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2011年 03月 01日

パネルディスカッション『書籍出版の未来』@関東学院大学

事後報告で恐縮ですが昨日、関東学院大学のパネルディスカッションに登壇いたしました。学内向けのクローズドの会合であると受け止めていましたが、学外からも参加自由だったようです。皆さんにご案内できていたらよかったなあ……。

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関東学院大学文学部人文科学研究所主催・パネルディスカッション
テーマ:『書籍出版の未来』

日時:2011年2月28日(月) 16:30
場所:関東学院大学 金沢文庫キャンパス K-211教室
講師:小林浩氏(月曜社)、堀口祐介氏(日本経済新聞社シニアエディター)
コメンテーター:新井克弥(関東学院大学文学部教授)
司会:吉瀬雄一(関東学院大学文学部教授)

一般の方の参加可・無料
(問合せ先:人文科学研究所・文学部庶務課 045-786-7179)

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2/28(月)人文科学研究所主催・パネルディスカッション『書籍出版の未来』 開催のお知らせ
投稿日時: 2011-2-22 17:13:32

人文研究所主催
パネル・ディスカッションのご案内

人文科学研究所ではこの2月28日(月)(16:30~)に「書籍出版の未来」と題しましてパネル・ディスカッションを開催いたします。昨年の5月のi-Pad日本発売開始をひとつの頂点に電子書籍の端末も各社出揃い、市場での電子書籍流通も今後さらに加速化の度合いを進めていくことが予想されます。講談社によって、村上龍の『くじらの歌』上下巻が紙版に先立って電子出版された事例は、この流れの中のひとつの分岐点として後世に記憶されるかもしれません。また、個人による紙書籍の電子化も普及し、装丁をばらすことへの抵抗は今や空間と時間を超越した利便性の前に膝を屈し、「蔵書」とその利用を取り巻く環境も革命的な変化の兆しを見せています。書籍の脱物神化は、ここに極まった観があります。そのような状況中で、「知」の受容と供給の枠組み、いやそれどころか、そもそも思考の在り様はどのような変化にさらされて行くのでしょうか。わたしたちも「知」の実践と伝承の一方の当事者として、状況の推移を傍観して済ませるわけには行きません。そこで、年度末と年度始めの端境期という「象徴的空所」に、渦中にあるもう一方の当事者の方々をお呼びして、この問題に取り組むための必須の情報と思索の機会を提供して戴くことに致しました。お呼びするのは、以下の方々です。

■小林浩氏:月曜社取締役。1968年生まれ。92年早稲田大学第一文学部卒。未来社営業部、哲学書房編集部、作品社営業部を経て、2000年12月7日、有限会社月曜社の創業に参画。営業と編集の両面から人文書の普及に取り組む。

■堀口祐介氏:日本経済新聞出版社シニアエディター。1965年生まれ。88年東京都立大学経済学部卒、同年日本経済新聞社に入社、出版局に配属。現在、日本経済新聞出版社シニアエディターとして書籍編集に携わる。主な担当書籍として『現代の金融政策』『ゼミナール経営学入門』『日経文庫・キャッシュフロー経済学入門』『スウェーデン・パラドックス』などがある。

みなさまの活発なご参加を期待しております。

人文科学研究所
所長 佐藤茂樹

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★私(小林)は以下のテーマで発表しました。

テーマ「学術書少部数出版の未来」

電子化の波に対応する準備を整えつつ、当面は紙の本をつくりつづけるだろう人文系零細出版社の実情と展望についてお話しします。出版社との付き合い方の参考になれば幸いです。

ひとくちに「未来」と言いましても、多様な可能性に開かれております。また、現状からまったく断絶したかたちで未来があるわけではありません。そこでまずはここ10年の人文系小規模出版社の動向と現実について、私自身が体験した「月曜社の10年」としてお話しいたします。

■ゼロ年代の出版界
◎ゼロ年代の人文系小規模出版社
◎ゼロ年代の大学出版
◎インターネット時代の出版社
◎業界再編時代の書籍販売

出版社というのは実に多様で、出版物の内容傾向によって会社の様相も相当異なるため、十把一絡げにできません。私が、出版界の代表として何か言うというのはそもそも不可能ですが、零細自営業者の偶感として「これからの10年」への移行について、続けてお話しします。

