ジュンク堂書店の
ネットストアHONでは、ジュンク堂書店の各支店での在庫の有無をチェックできます。これは便利ですよね。たとえば、弊社ではあちこちの書店さんから補充注文や客注が入ってくるものの現在「版元品切」になっている『
ミクロコスモス第1集』を検索すると(詳細検索でタイトルに「ミクロコスモス」、出版社に「月曜社」と入れます)、30店舗近い支店でまだ店頭在庫があることになっています。ネットでの取り置きが可能で、さらに在庫がある支店に電話すれば、確保した商品を代金引換便で発送してもらうことも可能です。
かつて紀伊國屋書店BOOKWEBでも類似したサービスがありましたが、今は各店舗ごとに検索をかけないと在庫の有無を確認できないので、とても不便です。その昔はこんな記事「
弊社絶版本をお探しなら紀伊國屋BOOKWEBへ」(2006年5月16日)を書けた時代があったのですが。
ジュンク堂のこのサービスの最大の利点は、「版元品切の本でも、店頭に残っていれば購入可能」ということです。ご存じの通りジュンク堂は国内屈指の大型チェーンですから扱う本の点数が多く、近所では見かけない本でも全国的に見ればまだ在庫が残っている店舗もあるわけです。たとえば、弊社でここしばらく品切になっている『
アーバン・トライバル・スタディーズ』はまだ11店舗で在庫が確認できます(2010年4月8日10時現在)。また、同じく品切の『
表象01』も(詳細検索でタイトルに「表象」、出版社には月曜社ではなく「表象文化論学会」と入力してください)、16店舗で扱いがあります。
さらに「まさかこの本はもうありえないよな」と思っていた弊社完売本の『
地図』や『
NOVEMBRE』、『
燈火節』がなんと!……各1店舗ずつ、すごいなこれ(2010年4月8日午前10時現在)。
このように、このサービスは品切本を探すのに最適です。池袋本店など、動きの速い店では在庫がなくなってしまいがちですが、地方店ではまだ残っている、というケースがあるわけです。まあこのサービスが品切本狙いの背取り屋さんのターゲットになるのはあまり歓迎できませんが、在庫を最大限に活用しようという試みは商売としては正解だと思います。
紀伊國屋書店BOOKWEBでも、商品を検索したら各支店の在庫の有無が一発で分かる、というあのシステム(なおかつその在庫は電話せずともネットで代金引換便として発注できたのです!)を復活させてほしいです。店頭では全然売れていないような専門書でも、ネット上では探している読者がいます。なんで今みたいな面倒くさい各店検索に変えてしまったのか。事情は色々あると思いますが、客目線のサービスに変えていってほしいです。また、ジュンク堂さんは現在のシステムが多少面倒で難点があっても、このまま続けてほしい。さらに言えば、フタバ図書さんのように古書と新刊の併売を推進している本屋さんでも、各支店の在庫のネット上での確認と販売が可能になってほしいと思います。
業界紙「新文化」2010年4月1日付記事「
トーハン入社式、最大の命題は「需要と供給のアンマッチ」」によれば、入社式で山﨑厚男社長は「命題解決に向けて桶川SCMセンターなどで適時適量の供給体制づくりに取り組んでいる(…)。さらに、リアルとバーチャルの利点を融合させた「新たな書店像」「新たな出版流通」を創造していく」と挨拶されたそうです。席上では責任販売制の拡大についてもお話しされたそうですが、アンマッチを本当にどうにかしたいならば、責任販売制を推し進める「前」に、上記のようなネットでの店頭在庫チェックと販売の融合を先に本屋さんに推進してもらって、書店インフラの強化を取次がどんどん手助けした方がいいんじゃないか、と個人的には思っています(
e-honではまだ物足りない)。売る側の体制を整えなければ、商品の卸条件を変えたって小手先の試技になりませんか、とそう疑問に思うわけです。また、山﨑社長の言う「リアルとバーチャル」という問題系にはひょっとすると電子書籍の店頭販売の可能性も含まれているのかどうか、興味深いところです。