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ウラゲツ☆ブログ

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◆公式ウェブサイト・オリジナルコンテンツ
◎2011年6月28日~:ルソー「化学教程」翻訳プロジェクト。

◆最新刊と近刊

◎2016年9月5日取次搬入予定:森山大道『Osaka』本体3,500円

◎2016年7月7日発売:W・ウォルターズ『統治性――フーコーをめぐる批判的な出会い』本体2,500円。

◎2016年7月1日発売:G・バタイユ『マネ』本体3,600円。

◎2016年5月25日発売:『ユンガー政治評論選』本体2,800円。

◎2016年4月15日発売:『表象10:爆発の表象』本体1,800円

◎2016年2月9日発売:申鉉準ほか『韓国ポップのアルケオロジー』本体5,500円

◎2015年11月30日発売:B・シュティーグラー『写真の映像』本体3,400円、芸術論叢書第3回配本。
書評1⇒増田玲氏書評「周到な仕掛けを施す――55の断章からなる切れ味鋭い写真論」(「週刊読書人」2016年2月26日号)

◎2015年10月9日発売:森山大道『犬と網タイツ』本体3,500円

◎2015年7月22日発売:W・シュスラー『ヤスパース入門』本体3,200円、シリーズ古典転生第12回配本、本巻11。

◆販売情報(重版・品切・サイン本、等々)
◎重版出来:『犬と網タイツ』2刷:2016年8月8日、『ニュー新宿』2刷:2016年8月10日。
◎品切重版準備中:『ミクロコスモス第1集』2刷、ユンガー『パリ日記』2刷、ギルロイ『ブラック・アトランティック』4刷。
◎品切重版未定:『舞台芸術05』『舞台芸術08』『表象01』『表象04』『表象05』『表象08』、毛利嘉孝『文化=政治』、上野俊哉『アーバン・トライバル・スタディーズ』、クリフォード『ルーツ』、スピヴァク『ポストコロニアル理性批判』、片山廣子『燈火節:随筆小説集成』、ブランショ『書物の不在 初版朱色本』、ブランショ『書物の不在 第二版鉄色本』、高柳昌行『汎音楽論集』、大里俊晴『マイナー音楽のために』、大竹伸朗『ネオンと絵具箱』、森山大道『新宿』、森山大道写真集『新宿+』、森山大道写真集『大阪+』、森山大道写真集『オン・ザ・ロード』、森山大道フォトボックス『NOVEMBRE』、やなぎみわ作品集『WHITE CASKET』、川田喜久治写真集『地図』、遠藤水城編『曽根裕|Perfect Moment』、熊木裕高写真集『吠えない犬』、瀬戸正人写真集『picnic』、菱田雄介写真集『ある日、』。※書店からの返品で在庫がまれに生じる場合があります。直接、弊社までお電話かメールなどでお尋ね下さい。

◆出版=書店業界情報:リンクまとめ
日々この業界ではたくさんの出来事が起こっていて、それぞれにコメントしたい気もするし、実際言うべきこともままあるのですが、出来事に振り回されるのは嫌だし、こみいった背景をうまく説明できなかったり、しがらみのせいではっきり言えなかったりするのが現実なので、出来事情報は下記のリンクを随時ご参照下さいませ。

◎業界紙系:倒産や出店などの時事情報がやっぱり早い→ 新文化 ニュースフラッシュ
◎一般紙系:全国紙や地方紙、専門紙誌に掲載されたニュースをまとめてチェック→ Yahoo!ニュース「マスコミ、出版」
◎話題系:昨今の様々な注目トピックを整理整頓→ フレッシュアイニュース「出版不況」「電子書籍」「書店経営」 / Yahoo!ニュース「出版不況」「電子書籍」「アマゾン
◎新刊書店系:書店業界のひきこもごもの内情→ 日書連 全国書店新聞
◎古書店系:古本屋さんの奥深い世界を垣間見れます→ 東京古書組合 日本の古本屋メールマガジン
◎雑談&裏話:業界の「非常時」には頼りになる一面もあるかも→ 2ちゃんねる 一般書籍

※このブログの最新記事は当エントリーより下段をご覧ください! 
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# by urag | 2017-12-31 23:59 | ご挨拶 | Trackback(1) | Comments(21)

雑談(35)

★2016年8月27日13時現在。
「東洋経済オンライン」2016年8月27日付、永谷薫氏記名記事「ヴィレッジヴァンガード、大赤字脱却なるか――雑貨チチカカを売却でも見えぬ復活の道筋」によれば、ヴィレッジヴァンガードは「8月1日、エスニック雑貨を販売する子会社のチチカカを、金融情報配信会社フィスコ(ジャスダック上場)の親会社であるネクスグループに売却した。チチカカはこの2年間、ヴィレヴァンの業績の足を引っ張ってきた赤字子会社だ」と。

ヴィレヴァンが近年、取次を大阪屋からトーハンに「戻して」いるのは周知の通りですが、それはヴィレヴァンの立て直し(後段に引用)の過程と重なっています。「新文化」2014年12月26日付記事「ヴィレッジヴァンガード、トーハンに帳合変更へ」をご参照ください。「ヴィレッジヴァンガードコーポレーションは来年〔2015年〕2月1日、主帳合取次を大阪屋からトーハンに変更する。対象は全401店舗のうち、出版物を扱う385店すべて(FC店含む)。〔・・・〕ヴィレッジヴァンガードコーポレーションは、元々トーハンと取引きしていたが、2003年のJASDAQ上場前に大阪屋へ帳合変更。今回、再びトーハンと取引きすることになった。〔・・・〕書籍販売部門のてこ入れの必要と、トーハンから新たなMDに関する「いい提案があった」ことから変更に踏み切った」と。

「東洋経済」の記事に戻ると、「ヴィレヴァンはまだ店頭登録制度があった2003年4月、創業17年目にして店頭登録を果たした。当時121だった店舗数は2012年8月末時点で395に達し、その後は一進一退を繰り返し、今年8月20日時点では391にとどまっている。/上場した当時、87億円だった売上高は、直近の2016年5月期には467億円へと増えた。売上高に限れば、上場からの13年間はほぼ右肩上がりの成長を続けてきたといえる。/だが、利益の方はここ数年苦戦が続いている。ターニングポイントになったのは2013年5月期。2009年2月以降、直営店の既存店売上高は昨対比で断続的に前年割れが続いていた。2012年4月以降は新規出店も含めた全店でも慢性的に前年割れを起こすようになった」と。

