанн Георг Пінзель : Перетворення : скульптура』(ISBN9789662923346)を数える程度のようです。ウェブサイト「ウクライナへようこそ」に掲載された関連記事「ピンゼル、18世紀の謎の彫刻家」(英文)などをご参照ください。「未知谷」さんは今年で創業21年。最初に出版されたのは1991年10月、ヘーゲル『法権利の哲学』とサド『ジュスチーヌ物語又は美徳の不幸』の2点の新訳で、読書界に鮮烈な印象を刻印されました。『ピンゼル』は同社の「刊行20年」記念企画です。同社では今月、パウル・シェーアバルトの『虫けらの群霊』という訳書も発売されました。スズキコージさんが挿絵と装幀を手掛けられており、シェーアバルトによる奇譚もさることながら、造本も強烈なヴィジュアルになっています。

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◆「未來社」さんは今年、創業60周年を迎えられ、記念として来月(2011年11月)には西谷能英社長の『出版文化再生――あらためて本の力を考える』と社史『ある軌跡』60年版を刊行されます。『出版文化再生』はPR誌「未来」の連載「未来の窓」をテーマ別に再構成した大著(A5判540頁)。連載は1997年3月号から15年にわたって掲載され、このたび11月号の176回目をもって最終回を迎えました。まさか連載が終わるとは思いもよらず、びっくりしました。社史『ある軌跡』は非売品ですが、希望者は直接購入が可能になると聞いています。現在「未來社60周年ブックフェア」が、紀伊國屋書店札幌本店、丸善丸の内本店で開催されており、11月1日からは紀伊國屋書店新宿本店でもスタートするそうです。

◆「青土社」さんの月刊誌「現代思想」は、池上善彦さんのあとをついで新編集長となった栗原一樹さんの体制下で、先週発売された11月号「ポスト3・11のエコロジー」をもって1周年を迎えられました。偉大な先達のあとで看板を背負っていくというのはたいへんな苦労だと拝察します。11月号には弊社刊『初期ストア哲学における非物体的な理論』の訳者・江川隆男さんの論考「気象とパトス――〈分裂分析的地図作成法〉 の観点から」や、弊社近刊『カヴァイエス研究』の著者・近藤和敬さんが司会を務める討議「生存のエコロジー」(中村桂子+遠藤彰+大村敬一+近藤和敬)などが掲載されています。個人的には村澤真保呂+ステファン・ナドー「「腸の哲学」序説」をたいへん興味深く拝読しました。いくつかのきっかけがあって何年か前から蛇神について集中的に勉強していた折、ユングの『クンダリニー・ヨーガの心理学』(創元社、2004年)や、福土審さんの『内臓感覚――脳と腸の不思議な関係』(NHKブックス、2007年)を読んで、「内なる蛇」について自分なりに考えてきたので、この『腸の哲学』(単行本は洛北出版さんより刊行予定)には非常に惹かれるものがあります。なお11月号に掲載された青土社さんの「今月の新刊」によれば、中村朝子さんの個人全訳『パウル・ツェラン全詩集』全3巻の新訂版が遠からず刊行されるようです。

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◆江藤淳(1932-1999)さんの生誕80周年を目前にして、2冊の本が中央公論新社さんから発売されました。『文学と非文学の倫理』と『江藤淳1960』です。前者は60年代から80年年代にかけて計五回発表された、江藤さんと吉本隆明さんの対談。「編集後記」によれば、「いずれの対談もそれぞれの単著に収録されているが、共著の対談集としてすべてを網羅するのは初めて」とのことです。全五回の初出をご参考までに掲げておくと、「文学と思想」(「文藝」66年1月号)、「文学と思想の原点」(「文藝」70年8月号)、「勝海舟をめぐって」(勁草書房版『勝海舟全集 第14巻』70年10月刊)、「現代文学の倫理」(「海」82年4月号)、「文学と非文学の倫理」(「文藝」88年冬季号)。後者はアンソロジー集。中央公論編集部による特別編集版で、版元紹介文によれば「安保闘争ドキュメント、大江健三郎論を中心に、批評家・江藤淳の政治と文学に焦点を当てるポレミカルなアンソロジー。吉本隆明、石原慎太郎のインタビュー、柄谷行人・福田和也対談など」。再録ではない新しいコンテンツは吉本隆明さんのインタビュー「江藤さんについて」と、石原慎太郎さんのインタビュー「江藤は評論家になるしかなかった」、の2篇。江藤さんの人となりを知る上で非常に興味深い同時代の証言です。本アンソロジーの「編集後記」には「本書は批評という闘争を生きた人間の精神のドキュメントである」とありますが、まさに若い世代にとって格好の導入部となる一書ではないでしょうか。

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★「ミシマ社」さんの創業5周年の佳節に、代表の三島邦弘さんの『計画と無計画のあいだに――「自由が丘のほがらかな出版社」の話』が河出書房新社さんから刊行されました。同業者の体験談というのは酒の席ならいざ知らず、文字になったものを読むのは「同時代ゆえに鏡のように怖い」という感覚があるのですが、担当編集者のAさんに薦められて現在拝読中です。また、朝日出版社さんから刊行された國分功一郎さんの『暇と退屈の倫理学』も拝読中です。大著『スピノザの方法』(みすず書房、2011年)に続く著書第2弾。担当編集者のAさんは、河出のAさんと同様、私が尊敬してやまない大先輩です。2人のAさんのお仕事から私がどんなことを学んできたか、書き出すときりがありません。2冊の新刊のこと、そして2人のAさんのことはいつかまた書きたいと思います。なお、三島さんと國分さんの本のそれぞれの刊行記念として、以下のイベントが予定されています。

11月2日(水)ヌワラエリヤ
三島邦弘×村井光夫(ナナロク社)「このインディー出版社が熱い!

11月12日(土)ミシマ社京都オフィス
三島邦弘×尾原史和(プランクトン)「寺子屋ミシマ社 特別編

11月20日(日)オリオン書房ノルテ店
三島邦弘×島田潤一郎(夏葉社)「本をつくる 出版社をつくる

11月5日(土)リブロ池袋本店 
國分功一郎×千葉雅也「〈人間であること〉の再設定――世界、環世界、社会

11月19日(土)ジュンク堂新宿店 
國分功一郎×白井聡「贅沢、浪費、マルクス!――新しい「自由の王国」に向かって

11月25日(金)ビブリオテック 
國分功一郎特別ゼミナール「いかにして自らに快楽を与えるか?

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by urag | 2011-10-30 23:57 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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