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2010年 06月 04日

注目の経済学者マラッツィ『資本と言語』、人文書院から来週発売

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資本と言語――ニューエコノミーのサイクルと危機
クリスティアン・マラッツィ(Christian Marazzi:1951-)著 柱本元彦訳 水嶋一憲監修
人文書院 10年6月 本体2,500円 四六判上製カバー装208頁 ISBN978-4-409-03077-6

◆原書:Capitale & Linguaggio: Ciclo e crisi della new economy, Rubbettino, 2001.

◆帯文より:金融経済とポストフォーディズムの労働、現代世界において支配的となった価値生産の新たな形態を言語行為論から析出する、革新的な経済社会理論。ネグリ、ヴィルノらとともに、ポストフォーディズム論を担う、注目の経済学者代表作。経済と社会を結ぶハードコア。序文=マイケル・ハート/解説=水嶋一憲

◆「英語版まえがき」より:「金融市場や経済政策の複雑さを一般の人々に語りうるエコノミストは、すでに稀少な存在と言えるが、マラッツィの稀少さはそれに留まるものではない。というのも彼は、現代の政治理論と社会理論のレンズをとおして経済発展を読み解きながら、経済的な土壌にしっかりと足をつけてそれらの理論に反省を加えることのできるエコノミストであるとともに、そのような仕方で政治・社会理論のもっとも刺激的な流れに関わり、それを前進させることのできるエコノミストでもあるからだ」(マイケル・ハート)。

◆目次:
英語版まえがき「労働する言語」(マイケル・ハート)

第一章 ポストフォーディズムからニューエコノミーへ
 序
 歴史的起源
 世論の至上権
 言語分析の道筋
 ポストフォーディズムの顕著な特徴
 労働時間についての批判的考察
 貨幣の言語的次元について
 ニューエコノミーとアテンションエコノミー

第二章 新しい景気循環
 危機のクロニクル
 中核=周辺モデルについて
 マンデルによる景気循環

第三章 剰余価値の回帰
 経済循環と剰余価値の貨幣化
 循環形態の合理性
 退蔵とマルチチュード
 退蔵とパニック
 〈一般的知性〉のスクラップ化

第四章 戦争と景気循環

解説「追伸――〈金融〉と〈生〉について」(水嶋一憲)
訳者あとがき
参考文献
人名索引

★『現代経済の大転換――コミュニケーションが仕事になるとき』(多賀健太郎訳、酒井隆史解説、青土社、09年3月)に続く、日本語訳第二弾です。来週後半から店頭発売開始だそうです。本書はカラブリア大学での講義がもとになっていますが、弊社より刊行しているパオロ・ヴィルノ『マルチチュードの文法』(廣瀬純訳、月曜社、04年2月)やマウリツィオ・ラッツァラート『出来事のポリティクス――知-政治と新たな協働』(村澤真保呂+中倉智徳訳、洛北出版、08年6月)もカラブリア大学での講義がもとになっています。『資本と言語』は2001年に初版がルッベッティーノから刊行されたのち、翌2002年に第四章が追加された新版がデリーヴェアップローディから出版されました。日本語訳の副題は初版に準じています。第二版の副題は「ニューエコノミーから戦争経済学へ」です。マイケル・ハートの序文は2008年にセミオテクストから刊行された英訳版に掲載されていたもの。

★近年日本において注目を集め続けているイタリア現代思想ですが、手ごろな入門書には岡田温司(1954-)さんの『イタリア現代思想への招待』(講談社選書メチエ、08年6月)があります。代表格は70年代までがアントニオ・グラムシ(Antonio Gramsci:1891-1937)、80年代までがウンベルト・エーコ、90年代以降はアントニオ・ネグリということになるだろうと思います。以下ではエーコやネグリらの世代以降のキーパーソンを人名、生年、初訳単独著単行本/最新刊の順に挙げておきます。未訳で挙げている人物は将来的に翻訳されるような気がする人々です。