ヴィレヴァンの店舗拡大は全国各地に新たな巨大商業施設が建設される過程と並行してきたように見えます。テナントとして複合書店が専業書店とは「別腹」なので併設可能だ、とSC開発側は見なしてきたのではないでしょうか。むろんヴィレヴァンの新規出店はSC内ばかりではないとはいえ、新規SCで専業書店チェーンのほかにヴィレヴァンが入居する例は多いように見受けます。ヴィレヴァンはTSUTAYAとともに複合書店の先駆者でした。この二つのチェーン以外にも、複合書店はどんどん増えています。ニッチたりえるか、中途半端に転落するか、複合書店の岐路が見えてきた、と言うべきでしょうか。

さらに東洋経済記事に曰く「このため、既存店のてこ入れに重心を移し、新規出店を抑制する一方、抜本的に在庫管理体制や評価方法を変更。この結果、2013年5月期に46億円の在庫評価損が発生し、最終赤字に転落している。2014年5月期は営業損益段階から赤字に陥っている。/約2年かけてヴィレヴァンの立て直しが一段落すると、今度はチチカカが火を噴いた。〔・・・〕2013年以降は円安の進行で製造原価が急騰し、採算が悪化。これを規模の成長でカバーしきれなくなると商品開発力が低下。店が魅力を失って客離れが起き、2014年5月末時点で大量の在庫が問題になる。そこで、翌2015年5月期は仕入れを抑制し、セールによる在庫処分を優先したが、これがさらなる客離れを引き起こす」。

ヴィレヴァンに限りませんが、せっかくの並行事業が本業の足を引っ張るという事態は、この業界ではまま見受けることです。青山BC(現在ブックオフ傘下)や草思社(現在文芸社傘下)がかつて不動産で失敗したことはよく知られています。「こうすれば必ず失敗する」という特定の事業や投資があるわけではないのでしょうけれども、新たなビジネスの挑戦が挫折した場合のリスクは過小評価できません。本記事の結論部分では、チチカカの切り離し果たしたものの「何より本業のヴィレヴァンの店舗網拡大が望めない中、どのような成長戦略を描けるのか」と問うています。この問いはひとりヴィレヴァンのみに当たるものではなく、出版業界全体が抱えているものです。

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# by urag | 2016-08-27 14:28 | 雑談 | Trackback | Comments(0)

雑談(34)

◆2016年8月25日17時現在。
ジュンク堂書店福嶋聡さんの最新著『書店と民主主義』(人文書院、2016年6月)を読まれた仲俣暁生さんが「マガジン航」で「本屋とデモクラシー」と題した記事を7月1日に公開されたことは皆さんご存知かと思いますが、このテーマ「書店/本屋と民主主義/デモクラシー」をめぐって、仲俣さんの司会進行で来月、トークイベントが以下の通り開催されるとのことです。これは「キックオフ・ミーティング:本屋は民主主義の土台になれるか?」と謳われていて、今後も関連イベントが控えているそうです。

シブヤ・いちご白書・2016秋 #本屋とデモクラシー

日時:2016年9月6日(火)OPEN 19:00 / START 19:30
前売¥2,000(e+にて発売)/ 当日¥2,300(税込・要1オーダー500円以上)

ゲスト:
・藤谷治(小説家、元フィクショネス店主)
・松井祐輔(小屋BOOKS、H.A.Bookstore)
・梶原麻衣子(月刊『Hanada』編集部員)
・碇雪恵(日販リノベーショングループ)
・辻山良雄(「本屋Title」店長)
※スペシャルゲストの可能性あり

司会:仲俣暁生(「マガジン航」編集人)

内容:大きな選挙が相次いだここ数年、デモクラシー(民主主義)という言葉を目にすることが増えた。街頭で行われるデモに出かける人もいれば、家のなかで本を読んで考えた人もいた。本屋では政治にまつわる店頭フェアやイベントがさかんに行われ、それに抗議する人もいた。本屋は多様な意見が戦い合う「闘技場」だという『書店と民主主義~言論のアリーナのために』という本も出た。/民主主義が危機だといわれるいま、本屋はそれを支える基盤になりうるか? そのために本屋にできることは、フェアやイベントのほかになにがあるのか。「政治の季節」がひとまず終ったあとに、日常活動のなかから「デモクラシー」のありかを考えるため、本を読む人と読まない人が集まって話をしてみたい。題して、「シブヤ・いちご白書・2016秋」。なんで「いちご」なのかは、来てのお楽しみ!

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◆8月25日18時現在。
なお、私なりに出版/言論とデモクラシーを考える上で参照しておきたいのは、「現代ビジネス」に今月掲出された次の二つの記事です。

スノーデンの警告「僕は日本のみなさんを本気で心配しています」――なぜ私たちは米国の「監視」を許すのか」8月22日付、小笠原みどり氏記名記事
『シン・ゴジラ』に覚えた“違和感”の正体~繰り返し発露する日本人の「儚い願望」――野暮は承知であえて言う」8月13日付、辻田真佐憲氏記名記事

前者に曰く「スノーデンはNSAの仕事を請け負うコンピュータ会社デルの社員として2009年に来日し、東京都福生市で2年間暮らしていた。勤務先は、近くの米空軍横田基地内にある日本のNSA本部。NSAは米国防長官が直轄する、信号諜報と防諜の政府機関だが、世界中の情報通信産業と密接な協力関係を築いている。デルもその一つで、米国のスパイ活動はこうした下請け企業を隠れみのにしている。/米国の軍産複合体は、いまやIT企業に広く浸透し、多くの技術が莫大な予算を得て軍事用に開発され、商用に転化されている。NSAはテロ対策を名目にブッシュ政権から秘密裏に権限を与えられ、大量監視システムを発達させていった。/スノーデンが働くNSAビルには、日本側の「パートナーたち」も訪れ、自分たちの欲しい情報を提供してくれるようNSAに頼んでいたという」云々。

