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2011年 06月 26日

今週発売の注目新刊(2011年6月第5週)

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超常現象を科学にした男――J・B・ラインの挑戦
ステイシー・ホーン(1956-)著 ナカイサヤカ訳 石川幹人監修
紀伊國屋書店 2011年6月 本体2,200円 46判上製348頁 ISBN978-4-314-01077-1

原書 Unbelievable: Investigations into Ghosts, Poltergeists, Telepathy, and Other Unseen Phenomena, from the Duke Parapsychology Laboratory, HarperCollins, 2009.

帯文より:これはオカルトではない! 超心理学のアインシュタインとも言われた男の軌跡を、20世紀という激動の時代とともに描いた瞠目のノンフィクション。

カバーソデより:「超心理学」とは――超常現象は人間の発揮する能力によって引き起こされるとの考えに基づき、それを化学的に解明しようとする学門。1889年のドイツの使われ始めた超心理学という言葉は、J・B・ラインが広く普及させた。また、ESP(超感覚的知覚)という言葉や、テレパシー(他人の心から情報を得る)、透視(物体など、心以外のものから情報を得る)、予知(未来を見る)、PK(念力、心で物体を動かす)などの各事象の定義も、ラインの研究から生まれたものである。

目次:
プロローグ
第1章 交霊会
 はじまり/ボストンの霊媒/J・B・ライン登場/ミナの転落/デューク大学へ
第2章 ESP
 テレパシーとの出合い/ESP――超感覚的知覚/アインシュタインと霊媒/ヒューバート・ピアース/アイリーン・ギャレット/超心理学研究所
第3章 名声と苦闘
 ある少女霊媒の生涯/批判と支持/ブームと論争の日々/ラジオ放送の大反響/米国心理学会/暗雲
第4章 戦争と死者
 戦時下の研究所/PK――念力/終戦/独立と孤立
第5章 悪魔祓い
 エクソシスト/メリーランド悪魔憑依事件/性とポルターガイスト/エクソシストの真相/憑依と脳科学/安定と停滞
第6章 声なき声
 新たな発展を求めて/幻覚仮説/聴こえる幽霊/声を聴く人々/退行催眠と生まれ変わり――ブライディ・マーフィー事例/UFO/著名な訪問者たち/超心理学協会
第7章 ポルターガイスト
 騒がしい霊/偶発的超常事例/四つのポルターガイスト事例/シーフォード・ポルターガイスト事例/シーフォード事例調査研究報告/テレビ出演と新たな手紙/ポルターガイスト後日譚
第8章 特異能力者
 消えた少年/ハロルド・シャーマンの透視/霊能者ピーター・フルコス/六〇年後――続く調査/霊能探偵フルコスの事件簿/フルコスの虚像と実像/ラインと霊能者
第9章 サイケデリックと冷戦
 臨死体験/ティモシー・リアリーとの出会い/ドラッグとESP/サイケデリックの時代/ESPの軍事利用研究/超心理学のスプートニク/遠隔透視諜報計画スターゲイト
第10章 幽霊と科学者たち
 心霊現象再び/幽霊の歴史/超心理学者ロールとジョインズ/量子の謎――物理学者たちの困惑と見解/現代の幽霊研究/電磁波、人工幽霊、脳
第11章 遺産
 苦闘の果て/繰り返される批判、世を去る旧友/FRNMへ/新たなスタート、希望と絶望/ゴール/迷走/ラインの死/記憶の彼方へ
エピローグ
謝辞

解説
年表――J・B・ラインと超心理学
参考文献
索引

★今週水曜日29日に取次搬入の新刊です。店頭販売は30日以降ということになろうかと思います。デューク大学超心理学研究所の盛衰とその創設者ジョセフ・バンクス・ラインの活躍について書かれたドキュメンタリーです。毀誉褒貶に絶えずさらされながら、ラインがいかに「超心理学(パラサイコロジー)」を科学として確立させようと地道な実験の努力を続けたかが分かります。人知ではうまく捉えきれない不可解な事象に対峙してきた苦労の歴史がよく伝わってくる好著です。ESPカードの記号をあしらったカバーと表紙のシンプルで美しいデザインは松田行正さんと日向麻梨子さんによるもの。軽めの本文紙にスミほどキツく見えない柔らかな特色で刷ってある瀟洒な本です。

