2011年 04月 16日

今晩放映:サンデル「大震災特別講義」@NHK第一放送

★「ハーバード白熱教室」でおなじみのサンデル教授の新たな講義が今晩NHK総合1で放送されます。当初は地球規模の問題群について日米中の学生に同時授業を行うというものだったそうですが、東日本大震災を受けて、震災がもらたす様々な問いをめぐって、上記三カ国の学生に同時授業を行ったとのことです。現在もっとも真摯な探究が求められる課題に即応して講義内容を変えるあたり、さすがサンデル教授ですね。ゆくゆく書籍化してほしいものです。

マイケル・サンデル 究極の選択「大震災特別講義~私たちはどう生きるべきか~」
日時:2011年4月16日(土)21時00分~22時15分

内容:3月11日、信じがたいような大惨事に見舞われ、かつてない試練に直面している日本。マイケル・サンデル教授が、新たな指針を探り、世界の人々とともに日本人を激励する。「危機への日本人の反応をどう思うか?」「日本と他の国での反応の違いに驚いたか?」「君たちの国でも同様の行動ができるだろうか?」…“ハーバード白熱教室”のマイケル・サンデル教授による特別講義が始まる!震災の苦しみのなか、多くの人が途方に暮れながらも手を携え、未来へと踏み出している。大震災の様子は世界各地に報道され、世界の人々は、震災のすさまじさに驚くとともに、過酷な状況でも、冷静に協力し合う日本人の姿に感動し、称賛のエールを送った。その1人が「ハーバード白熱教室」のマイケル・サンデル教授だ。番組では、いま日本がおかれた状況に対し、世界の若者が意見を述べ、「わたしたちは何をすべきか」を考える。

NHK「ハーヴァード白熱教室」関連番組放送予定欄より:「マイケル・サンデル 究極の選択」は、サンデル教授が、アメリカ、中国、日本をつなぎ、各地の学生たちに向かって様々なジレンマ「究極の選択」を投げかけ、グローバルな白熱教室を世界同時授業で行っていく予定でした。しかし、今回の日本の震災と言う事態を受け、サンデル教授は、今、日本が置かれた状況に対してこそ、世界の若者たちが、意見を述べ、「私たちは何をすべきか」を考えるべきだと考えたのです。

出演:マイケル・サンデル(ハーバード大学教授)、高畑淳子(女優)、高田明(ジャパネットたかた社長)、高橋ジョージ(歌手)、石田衣良(作家)。

★NHK出版では先月末にサンデル教授の新刊を刊行しています。第一部がサンデル教授と小林教授の対話で、それ以外は小林教授による解説や問題提起です。対話は昨年8月と11月に東京とケンブリッジ(米国)で4回に分けて行われたものです。サンデル伝でもあり、サンデル哲学入門でもあり、白熱教室の舞台裏と日本での熱狂的受容の分析でもあります。サンデル教授の本はすでに何冊も出ていますが、本書はそれらをふまえた対話篇なだけによりいっそう鳥瞰的で分かりやすくなっています。小林教授による「対話型講義」の解説は、教育現場だけでなく、あらゆる組織の運営にとっても有益な論点を与えるものです。本書を広くお薦めします。

サンデル教授の対話術
マイケル・サンデル+小林正弥:著
NHK出版 2011年3月 本体1,200円 四六判並製232頁 ISBN978-4-14-081467-3

帯文より:「最高の教育とは、自分自身でいかに考えるかを学ぶことである」(38頁)。対話型講義の進め方や良い授業を行うための実践的なテクニック、さらに日本人の印象から政治哲学者になった理由まで、サンデルがすべてを語る!

本文より:第二次世界大戦後、日本は伝統的に、アメリカや他の民主的な資本主義国家に比べて経済的な平等が実現されていました。しかし今では、アメリカや他の民主主義国家と同じように、不平等が進み始め、それが正義の問題を提起しています。〔…〕市場経済は多くの意味で豊かさと繁栄の増大をもたらしてきましたが、その対価として私たちが支払ったのが不平等の増大だからです。つまり、それは、私たちが正義の問題にまさに直接取り組まなければならないことを意味しているのです。(115-116頁)

目次:
はじめに――講義における対話的学芸術〔アート〕への招待
第一部 サンデル教授、大いに語る――対話型講義をめぐって
 I 自分自身のこと
 II 対話型講義とはどのようなものか
 III 講義法について
 IV ハーバード大学の講義とその学生たち
 V 東京大学での特別講義
 VI 日本とコミュニタリアニズム
 VII アメリカと「市場の道徳的限界」
 VIII 今日における正義と哲学
第二部 現代に甦るソクラテス的対話――サンデル教授から学ぶ講義術
 序 素顔の公共哲学者マイケル・サンデル教授
 1 大学に甦る対話篇・ハーバード白熱教室
 2 サンデル教授の講義術
 3 日本における対話型講義の技術〔アート〕
 4 対話型講義による教育改革を
 5 対話型講義の美徳――その実践に関心を持つ人々へ
付録 近現代的正義論から古典的正義論へ――新しい正義論への道
あとがき