また曰く「NSAの大規模盗聴事件「ターゲット・トーキョー」〔・・・〕。対象分野は、金融、貿易、エネルギー、環境問題などで、いずれもテロとはなんの関係もない。〔・・・〕ターゲット・トーキョーの盗聴経路はわかっていないが、NSAが国際海底ケーブルへの侵入、衛星通信の傍受、マイクロソフト、グーグル、フェイスブックなどインターネット各社への要請によって、世界中のコミュニケーションの「コレクト・イット・オール」(すべて収集する)を目指していることは、スノーデンの公表した機密文書によって明らかになっている。〔・・・〕日本の監視拠点は、米海軍横須賀基地(神奈川県)、米空軍三沢基地(青森県)、同横田基地と米大使館(東京都)、米海兵隊キャンプ・ハンセンと米空軍嘉手納基地(沖縄県)で、約1000人が信号諜報に当たっているという。このうち米大使館は官庁、国会、首相官邸に近く、NSAの特殊収集部隊が配置されているといわれる。米軍基地は戦闘拠点であるだけでなく、監視活動を主要任務としているのだ」云々。

さらに曰く「標的にされているのは、政府機関だけではない。「コレクト・イット・オール」はすべての人々の通信を対象にしているのだ。〔・・・〕NSAの最高機密文書に記された情報収集地点(「窒息ポイント」と呼ばれる)〔・・・〕。日本からのデータがこの地点で吸い上げられている可能性は高い。中国、台湾、韓国もつなぐこの光ファイバー・ケーブルには、日本からNTTコミュニケーションズが参加。千葉県南房総市に陸揚げ局・新丸山局を設置している。〔・・・〕調査報道ジャーナリストたちが「国家の脅威」としてリストに上がっている〔・・・〕。大量監視は私たちの安全ではなく、グローバルな支配体制を守るために、すべての個人を潜在的容疑者として見張っているようだ。〔・・・〕情報通信産業は利益の追求という「経済的インセンティブ」に突き動かされながら、いまや世界の軍産複合体の中心部で、この広範な戦争と支配の構造を下支えしている」云々。

一方後者に曰く「この国にあって、政治家や官僚は非常時にあっても都合よく「覚醒」しないし、一致団結もしない。これは現在だけではなく歴史的にもそうである。だからこそ、『沈黙の艦隊』や『紺碧の艦隊』のような虚構の作品が受け入れられ続けてきたのだ。/『シン・ゴジラ』では、政治家や官僚の肩書、服装、しゃべり方などがかなりリアルだっただけに、一層その「覚醒」の異様さが浮き立って見える。それは、現実社会における不能ぶりとのギャップを想起させないではおかず、痛ましくもあった。〔・・・〕なんという「美しい」物語だろう。ただしそれは、われわれがいまだかつて一度も手にしなかった歴史でもあるのである」。

また曰く「本作の内容を正確に反映するならば、「願望(ニッポン)対虚構(ゴジラ)。」とでもいうべきであろう。〔・・・〕われわれが「立派な指導者が出てくれば、日本はまだまだやれる」というストーリーを「無駄」と考えず、あまりにも自然に、快楽として受容しているということ〔・・・〕。もし、『シン・ゴジラ』を観て、「立派な指導者が出てくれば、日本はまだまだやれる」と本当に思ったとすれば、そんなものは虚構のなかにとどめておかなければならない。「失われた20余年」に繰り返されてきたこうした願望の発露は、その実現可能性ではなく、その徹底的な不可能性を示していると考えるべきだ。/劇中に描かれる美しき挙国一致の「ニッポン」は、極彩色のキノコである」。

一方には国外の諜報機関と繋がらざるをえない通信産業、他方には「面白い日本映画」を目指した映画産業。それらは出版産業と隣り合っています。スノーデンさんや小笠原さんが指摘した「民主主義の腐敗」、辻田さんの言う願望と快楽の「極彩色のキノコ」、これらは出版界にもすでに久しく侵食していると言わざるを得ない、というのが私の印象です。

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# by urag | 2016-08-25 17:00 | 雑談 | Trackback | Comments(2)
2016年9月1日(木)開店
MUJI BOOKS岡山店:??坪
岡山県岡山市北区中山下1-11-54 LOTZ 4F
日販帳合。弊社へのご発注は外国文学。「白い本」に分類されるようです。MUJI BOOKSは現在国内では、キャナルシティ博多インフォス有楽町アトレ恵比寿仙台ロフトなどに4店舗オープンしてきましたが、発注書に特記された情報によると、9月末には日販帳合でさらに4店舗を新規開店するそうです。現時点で弊社に届いている発注は岡山店からのみなので、他の3店舗の詳細は不明ですが、岡山と同様であるならば、リニューアルする無印良品の中にMUJI BOOKSが入るという展開なのかなと推察します。

岡山LOTZ(ロッツ)はJR岡山駅東側、県庁通り沿いの繁華街に位置しており、近隣には天満屋やクレド岡山があります。岡山シンフォニービルからも徒歩5分ほど。現在リューアル中だという施設内にはLOFTやABC MART、GUやスタバなどが入っており、書店はありません。そもそもMUJI BOOKSは他の書店と競合するような業態ではないので、ショッピングモールや商業ビル内で以後も全国に増えていくのかもしれません。フロアガイドでは4Fの大部分が無印良品であり、それなりに広い売場となりそうです。

専業書店とは競合しない(という建前の)複合書店は、デベロッパー側からは声を掛けられやすいのかもしれないと想像します。これまで各地の商業施設では専業書店と並んでヴィレッジヴァンガードやその兄弟ブランドであるニュースタイルなどを見かけることが多かったのですが、昨今ではリーディングスタイル(大阪屋栗田)や、アンジェ(ふたば書房)、ペーパーウォール(オリオン書房)、セレンディップ(明屋書店)、そしてMUJI BOOKSなど、選択肢が増えている状況かと思われます。これからはMUJI BOOKSのように、業界外からの参入が増えるのかもしれません。

書店のリアル店舗開発のトレンドは、ゼロ年代でピークを迎えた大型化から、テン年代には複合化へと変化してきており、その代表格が蔦屋書店であることは周知の通りです。書籍や雑誌の売上の落ち込みを考えるとこの変化は不可逆的であるといえます。今後もますます「セレクトショップ」型の書店が主流になる場合、そこで置かれる商品を編集者が企画できるか否かは、いわゆる「総合出版社」にとっては死活に関わる問題となるでしょう。こうした動向に対して専門書版元は基本的に大部分は蚊帳の外ですが、専門書版元がベストセラーを生まないとも限らないので、セレクトする側の書店員の選書眼が問われることになります。と同時に、版元営業マンや取次による「開発」(販路拡大)のセンスも問われます。