■10年代の出版界
◎電子書籍元年(2010年)以降の「著者」と「出版社」の関係性
・分岐点は「モノを売りたい」のか、「知識を伝達・共有したい」のか
・「モノを売る」産業としての出版社が「コンテンツを売る」業態に転換できるか
◎「これから」のための原点確認

★私の話は零細企業のゴチャゴチャととっちらかった内容でしたけれど、日本経済新聞出版社の堀口さんのお話は論旨が非常に明晰かつ端的で現状分析も鋭く、説得力に満ちていました。もっとお話が聞きたかったです。当日はみぞれまじりの冷たい雨が降りしきっていましたが、教育現場に携わる先生方と様々な熱い意見交換ができたのはたいへん嬉しく、非常に勉強になりました。私は出版を「学校の外で行う教育」と考えています。読むことのプロ(大学)と、編むことのプロ(出版社)が手を携えて、「読むこと・編むこと・創造すること」についての啓蒙活動を大学の内外でソーシャル・ビジネスとして展開することができたら、それは「文系の産学協同」になるのではないか、という予感を持ちました。産学協同はたいていは理系の世界の話で、将来的な実業的利益をもたらすものとして構想されていると思います。しかし実業的利益の尺度では測りきれない文化的貢献の価値というのも一方ではあり、それらはこんにち政治的には等閑視されているがゆえに、よりいっそう重要な、無形の知的財産として再発見されなければなりません。大学の伝統的な「精読の文化」と、出版社の「編集技術」を結合させ、「書物のメタモルフォーゼ」(新井克弥先生)としての新しい知的空間を創出できたら――と想像しました。

★ところでかつて当ブログでも「ゼロ年代の人文系小規模出版社」については公開したことがありますが、今回は全面的に調査し直し、改訂増補しました。今回のレジュメについてはいずれ公開できる機会があればアップします。昨日のパネルディスカッションのテーマ「書籍出版の未来」を考える上でもっとも手軽にたくさんの業界人の意見を読める文献として、岩波新書の『本は、これから』を、当日ご参集いただいた先生方、学生の皆さんに、お薦めしました。もう一度ここに書誌情報をアップしておきます。

本は、これから
池澤夏樹編
岩波新書 2010年11月 本体820円 新書判並製244頁 ISBN978-4-00-431280-2

カバーソデ案内文より:グーテンベルグ革命から5世紀。電子の端末が膨大なコンテンツから美しい「ページ」を開くこの時代、あなたにとって「本」とはいったい何か。それはいかに変貌するのか。書店・古書店・図書館・取次・装丁・編集、そして練達の書き手・読み手の位置から、鋭いアンテナの持ち主が応える――本の過去と未来を俯瞰する37のエッセイ。

★当たり前かもしれませんが立ち位置によって意見が異なり、まとまらない業界の「現在」を象徴するかのようです。共感できる意見もあれば、疑問に思うものもありました。目次はこちらで見ることができますが、寄稿者のプロフィールが明記されていないので、ここで全員の略歴をピックアップしておきます。

