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2011年 07月 18日

今週発売の注目新刊(2011年7月第4週)

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ニューヨーク 地下都市の歴史
ジュリア・ソリス(1964-)著 綿倉実香訳
東洋書林 2011年7月 本体3800円 A5判上製242頁 ISBN978-4-88721-792-8

原書:Der Untergrund von New York: Anatomie Einer Stadt, Links Verlag, 2002.

帯文より:巨大な魔都の闇の中、脈動するもうひとつの開拓地〔フロンティア〕! 未来へと邁進する都市の奥底、幾重にも積層した歴史の最新部には、衆愚の街〔ゴッサム・シティ〕とあだ名されるゆえんとなる遺構が残されていた。権力争いや違法行為の残痕、映画を誇る建築物からなる「世界の首都」を築き上げた人々の営みの踏査へと向かう扉が今開かれる! 解説=海野弘

目次:
第1章 もうひとつのニューヨークの魅力
第2章 マンハッタンの生命線
第3章 地下鉄システム
第4章 地下の巨大建築物
第5章 秘密に満ちたトンネル
第6章 逃げ道と配管シャフト
第7章 迷宮と丸天井
第8章 地下世界の魅力
解説
索引
参考文献

★21日(木)取次搬入と聞いています。書店店頭に並び始めるのは翌日22日以降ということになるかと推察します。一昨年同社より刊行されたリアー+ファイ『パリ 地下都市の歴史』(古川まり訳、奥本大三郎解説、東洋書林、2009年9月、本体3800円、ISBN978-4-88721-773-7)に続く、「地下都市の歴史」第二弾です。「開拓者たちの遺跡、水道管や地下鉄をめぐる烈しい利権争いの名残、禁酒法時代のもぐり酒場(スピークイージー)、怪し気な実験が行われたコロンビア大学の地下ホール、廃坑をねぐらとする「モグラびと」たちの生活の痕跡、そして9.11同時多発テロによる新たな都市の埋葬……実は地中にこそ、新旧とりまぜた生々しい歴史の証言が残されているのだ」(カバーソデ紹介文より)。図版約200点。いわゆるお堅い歴史書ではなく、著者が一人称で自身の地下探索の体験を語る体裁がベースになっているので、読みやすいです。地下施設というのはどうしてこうも魅惑的なのでしょうか。日本でも、東京の地下世界をめぐる秋庭俊さんの数々の本は人気ですよね。東洋書林さんでは第三弾『ベルリン 地下都市の歴史』も続刊予定だそうです。

★「モグラびと Mole People」については、参考文献に挙げられているジェニファー・トス『モグラびと――ニューヨーク地下生活者たち』(渡辺葉訳、集英社、1997年)が詳しいルポになっています。また、彼らの生活を写した写真を添えたインタビュー集として、マーガレット・モートン(Margaret Morton)の『トンネル――ニューヨーク市の地下ホームレス』(The Tunnel: The Underground Homeless of New York City, Yale University Press, 1995)という古典があります。モートンはこのほかにも『壊れやすい住居――ニューヨーク市のホームレス・コミュニティ』(Fragile Dwelling: Homeless Communities of New York City, Aperture, 2000)や『ガラスの家』(Glass House, Pennsylvania State University Press, 2004)といった関連書を出版しています。日本で言えば坂口恭平さんの仕事に近いでしょうか。



ガセネタの荒野
大里俊晴著
46判(タテ188ミリ×ヨコ118ミリ)並製、192頁、税込定価1,470円(本体価格1,400円) ISBN:978-4-901477-86-4

内容紹介:19年ぶり、待望の復刊! 山崎春美、浜野純、大里俊晴による伝説のバンド「ガセネタ」の結成から解散までの破天荒な活動(1977~1979年)を赤裸々に描写。「吉祥寺マイナー」などのライブハウスやイヴェント現場の内情、ロックとマイナー音楽を取り巻く混沌とした状況、当時の先鋭的なバンドをめぐる精神的傾倒を回想する、アンダーグラウンド音楽シーンの歴史的重要書! 最後の、しかし終わらない伝説。

★20日(水)取次搬入の弊社新刊です。「ガセネタ」のことはまったく知らない、という読者の方でも、「青春小説」としても抜群に面白く読んでいただけると思います。書影はこちらでご覧ください。先日のエントリーでもご報告しましたが、都内の超大型店には早ければ21日より書店店頭に並び始めます。全国的には翌週25日以降の店頭発売になると思われます。本書はもともと洋泉社さんから1992年に発行されたもので、今回の新装復刊にあたり、表記を著者の最終原稿にもとづいて校訂しました。洋泉社版に掲載されていた見出しや参考資料、写真は再録していません。ガセネタの10枚組CDボックス『ちらかしっぱなし――ガセネタ in the BOX』が同時期にディスクユニオンにて発売されます。

大里俊晴(おおさと・としはる):1958年2月5日新潟生まれ。70、80年代に「ガセネタ」「タコ」などのバンドで活動。早稲田大学文学部を卒業後、87~93年、パリ第8大学にてダニエル・シャルルのもとで音楽美学を学ぶ。97年から横浜国立大学にて現代音楽論、マンガ論、映像論などの講義を担当。著書に『マイナー音楽のために』(月曜社、2010年)。音楽批評家・間章に関するドキュメンタリー映画『AA』(監督:青山真治)では全編にわたりインタビュアーを担当。2009年11月17日死去。享年51。

写真は右が92年の洋泉社版、左が今回発売となる月曜社版です。
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★今月(2011年7月)下旬は、岩波書店の新刊に興味深い書目が続きます。