その一方で、セレクトショップや複合型書店では追随しきれない専門書をどう販売していくかが、専業の大型書店ではいっそう重要になるはずではあります。百貨店型の総合出版社や総合書店の運営が徐々に困難になりつつある時代ではあるものの、専門書に特化した書店チェーンが誕生するには至っていません(それどころか、大型書店での専門書販売はますます厳しくなっています)。巨大ショッピングモールから大型書店が撤退していくきざしが見えつつあるこんにちこそ、ポスト複合化時代の書店像を考えねばならなくなっているように感じます。そして、そのブレイクスルーを見出すのは、業界外からの新規参入組なのかもしれません。
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# by urag | 2016-08-23 00:30 | 販売情報 | Trackback | Comments(0)
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ドゥルーズ 書簡とその他のテクスト
ジル・ドゥルーズ著 宇野邦一・堀千晶訳
河出書房新社 2016年8月 本体3,800円 46判上製408頁 ISBN978-4-309-24769-4

帯文より:「思考とは怪物なのです」(ドゥルーズ)。ガタリ、フーコー、クロソウスキー、そして親しい友人たちに宛てられた哲学者の素顔を伝える手紙、重要なヒューム講義、『アンチ・オイディプス』についての対話などの未刊テクスト、生前は刊行を禁じられた初期論考を集成。未来の哲学者による最後の遺産。

目次:
はじめに
謝辞
書誌の計画
書簡
 アラン・ヴァンソン宛て
 クレマン・ロセ宛て
 フランソワ・シャトレ宛て
 ジャン・ピエル宛て
 フェリックス・ガタリ宛て
 ピエール・クロソウスキー宛て
 ミシェル・フーコー宛て
 ゲラシム・ルカ宛て
 アルノー・ヴィラニ宛て
 ジョゼフ・エマニュエル・ヴフレ宛て
 エリアス・サンバール宛て
 ジャン=クレ・マルタン宛て
 アンドレ・ベルノルド宛て
デッサンと様々なテクスト
 五つのデッサン
 三つの読解――ブレイエ、ラヴェル、ル・センヌ
 フェルディナン・アルキエ『シュルレアリスムの哲学』
 フェルディナン・アルキエ『デカルト、人と作品』
 ヒューム講義(一九五七-一九五八)
 ザッヘル=マゾッホからマゾヒズムへ
 ロベール・ジェラール『重力と自由』
 教授資格試験用講義――ヒューム『自然宗教に関する対話』
 愛をこめて語られたインディオ
 ジル・ドゥルーズ、フェリックス・ガタリ――レーモン・ベルールとの
 『アンチ・オイディプス』についての討論
 音楽的時間
 『フランシス・ベーコン 感覚の論理学』アメリカ版のための序文
初期テクスト
 女性の叙述――性をもつ他者の哲学のために
 キリストからブルジョアジーへ
 発言と輪郭
 マテシス、科学と哲学
 ディドロ『修道女』のための序文
後記Ⅰ(堀千晶)
後記Ⅱ(宇野邦一)
人名索引

★まもなく発売。原書は、Lettres et autres textes (Minuit, 2015)です。巻頭の「はじめに」と「謝辞」は、特に記名はありませんが、編者のダヴィッド・ラプジャード(David Lapoujade, 1964-)によるものかと思います。周知の通りラプジャードはドゥルーズの死後に刊行された論文集成『無人島』『狂人の二つの体制』(いずれも二分冊で河出書房新社より訳書が出版されています)の編者であり、卓抜なドゥルーズ論『ドゥルーズ 常軌を逸脱する運動』(堀千晶訳、河出書房新社、2015年9月)を上梓しています。

★堀さんの「後記Ⅰ」によれば本書は『無人島』『狂人の二つの体制』に続く「「三巻目にして最終巻」(原書裏表紙)となることが告知されており、ミニュイ社からのドゥルーズの著作物の刊行は、これで一段落することになるだろう」とのことです。宇野さんの「後記Ⅱ」によれば翻訳の分担は「私が担当したのは、後半部分の「ザッヘル=マゾッホからマゾヒズムへ」以降のテクスト、対談記録であるが、そのうち「教授資格試験用講義――ヒューム『自然宗教に関する対話』」だけは堀千晶さんが担当した」とのことです。

★宇野さんによる後記をもう少し参照しますと「後半の最後のパート「初期テクスト」は、ドゥルーズが二十歳から二十二歳のあいだに雑誌に発表したテクストや、書物の序文を収録している。ドゥルーズ自身は、これらのテクストの単行本収録を認めていなかったが、研究者のあいだでコピーが流通し、〔・・・〕遺族の許可をえてここに収録されることになった。/二十歳そこそこの青年の書いた五編の哲学的エセーはすでに驚異的である」と。なお、初期テクストのうち「キリストからブルジョアジーへ」については加賀野井秀一訳注『哲学の教科書――ドゥルーズ初期』(河出文庫、2010年)でも読むことができます。

★宇野さんはこうも指摘されています。「初期テクストは、しばしば哲学のアカデミズムからまったく自由な奇抜なスタイルで書かれ、挑発的なアイロニーを生々しく露出させている。そしてすでにかなり風変わりで強力な哲学的推論もいたるところに披瀝されている」。たしかに、5篇のなかでも「発言と輪郭〔Dires et profils〕」(1946年)はとりわけ個性的で、若きドゥルーズの才覚を見る思いがします。なお、原書の目次詳細はこちらでご覧になれます。

★ドゥルーズが論じている他の哲学者の著作のうち、アルキエ『シュルレアリスムの哲学〔Philosophie du surréalisme〕』は河出さんでかつて刊行されていました(巌谷国士・内田洋訳『シュルレアリスムの哲学』河出書房新社、1975年、新装版1981年)。『黒いユーモア選集』、マックス・エルンスト、ルネ・ドーマルなどシュルレアリスム関連書が河出文庫に収録されてきた実績があるので、アルキエの本も文庫で久しぶりに読めたら素敵ですが、それ以上に『黒いユーモア選集2』の重版や、ブルトン『魔術的芸術』の文庫化が期待されているのかもしれません。

★河出書房新社さんでは今月、ガブリエル・タルドの主著『模倣の法則』の新装版を刊行されています。同書はもともと2007年9月に刊行されており、10年近く立ちますが、新装版でも本体価格は据え置きのままとなっています。総頁数も変更なしで、新たな訳者あとがき等は付されていません。古書価格が高かったので、歓迎すべき再刊ではないでしょうか。

