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2010年 11月 21日

平凡社2010年11月新刊より

まもなく発売となる平凡社さんの新刊3点『絵画をいかに味わうか』『訓民正音』『[新版]アフリカを知る事典』と、先月発売の既刊1点『盤上遊戯の世界史』をご紹介します。

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絵画をいかに味わうか 
ヴィクトル・I・ストイキツァ(Victor I. Stoichita, 1949-)著 岡田温司監訳 喜多村明里+大橋完太郎+松原知生訳
平凡社 2010年11月 本体2,800円 四六判上製342頁 ISBN978-4-582-20637-1

◆帯文より:「絵を見ればよいのだ!」 好奇心と感性を刺激する豊かな絵解きのレッスン。「知的自伝」収録の日本オリジナル版。

◆「序にかえて」より:本書は、忘れることのできない日本滞在中に京都と福岡と東京でおこなわれた講演を元にして構成されています。それらが出版されることで、わたしが個人的に大きな恩恵をこうむってきた対話がひとつの実を結ぶことになるでしょう。それもひとえに、わたしの講演に心から耳を傾けてくださったみなさんのおかげなのです。ここに集められているのは、さまざまなテーマに関するものですが、それもただひとつの前提から出発しています。それは、「美術史」と呼ばれる学問のアクチュアルな本質としての、解釈への挑戦にかかわるものです。(6頁)

◆「訳者あとがき」より:この本は日本語のみでしか存在しない。ここに訳出された各章は、科学研究費(基盤研究B、代表者岡田温司)による二度の招聘(2005年12月、2009年2月)の折に、京都、東京、福岡でおこなわれた講演、さらには大学院のわたし〔岡田温司〕のゼミでの発表の原稿が元になっている。(中略)編集の松井純さんとわたしのたっての願いを〔著者は〕快く引き受けてくれて、「紆余曲折――知的自伝の試み」という感動的な文章によって本書に見事な花を添えてくれた。(337-338頁)

◆目次:
序にかえて
1 紆余曲折――知的自伝の試み
2 偶像とその破壊――旧東欧諸国における政治的図像と「像にたいする懲罰〔エクセクティオ・エフィギエ〕」をめぐる考察
3 絵画をいかに味わうか
4 過剰なるものの表象――十六世紀絵画における炎上する都市をめぐって
5 スイスの「白痴」――ドストエフスキーによるエクフラシス
6 カラヴァッジョの天使たち――ヴィム・ヴェンダースに捧ぐ
7 美術館と廃墟/廃墟としての美術館
8 蒸発そして/あるいは集中――マネとドガの肖像(自画像)をめぐって

訳者あとがき

◎ヴィクトル・I・ストイキツァ(Victor I. Stoichita, 1949-)既訳書
2001年07月『絵画の自意識――初期近代におけるタブローの誕生』岡田温司+松原知生訳 ありな書房
2006年06月『ピュグマリオン効果――シミュラークルの歴史人類学』松原知生訳 ありな書房
2003年02月『ゴヤ――最後のカーニヴァル』アンナ・マリア・コデルク共著 森雅彦+松井美智子訳 白水社
2008年08月『影の歴史』岡田温司+西田兼訳 平凡社
2009年02月『幻視絵画の詩学――スペイン黄金時代の絵画表象と幻視体験』松井美智子訳 三元社
2010年11月『絵画をいかに味わうか』岡田温司監訳 平凡社

★ストイキツァ(もしくは、ストイキッツァ)の単独著の翻訳としては5弾目になりますが、著者による上記の「序にかえて」や監訳者による「訳者あとがき」に書かれているように、本書は来日時の講演と発表、そして書き下ろしの自伝から成るオリジナル論集です。特に興味深いのは巻頭におかれた自伝です。この自伝において大きな敬意とともに言及されている人物のうち、チェーザレ・ブランディ(Cesare Brandi, 1906-1988)とコンスタンティン・ノイカ(Constantin Noica, 1909-1987)の二人はストイキツァにとって特別な存在のようです。前者はイタリアの美術史家で、邦訳された著書に『修復の理論』(三元社、2005年)があります。ストイキツァに大きな影響を及ぼした指導教官です。後者はルーマニアの哲学者で、ストイキツァは彼のもとで5年間にわたって哲学の古典をみっちり学んだと明かしています。この自伝的エッセイを読めば、著者の存在がより親しみやすく感じるのではないかと思います。


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訓民正音(東洋文庫 800)
趙義成(チョ・ウイソン:1964-)訳注
平凡社 2010年11月 本体2,800円 全書判上製292頁 ISBN978-4-582-80800-1

◆帯文より:朝鮮王朝第四代国王世宗〔セジョン〕が1446年にハングル創製を宣布した「訓民正音」とその「解例」、さたに「反対上疏文」、「東国正韻序」を加え、ハングル創製の原理・思想・背景の全てを明らかにする。

★本巻が東洋文庫の通算800巻目になるとのことで、「アジアの古典名著の一大集成」である同シリーズの道のりの遙かさに頭が下がる思いです。創刊は1963年10月。第1巻『楼蘭――流砂に埋もれた王都』(A・ヘルマン著、松田寿男訳)、第2巻『唐代伝奇集(1)』(前野直彬編訳)、第3巻『鸚鵡七十話――インド風流譚』(田中於莵弥訳)、第4巻『日本史――キリシタン伝来のころ(1)』(ルイス・フロイス著、柳谷武夫訳)、第5巻『アラビアのロレンス』(R・グレーヴズ著、小野忍訳)が刊行されました。以来半世紀近く、様々な本を世に送り出してこられました。もっとも巻数が多いのは松浦静山『甲子夜話』(かっしやわ:正篇全6巻、続篇全8巻、三篇全6巻)や、寺島良安『和漢三才図会』(全18巻)でしょうか。もっとも頁数が多いのは、526頁の『近世畸人伝・続近世畸人伝』かと思います。700巻までの総目録『東洋文庫ガイドブック』が2002年4月刊、750巻までの総目録『東洋文庫ガイドブック2』が2006年5月刊ですから、800巻に到達した今、そろそろガイドブック第3弾を待ってもいい頃合いかもしれませんね。

