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2010年 12月 20日

河出書房新社さんの注目新刊

先日近刊としてご紹介した河出書房新社さんの本が続々と出来上がりつつあります。

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写真はまもなく発売となるマーシャル・マクルーハン+クエンティン・フィオーレ『メディアはマッサージである〔新装版〕』(南博訳、河出書房新社、10年12月)です。右が95年刊の初版、そして左が今週発売予定の新装版。新装版の装丁は弊社発売『表象』でもお馴染みの加藤賢策さん(東京ピストル)です。装丁が違うだけでかなり印象が違いますね。中身の組版まで新しく見えてくるほどで、見事なイメージチェンジです。実際は中の組は変わってはいませんが、新たに巻末に門林岳史さんによる解説が加わっています。皆様ご承知の通り、門林さんは『ホワッチャドゥーイン、マーシャル・マクルーハン――感性論的メディア論』(NTT出版、09年9月)の著者です。来年2011年はマクルーハン生誕百周年で、河出さんでは「道の手帖」シリーズでマクルーハン特集号を近く刊行される予定だと伺っています。

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『メディアはマッサージである〔新装版〕』を手がけた編集者Yさんは、同じく今週発売のスーザン・ソンタグ『私は生まれなおしている――日記とノート 1947-1963』(デイヴィッド・リーフ編、木幡和枝訳、河出書房新社、10年12月)も担当されています。こちらはソンタグの14歳から30歳までの日記とノート。赤裸々な日常と本音の数々……。幾度か登場する「ジェイコブ」というのは、編者の注記を見ますと、あの『パウロの政治神学』のヤーコプ・タウベスのことらしいです。タウベスとマルクーゼの電話での会話とか、ショーレムへのタウベスの評価とか。59年暮れから60年年明けにかけてのことです。その少し前には「目を通しておくこと」という注記とともに、当時の新刊が幾つか挙げられています。ジョン・バース『旅路の果て』(白水uブックス、84年)とか、ハロルド・ローゼンバーグ『新しいものの伝統』(紀伊國屋書店、1965年)とか。ソンタグのこの日記は非常に興味深い史的資料でもあると思います。「訳者あとがき」によれば、日記はあと二巻刊行される予定のようです。

ソンタグと同じく、20世紀アメリカに生きたユダヤ系知識人のエーリッヒ・フロムのロングセラーも先週刊行されました。『自由であるということ――旧約聖書を読む』です。先日書いた通り、68年の初訳では書名は『ヒューマニズムの再発見――神・人間・歴史』で、80年の再刊では『ユダヤ教の人間観――旧約聖書を読む』と改題されています。今回で二度目の改題ですが、フロムの訳書では「~ということ」という書名が多いですから、今回の方がなんだかしっくりしますね。本書の復刊を手掛けられた編集者のFさんは先月の河出文庫の新刊、西研『集中講義 これが哲学!――今を生き抜く思考のレッスン』も担当されています。この本は『大人のための哲学授業』(大和書房、02年9月)の改訂版です。11回にわたる講義形式になっており、それぞれの回にブックガイドが付されています。

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同じく哲学の入門書として、今月河出さんでは、ドゥルーズの弟子ジャン=クレ・マルタンの『百人の哲学者 百の哲学』を先週刊行されています。古代から現代までの西洋哲学における巨匠たちの思想が解説されていて、ちょっとした「読む事典」になっています。百人も登場するので、中には日本では未訳の思想家もしばしば登場しますが、いずれも原典を読んでみたくなる魅力的な解説になっています。百人の名前を全員列記したいのですが、骨が折れそうなので断念。

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マルタンの本を手掛けられた編集者Aさんは、河出ブックスの今月の新刊、檜垣立哉『フーコー講義』も担当されています。フーコーの著書や講義録を読み解く形式になっていて、本書が第一作となる河出ブックスのシリーズ内シリーズ「現代思想の現在」は今後も色々な思想家を扱っていくようです※。檜垣さんは先週、岩波書店から『瞬間と永遠――ジル・ドゥルーズの時間論』も上梓されました。月刊誌『思想』に連載されたものが内容のメインです。本書は『差異と反復』に発する「第三の時間」を議論の軸として、ドゥルーズの全著作を時間論として読む試みがなされています。「第三の時間」とは「経験不可能な超越論的時間であり、同時に実在する自然の時間」(「序論」21頁)であり、「未来に向かう時間」(「第一章」29頁)だとされています。「永劫回帰」や「永遠の今」といった概念とも関係がありますが、簡単ではないので、どうぞ檜垣さんの本を買って熟読なさって下さい。なお、檜垣さんはここしばらく月刊誌『現代思想』でも連載「ヴィータ・テクニカ」を執筆されており、どんどん研究を進めておられます。

※河出ブックス編集長のFさんによれば、「現代思想の現在」では今後、ドゥルーズ、レヴィ=ストロース、サイード、ラカンといった思想家を扱うとのことです。また、同ブックスではもうひとつシリーズ内シリーズがあります。「人と思考の軌跡」がそれで、丸川哲史『竹内好――アジアとの出会い』(10年1月)、細見和之『永山則夫――ある表現者の使命』(10年4月)が既刊です。以後、『内村鑑三』『大川周明』といった巻が予定されているそうです。楽しみですね!

年明けの河出書房新社さんの注目近刊では、たとえば来月の河出文庫の新刊、山口裕之編訳『ベンヤミン・アンソロジー』があります。ちょうど今月のちくま学芸文庫の新刊で『ベンヤミン・コレクション(5)思考のスペクトル』が刊行されましたが、どんどん新訳が出てきますね。
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by urag | 2010-12-20 03:15 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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