模倣の法則[新装版]
ガブリエル・タルド著 池田祥英・村澤真保呂訳
河出書房新社 2016年8月 本体5,800円 46判上製560頁 ISBN978-4-309-24772-4

帯文より:「タルドはミクロ社会学の創始者であり、この社会学にその広がりと射程を与え、来たるべき誤解をもあらかじめ告発したのだ」(ドゥルーズ+ガタリ)。発明と模倣/差異と反復の社会学をつくりだし、近年、全世界で再評価される忘れられた大思想家・タルドの主著にして歴史的な名著。

目次:
初版への序文
第二版への序文
第一章 普遍的反復
第二章 社会的類似と模倣
第三章 社会とは何か?
第四章 考古学と統計学――歴史とは何か?
第五章 模倣の論理的法則
第六章 超論理的影響
第七章 超論理的影響(続)
第八章 考察と結論
解説 ガブリエル・タルドとその社会学(池田祥英)
社会のみる夢、社会という夢 あとがきに代えて(村澤真保呂)
人名リスト

★なお、来月9月6日発売予定の河出文庫ではついに、長谷川宏訳によるヘーゲル『哲学史講義』が文庫化開始となるようです。親本では全3巻でしたが、文庫では全4巻で「改訳決定版」と謳われています。第Ⅰ巻では東洋、古代ギリシアの哲学を収録。

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★続いて今月の注目文庫。いずれも発売済です。

シークレット・ドクトリン 第三巻(上)──科学、宗教、哲学の統合』H・P・ブラヴァツキー原著、アニー・ベサント編著、加藤大典訳、文芸社セレクション、2016年8月、本体1,000円、A6判並製540頁、ISBN978-4-286-17243-9
『ウォールデン 森の生活』巻ヘンリー・D・ソロー著、今泉吉晴訳、小学館文庫、2016年8月、本体各850円、文庫判448頁/440頁 ISBN978-4-09-406294-6/978-4-09-406295-3
社会学の考え方〔第2版〕』ジグムント・バウマン+ティム・メイ著、奥井智之訳、ちくま学芸文庫、2016年8月、本体1,400円、文庫判432頁、ISBN978-4-480-09746-0

★『シークレット・ドクトリン』はブラヴァツキー(Helena Petrovna Blavatsky, 1831-1891)の生前には1888年に2冊本が上梓され、第1巻前半の日本語訳が昨今再刊されています(田中恵美子/ ジェフ・クラーク訳『シークレット・ドクトリン――宇宙発生論《上》』宇宙パブリッシング、2013年)。今回翻訳が始まった第3巻は、著者の死後の1897年にアニー・ベサント(Annie Besant, 1847-1933)がまとめたものです。訳者の加藤大典(かとう・ひろのり:1933-)さんは翻訳家で、ブラヴァツキーの訳書は『インド幻想紀行――ヒンドスタンの石窟とジャングルから』(上下巻、ちくま学芸文庫、2003年)に続くもの。凡例にはこうあります。「シークレット・ドクトリンの第一巻において宇宙創生論を、第二巻において人類発生論を説いた著者は、第三巻で科学、宗教、哲学の統合を熱く語る。/病床の著者から原稿を託された神智学協会後継者のAnnie Besantが本第三巻を編集した(編者による「まえがき」を参照)」と。

★ベサントは「まえがき」で次のように説明しています。「HPB〔ブラヴァツキー〕から私に託された原稿はまったく未整理の状態で、はっきりした順序も決まっていなかった。そこで私は、各原稿をそれぞれ独立の章と見なして、それらを可能な限り連続した内容となるよう配列した。そして文法的な誤りの訂正や明らかに非英語的な言い回しを除いた以外、原稿は別途注記したものの他、HPBが私に残したままの状態である。二、三のケースで私が補筆した個所があるが、そうした場合は鍵カッコに入れ、テキスト本文と区別できるようにした」(19頁)。

★上巻の目次は以下の通りです。

まえがき
序言
第一章「予備的な展望」
第二章「現代の批判と古代人」
第三章「魔術の起源」
第四章「秘儀参入者の秘密厳守」
第五章「秘密厳守の理由」
第六章「実践魔術の危険」
第七章「新しい器に入れられた古いワイン」
第八章「『エノク書』――キリスト教の原点かつ基本」
第九章「ヘルメスとカバラの教義」
第一〇章「アルファベットと数に関する秘教的解釈の様々な体系」
第一一章「中央に点のある六芒星、それが第七の鍵」
第一二章「宗教に対する真のオカルティストの責務」
第一三章「キリスト後の導師たちとその教義」
第一四章「シモン・マゴスとその伝記作者ヒッポリュトス」
第一五章「聖パウロ――現行キリスト教の真の創設者」
第一六章「聖ペテロはユダヤのカバリストで、秘儀参入者ではない」
第一七章「テュアナのアポロニウス」
第一八章「導師たちの伝記の背後にある諸事実」
第一九章「アンティオキアの聖キプリアヌス」
第二〇章「東洋のグプタ・ヴィディヤーとカバラ」
第二一章「ヘブライの寓意」
第二二章「『ゾハール』に見る創造とエロヒム」
第二三章「オカルティストとカバリストの意見」
第二四章「科学と秘教天文学における現代カバリスト」
第二五章「東洋と西洋のオカルティズム」
第二六章「偶像とテラヒム」
第二七章「エジプト魔術」

★なお、続刊予定の下巻には第二八章から第五一章までが収録される予定だそうです。文芸社セレクションはなかなかリアル書店ではお目に掛からないレーベルであるような気がしますが、今回のような目玉新刊もあり、要チェックです。

★ソロー『ウォールデン』は親本が2004年4月に小学館から刊行された単行本です。幾度となく翻訳されている名作(原著は1854年刊)で、以下のように複数の版元から文庫化されました(ワイド版岩波文庫はカウントしていません)。

酒本雅之訳『ウォールデン――森で生きる』ちくま学芸文庫、2000年;品切
真崎義博訳『森の生活――ウォールデン』宝島社文庫、1998年;新装版2002年;品切
飯田実訳『森の生活――ウォールデン』上下巻、岩波文庫、1995年
佐渡谷重信訳『森の生活――ウォールデン』講談社学術文庫、1991年
富田彬訳『森の生活(ウォールデン)』角川文庫、1953年、絶版
神吉三郎訳『森の生活――ウォールデン』上下巻、岩波文庫、1951年;合本改版1979年;絶版

