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2010年 10月 16日

人文書院の新シリーズ「ブックガイドシリーズ 基本の30冊」

人文書院から、来週発売で新シリーズ「ブックガイドシリーズ 基本の30冊」が刊行開始されます。初回は丸川哲史『東アジア論』、小泉義之『倫理学』、中山康雄『科学哲学』の3点同時発売です。取次搬入が18日(月)とのことですので、都心の大型書店では早ければ19日(火)から店頭発売開始になると思われます。以後、順次刊行(不定期)とのこと。テーマに即した名著30冊を解説する、というシリーズで、著者良し、テーマ良し、内容良しの三拍子そろった素晴らしい企画です。帯文は共通で以下の通り。「ブックガイドシリーズ創刊! “いま”を考えるための新たな知の指針。各分野ごとに重要書30冊をセレクトし、なぜいま重要かをアクチュアルな視点から解説。著者の個性が光る、新しい知のガイド」。

編集担当者Mさんによる、業界向け挨拶文によれば、「各学問分野、ジャンルごとに30冊の基本書・重要書をセレクトし、それぞれを約4000字で解説・紹介するブックガイドのシリーズです。セレクトと執筆は、ベテランから若手まで、それぞれの分野の最前線を走る研究者の先生にお願いしました。ありふれた平凡なセレクトと解説ではなく、なぜいま重要かというアクチュアルな視点を活かした、著者の個性が光る、新しい知のガイドです」とのこと。

人文系のブックガイドというのはいままで青土社『現代思想』臨時増刊号や、新書館の「ハンドブック」シリーズ、また各社の単行本としても様々に刊行されてきましたが、一冊ずつにひとつのテーマで基本書数十点に絞って簡潔に解説することに徹したシリーズというのは、ありそうでなかったものです。テーマごとに書き下ろされた入門解説シリーズ(たとえば岩波書店の「思考のフロンティア」)はありましたが、ブックガイドに徹したものではありません。また、「~の名著**冊」といった体裁の新書がそれなりの数ありますが、シリーズを謳っているわけではありません。

人文書院の「ブックガイドシリーズ 基本の30冊」は、「読んでおきたい名著だけれど、実際はなかなか読む機会がない」本の核心的内容をわずか4000字前後(6頁)でざっくりと把握できるもので、初めて学ぶ学生さんにだけでなく、読書時間に恵まれない社会人にとって短時間で読み切りやすい、非常に便利なシリーズです。30冊すべてに個別に著者の略歴や参考文献が付いているのも親切です。書店員さんにとっては、このシリーズを参考にそれぞれの分野の基本書の棚やフェアを作りたい場合に参考になると思います。長く残っていって欲しいですね。


★「ブックガイドシリーズ 基本の30冊」ラインナップ

東アジア論 丸川哲史(2010年10月刊行)
倫理学 小泉義之(2010年10月刊行)
科学哲学 中山康雄(2010年10月刊行)
グローバル政治理論 土佐弘之編
日本思想史 子安宣邦、宮川康子、田中聡、樋口浩造
マンガ・スタディーズ 吉村和真、ジャクリーヌ・ベルント編
人文地理学 加藤政洋
沖縄論 仲里効、豊見山和美
メディア論 難波功士
政治哲学 伊藤恭彦
文化人類学 松村圭一郎
環境と社会 西城戸誠、舩戸修一編
精神分析学 立木康介
臨床心理学 大山泰宏
経済学 西部忠編
(以下続刊)

+++

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以下に第1回配本の3点の書誌情報と目次を列記しますが、せっかくなので、30冊の版元名も足しておきます。商品個別紹介ページがある場合はリンクを張り、副題があるものには足し、未訳や品切の場合は特記します。……などと勢いづいて書きましたが、予想以上に調査と確認に時間がかかったため、今回は『東アジア論』のみで挫折。