★俗っぽい言い方になりますが、遠隔透視で日本でも有名なジョー・マクモニーグルも少しだけ登場しますから、いわゆる超能力に関心のある方々に大いに興味を持っていただけると思います。より突っ込んで、ラインの実証実験についてもっと知りたい方は、盟友ジョセフ・ゲイザー・プラット(Joseph Gaither Pratt, 1910-1979)との共著『超心理学概説』(湯浅泰雄訳、宗教心理学研究所、1964年)が教科書としてもっとも名高いですから、図書館などでお読みになってください(残念ながら新刊書店ではもう手に入りません)。また、ライン以前の歴史も知りたい方はジョン・ベロフ『超心理学史――ルネッサンスの魔術から転生研究までの四〇〇年』(笠原敏雄訳、日本教文社、1998年)などが役に立つと思います。さらに、ライン以降の超心理学の発展については、本書『超常現象を科学にした男』の巻末の「解説」で監修者の明治大学教授・石川幹人さんが、『封印された「科学」――超心理学にみる科学者社会の実像(仮)』と題した書籍を紀伊國屋書店から刊行予定であると予告されているので、特記しておきたいと思います。

★御参考までにラインの著作の既訳書と、ライン夫人ルイザ(『超常現象を科学にした男』ではルイーザと表記)の著作の既訳書を以下に列記しておきます。

ジョセフ・バンクス・ライン(Joseph Banks Rhine, 1895-1980) 既訳書
『心理の領域――超心理学』(瀬川愛子訳、北隆館、1950年)
『心理学の新世界』(瀬川愛子訳、日本教文社、1958年)
『超心理学概説――心の科学の前線』(J・G・プラットとの共著、湯浅泰雄訳、宗教心理学研究所、1964年)
『超心理学入門』(C・G・ユング/Ch・T・タートほかとの共著、長尾力ほか訳、青土社、1993年)
※このほか、ラインに宛てられたユングの手紙の数々を、湯浅泰雄訳著『ユング超心理学書簡』(白亜書房、1999年)で読むことができます。

ルイザ・E・ライン(Louisa E. Rhine, 1891-1983)既訳書
『PSI〔サイ〕――その不思議な世界』(笠原敏雄訳、日本教文社、1983年)
『超精神回路』(日暮雅通訳、国書刊行会、1986年)

★ライン以後の超能力研究者として高名な人物には、スタンフォード研究所のラッセル・ターグ(Russell Targ, 1934-)とハロルド・E・パソフ(Harold E. Puthoff, 1936-)、そして変性意識(アルタード・ステーツ/オルタード・ステイト)の研究家チャールズ・T・タート(Charles T. Tart, 1937-)などがいるのは周知の通りです。彼らの著書も以前から訳されていますので、以下に列記しておきます。

ラッセル・ターグ/ハロルド・パソフ『マインド・リーチ――あなたにも超能力がある』(猪股修二訳、集英社、1978年)
ラッセル・ターグ/キース・ハラリー『奇跡のスタンフォード・テクニック――超能力研究のメッカSRIが開発した短期間超能力増強システム』 (アルバトロス・フォーラム訳、学習研究社、1984年)
チャールズ・T・タート『サイ・パワー――意識科学の最前線』(井村宏次・岡田圭吾訳、工作舎、1982年)
チャールズ・T・タート『覚醒のメカニズム――グルジェフの教えの心理学的解明』(吉田豊訳、大野純一監訳、コスモス・ライブラリー、2001年)

★フラワー・ムーブメントからニューエイジ・サイエンス(ニュー・サイエンス)に至る潮流が日本でも流行したことがあった時代に、テレビではユリ・ゲラーがスプーン曲げをして超能力ブームが沸き起こり、五島勉の『ノストラダムスの大予言』がベストセラーになり、書店では「精神世界」棚が渋谷界隈から自生し始めていました。ニュー・サイエンスの流行と「精神世界」棚の生成は、松岡正剛さんの「遊」(工作舎)時代の活躍と、今はなき大盛堂書店本店がパルコBC渋谷店の覇権以前に先導していた渋谷の書店界の一時代と重なっていますし、さらに言えば構造主義からポスト構造主義と記号論への流れ、そしてニューアカ(ニュー・アカデミズム)の台頭へと至ったのも同時代です。ごく大雑把な理解(誤解)となるリスクを承知で言えば、すべて、70年代から80年代の20年間(いわゆる安定成長期)に起きた出来事でした。皮肉なことに、私たちが生きる2010年代の一般的状況は、これらの歴史をほぼ忘却した上で成り立っている砂漠の上の知の蜃気楼のようなものではないだろうか、と感じることがあります。忘却の砂漠の下にはかつて栄えた都市があり、それらの都市が地下水脈を形成して私たちの今いる地上=現在へと常ににじみ出してきています。変化と変動をもたらすのは未来からの風ではなくて、過去からの亡霊的な息吹です。歴史に学ばねばなりません。


もう一人のソシュール
小松英輔著 相原奈津江編
エディット・パルク 2011年6月 本体3,200円 A5判上製本324頁 ISBN978-4-901188-09-8