★現在も新本で入手可能なのは飯田訳岩波文庫上下巻と、佐渡谷訳講談社学術文庫上下巻ですが、それでも3種目が出るというのはやはりソローの人気を表わしていると思います。今回文庫化された今泉訳では各巻末に訳者による「あとがき」が配されていますが、文庫化にあたって書き直されたもののようです。カヴァー裏の紹介文には「文庫では、さらに注釈と豊富な写真、地図でソローの足跡を辿れます」とあります。訳者の今泉さんは周知の通り動物学者で、『シートン動物記』の翻訳などを手掛けられています。今泉訳『ウォールデン』は「ですます調」で訳されており、じんわりと心にしみる柔らかさを持っています。「もし、人がなんのために生きるかを、もう少し考えて生きるなら、誰もが本当の観察者になり、研究者にもなるでしょう。人は楽しく生きようとする本性を持ち、楽しく生きることによって成長するよう、定められているからです。ところが多くの人は、財産を自分や子孫のために貯え、子供をたくさん持って大家族を作り、国を作り、神のごとき名声を得ようと励みます。しかし、どう考えようと、人は神になれず、死すべきものに変わりはありません。ところが、人は本当のことを知ろうとするなら、不死身になり、異変や偶然を怖がらずに生きることができます」(上巻、248頁)。都会や社会のしがらみの中で疲れ果てている現代人にとって本書ほど鮮烈な古典はないのではないかと思います。出会ってよかったと思える名著です。

★バウマン+メイ『社会学の考え方〔第2版〕』の原書は、Thinking Sociologically, 2nd edition (Blackwell, 2001)です。同書の初版本(Blackwell, 1990)はバウマンのみの単独著で、第2版の訳者でいらっしゃる奥井さんによって翻訳されたことがあります(『社会学の考え方――日常生活の成り立ちを探る』HBJ出版局、1993年)。HBJ出版局はアメリカの名門Harcourt Brace Jovanovichの子会社だったようで、出版物から確認する限り、前身は「ホルト・サウンダース/CBS出版」で、HBJ出版局としては1983年から1997年まで出版活動を継続していた様子ですが、その後操業を停止し、バウマンの本は入手しにくい1冊となっていました。

★ちくま学芸文庫でのバウマンの著書は『リキッド・モダニティを読みとく――液状化した現代世界からの44通の手紙』(酒井邦秀訳、ちくま学芸文庫、2014年)に続く2冊目で、奥井さんによるバウマンの訳書としては上記の『社会学の考え方』初版や、『コミュニティ――安全と自由の戦場』(筑摩書房、2008年、品切)に続く3冊目の翻訳となります。巻頭の「ティム・メイによる第2版序文」にはこう書かれています。「わたしの役割は本書に新しい材料を付け加えることであったが、その一方で、私は、どうすれば原著のユニークさを保ちうるかに十分配慮する必要があった。/結果として生まれた第2花は、原著を全面的に改訂し、拡張したものになった。わたしたちは、当初の章を変更した上で、新たな章を追加した。同時に、テキスト全体を通じて、新たな題材を付け加えた。健康、フィットネス、親密性、時間、空間、無秩序、リスク、グローバル化、組織、ニュー・テクノロジーなどがそれである。わたしたち二人は、まったく新しい書物を生み出したと考えている。それは、第1版の最良の部分を維持しつつ、その全体的な魅力をもっと高めるように、新たな内容を付けくわえた作品である」(9頁)。

★参考までに初版本すなわち第1版訳書と今回の第2版訳書の目次をそれぞれ列記しておきます。なお、第2版の原書の目次はこちらでご確認いただけます。

第1版目次:
訳者まえがき
序章 なぜ社会学を学ぶのか?
第1章 自由と依存
第2章 わたしたちとかれら
第3章 よそもの
第4章 集団
第5章 贈与と交換
第6章 権力と選択
第7章 自己保存と道徳的義務
第8章 自然と文化
第9章 国家と民族
第10章 秩序と混沌
第11章 日常生活を送る
第12章 社会学の方法
索引

第2版目次:
ティム・メイによる第2版序文
序章 社会学とは何か
第1章 自由と依存
第2章 わたしたちとかれら
第3章 コミュニティと組織
第4章 権力と選択
第5章 贈与と交換
第6章 身体の諸相
第7章 秩序と混乱
第8章 自然と文化
第9章 テクノロジーとライフスタイル
第10章 社会学的思考
訳者あとがき
推薦図書
索引

★なお、ちくま学芸文庫では9月7日に、杉勇・屋形禎亮訳『エジプト神話集成』、アンリ・ベルクソン『笑い』合田正人・平賀祐貴訳、ジャック・アタリ『アタリ文明論講義――未来は予測できるか』林昌宏訳、などを発売予定だそうです。『笑い』はつい先日、光文社古典新訳文庫でも新訳が刊行されたばかりです。

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★また、最近では以下の新刊との出会いがありました。

本屋がなくなったら、困るじゃないか 11時間ぐびぐび会議』ブックオカ編、西日本新聞社、2016年7月、本体1,800円、A5判並製304頁、ISBN978-4-8167-0922-7
ウェストファリア史観を脱構築する――歴史記述としての国際関係論』山下範久 ・安高啓朗・芝崎厚士編、ナカニシヤ出版、2016年8月、本体3,500円、A5判上製268頁、ISBN978-4-7795-1095-3

★業界人必読の新刊が出ました。『本屋がなくなったら、困るじゃないか』は巻頭の「はじめに」によれば、「2015年に10周年を迎えた「ブックオカ」のイベントとして11月14日(土)、15日(日)の2日にわたって開催した「車座トーク ~ほんと本屋の未来を語ろう」の模様を中心に収録したもの」で、「この座談会に出席したのは、書店、出版社、そして本の物流をつかさどる取次で働く計12人のメンバー。うち6人は東京・大阪・広島から来られたゲストだ」とのことです。車座トークに参加したのは、大阪・スタンダードブックストアの中川和彦さん、福岡・ブックスキューブリックの大井実さん、東京・本屋Titleの辻山良雄さん、文化通信編集長の星野渉さん、東京・トランスビューの工藤秀之さん、広島・ウィー東城店の佐藤友則さん、トーハンの水井都志夫さん、日販の小野雄一さん、福岡・丸善博多店の徳永圭子さん、福岡・弦書房の野村亮さんで、進行は、福岡の版元「忘羊社」の藤村興晴さん、西日本新聞社の末崎光裕さんです。目次は以下の通り。

