2010年 10月 02日
千のプラトー(中) ジル・ドゥルーズ+フェリックス・ガタリ著 宇野邦一ほか訳 河出文庫 2010年10月 本体1,200円 448頁 ISBN 978-4-309-46343-8 ◆カバー裏紹介文より:かつてないスタイルで思考の極限を実験し、様々な領野のラディカルな創造を触発してきた驚異の書。中間では、脱領土化、逃走線、そして生成変化という本書の核心的概念をベースに、顔貌性、秘密、ミクロ政治学、マイナー性などを論じ、あらゆる出来事を連結する存立平面を定義しつつ、宇宙的な力と民衆に開かれるリトルネロ-音楽を讃える。 ◆目次: 7 零年――顔貌性 8 一八七四年――ヌーヴェル三編、あるいは「何が起きたのか?」 9 一九三三年――ミクロ政治学と切片性 10 一七三〇年――強度になること、動物になること、知覚しえぬものになること…… 11 一八三七年――リトルネロについて 原注 ◆本文(188頁)より:存立平面の上ではすべてが知覚しえぬものになり、すべては知覚しえぬものへの生成変化となる。しかし知覚しえぬものが目に見え耳に聞こえる場は、ほかならぬ存立平面にあるのだ。存立平面とは〈平面域〉ないしは〈リゾーム圏〉であり、〈至高の水準〉である(次元数が増大するにつれて、さらに別の呼称を考えることもできる)。具体的な次元数に応じて、これを〈超次圏〉とも、〈機械圏〉とも呼ぶことができるだろう。抽象的な〈形象〉、あるいはむしろ、それ自体は形態をもたないのだから〈抽象機械〉。それを構成する一つ一つの具体的アレンジメントは一個の多様体であり、一個の生成変化、一個の切片、あるいは一個の波動である。そして抽象機械自体は、これらすべての要素を横切る断面なのだ。 ◆本文(311-312頁)より:ヴァレーズの説明によると、音の分子(つまりブロック)は数々の要素に分解され、そうした要素は可変的な速度の関係に応じてさまざまな配置をとるだけでなく、全宇宙に広がる音のエネルギーの波ないしは流れとして、つまり激烈な逃走線として作用する。それゆえヴァレーズは、無数の昆虫と星によってゴビ砂漠を満たしたのだった。それは世界の〈音楽への生成変化〉となり、宇宙への斜線となる。メシアンはさまざまな半音階的持続を同時に現前させ、融合させ、「最大の持続と最小の持続を交互に用いつつ、星々や山々に特有の無限に長い時間と、昆虫や原子に特有の無限に短い時間とを結ぶ関係性の観念を暗示しようとする。元素的で宇宙的な力は(……)何よりもまず、リズムの働きから生まれるのだ」。音楽家に小鳥を発見させるものが、音楽家を元素的なものと宇宙的なものの発見にみちびく。二つがブロックをなす、あるいは宇宙の繊維を、さらには複雑な斜線や空間をなす。音楽は分子状の流れを放出するのである。メシアンが言うように、音楽は人間だけの特権ではない。宇宙もコスモスも、リトルネロで成り立っているからだ。音楽の問題は、人間のみならず、動物や四大元素や砂漠など、全自然を貫く脱領土化の力を問うところにある。だから、むしろ人間において音楽的でなく、自然においてすでに音楽的であるものを問題にすべきなのだ。 ◆本文(350頁)より:相互的アレンジメントが存在する、一つの領土的アレンジメントから別のタイプへの移行がおこなわれる――そう考えるだけでは、もはや十分とはいえない。それよりもむしろ、あらゆるアレンジメントから離脱し、あらゆるアレンジメントの潜在能力をことごとく凌駕して、別の平面に移る動きが存在する――そう考えるべきだろう。実際ここに見られるのは、もはや環境の運動でも、環境のリズムでもなければ、領土化をおよぼす、あるいは領土化を受ける運動やリズムでもない。はるかに広汎な運動に、いまや宇宙が取り込まれているのだ。 ★先月の上巻刊行に引き続き、今月は中巻の発売です。下巻は11月8日(月)発売とのこと。上記の三つの引用は帯文にある「大地と宇宙をつらぬく多様体の思考」という紹介に呼応して抜き出してみたものです。この圧倒的な疾走感。圧倒的な突破感。考えながら読むのではなく、まずは感じること。彼らの途方もない饒舌にいったんは無条件で乗ってみること。あとから何度でも読み直すことは可能ですから、初めて読む時は彼らのヴァイブレーションを浴びるようにして先へと進むこと。うまく波長が合えば、ドゥルーズ+ガタリと、読んでいる自分とのあいだに奇妙な並走感覚が突如として生まれるのを体験できるかもしれません。
by urag
| 2010-10-02 04:13
| 本のコンシェルジュ
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