2011年 06月 05日

今週発売の注目新刊(2011年6月第2週)

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芸術の蒐集
ウンベルト・エーコ編著/川野美也子訳
東洋書林 2011年6月 本体8,000円 B5変型判408頁フルカラー ISBN978-4-88271-787-4

原書:Vertigine della Lista, Bompiani, 2009.

帯文より:美といわず、醜といわず、この世のすべてを永遠に分類せよ!!
カバーソデ(内容紹介文)より:稀代の碩学ウンベルト・エーコがものする芸術史、待望の第3弾!『美の歴史』、『醜の歴史』に続く本作は、前2作の二項対立からより自由に飛躍し、あらゆる創作活動の蒐集・分類、すなわち世界のカタログ化に目を向けた、記号論者エーコの面目躍如たる一冊となった。ダンテ、ラブレー、ジョイス、そしてブリューゲル、ダリ……文芸・美術作品の中に潜む眩惑的なリストの大海原へと乗り出す、知の「列記嗜好者(リストマニア)」による熱狂の大航海!

目次:
序文
第1章 アキレウスの楯と叙述法〔フォルム〕
第2章 リストあるいは目録
第3章 視覚的リスト
第4章 語りえぬもの
第5章 物のリスト
第6章 場所のリスト
第7章 実用的リストと詩的リスト
第8章 リストとフォルムの交換
第9章 列挙〔エヌメレーション〕の修辞学
第10章 驚異〔ミラビリア〕のリスト
第11章 美術コレクションと宝物庫
第12章 驚異の部屋〔ヴンダーカマー〕
第13章 属性による定義と本質による定義
第14章 アリストテレスの望遠鏡
第15章 過剰、ラブレー以後
第16章 一貫性のある過剰
第17章 混沌たる列挙
第18章 マス・メディアはリストがお好き
第19章 眩暈のリスト
第20章 実用的リストと詩的リストの交換
第21章 ノン・ノーマルなリスト

訳者あとがき
図版クレジット
引用文献索引
美術家索引
作者名のない図版・映画スチール・邦訳文献

★今週木曜、9日に取次搬入とのことです。『美の歴史 Storia della Bellezza』(植松靖夫監訳、川野美也子訳、東洋書林、2005年)、『醜の歴史 Storia della Bruttezza』(川野美也子訳、東洋書林、2009年)に続く、ウンベルト・エーコ「芸術史」三部作の完結編です。エーコは「序文」でこう書いています。「もし私の探索の旅において道々出会ったすべてのリストをアンソロジーの中に入れたいと思ったら、本書は少なくとも千頁かそれ以上のものになってしまうに違いない」。本書は言ってみれば西洋文化の「メタ=インデックス」であり、その静かなたたずまいとは裏腹に、行間ではある種の狂気じみた突風が吹き荒れています。時代も場所も自在に縦断し横断しつつテクストとイメージを渉猟するエーコの手さばきこそ、その突風の「本体」です。しかし私たちの大半はこの突風をあたかも天使のささやき程度にしか感じることはできないでしょう。知らぬが仏とはこのことです。眠気を誘う天使のささやきが実はとんでもない爆風だと気付くとき、読者はエーコの「狂気=理性」の内奥に一歩近づくのかもしれません。

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定本 夜戦と永遠――フーコー・ラカン・ルジャンドル
佐々木中(1973-)著
河出文庫 2011年6月 本体各1,400円 576頁/504頁 ISBN978-4-309-41087-6/978-4-309-41088-3

上巻カバー(内容紹介文)より:重厚な原典準拠に支えられ、強靭な論理が流麗な文体で舞う。誰もがなし得なかった徹底的な読解によって、現代思想の常套を内破する「永遠の夜戦」の時空が、今ここに浮かび上がる――。『切りとれ、あの祈る手を』で思想・文学界を席巻した佐々木中の原点にして主著、補遺論文を付して遂に定本なる。女性に-なる-ラカンが叫び、知られざる泰斗・ルジャンドルが微笑する。恐れなき闘争の思想が、かくて蘇生を果たす。

下巻カバー(内容紹介文)より:息を飲む程の明快さと、余すところのない学問的な厳密さが、奇蹟のように手を取り合って進む。〈アントロポス〉の永劫の生と、抵抗する「犬」の戦いの轟きが、惨めな現状追認と停滞を痛撃する。俊傑・佐々木中の第一作にして哲学的マニフェスト、新論考を付した完全版。ミシェル・フーコーの厳密な批判的読解から不意に現れ出る、その「蜂起の魂」とは何か。絶えざる「真理への勇気」の驚嘆すべき新生。