28日発売:ジャン-ピエール・デュピュイ『ツナミの小形而上学』嶋崎正樹訳、本体1,900円
28日発売:ウルリッヒ・ベック+鈴木宗徳+伊藤美登里編『リスク化する日本社会――ウルリッヒ・ベックとの対話』本体1,900円
28日発売:ウルリッヒ・ベック『〈私〉だけの神――平和と暴力のはざまにある宗教』鈴木直訳、本体3,300円
28日発売:宇京賴三『異形の精神――アンドレ・スュアレス評伝』本体2,800円
28日発売:山内志朗『存在の一義性を求めて――ドゥンス・スコトゥスと13世紀の〈知〉の革命』本体6,700円

★このほか岩波書店では、キャサリン・マッキノン『女の生、男の法』(全2巻、森田成也+中里見博+武田万里子訳、本体4,200円)や、ナオミ・クライン『ショック・ドクトリン』(全2巻)が近刊予定と聞いています。先週(7月第3週)発売の同社最新刊についてもフォローしておきますと、12日にテリー・イーグルトン『詩をどう読むか』(川本皓嗣訳)という単行本を、そして15日発売の岩波文庫では、J・S・ミル『大学教育について』(竹内一誠訳)、中村健之介編訳『ニコライの日記――ロシア人宣教師が生きた明治日本(上)』(全三巻予定)、川合康三訳注『白楽天詩選(上)』(全二巻予定)などが刊行されました。

★先週は「まもなく発売の注目新刊」について書けずじまいでしたから、以下の発売済み新刊について特記しておきたいと思います。


言語と精神
ノーム・チョムスキー著 町田健訳
河出書房新社 2011年7月 本体3,300円 46判上製360頁 ISBN978-4-309-24556-0

原書:Language and Mind, 3rd edition, Cambridge University Press, 2006.

帯文より:人間はなぜ〈言語〉を習得できるのか。言語学に革命をもたらした生成文法とその最重要概念〈普遍文法〉について、チョムスキーが一般向けに解説した名著、待望の新訳!

目次:
第三版への序言
第二版への序言
初版への序言
第一章 精神の研究に対して言語はどんな貢献をするのか──これまでになされたこと
第二章 精神の問題に対する言語学の貢献──現在行なわれていること
第三章 精神の研究に対する言語学の貢献──未来になされるべきこと
第四章 自然言語の形式と意味
第五章 言語の形式的性質
第六章 言語学と哲学
第七章 生物言語学と人間の能力
訳者あとがき

★河出書房新社さんではこれまで同書の第二版が川本茂雄訳で長らく版を重ねていましたが、原著で第七章が追加された第三版が近年刊行されたのをきっかけに、このたび新訳されました。9.11以後、チョムスキーの訳書の新刊はほとんど政治的発言のもので、言語学系が少なかったのですが、それでも『生成文法の企て』(福井直樹+辻子美保子訳、岩波書店、2003年11月)、『言語と認知――心的実在としての言語』(加藤泰彦+加藤ナツ子訳、秀英書房、2004年1月)、『自然と言語』(アドリアナ・ベレッティ+ルイジ・リッツィ編、大石正幸+豊島孝之訳、研究社、2008年8月)と啓蒙的な本が続き、今月『言語と精神』の新訳が出たわけで、チョムスキーの言語観と人間観についてこれらの本できっちり勉強しておきたいところです。なお、『生成文法の企て』は来月(2011年8月)に岩波現代文庫になるようです。

★新訳版『言語と精神』は、河出書房新社さんの創業125周年を記念する名著復活事業「KAWADEルネサンス宣言」の一環として刊行されています。宣言に曰く「刊行時、評価の高かったもの、あるいは再評価の気運のあるもの、そしていまあらためて光をあてるべきものなどを、復刊、また時に新訳などで甦らせ、本を愛する方々のお手元に届けようというものである。/電子書籍時代の到来が喧伝され、読書環境の変化が世を騒がせているが、そうした時代であるからこそ、真の名著はかつてなく望まれているのもたしかである。小社は戦前から今日まで多くのジャンルにわたって多くの書籍を刊行してきた。これらの中にはいまだに読み継がれているものもあれば、また他のかたちで読者の手にわたっているものも少なくない。しかし読み継がれるべきでありながらあらためて光を浴びることなく埋もれてしまった書も多い。そしてそれを再び世に問うことは出版にかかわる者の責務であると同時に大きな喜びである。/われわれはこの事業を「KAWADEルネサンス」と名付ける。ここには失われた名著、良書の復刊・復活だけではなく、これによる新たな文藝復興=ルネサンスへの期待をもこめられている。本を愛してやまない多くの人々があるかぎり、この事業は継続されるだろう」。

★4か月ごとに2~3冊の刊行ペースで進むようですが、来月はクライスト『チリの地震――クライスト短篇集』(種村季弘訳、河出文庫)が復刊されるとのことです。8日発売。版元サイトの内容紹介には「17世紀、チリの大地震が引き裂かれたまま死にゆこうとしていた若い男女の運命を変えた。息をつかせぬ衝撃的な名作集。カフカが愛しドゥルーズが影響をうけた夭折の作家、復活。佐々木中氏、推薦」とありますから、佐々木中さんによる書き下ろし解説などが新たに付されていることを期待したいですね。同じく河出文庫の来月の新刊には、田山花袋『東京震災記』、大澤真幸『文明の内なる衝突――9.11、そして3.11へ』、菊地成孔+大谷能生『M/D――マイルス・デューイ・デイヴィスⅢ世研究(上)』などがエントリーされています。

★このほかの新刊で、笠井叡『カラダという書物』書肆山田、ソヌ・シャムダサーニ『ユング伝記のフィクションと真相』創元社、という素晴らしい2点を取り上げたかったのですが、記事が長くなるため他日を期したいと思います。
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by urag | 2011-07-18 23:58 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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