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2011年 10月 23日

2011年10月の注目新刊

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文化人類学
松村圭一郎(1975-)著
人文書院 2011年10月 本体1,800円 4-6判並製228頁 ISBN978-4-409-00107-3

帯文より:人類学の夢と情熱を伝える希望への30冊。

目次:(本書に記載されている版元名を追加)
第1部 人類学の確立
モーガン『古代社会』岩波文庫
フレイザー『初版 金枝篇』ちくま学芸文庫
マリノフスキー『西太平洋の遠洋航海者』講談社学術文庫
モース『贈与論』ちくま学芸文庫
ベネディクト『文化の型』講談社学術文庫
ミード『サモアの思春期』蒼樹書房

第2部 人類学理論の深化
ファース『価値と組織化』早稲田大学出版部
レヴィ=ストロース『野生の思考』みすず書房
ダグラス『汚穢と禁忌』ちくま学芸文庫
サーリンズ『石器時代の経済学』法政大学出版局
ベイトソン『精神の生態学』新思索社
ブルデュ『実践感覚』みすず書房
ゴドリエ『観念と物質』法政大学出版局

第3部 民族誌の名作
エヴァンズ=プリチャード『アザンデ人の世界』みすず書房
リーチ『高地ビルマの政治体系』弘文堂
ルイス『貧困の文化』ちくま学芸文庫
ターンブル『ブリンジ・ヌガク』筑摩書房
ギアツ『ヌガラ』みすず書房
スミス、ウィスウェル『須恵村の女たち』御茶の水書房

第4部 批判と実験の時代
クラパンザーノ『精霊と結婚した男』紀伊國屋書店
フェルド『鳥になった少年』平凡社
マーカス、フィッシャー『文化批判としての人類学』紀伊國屋書店
クリフォード、マーカス編『文化を書く』紀伊國屋書店
ロサルド『文化と真実』日本エディタースクール出版部
 
第5部 新世紀の人類学へ
ラトゥール『虚構の近代』新評論
レイヴ、ウェンガー『状況に埋め込まれた学習』産業図書
ラビノー『PCRの誕生』みすず書房
アパデュライ『さまよえる近代』平凡社
アサド『世俗の形成』みすず書房
グレーバー『価値の人類学理論に向けて』以文社(近刊)

★「ブックガイドシリーズ 基本の30冊」の最新刊です。明日24日取次搬入。次回配本は伊藤恭彦『政治哲学』を予定。第5部が特に興味深いですね。理系と文系が出会う領域はなかなか人文書売場に置かれませんし、人類学の応用的成果も棚ではなかなか取り込みきれていませんから、本書に挙げられた30冊とその参考文献をチェックすれば、棚の構成に益するところがあるのではないかと思います。

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釜ヶ崎のススメ
原口剛(1976-)+稲田七海(1975-)+白波瀬達也(1979-)+平川隆啓(1979-)編著
洛北出版 2011年10月 本体2,400円 四六判並製400頁 ISBN978-4-903127-14-9

帯文より:日雇い労働者のまち、福祉のまち、観光のまち……このまちから学ぶ、生き抜くための方法。

目次:
序章 釜ヶ崎という地名(原口剛)
イラスト 釜ヶ崎、いまむかし(ありむら潜)
第1章 建設日雇い労働者になる(渡辺拓也)
コラム 「子」――この子たちがいるから日本は大丈夫(荘保共子)
第2章 釜ヶ崎の日雇い労働者はどのように働いているのか(能川泰治)
コラム 「音」――トタン(SHINGO★西成)
第3章 釜ヶ崎の住まい(平川隆啓)
地図のススメ (1)~(6) (水内俊雄)
第4章 釜ヶ崎の歴史はこうして始まった(加藤政洋)
第5章 ドヤと日雇い労働者の生活(吉村智博)
コラム 「酒」――しんどさ、酒、のぞみ(村松由起夫)
第6章 日雇い労働者のまちの五〇年(海老一郎)
コラム 「老」――釜ヶ崎の葬儀と納骨問題――Sさんという日雇い労働者の生き様を通して(川浪剛)
第7章 騒乱のまち、釜ヶ崎(原口剛)
コラム 「信」――〈ボランティア(善意)〉への戒め――〈愛する〉ことよりも〈大切にする〉ことを(本田哲郎)
第8章 失業の嵐のなかで(松繁逸夫)
第9章 釜ヶ崎の「生きづらさ」と宗教(白波瀬達也)
コラム 「芸」――いのちと表現(原田麻以)
第10章 変わりゆくまちと福祉の揺らぎ(稲田七海)
第11章 外国人旅行者が集い憩うまち、釜ヶ崎へ(松村嘉久)
ひきだしのなかの釜ヶ崎(水野阿修羅)
年表で見るまち
索引