★版元ウェブサイトでは今週火曜7日発売となっていますが、先週金曜の3日に入荷している店が多いようです。親本は以文社より2008年11月に刊行されています。今回の「定本」として文庫化されるにあたり、補論「この執拗な犬ども」(初出:『現代思想』2009年6月号・特集「ミシェル・フーコー」)と「文庫版のための跋」が付されました。堅牢な大冊が持ち運びやすい文庫になり、身近に感じますね。

★佐々木中さんは現在、いとうせいこうさんと二人で連作小説「Back 2 Back(仮題)」をウェブ連載されています。これは案内文によれば「東日本大震災(東北地方太平洋沖地震による震災)へのチャリティ連作小説」で、「打ち合わせなし、全くのインプロヴィゼーションで二人が一章ずつ小説を書き上げます。特に独自窓口は設けません。読者のみなさん、是非リンクから直接募金をよろしくお願いします」とのことです。

★さらに今月22日(水)には、佐々木さんの新刊『アナレクタ(2)この日々を歌い交わす』(本体2,000円、46判216頁、ISBN978-4-309-24553-9)が発売されます。「アナレクタ」シリーズは佐々木さんの論文、エッセイや対談を集成するもので、第1巻『足ふみ留めて』は今年3月に刊行済みです。

★同じく22日に発売になる河出書房新社さんの新刊には以下の注目書があります。河出書房新社編集部編『思想としての3・11』(本体1,600円、A5判200頁、ISBN978-4-309-24554-6)は、吉本隆明、鶴見俊輔、山折哲雄、中井久夫、木田元、加藤典洋、酒井隆史、立岩真也、高祖岩三郎、などの書き手が寄稿しています。テーマは大震災、津波、原発事故です。『哲学入門 ウィトゲンシュタイン』(本体1,600円、A5判192頁、ISBN978-4-309-74039-3)は「道の手帖」シリーズの新刊で、ウィトゲンシュタインの没後60周年を記念するものです。寄稿者は鬼界彰夫、永井均、飯田隆、岡本賢吾、野家啓一、戸田山和久、山田圭一、大屋雄裕、田中久美子、ほか。アドリエンヌ・モニエ『オデオン通り――アドリエンヌ・モニエの書店』(岩崎力訳、本体2,600円、46変型判296頁、ISBN978-4-309-20566-3)は、92年10月に刊行されたものの再刊で、20世紀前半のパリの著名な書店人モニエの回想録です。弊社が今月の同じ頃に発売するエルンスト・ユンガー『パリ日記』でもマダム・グールドの文学サロンでの交流が書かれているので、あわせてお読みいただくと、当時のパリの文壇の空気感が伝わってくるのではないかと思います。

★河出さんの先月の新刊で特記しておきたい本が一点あります。小出裕章さん(京都大学原子炉実験所助教)の『放射能汚染の現実を超えて』(税込1,365円)です。92年に北斗出版から刊行された本の復刊になります。復刊にあたり、新たに「まえがき」が付されています。小出さんは原発のリスクについて長年警告を発してきた方です。皆さん御承知の通り、昨今全国各地での講演でひっぱりだこです。震災関連の本は現在多数刊行されつつありますが、NHK教育テレビで4月に放送された、米国‐中国‐日本を結ぶマイケル・サンデル教授の講義特番が書籍化されましたね。『マイケル・サンデル 大震災特別講義――私たちはどう生きるのか』(NHK「マイケル・サンデル 究極の選択」制作チーム編、NHK出版、2011年5月、本体552円)です。巻末には今年4月22日に行われた「ハーバード・フォー・ジャパン」のシンポジウムでの基調講演と質疑応答が併録されています。サンデル教授については今週8日発売で文庫の新刊もあります。『公共哲学――政治のなかの道徳をめぐる小論集』(ちくま学芸文庫、税込1470円)です。これでサンデル教授の著書は一通り翻訳が出揃うことになりますね。  