帯文より:濃霧の立ちこめる自筆原稿の原野へ! 「小松氏の研究室では、今は亡き三宅徳嘉先生と三人で輪読会が行われた。輪読会では、小松氏が聴講ノートを判読転写した原稿を、聴講ノートのコピーと読み比べながら一字一句検討を重ねていくという地を這うような作業が、昼過ぎから夕方まで連日行われた」(松澤和宏・序文「小松英輔氏とソシュール文献学」より)。

カバー裏紹介文および版元紹介状より:日本人で初めて実際に原資料の調査を行い、マイクロフィルムで記録した国際的評価の高い著者による『ソシュール自伝』、アナグラムについての『事前に読むべき最初のノート』等の全訳をはじめ、『一般言語学はどのようにして書かれたか』、『もう一人のソシュール』、『ソシュール研究のために』等の論考、そして言語学と記号学と神話学を結び合わせている『ホイットニー』、神話のディスクール『トリスタン』の原テキストの掘り起し全文を収録。序文は、小松英輔氏の『一般言語学講義』の掘り起し作業に携わり、日本を代表する国際的なソシュール研究者である名古屋大学大学院教授の松澤和宏氏。

目次:
序文「小松英輔氏とソシュール文献学」(松澤和宏)
編者はしがき

I
 ソシュール自伝
 ソシュールの原資料
 ソシュールの神話・伝説研究および未刊資料の公開
 ソシュール『一般言語学講義』はどのようにして書かれたか 
 もう一人のソシュール(I) ――ソシュールの「アナグラム」について
 もう一人のソシュール(II)――ソシュールの「原典資料」の調査から
 ソシュール研究のために(1) 
 ソシュール研究のために(2)セシュエ著『理論言語学の素案と方法』についてのソシュールの書評の下書
 ソシュール原典資料目録解説 
 ソシュール原典資料目録解説(続)

II
 Essai semiotique du texte de Jean RACINE ―rythmique et semiotique―
 文学とオノマトペ
 源氏物語の固有名詞 
 言語学と失語症
 ソシュール研究会報告

III
 "Notes pour un article sur Whitney" de F. de Saussure
 『ホイットニー』あとがきの抄訳
 TRISTAN ― Notes de Saussure
 『トリスタン』まえがきの抄訳

初出一覧
著作一覧
用語索引
人名索引

★小松英輔編による「ソシュール一般言語学講義」の講義録三巻本を刊行してきた京都の出版社エディット・パルクさんの最新刊です。公式ウェブサイトによれば26日発売となっていますが、大方の書店ではすでに店頭発売が開始になっている様子です。本書を含めた同社のソシュール関連既刊書を以下に列記します。長引く出版不況のさなかに、地道に成果を積み重ねられてきた相原さんのご苦労はいかばかりだったことでしょうか。今回の新刊『もう一人のソシュール』は、自伝やアナグラム研究、神話研究といった知られざるソシュールの様々な横顔を垣間見せてくれる貴重な研究および翻訳が満載で、講義録三巻本に続く最新刊としてもっともふさわしい一書です。

相原奈津江『ソシュールのパラドックス』2005年
フェルディナン・ド・ソシュール『一般言語学第三回講義――コンスタンタンによる講義記録』小松英輔編、相原奈津江・秋津伶訳、西川長夫解題、2003年(絶版)
フェルディナン・ド・ソシュール『一般言語学第三回講義〈増補改訂版〉――コンスタンタンによる講義記録+ソシュールの自筆講義メモ』小松英輔編、相原奈津江・秋津伶訳、2009年
フェルディナン・ド・ソシュール『一般言語学第二回講義――リードランジェ/パトワによる講義記録』小松英輔編、相原奈津江・秋津伶訳、2006年
フェルディナン・ド・ソシュール『一般言語学第一回講義――リードランジェによる講義記録+付「エングラー版批判」小松英輔』小松英輔編、相原奈津江・秋津伶訳、2008年
小松英輔『もう一人のソシュール』相原奈津江編、2011年

★ところで岩波書店では松澤和宏さんの監修・翻訳で2007年秋に『ソシュール「一般言語学」著作集』全4巻を刊行開始すると予告していました。曰く「1996年発見の新資料を含めた自筆原稿とともに、1907年からジュネーヴ大学で行われた全3回の講義の全容を明らかにする学生の聴講ノートを厳密な校訂の下に紹介する」(岩波書店「2007年1月の新刊」所載「2007年の新企画から」欄より)。今回の『もう一人のソシュール』の序文では松澤さん御本人による言及は特にありませんでした。他社さんの本なので当然かもしれませんが……。
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by urag | 2011-06-26 23:16 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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