東アジア論
丸川哲史(1963-)著
人文書院 2010年10月 本体1,800円 46判並製220頁 ISBN978-4-409-00101-1

目次:
まえがき
第1部 中国モダニティの問題
 野村浩一『近代中国の政治文化――民権・立憲・皇権』岩波書店、2007年
 汪暉『思想空間としての現代中国』岩波書店、2006年
 木山英雄『周作人「対日協力」の顛末――補注『北京苦住庵記』ならびに後日編』岩波書店、2004年、品切
 孫歌『アジアを語ることのジレンマ――知の共同空間を求めて』岩波書店、2002年、品切
 溥儀『わが半生――「満州国」皇帝の自伝』巻、ちくま文庫、1992年
 毛沢東『毛沢東選集』全5巻、外文出版社(北京)発行、東方出版発売、1968年、品切
 竹内好『魯迅』未来社、1961年講談社文芸文庫、1994年
第2部 東アジアにおける植民地問題
 松永正義『台湾を考えるむずかしさ』研文出版、2008年
 若林正丈『台湾抗日運動史研究 増補版』研文出版、2001年
 杉原達『越境する民――近代大阪の朝鮮人史研究』新幹社、1998年、品切
 駒込武『植民地帝国日本の文化統合』岩波書店、1996年、品切・重版出来2010年11月
 マーク・ピーティー『植民地――帝国50年の光芒』読売新聞社、1996年、品切
 ニム・ウェールズ、キム・サン『アリランの歌――ある朝鮮人革命家の生涯』岩波文庫、1987年
 森崎和江『慶州は母の呼び声――わが原郷』ちくま文庫、1991年、品切
 呉濁流『アジアの孤児』新人物往来社、1973年、品切
第3部 東アジア冷戦/ポスト植民地問題
 藍博洲『幌馬車の歌』草風館、2006年
 黄皙暎『客人〔ソンニム〕』岩波書店、2004年、品切
 韓洪九『韓洪九の韓国現代史(I)韓国とはどういう国か/(II)負の歴史から何を学ぶのか』平凡社、2003年、品切/2005年
 金時鐘『「在日」のはざまで』平凡社ライブラリー、2001年
 黄春明『さよなら・再見』めこん、1979年、品切
 金石範『ことばの呪縛――「在日朝鮮人文学」と日本語』筑摩書房、1972年、品切
 金芝河『長い暗闇の彼方に』中央公論社、1971年、品切
 安部公房『けものたちは故郷をめざす』新潮文庫、1970年、品切
第4部 アジア主義の問題
 尾崎秀実『尾崎秀実時評集――日中戦争期の東アジア』東洋文庫(平凡社)、2004年
 林房雄『大東亜戦争肯定論』夏目書房、2001年、品切
 夢野久作『夢野久作著作集(5)近世快人伝』葦書房、1995年
 山室信一『キメラ――満州国の肖像〔増補版〕』中公新書、2004年
 尾崎秀樹『近代文学の傷痕』同時代ライブラリー(岩波書店)、1991年、品切
 渡辺京二『北一輝』ちくま学芸文庫、2007年
 竹内好編『現代日本思想体系(9)アジア主義』筑摩書房、1963年、品切