★今月発売の文庫で注目の書目も以下に挙げておきます。価格はすべて税込です。

2011年6月
1日発売:ヘルマン・ヘッセ『庭仕事の愉しみ』草思社文庫、997円
1日発売:春日真人『100年の難問はなぜ解けたのか――天才数学者の光と影』新潮文庫、460円
3日発売:本田由紀『軋む社会』河出文庫、798円
8日発売:『岡本太郎の宇宙(5)世界美術への道』ちくま学芸文庫、1,680円
8日発売:『中井久夫コレクション(2)「つながり」の精神病理』ちくま学芸文庫、1,365円
8日発売:『渡辺京二コレクション(1)』ちくま学芸文庫、1,575円
8日発売:『ゲーテ スイス紀行』ちくま学芸文庫、1,575円
8日発売:マイケル・サンデル『公共哲学――政治のなかの道徳をめぐる小論集』ちくま学芸文庫、1,470円
8日発売:渡辺慧『知るということ――認識学序説』ちくま学芸文庫、1,155円
8日発売:清水幾太郎『流言蜚語』ちくま学芸文庫、1,155円
9日発売:中村健之介『ドストエフスキー人物事典』講談社学術文庫、1,680円
14日発売:川村湊訳『梁塵秘抄』光文社古典新訳文庫、820円
16日発売:和辻哲郎『日本倫理思想史(2)』岩波文庫、1,260円
16日発売:ホルヘ・ルイス・ボルヘス『詩という仕事について』岩波文庫、693円  
16日発売:『ウィーナー サイバネティックス――動物と機械における制御と通信』大澤真幸解説、岩波文庫、1,134円
23日発売:陳舜臣『聊斎志異考――中国の妖怪談義』中公文庫、740円
23日発売:五来重『高野聖』角川ソフィア文庫、1,050円
23日発売:『泉鏡花の「婦系図」』山田有策現代語訳、角川ソフィア文庫(ビギナーズ・クラシックス 近代文学編)、900円 
23日発売:宮崎駿+丹羽圭子『脚本 コクリコ坂から』角川文庫、460円
23日発売:高橋千鶴『コクリコ坂から』佐山哲郎原作、宮崎吾朗解説、角川文庫、620円

2011年7月
1日発売:中沢新一『鳥の仏教』新潮文庫、460円  
1日発売:石井光太『絶対貧困――世界リアル貧困学講義』新潮文庫、540円
1日発売:河合隼雄+茂木健一郎『こころと脳の対話』新潮文庫、380円
4日発売:チャールズ・ディケンズ『大いなる遺産(上・下)』河出文庫、各998円
6日発売:ジョルジュ・バタイユ『エロティシズムの歴史――呪われた部分 普遍経済論の試み 第二巻』ちくま学芸文庫、1,365円
6日発売:モーリス・メルロ=ポンティ『知覚の哲学――ラジオ講演1948年』菅野盾樹訳、ちくま学芸文庫、1,575円
6日発売:佐々木力『ガロワ正伝――革命家にして数学者』ちくま学芸文庫、1,260円
6日発売:北田暁大『広告都市・東京――その誕生と死』 ちくま学芸文庫、945円
6日発売:『渡辺京二コレクション(2)』ちくま学芸文庫、1,575円
6日発売:吉田健一『日本に就いて』ちくま学芸文庫、1,155円
8日発売:吉田健一『交遊録』講談社文芸文庫、1,470円
8日発売:『小林秀雄全文芸時評集(上)』講談社文芸文庫、1,680円
8日発売:川村湊編『現代沖縄文学作品選』講談社文芸文庫、1,575円
11日発売:吉田敦彦『オイディプスの謎』講談社学術文庫、未定
11日発売:宮坂宥勝訳注『密教経典 訳注――大日経・理趣経・大日経疏・理趣釈』講談社学術文庫、未定
11日発売:福永光司『荘子 内篇』講談社学術文庫、未定
11日発売:瀧井一博編『伊藤博文演説集』講談社学術文庫、未定
11日発売:吉見俊哉『万博と戦後日本』講談社学術文庫、未定
12日発売:マルサス『人口論』光文社古典新訳文庫、未定
15日発売:川合康三訳註『白楽天詩選(上)』 岩波文庫、987円
15日発売:中村健之助編訳『ニコライの日記――ロシア人宣教師が生きた明治日本(上)』岩波文庫、1,134円
15日発売:J・S・ミル『大学教育について』岩波文庫、567円
25日発売:山折哲雄編『天災と日本人――寺田寅彦随筆選』角川ソフィア文庫、500円