第1部 本と本屋の未来を語る車座トーク1日目。限りなく不透明に近い出版流通を打ち破るカギはどこに?
第2部 車座トーク2日目。前向きで前のめりな面々と街に本屋が生き残っていくためのヒントを探る。
第3部 本屋のある街を増やしていくためにわれわれに何ができるのか。そんな課題を胸に僕たちはほんと本屋の未来を探す旅に出た。
 トランスビュー代表・工藤秀之さんに聞きました。九州のような地方も含めこれからも本屋が生き残るための新しい出版流通ってどんなものでしょう。
 『文化通信』編集長・星野渉に聞きました。ドイツで業界の壁を越えた改革が実現できたのはなぜでしょう?
 H.A.Bookstore・松井祐輔さんに聞きました。取次、書店、出版、全てを経験した松井さんから見ていま、我々に必要なものは何でしょう?
 ツバメ出版流通代表・川人寧幸さんに聞きました。たったひとりで取次を始めた動機を教えていただけますか?
 ミシマ社代表・三島邦弘さんに聞きました。街の書店が生き残っていくために三島さんが考える未来像ってどんなものですか?
第4部 長い旅の締めくくりは、九州の若手書店主にロックオン。本と本屋の未来を地元目線で考える。
 長崎書店社長・長崎健一さんに聞きました。地方に生きる書店として長崎さんが大切にしてきたこと、そして未来に向けてのビジョンを聞かせてもらえますか?
 [寄稿]本棚の向こうの青空(大分・カモシカ書店店主・岩尾晋作)
あとがき(福岡・ブックスキューブリック・大井実[ブックオカ実行委員長])

★車座の最年長は大井さんと中川さんでお二人とも1961年生まれ。「文化通信」の星野さん(64年生まれ)を除くと、ほかの皆さんは皆、70年代生まれです。業界人の年齢が平均して20代から60代までと限定した場合、今回の車座の参加者は40代前半が多く、いわば働き盛りの中堅世代、と言っていいでしょうか。業界が改革一朝一夕では終わらないことを考えると、この本に参加された皆さんが10年後の2026年に何をおやりになっているかというのを読者としてはちゃんとフォローして見ておく必要があると思います。ブックオカの今までの10年間のエッセンスは本書に凝縮されています。業界人が互いに「「わからなさ」を率直にぶつけあってみることから始め」る(藤村興晴「はじめに」4頁)というのはまさに、「今さら」どころではなく「今こそ」やらねばならないことです。分かったふりもダメだし、分かろうとしないのもダメなのだ、という当たり前のことを本書は教えてくれます。

★本書の巻末には「九州でシンプルに本をつくり、シンプルに本を売る仕事を続けていくための構想案」として15項目が掲げられています。ここしばらく続いている取次危機を考える時、本書で議論されているような業界三者の未来や地域活性化から目をそらすことはできません。これからの10年は今まで以上に波乱と混乱と変化と新しい挑戦に満ちた時代になるはずです。これらの構想がどのように挑戦され実現されあるいは議論されていくのかは、ブックオカのウェブサイトで報告がなされていくようです。

★『ウェストファリア史観を脱構築する』は帯文に曰く「「ウェストファリアの講和」に現在の国際システムの起源をみるウェストファリア史観は、国際関係論にどのような認知バイアスをもたらしてきたのか。「神話」の限界を超え、オルタナティブな国際関係論の構築をめざす、知のインタープレイ」。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。「脱ウェストファリアへの登攀路」「脱ウェストファリア史観から見える世界」の2部構成で9篇の論考が収められ、序とあとがきがそれらを総合的に紹介し総括しています。ウェストファリア史観とは「三十年戦争(1618~48年)を集結させた講和条約の総称である、いわゆる「ウェストファリアの講和」によってヨーロッパに掲載されたとされる主権領域国家によって構成される秩序に、現在の国際システムの起源と本質を見る歴史観」(1頁)。この史観は「むしろ近年の歴史研究の成果に照らすと〔・・・〕かなり偏った歴史観といわざるをえ」ないそうで(3頁)、本書の目的は次のように宣明されています。

★「このようにディシプリンのウチとソトのあいだに大きな歴史観のギャップがあるということは、学知としての国際関係論が何かしら体系的・構造的な認知バイアスを帯びていることを示唆する。本書の目的は、(1)この構造的な認知バイアスがそのような内容をもつか、(2)それがどのような効果(知的効果と政治的効果)を発生させているかを検証し、そして(3)そのようなバイアスがどのように正されうるか(適切に再文脈かできるか)、またそうすることで現在の国際関係の捉えられ方がどのように変わるかを提示することである」(同)。また、ウェストファリア史観批判は「すでに終わった問題ではなく、既存の批判の蓄積よりも一段深いレベルで一層アクチュアルであることを示しえた」との自負があとがきで述べられています(254頁)。
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# by urag | 2016-08-21 16:16 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2016年9月16日(金)プレオープン
美しが丘TSUTAYA:735坪(図書314坪、文具雑貨106坪、レンタル170坪、カフェ63坪、コスメ72坪)
北海道札幌市清田区美しが丘3条4-1-10
日販帳合。弊社へのご発注は芸術書主力商品。日販の出品依頼書によれば、札幌市のベッドタウンである清田区にある主要幹線・羊ケ丘通沿いに「最新型TSUTAYA」を出店と。経営主体は道内でTSUTAYAやブックオフをフランチャイズ出店していると聞く株式会社日光堂升井商店。代表取締役社長の升井修さんの挨拶状によれば、同社にとって5店舗目のTSUTAYAであり、「ステキな女性を中心とした家族が集まる街を創造」し「居心地上質な時間と空間を提案する」というコンセプトで、「地域コミュニティへのライフスタイル提案発信の場として、Book&Cafeを中心とした店づくり」を行っていくとのことです。9月16日(金)プレオープンで18日(日)がグランドオープン。営業時間は8時から25時です。