倫理学
小泉義之(1954-)著
人文書院 2010年10月 本体1,800円 46判並製200頁 ISBN978-4-409-00102-8

目次:
まえがき
第1部 生と死
 セネカ『倫理書簡集』
 ギュイヨー『義務も制裁もなき道徳』
 デレク・パーフィット『理由と人格』
第2部 徳と力
 キケロー『善と悪の究極について』
 ミシェル・ド・モンテーニュ『随想録(エセー)』
 ジャン=ジャック・ルソー『人間不平等起原論』
 ミシェル・フーコー『思考集成Ⅹ 1984-88 倫理/道徳/啓蒙』
第3部 快楽と欲望
 ジェレミー・ベンサム「自己にそむく違反、男色』
 ジャック・ラカン『精神分析の倫理』
 ジル・ドゥルーズ、フェリックス・ガタリ『アンチ・オイディプス』
 リュス・イリガライ『ひとつではない女の性』
 ジュディス・バトラー『欲望の主体』
第4部 資本主義の精神、市民の道徳
 カール・マルクス『経済学・哲学草稿』
 ジョン・ラスキン『この最後の者にも』
 ジョン・スチュアート・ミル『功利主義論』
 フリードリッヒ・ニーチェ『道徳の価値』
 マックス・ヴェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』
 マックス・シェーラー『価値の転倒』
第5部 幸福と福祉
 イマヌエル・カント『実践理性批判』
 ウィリアム・ベヴァリッジ『社会保障および関連サービス(ベヴァリッジ報告)』
 田中美知太郎『善と必然との間に』
第6部 近代倫理の臨界
 和辻哲郎『倫理学』
 坂部恵『仮面の解釈学』
 マイケル・ウォルツァー『正義の領分』
 デイヴィッド・ゴティエ『合意による道徳』
 ウィル・キムリッカ『多文化時代の市民権』
第7部 倫理の超越
 マルティン・ルター『奴隷的意志』
 ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ『弁神論』
 セーレン・キルケゴール『おそれとおののき』
 スラヴォイ・ジジェク『厄介なる主体』


科学哲学
中山康雄(1952-)著
人文書院 2010年10月 本体1,800円 46判並製200頁 ISBN978-4-409-00103-5

目次:
まえがき
第1部 科学哲学前史
 アリストテレス『自然学』
 ガリレイ『天文対話』
 カント『プロレゴメナ』
 マッハ『時間と空間』
第2部 論理実証主義の運動とその限界
 カルナップ『論理的構文論』
 ライヘンバッハ『科学哲学の形成』
 ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』
 ゲーデル『不完全性定理』
 ポパー『推測と反駁』
 大森荘蔵『流れとよどみ』
第3部 「新科学哲学」という反乱――パラダイム論の登場
 ハンソン『科学的発見のパターン』
 クーン『科学革命の構造』
 クワイン『論理的観点から』
 村上陽一郎『科学史の逆遠近法』
第4部 パラダイム論以降の科学哲学
 ラカトシュ『方法の擁護』
 ローダン『科学は合理的に進歩する』
 ハッキング『表現と介入』
第5部 科学論への展開
 ブルア『数学の社会学』
 ソーカル、ブリクモン『「知」の欺瞞』
 ラトゥール『科学論の実在』
 フラー『科学が問われている』
第6部 科学哲学基礎論の諸説
 ヘンペル『科学的説明の諸問題』
 フラーセン『科学的世界像』
 パトナム『理性・真理・歴史』
第7部 個別科学の哲学
 アインシュタイン『相対性理論』
 レッドヘッド『不完全性・非局所性・実在主義』
 ソーバー『進化論の射程』
 ゲルマン『クォークとジャガー』
 チャーチランド『心の可塑性と実在論』
 ドゥ・メイ『認知科学とパラダイム論』
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by urag | 2010-10-16 23:40 | 本のコンシェルジュ | Trackback(1) | Comments(0)
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Tracked from Book ニュース at 2011-09-13 12:28
タイトル : 【新刊】『メディア論 ブックガイドシリーズ 基本の30冊..
人文書院(http://www.jimbunshoin.co.jp/)は、8月に『メディア論 ブックガイドシリーズ 基本の30冊』を発売した。   元博報堂社員の社会学者・難波功士氏が、人文書院のブックガイドシリーズ「基本の30冊」でメディア論の入門書30冊をセレクトし紹介するもの。 紹介される書籍は1935年に著されたW.ベンヤミン『複製技術時代の芸術』から、2009年刊行のD.ライアン『膨張する監視社会 ――個人識別システムの進化とリスク』(邦訳は2010年)まで網羅的に紹介する。 ...... more


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