★洛北さんが出す本なのですから、「釜ヶ崎」「あいりん」「西成」といった名前にまつわる面白半分の都市伝説の本などではありえません。一人歩きする伝説の断片的情報に対する解毒剤として本書をお薦めします。とは言っても、ありのままの現実にはもちろん厳しい側面もあるわけなので、その意味では本書はこの街の美化や漂白や無毒化を目指すことなく、地域に住む人々の生きざまの歴史を掬い取ろうとする試みなのです。この本自体に鼓動や熱を感じます。書き手や編集者に誘われて、読者もまた街角に立っているような読後感があります。

★折しも今月は、井上理津子(1955-)著『さいごの色街飛田』(筑摩書房、ISBN978-4-480-81831-7)が刊行され、酒井隆史(1965-)著『通天閣――新・日本資本主義発達史』(青土社、ISBN978-4-7917-6628-4)もまもなく発売と聞きますから、「大阪フェア」を企画する書店さんもいらっしゃるかもしれませんね。弊社の森山大道写真集『大阪+』は残念ながら品切。


白人の歴史
ネル・アーヴィン・ペインター著 越智道雄訳
東洋書林 2011年10月 本体4,800円 A5判上製504頁 ISBN978-4-88721-794-2

帯文より:「黒人女性が書いた人種論」――そんなステレオタイプの言葉で本書の真価を掬い取ることはできない。有史時代の美から出発し、優生学、進化論、奴隷・移民問題を呑みこみながら、ホワイト・アメリカンという茫漠たる疑問符の果てを照射する「人種なる概念」の形成史。世界はなぜ規定され、どう切り分けられてきたのか?

目次:
第1章 ギリシア人とスキタイ人
第2章 ローマ人、ケルト人、ガリア人、そしてゲルマン人
第3章 白人奴隷
第4章 理想の美女としての白人奴隷
第5章 科学としての白人の美貌概念
第6章 ヨハン・フリードリヒ・ブルーメンバッハ、白人を「カフカス人」と命名
第7章 ジェルメーヌ・ド・スタールのドイツ学習
第8章 初期のアメリカ白人観察記
第9章 最初の移民ラッシュ
第10章 ラルフ・ウォールドー・エマスン
第11章 イギリス的特性、あるいは『英国の印象』
第12章 アメリカ白人の歴史のおけるエマスン
第13章 人類学のアメリカ学派
第14章 アメリカ白人の範疇、再び拡大す
第15章 ウィリアム・Z・リプリーと「ヨーロッパ諸人種」
第16章 フランツ・ボアズ、異議申し立てる
第17章 ローズヴェルト、ロス、そして人種的自殺
第18章 退行的家系の発見
第19章 退行的家系から断種へ
第20章 新移民の知能検査
第21章 大いなる不安
第22章 人種の坩堝は挫折か?
第23章 人類社会学――異人種の科学
第24章 人種の科学への論駁
第25章 新たな白人種政治
第26章 アメリカ白人の範疇、三度拡大す
第27章 黒人の民族自決主義と「ホワイト・エスニック」
第28章 アメリカ白人の範疇、四度目の拡大
訳者あとがき
原註
参考文献
図版出典
索引

★人種の視点から見たアメリカ史の大著です。昨春、ノートンから刊行されたものの訳書。著者はプリンストン大学名誉教授であり、米国史の専門家です。本書を「こんにち」の米国の状況に沿ってどう読むかについては、訳者の越智先生が詳しくあとがきで示唆されており、有益です。弊社刊、ポール・ギルロイ『ブラック・アトランティック』もあわせてお薦めします。
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by urag | 2011-10-23 21:16 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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