マリオ・トロンティ(Mario Tronti:1931-)単独著未訳
ウンベルト・エーコ(Umberto Eco:1932-)『記号論』全2巻、岩波書店、80年4-6月/『醜の歴史』東洋書林、09年10月。
アントニオ・ネグリ(Antonio Negri:1933-)『構成的権力』松籟社、99年6月/『野生のアノマリー』作品社、08年10月。
マンフレッド・タフーリ(Manfredo Tafuri:1935-1994)『建築神話の崩壊』彰国社、81年2月/『球と迷宮』PARCO出版、92年7月。
ジャンニ・ヴァッティモ(Gianni Vattimo:1936-)単独著未訳
アウグスト・イルミナーティ(Augusto Illuminati:1937-)単独著未訳
カルロ・ギンズブルグ(Carlo Ginzburg:1939-)『チーズとうじ虫』みすず書房、84年12月/『糸と痕跡』みすず書房、08年11月。
マリオ・ペルニオーラ(Mario Perniola:1941-)『エニグマ』ありな書房、99年5月。
ジョルジョ・アガンベン(Giorgio Agamben:1942-)『スタンツェ』ありな書房、98年10月/『イタリア的カテゴリー』みすず書房、10年4月。
ウンベルト・ガリンベルティ(Umberto Galimberti:1942-)『七つの大罪と新しい悪徳』青土社、04年2月。
ピエル・アルド・ロヴァッティ(Pier Aldo Rovatti:1942-) 単独著未訳
マリアローザ・ダラ・コスタ(Mariarosa Dalla Costa:1943-)『家事労働に賃金を』インパクト出版会、86年10月/『医学の暴力にさらされる女たち』インパクト出版会、02年11月。
マッシモ・カッチャーリ(Massimo Cacciari:1944-)『必要なる天使』人文書院、02年4月。
アドリアーナ・カヴァレロ(Adriana Cavarero:1947-)単独著未訳
フランコ・ベラルディ(Franco Berardi:1949-)『プレカリアートの詩』河出書房新社、09年12月。
ロベルト・エスポジト(Roberto Esposito:1950-)『政治の理論と歴史の理論』芸立出版、86年4月/『近代政治の脱構築』講談社選書メチエ、09年10月。
クリスティアン・マラッツィ(Christian Marazzi:1951-)『現代経済の大転換』青土社、09年3月/『資本と言語』人文書院、10年6月。
パオロ・ヴィルノ(Paolo Virno:1952-)『マルチチュードの文法』月曜社、04年2月/『ポストフォーディズムの資本主義』人文書院、08年2月。
マウリツィオ・ラッツァラート(Maurizio Lazzarato:1955-)『出来事のポリティクス』洛北出版、08年6月。
マウリツィオ・フェラーリス(Maurizio Ferraris:1956-)単独著未訳
フェデリコ・フェラーリ(Federico Ferrari:1969-)単独著未訳

★上記のほかにもまだ様々な思想家がいます。イタリア出身で、海外で活躍した思想家というのもいます(マラッツィの場合は逆に、スイス出身でイタリアにて教鞭を執っています)。たとえば、古い世代ではドイツで活躍していたエルネスト・グラッシ(Ernesto Grassi:1902-1991/『芸術と神話』法政大学出版局、73年7月)ですとか、30年代生まれ以降ではアメリカで活躍していたジョヴァンニ・アリギ(Giovanni Arrighi:1937-2009)などです。グラッシは91年12月22日にミュンヘンで亡くなりました。ちなみにその数ヶ月前の9月18日には、エーコやヴァッティモの師である美学者ルイジ・パレイゾン(Luigi Pareyson:1918–1991)がミラノで亡くなっています(パレイゾンはイタリアにとどまりましたが、国外でも著名でした)。アリギはちょうど一年前の今頃(09年6月19日)、惜しくも逝去しました。その数ヶ月前についに単独著の日本語訳が出たばかりでした(『長い20世紀』作品社、09年2月)。このほか、英語圏で活躍しているイタリア出身の思想家には、「VOL ZINE」で論文が翻訳されている政治経済学者マッシモ・デ・アンジェリス(Massimo De Angelis:1960-)がいます。彼はリヴォルノ出身で、現在英国で教鞭を執っています。

★最近約半年間に出版されたイタリア現代思想の訳書では、アガンベンが3点(09年12月『思考の潜勢力』月曜社、10年3月『王国と栄光』青土社、10年4月『イタリア的カテゴリー』みすず書房)と続きました。フランコ・ベラルディ(通り名ビフォ)の本は初訳で、『プレカリアートの詩――記号資本主義の精神病理学』(櫻田和也訳、河出書房新社、09年12月)が出ました。ビフォはまだほかにも翻訳されるはずです。また、古い世代にはなりますが、以下の古典も新訳されたのが印象的です。政治思想家アントニオ・ラブリオーラ(Antonio Labriola:1843-1904)『思想は空から降ってはこない――新訳・唯物史観概説』(小原耕一+渡部實訳、同時代社、10年2月)。また、今回ご紹介したマラッツィの新刊『資本と言語』の翻訳者である柱本元彦さんはつい先日、歴史家エンツォ・トラヴェルソ(Enzo Traverso:1957-)の『全体主義』(平凡社新書、10年5月)も上梓されたばかりです。トラヴェルソはイタリア出身ですが85年以降、フランスで活躍しています。ラッツァラートもフランスで活動しているのですが、彼の場合ネグリとの関係を考えてあえて上記に挙げておきました。言うまでもありませんが、ネグリは長い間フランスに亡命していました。今はイタリアとフランスを行ったり来たりしているようです。

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★また、今週発売の新刊ですが、法学者で現在は政治家のジュリオ・トレモンティ(Giulio Tremonti:1947-)の『恐れと希望――グローバル化の克服とヨーロッパ』(石橋典子訳、一藝社、10年5月)が発売されたことも付記しておきます。
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by urag | 2010-06-04 00:26 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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