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★「サンデル教授の正義論講義を読んだら次はロールズの『正義論』(紀伊國屋書店)」というのが読書の順当な進め方かもしれませんが、私はあえて「サンデルを読んだら次はぜひフレイレを」と申し上げたいと思います。今年一月に、フレイレの主著『被抑圧社の教育学』の新訳が刊行されたからです。パウロ・フレイレ(1921-1997)はブラジルの教育思想家で、その影響力は世界的です。日本でもいくつか訳書があります。サンデルもフレイレもともに「対話」を重んじています。フレイレにとって「対話」は、諸権力によって抑圧された人々が自らを解放するための武器です。「世界と対峙することを怖れないこと、世界で起こっていることに耳を澄ますことを怖れないこと、世界で表面的に生起していることのばけの皮を剥ぐことを怖れないこと。人々と出会うことを怖れないこと。対話することを怖れないこと。対話によって双方がより成長することができること」(16頁)。フレイレの言葉はいつも私に勇気と希望を与えてくれます。

新訳 被抑圧者の教育学
パウロ・フレイレ著 三砂ちづる訳
亜紀書房 2011年1月 本体 2,500円 四六判上製326頁 ISBN978-4-7505-1102-3

帯文より:「被抑圧者の教育学とは、深い意味において、自らの解放のための闘いをめざす人々のための教育学であり、そこに根がある」(42頁)。日本語初版が1979年、以来版を重ねること13版。つねに新しい読者を獲得してきた名著が、いまの時代にふさわしい読みやすさで蘇った!

原書:Pedagogia do Oprimido, 1970.

目次:
序章
第一章「被抑圧者の教育学」を書いた理由
 抑圧する者とされる者との間の矛盾――それを乗り越えるということ
 明らかな抑圧状況と抑圧者について
 明らかな抑圧状況と被抑圧者について
 誰も他人を自由にしない、誰も一人では自由にはなれない
  ――人間は交わりのうちにしか自由になれない、ということについて
第二章 抑圧のツールとしての“銀行型”教育
 問題解決型の概念と自由と解放のための教育
 「銀行型教育」の概念、そして教える者と教えられる者との矛盾について
 人間は世界の媒介者となることによって初めてみずからを教育する
 未確定な存在としての人間、未確定な存在の意識、
  より人間らしくありたいという終わりのない探求への活動について
第三章 対話性について――自由の実践としての教育の本質
 対話的教育と対話
 プログラムの内容の探求から始まる対話について
 生成テーマ、そしてその教育プログラムの内容について
 生成テーマの探索とその方法論
 生成テーマ探索の意識化の重要性とテーマ探索時について
第四章 反‐対話の理論
 反‐対話的な行動の理論とその特徴について
  ――征服、抑圧維持のためのわかち合い、大衆操作と文化的浸潤について
   征服
   抑圧を維持するための分割支配について
   大衆操作
   文化侵略
 対話的行動の理論とその特徴――協働、団結、文化的文脈の組織化
   協働
   解放のための団結
   組織化
   文化統合
訳者あとがき よりよく生きるための言葉を紡いだひと

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◆パウロ・フレイレ(Paulo Freire:1921-1997)既訳書

1979年05冊『被抑圧者の教育学』小沢有作+楠原彰+柿沼秀雄+伊藤周訳、亜紀書房
1982年10月『伝達か対話か』里見実+楠原彰+桧垣良子訳、亜紀書房
1984年01月『自由のための文化行動』柿沼秀雄訳、亜紀書房
2001年11月『希望の教育学』里見実訳、太郎次郎社
2011年01月『新訳 被抑圧者の教育学』三砂ちづる訳、亜紀書房

※このほかに「イリイチvsフレイレ」と銘打たれた『対話――教育を超えて』(野草社、1980年9月)という本があります。これは1974年にジュネーヴで行われたセミナーの記録で、フレイレ、イヴァン・イリイチ、ハインリッヒ・ダウバー、ミヒャエル・フーバーマン、ウィリアム・ケネディの発表のほかに、二篇の討論の記録を併載し、さらに巻末には山本哲士さんの解説も付されています。

★亜紀書房さんでは、昨年末に出版されたレベッカ・ソルニット『災害ユートピア――なぜそのとき特別な共同体が立ち上がるのか』の4刷が先週決まったそうです。この本は私が選書させていただいた、紀伊國屋書店新宿本店での「2010年人文書の収穫」フェアでもよく売れました。この時期に精読しておきたい本です。ナオミ・クライン『ショック・ドクトリン――災厄資本主義〔ディザスター・キャピタリズム〕の台頭』(原著2007年/岩波書店近刊)の早期刊行も待たれるところです。
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by urag | 2011-04-16 12:28 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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