株式会社北海道TSUTAYAと株式会社日光堂升井商店の連名による7月12日付ニュースリリース「札幌市清田区に「TSUTAYA美しが丘」 ~居心地の良いBOOK&Caféを提案、2016年9月オープン~"あなたがあなたを見つける空間"~札幌市清田区に「TSUTAYA美しが丘」~居心地の良いBOOK&Caféを提案、2016年9月オープン~Café MORIHICO、@cosmeなど4つのテナントも出店」によれば「「TSUTAYA美しが丘」は、従来のCD・DVDレンタルや、本の販売に加えて、居心地の良い空間を演出したBOOK&Caféが加わり、「本」の中にある「ライフスタイル」を楽しんで頂けるお店になります。この BOOK&Caféは、地元の企業でもあるCafé MORIHICOとのコラボ出店となります。店内全体にcafeスペース(80席以上)をご用意し、約15万冊の本や雑誌と共にMORIHICO特製の本格自家焙煎コーヒーを楽しみながら、「本」を選ぶだけに留まらず、地域のお客様とともに大切な人との時間を共有する新しい「場」を提供して参ります。この他にも、コスメ〔@cosme store〕、パン屋〔felieeds(フィリーズ)〕、ジェラート店〔円山ジェラート〕、〔TSUTAYAの〕スマートフォンサービスの「TONE」と新たなテナントが加わり、居心地の良い時間と空間をお届け致します」と。

「北海道の今を読み解く地域経済ニュースサイト」を謳う「リアルエコノミー」の7月12日付記事「札幌・美しが丘に新タイプ「TSUTAYA」 モリヒコやブーランジェリーポームも出店」によると、今年5月17日に閉店(店舗オーナーとの契約期間満了)した「北雄ラッキー美しが丘店」の跡地であり、「函館新道に繋がるバイパス沿いにあるカルチュア・コンビニエンス・クラブ直営の函館蔦屋書店で培ってきたコト消費型店舗の普及版という位置づけの店舗になる。/道内のTSUTAYAは、CCC傘下の北海道TSUTAYAがFC本部になり、JXリテーリング(東京都板橋区)、北星(滝川市)、オカモトグループ(帯広市)などがFC展開をしているが、「美しが丘TSUTAYA」は、日光堂升井商店が手掛ける」と。ちなみに関連記事には2012年9月5日付「北雄ラッキー篠路店に直営の書籍売り場設置、同社運営のTSUTAYA撤退で書店難民を回避」があります。

フランチャイズ店でも今後、直営「蔦屋書店」と同様の新型複合店スタイルが広まっていくのかもしれません。一番大事なのはハコよりも人材の城が築けるかどうかであり、注視したいところです。支店が増えれば増えるほど人材育成が重要になりますが、店舗の増加と育成の強化はこの業界では往々にして両立していません。書店にせよ版元にせよ取次にせよ、人材に乏しければいずれ衰退するのは目に見えています。
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# by urag | 2016-08-17 12:51 | 販売情報 | Trackback | Comments(0)
弊社出版物でお世話になっている訳者の皆さんの最近のご活躍をご紹介します。

★小笠原博毅さん(共訳:ウォルターズ『統治性』)
★阿部潔さん(共訳:ウォルターズ『統治性』)
★鵜飼哲さん(共訳:ジュネ『公然たる敵』)
航思社さんから緊急出版された新刊『反東京オリンピック宣言』(本日8月16日取次搬入)に、小笠原博毅さんが共編者として関わっておられます。同書では、鵜飼哲さんが巻頭言「イメージとフレーム――五輪ファシズムを迎え撃つために」を寄稿され、阿部潔さんが「先取りされた未来の憂鬱――東京2020年オリンピックとレガシープラン」を、そして小笠原さんご自身は「反東京オリンピック宣言――あとがきにかえて」と題した文章を寄稿されています。

なお、同書に関連するイベント「おことわり東京オリンピック」が、今週末の8月21日(日)13時半より千駄ヶ谷区民館(原宿駅徒歩10分)1Fの会議室にて開催されるそうです。参加費500円。第一部で鵜飼哲さんが「動員イベントとナショナリズム」と題した発表をされるほか、小笠原さんも討論に参加されるとのことです。

また、小笠原さんは選集発売された「現代思想」2016年9月臨時増刊号(総特集=安丸良夫――民衆思想とは何か)にも「長脇差と葡萄――下和田村治左衛門始末の事」という論考を寄せておられます。ちなみにこの安丸良夫特集号と『反東京オリンピック宣言』の両方に寄稿されている方が小笠原さんのほかにもう一人いらっしゃいます。友常勉さんです。『反東京オリンピック宣言』には「トラックの裏側――オリンピックの生政治とレガシー・ビジネス、そして効果研究」と題した論考を、そして安丸特集号には「安丸良夫における革命と実践」を寄稿しておられます。


★中山元さん(訳書:ブランショ『書物の不在』)
ご高訳書である、アレント『責任と判断』(筑摩書房、2007年)がちくま学芸文庫の一冊として今月文庫化されました。「立ち止まって考えろ!それだけが善く生きる道だ!!思考なき世界の〈凡庸な悪〉とは何か?」という帯文が痛烈です。文庫化にあたり、巻末には「文庫版への訳者あとがき」が追加されています。そこではマルガレーテ・フォン・トロッタ監督による映画作品「ハンナ・アーレント」(2013年日本公開)が言及されていて、「『責任と判断』の中心を占める「道徳哲学のいくつかの問題」という長文の講義録」が、この映画で描かれていた「悪の凡庸さ」をめぐる問題「を軸にして展開され」ていると説明されています。「わたしたち日本人にとっても無関心ではありえない問題に焦点をあてている。/アレントはこれらの〔戦争犯罪を犯した〕人々がいかにして自己の道徳的な規範を喪失し、あるいは他者の道徳規範にすり替えてみずから道徳的な判断を行うことを停止していたかを、詳細に検討する。〔・・・「悪の凡庸さ」とは〕ふつうの人々が自分で考え、自分で道徳的な判断を下すというあたりまえのことをすることを回避したことによって、そのような巨大な犯罪が置かされたことを告発する言葉である。わたしたちもまた、自分で考える責任を回避した瞬間から、こうした凡庸な悪に手を染めるかもしれないのである」と。周知の通り、筑摩書房さんでは『責任と判断』の編者であるジェローム・コーンによるアレントの編書がもう一冊刊行されています。高橋勇夫訳『政治の約束』(2008年)です。この本もいずれ文庫化されるのかもしれません。

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# by urag | 2016-08-16 00:23 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)

月曜社のこと、気になる他社本のこと、業界のこと、等々。


by urag