★先だって当ブログでもご紹介しましたが、現在、東京駅前の八重洲BC本店人文書フロアでは、800巻突破記念で、過去最大規模の東洋文庫「在庫僅少本」フェアが行われています。平凡社ライブラリーの僅少本も並んでいますよ。12月7日まで。


[新版]アフリカを知る事典 
小田英郎+川田順造+伊谷純一郎+田中二郎+米山俊直監修
平凡社 2010年11月 本体7,600円 A5判上製776頁 ISBN978-4-582-12640-2

◆帯文より:激動する大陸の幽遠な歴史と多彩な文化。54の国家・地域の自然、民族、歴史と現状、日本との関係などを詳述。アフリカ全体を概観する〈総論〉、ホットなテーマの〈コラム〉群、〈各国便覧〉〈年表〉〈文献案内〉〈在日外国公館/在外日本公館〉〈関連サイト案内〉〈世界遺産〉〈索引〉付き。項目数634項、図版140点、執筆者156名。

◎平凡社「エリア事典」シリーズ既刊書:
『[新訂増補]ラテン・アメリカを知る事典』1999年12月
『[新訂増補]アメリカを知る事典』2000年1月
『[新訂増補]朝鮮を知る事典』2000年11月
『[新訂増補]東欧を知る事典』2001年3月
『[新訂増補]スペイン・ポルトガルを知る事典』2001年10月
『新イスラム事典』2002年3月
『[新版]ロシアを知る事典』2004年1月
『中央ユーラシアを知る事典』2005年4月
『[新訂増補]南アジアを知る事典』2008年6月
『[新版]東南アジアを知る事典』2008年6月
『[新版]オセアニアを知る事典』2010年5月

※さらに関連する事典に以下があります。
『[新訂増補]世界民族問題事典』2002年11月
『[新版]対日関係を知る事典』2007年11月

※改版の進み方はおおよそ、初版→新訂増補→新版、です。『新イスラム事典』(2002年)の場合、旧版は『イスラム事典』(1982年)です。

★『世界大百科事典』や『西洋思想大事典』などと並んで、「エリア事典」シリーズは平凡社の定評あるお家芸です。昨今のご時世では調べたい事柄があるとき、インターネットで検索して記事を読んだりコピペしたりプリントアウトすれば大方の用事が済んでしまいますが、紙媒体の事典を手に頁をめくって探し、必要な箇所はノートに抜き書きする、という肉体的作業の方が人間の頭脳の鍛錬にとってはよろしいものではないかと私は経験的に思うのですね。


盤上遊戯の世界史――シルクロード 遊びの伝播
増川宏一(ますかわ・こういち:1930-)著
平凡社 2010年10月 本体2,800円 四六判上製324頁 ISBN978-4-582-46813-7

◆帯文より:囲碁、将棋、チェス、麻雀……。遊びの来歴をたどる旅。陸と海のシルクロードを伝って、盤上遊戯は人から人へと渡っていった。やがて奈良にいたる伝播の経路を検証し、人類の「遊び心」の壮大な歴史を描く。

◆目次:
はじめに
第一章 オアシスの路
 一 盤上遊戯の曙――レバント地方
 二 古代の盤上遊戯――肥沃な三日月地帯
 三 五八孔の遊戯盤など――アッシリアの路
 四 イランからの遊戯盤――ペルシアの交通路
 五 ナルド――ローマから東方へ
 六 チェス――中央アジアでの発見
 七 チャトランガ――北インドから東西へ
第二章 草原の路
 一 アストラガルス――自然物の利用
 二 長方体や立方体――人工のさいころ
 三 ポロ――馬上の路
 四 配列ゲームと戦争ゲーム――古代エジプトからの発信①
 五 マンカラ――古代エジプトからの発信②
 六 カード・ゲーム――紙の路
第三章 海のシルクロード
 一 古代の遊戯盤(一)――海上の道
 二 古代の遊戯盤(二)――地中海
 三 競争ゲームとマンカラなど――紅海とアラビア海
 四 戦争ゲームなど――ベンガル湾
 五 狩猟ゲームなど――南シナ海とジャワ海
 六 配列ゲームなど――陸路と海路の繋がり
 七 トランプなど――「大航海時代」
第四章 日本への伝来
 一 中国の盤上遊戯――絲綢の路
 二 日本への路――東シナ海
 三 渡来の遊戯具――正倉院
 四 将棋など――遊戯の定着
 五 トランプなど――新たな伝来
 六 象棋など――未定着の遊び
 七 麻雀など――近世から近現代へ
おわりに――新たな問題提起
あとがき
参考文献
索引

★個人的に日本の「盤双六」が好きなものですから、こういう本にはまるでタイムマシンに乗ってめくるめき世界旅行に出かけるような楽しみを感じます。「遊び」の世界は実に奥深い。増川先生は法政大学出版局の「ものと人間の文化史」シリーズで数多くの遊戯史研究を上梓されています。ホイジンガ『ホモ・ルーデンス』(中公文庫)、カイヨワ『遊びと人間』(講談社学術文庫)、フィンク『遊び―世界の象徴として』(せりか書房)などと一緒に味わいたいものです。
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by urag | 2010-11-21 00:28 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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