『本は、これから』寄稿者一覧:
池澤夏樹(いけざわ・なつき:1945-)作家
吉野朔実(よしの・さくみ:1959-)漫画家
池内了(いけうち・さとる:1944-)総合研究大学院大学教授。宇宙物理学、科学・技術・社会論。
池上彰(いけがみ・あきら:1950-)ジャーナリスト
石川直樹(いしかわ・なおき:1977-)写真家。多摩美術大学芸術人類学研究所特別研究員。
今福龍太(いまふく・りゅうた:1955-)文化人類学者・批評家
岩楯幸雄(いわだて・ゆきお:1949-)幸福書房社長
上野千鶴子(うえの・ちづこ:1948-)社会学者
内田樹(うちだ・たつる:1950-)神戸女学院大学文学部教授。フランス現代思想。
岡﨑乾二郎(おかざき・けんじろう:1955-)造形作家、近畿大学国際人文科学研究所教授。
長田弘(おさだ・ひろし:1939-)詩人
桂川潤(かつらがわ・じゅん:1958-)装丁家
菊地成孔(きくち・なるよし:1963-)音楽家
紀田順一郎(きだ・じゅんいちろう:1935-)評論家・作家
五味太郎(ごみ・だろう:1945-)絵本作家
最相葉月(さいしょう・はづき:1963-)ノンフィクションライター
四釜裕子(しかま・ひろこ)編集者、製本講師
柴野京子(しばの・きょうこ:1962-)相模女子大学非常勤講師。元出版取次会社勤務。
鈴木敏夫(すずき・としお:1948-)スタジオジブリ代表取締役プロデューサー
外岡秀俊(そとおか・ひでとし:1953-)ジャーナリスト
田口久美子(たぐち・くみこ)書店勤務
土屋俊(つちや・しゅん:1952-)千葉大学文学部教授。哲学。
出久根達郎(でくね・たつろう:1944-)作家・古書店主
常世田良(とこよだ・りょう:1950-)日本図書館協会理事
永井伸和(ながい・のぶかず:1942-)今井書店グループ代表取締役会長
長尾真(ながお・まこと:1936-)国立国会図書館館長。情報科学。
中野三敏(なかの・みつとし:1935-)九州大学名誉教授。近世文学。
成毛眞(なるけ・まこと)株式会社インスパイア取締役
南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ:1967-)ライター、編集者。
西垣通(にしがき・とおる:1948-)東京大学情報学環教授。情報学、メディア論。
萩野正昭(はぎの・まさあき:1946-)株式会社ボイジャー代表取締役
長谷川一(はせがわ・はじめ:1968-)明治学院大学文学部芸術学科准教授。メディア論。
幅允孝(はば・よしたか)BACH代表。ブックディレクター。
原研哉(はら・けんや:1958-)グラフィック・デザイナー。日本デザインセンター代表、武蔵野美術大学教授。
福原義春(ふくしま・よしはる:1931-)資生堂名誉会長、文字・活字文化推進機構会長。
松岡正剛(まつおか・せいごう:1944-)編集工学研究所所長
宮下志朗(みやした・しろう:1947-)放送大学教授。フランス文学。

★さらにつっこんだ実際のデータやレポートにもとづいた、出版社の具体的研究を読んでみたい方は、先月発売された以下の本をご覧ください。詳細目次と「まえがき」はリンク先をご覧ください。

本を生みだす力――学術出版の組織アイデンティティ
佐藤郁哉+芳賀学+山田真茂留著
新曜社 2011年2月 本体4,800円 A5判上製568頁 ISBN978-4-7885-1221-4

帯文より:知の門衛〔ゲートキーパー〕たちが直面している「危機」とは? 学術的知をめぐる物語を生みだし、またそれを育てていく苗床としての“本”は、どのようにしてつくられ、世に送り出されていくのか? 出版社4社を対象とする丹念なケーススタディを通して、学術書の刊行に関わる組織的決定の背景と編集プロセスの諸相を浮きぼりにしていく。

目次:
まえがき
序章 学術コミュニケーションの危機
第I部 キーコンセプト――ゲートキーパー・複合ポートフォリオ戦略・組織アイデンティティ
 第1章 知のゲートキーパーとしての出版社
第II部 事例研究〔ケーススタディ〕――三つのキーコンセプトを通して見る四社の事例
 第2章 ハーベスト社――新たなるポートフォリオ戦略へ
 第3章 新曜社――「一編集者一事業部」
 第4章 有斐閣――組織アイデンティティの変容過程
 第5章 東京大学出版会――自分探しの旅から「第三タイプの大学出版部」へ
第III部 概念構築――四社の事例を通して見る三つのキーコンセプト
 第6章 ゲートキーパーとしての編集者
 第7章 複合ポートフォリオ戦略の創発性
 第8章 組織アイデンティティのダイナミクス
第IV部 制度分析――文化生産のエコロジーとその変貌
 第9章 ファスト新書の時代――学術出版をめぐる文化生産のエコロジー
 第10章 学術界の集合的アイデンティティと複合ポートフォリオ戦略
あとがき
付録1 事例研究の方法
付録2 全米大学出版部協会(AAUP)加盟出版部のプロフィール

文献
事項索引
人名索引

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by urag | 2011-03-01 23:48 | イベント告知 | Trackback | Comments(0)
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