★集英社文庫で6月28日発売予定で、ボルヘス『砂の本』、バルガス=リョサほか『ラテンアメリカ五人集』が再刊されるようです。次に、情報が少ないですが、今月の注目単行本と注目。

9日発売:王前『中国が読んだ現代思想――サルトルからデリダ、シュミット、ロールズまで』講談社選書メチエ、1,680円
9日発売:大澤真幸『近代日本のナショナリズム』講談社選書メチエ、1,575円
20日発売:宮台真司+飯田哲也『原発社会からの離脱――自然エネルギーと共同体自治にむけて』講談社現代新書、税込777円
27日発売:『ジョン・ロック教育論(仮題)』北本正章訳、原書房、税込5,040円
29日発売:宇野常寛+濱野智史『希望論――2010年代の文化と社会』NHKブックス、税込1,050円
中旬発売:ロザリー・L・コリー『パラドクシア・エピデミカ――ルネサンスにおけるパラドックスの伝統』高山宏訳、白水社、税込7,980円
下旬発売:『新訳ベルクソン全集(2)物質と記憶――身体と精神との関係についての試論』竹内信夫訳、白水社、税込3,360円

★最後に最近発売された単行本で目についたものを列記します。同時代社のラブリオーラの訳書は昨年刊行された『思想は空から降ってはこない――新訳・唯物史観概説』(小原耕一+渡部實訳)に続く第2弾。オルデンベルクの名著『仏陀』は大雄閣から1928年に刊行されたものの再刊。この本は1910年に三並良訳で梁江堂書房からも刊行されており(著者名はオルデンブルグと表記)、こちらの版は国書刊行会で1972年に復刻されていました。エリクソンの本は小此木啓吾訳編『自我同一性――アイデンティティとライフ・サイクル』(誠信書房、1973年)以来の新訳。小川さんの本は、40年間の編集者歴(大和書房、JICC出版局、洋泉社、フリー)で手がけた400冊もの本のうち265冊を取り上げ、1点ずつを解説したもの。私家版として昨春出版されたものの再刊で、言視舎さんのウェブサイトに掲載された案内文によれば、今回の市販版では付録として12頁の小冊子「編集者小川哲生」論(寄稿者:渡辺京二、勢古浩爾、田川建三、河谷史夫、清水眞砂子、小浜逸郎、佐藤幹)を付したとのことです。管啓次郎さんの本は、左右社さんから一昨年秋に刊行されたものの再刊。

アントニオ・ラブリオーラ(1843-1904)『社会主義と哲学――ジョルジュ・ソレルへの書簡』小原耕一+渡部實訳、同時代社、3,150円
ヘルマン・オルデンベルク(1984-1920)『仏陀――その生涯、教理、教団』木村泰賢+景山哲雄訳、書肆心水、6,825円
オットー・フリードリヒ・ボルノー(1903-1991)『畏敬』岡本英明訳、玉川大学出版部、5,670円
エリク・H・エリクソン(1902-1994)『アイデンティティとライフサイクル』西平直+中島由恵訳、誠信書房、3,675円
エレーナ・ルジェフスカヤ(1919-)『ヒトラーの最期――ソ連軍女性通訳の回想』松本幸重訳、白水社、4,200円
小川哲生(1946-)『編集者=小川哲生の本――わたしはこんな本を作ってきた』村瀬学編、言視舎、2,100円
管啓次郎(1958-)『本は読めないものだから心配するな〔新装版〕』左右社、1,890円

★このところヒトラー関連の書籍が立てつづけに刊行されています。ジョーゼフ・ボーキン『巨悪の同盟――ヒトラーとドイツ巨大企業の罪と罰』(佐藤正弥訳、原書房、2011年5月)、アントワーヌ・ヴィトキーヌ(1977-)『ヒトラー『わが闘争』がたどった数奇な運命』(永田千奈訳、河出書房新社、2011年5月)、アイバンホー・ブレダウ編『ヒトラー語録』(小松光昭訳、原書房、2011年5月、親本『ヒットラーはこう語った』1976年)が先月刊行され、今月ではアドルフ・ヒトラー『ヒトラーの遺言――1945年2月4日~4月2日』(マルティン・ボルマン記録、原書房、2011年6月)が発売予定。原書房さんの貢献が大きいですね。原書房さんでは3月にクリス・マクナブ『図表と地図で知る ヒトラー政権下のドイツ』という興味深い資料本も出版しておられます。
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by urag | 2011-06-05 20:55 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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